2019年11月11日月曜日

英語民間試験に政官癒着 渦中のベネッセが抱える“深い闇”

 公平性の担保されない大学入試の英語民間試験がひとまず「延期」になったのは当然で、こんな不条理なシステムは復活すべきではありません。
   ⇒ 問題だらけの共通テスト~英語民間試験の延期だけでは終わらない
 そもそもの導入の切っ掛けは、安倍首相が私的諮問機関として13年1月に設置した「教育再生実行会議」による「大学入試の在り方」への提言でした。
 13年10月、同会議は財界の意見なども踏まえて「高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について」を提言し、それを受けて中央教育審議会が14年12月に、20年度からの新学力評価テストの実施、英語に民間検定試験の活用などを答申したことに端を発しています。
 すべて安倍首相の最側近と言われている下村博文氏が文科相のときで、大臣が民間試験活用に「超前のめり」であったため、文科官僚反対できなかったと言われます。主要な地位を占めているベネッセは早くから下村大臣に近づいていたのではないかと見られています(今年8月に大学入試共通テストの国語と数学の記述式採点業務として、ベネッセは約61億円の業務を受注)。

 8日の参院予算委での集中審議で、萩生田文科相は「なぜ、こういう仕組みになったのかを検証しなければならない」として、民間試験活用を議論した会議の議事録を公表する意思を改めて強調しました。
 公表されるのは、164月に文科省内に設置された有識者らによる「検討・準備グループ」の会議内容で、第1~9回の議事録は非公開とされてきた部分と、昨年12月に開催され、ベネッセ関係者も委員に名を連ねる「大学入試英語4技能評価ワーキンググループ」の議事録です。しかし「全文黒塗りや、公表前に内容が“改ざん”されることも考えられる」(野党関係者)ということで、どこまで真相が明らかになるかは見通せないということです
 日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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英語民間試験に政官癒着 渦中のベネッセが抱える“深い闇”
日刊ゲンダイ 2019/11/09
 来年度から始まる大学入学共通テストへの英語民間試験の導入が延期となり、国会は大紛糾だ。民間試験活用に至る経緯もさることながら、なぜベネッセが主催する「GTEC」が採用されたのか。国語・数学で記述式問題の採点業務をベネッセの関連法人が受注したプロセスは適正だったのか――。ベネッセをめぐる疑惑が噴出している。目下、浮かび上がっているのが政官との“癒着構造”だが、真相は闇に包まれている。
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 「なぜ、こういう仕組みになったのかを検証しなければならない」
 8日の参院予算委員会の集中審議で、萩生田文科相はこう言って民間試験活用を議論した会議の議事録を公表する意思を改めて強調した。
 公表されるのは、2016年4月に文科省内に設置された有識者らによる「検討・準備グループ」の会議内容。17年5月に大学入学共通テスト実施方針案が示されてからは第10回以降の議事要旨が公開されているが、第1~9回の議事録は非公開とされてきた。
 また、昨年12月に開催され、ベネッセ関係者も委員に名を連ねる「大学入試英語4技能評価ワーキンググループ」の議事録も公表される見通しだが、「全文黒塗りや、公表前に内容が“改ざん”されることも考えられる」(野党関係者)というから、どこまで真相が明らかになるかは全く見通せない。

 GTEC採用にとどまらず、問題山積の記述式が導入される国語と数学の採点業務まで手掛けるベネッセ。「対策テキスト販売などで儲け、濡れ手で粟のビジネスだ」(前出の野党関係者)とヤユされている。こんな一石二鳥が許されるのは、ベネッセが文科省に深く食い込んでいるからなのだろう
「GTECを共催する『進学基準研究機構(CEES)』の理事長は文部次官経験者で、評議員には文科省中央教育審議会の元会長が就いている。典型的な“癒着構造”です。文科省内では『問題アリ』と考える中堅・若手が少なくないのですが、危ういと感じていても〈決められた方針に逆らえなかった〉との嘆き節も聞こえてくる」(文科省担当記者)

■下地をつくったのは下村元文科相
 ベネッセが文科省に食い込むきっかけとみられているのが、“政界ルート”だ。キーマンは下村元文科相だという。
「民間試験活用の下地をつくったのは、下村元大臣ともっぱらです。大臣在職時の13年10月、従来の大学入試センター試験に代わる共通テスト導入と民間試験活用を提言しています。文科官僚が反対できなかったのは、下村大臣が超前のめりだったから。ベネッセは早くから下村大臣に近づいていたのではないか。社内では下村大臣をはじめ、政界人脈が脈々と引き継がれていたといいます」(前出の文科省担当記者)

「週刊文春」によると、ベネッセのシンクタンクの幹部らが下村氏の後援会主催のパーティーに足しげく通っていたという。ベネッセは政界といかにしてつながり、文科省との“蜜月”関係を築いていったのか。日刊ゲンダイが、天下り官僚の人数や、国会議員関係政治団体への献金、パーティー券購入の実態などについて問い合わせるとこう回答した。
「多くの誤解が含まれているため、個別の質問につきましては回答を差し控えさせていただきます。いただいた質問の中に書かれている内容について、問題となるようなことは一切行っておりません」(同社広報部)
 今後、ベネッセ幹部と大物政治家や有力者との「会食現場」などが明るみに出るかもしれない。受験生をメシの種にした代償はキッチリと払ってもらおう。