2022年9月18日日曜日

救急搬送注意義務怠る 入管 カメルーン人死亡で国に165万円の賠償命令

 茨城県牛久市の「東日本入国管理センター」収容中のカメルーン国籍の男性(当時43歳)が体調不良を訴えたのに放置され死亡したとして、遺族が国と当時のセンター所長に1000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、水戸地裁は16日、男性を救急搬送する注意義務を怠ったとして国側に165万円の賠償を命じました。

 性は1310月に来日したものの上陸を拒否され、最終的に牛久市の収容施設に移送されました。男性には来日前から糖尿病があり14年2月から運動後のめまい強い胸痛を訴え、3月20日には「気分が悪くて立てない」と訴えました。29日には「死にそうだ」と叫び、ベッドから落下し、30日未明にはほとんど動かなくなりました。午前7時職員が心肺停止状態の男性を見つけて救急搬送しましたが、病院で死亡が確認されました。
 男性の母親は17年9月、「医師の診察を受けさせるなど必要な措置を講じず、生命を保持するための注意義務を怠った男性が意識障害に陥る前に救急搬送をしていれば、救命できた可能性があった」などとして提訴しました
 児玉晃一弁護団長は、裁判所が死亡の責任を認めなかったことについて、「国に責任がないことを国が立証していない」と批判する一方で、救急搬送義務が認められたことについては「画期的だ」と評価しました。
 それにしても賠償額が165万円とはあまりに低額です。請求額が1000万円と低かったのは多分訴訟預託金の支払能力が乏しかったためと思われ、やり切れない思いがします。
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救急搬送注意義務怠る 入管 カメルーン人死亡 国に165万円賠償命令
死亡因果関係は認めず 水戸地裁
                       しんぶん赤旗 2022年9月17日
 法務省入国管理局(現出入国在留管理庁)東日本入国管理センター(茨城県牛久市)に収容中に死亡したアフリカ、カメルーン出身の男性=当時(43)=の母親が、職員の注意義務違反を理由に国に1000万円の賠償を求めていた訴訟の判決が16日、水戸地裁でありました。阿部雅彦裁判長は入管職員が男性を救急搬送する注意義務を怠ったとして国に165万円の支払いを命じました。一方で、死亡との因果関係は認めませんでした。
 児玉晃一弁護団長は、裁判所が死亡の責任を認めなかったのは、弁護団が因果関係を証明できていないという判断だと説明。「国に責任がないことを国が立証して初めて責任を逃れられるはず。国のせいで死んだ人は、『死因不明』とすればおとがめなしになる」と批判しました。救急搬送義務が認められたことについては「画期的だ」と評価しました。控訴するかは未定です。
 判決文などによると、男性は2013年10月5日に来日したものの、上陸を拒否され収容。11月6日に牛久市の収容施設に移送され、14年3月30日に死亡しました。男性には来日前から糖尿病があり、2月から胃痛や運動後のめまい、同27日には強い胸痛、3月15日には両足の痛みを訴え、20日には「気分が悪くて立てない」と訴えました
 29日には「死にそうだ」と叫び、ベッドから落下。30日未明にはほとんど動かなくなりました。続く午前7時2分、職員が心肺停止状態の男性を見つけて救急搬送しましたが、8時7分に病院で死亡が確認されました。

 裁判で原告側は、男性が体を動かせなくなり始めた29日午後8時35分より前に治療できるよう救急搬送すれば救命の可能性があったと主張し、国は救急搬送する義務はなく、搬送しても救命できたかわからないと反論していました。