2022年9月26日月曜日

「岸田降ろし」の必然 - 岸田政権には支持率を自然回復させる装置がない

 世に倦む日々氏は、一部では30%を切った岸田政権の支持率はこの先もさらに落ちて、11月の内閣支持率はNHKと朝日新聞でも、共同通信と日経新聞とFNN産経新聞でも、30%を切る可能性が高いと見ていますそしてそうなればマスコミはポスト岸田の期待を煽る装置に変わると述べています。

 その点は長期政権を誇った第2次安倍政権においても内閣支持率が急降下したことは何度もありましたが、その都度低姿勢に変じたりして回復を遂げてきました。
 世に倦む日々氏は、岸田政権には支持率の回復力がないのに対して安倍内閣や小泉内閣にはそれがあったとして、その要因について独特の分析をしています。
 以下に紹介します。
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「岸田降ろし」の必然 - 岸田政権には支持率を自然回復させる装置がない
                       世に倦む日日 2022年9月23日
岸田内閣の支持率が下がり続けている。18日に示された毎日新聞の結果は29%だった。次は10月2日にJNNの数字が出る。その次は10月10日にNHKの発表が控えている。NHKの前回の数字は40%だった。おそらく大きく下がるだろう。10月前半の世論は、27日に行われる安倍国葬への評価が反映されたものになる。国民のダブルスコアの多数の反対を押し切って強行される安倍国葬に対して、マスコミが積極的な論評で対応するとは思えない。FNN産経の世論調査(9/20)でも、安倍国葬に賛成が31%、反対が62%だ。

予定では10月3日に臨時国会が召集され、中旬に集中審議がテレビ中継される。統一教会の問題が槍玉に挙げられ、野党から厳しい追及があるのは必至で、10月後半から11月前半の世論調査に影響するだろう。この頃には円安による物価高の生活直撃も現在より深刻になっていて、政府への批判的世論は厳しさを増しているに違いない。統一教会の問題はかれこれ2か月になるが、一向に沈静化する気配がない。ミヤネ屋は毎日この問題をネタにして放送している。途切れないのは視聴率が取れるからで、視聴者の関心が相変わらず高い証左だと言える。TBS報道特集の検証シリーズも第8弾まで進んだ。

マスコミの政治記者の一部に、「岸田内閣は今すぐに倒れる状況にはない。衆院解散・総選挙に踏み切ることもない」と断言する向きがある。「自民党の国会議員が今すぐ倒閣に動く気配はない。『首相降ろし』は国政選挙の直前に吹き荒れるものなのだ」とも言っている。誤った認識と観測なので論評しておきたい。まず、「首相降ろし」が国政選挙の直前に起きるものだという指摘だが、何を根拠に言っているのだろう。1991年の「海部おろし」の経緯を見ても、国政選挙の日程や事情は特に関係していない。政治改革関連法案をめぐっての党内対立と権力闘争の結果起きた政変である。

弱小派閥だったため、簡単に引きずり降ろされた。2000年に起きた「加藤の乱」も同様である。これは失敗した倒閣運動の例だが、加藤紘一と山崎拓らが森政権を倒そうとして中途半端に蹶起し、野中広務の返り討ちに遭って鎮圧された。野党が不信任決議案を出そうとしていた背景があり、それに便乗しての政変ではあったが、別に選挙の日程が決まっていたわけではない。「首相降ろし」と「解散総選挙」は政局としてセットになるケースが多いけれど、それは、降ろされる首相側が権力の延命と打開の手段として「解散総選挙」を使うからで、すなわち能動的で可変的な関係性であって、客観的で固定的な条件ではない。

昨年の菅降ろしも同類である。昨年9月は「国政選挙の直前」ではなかった。菅義偉が、政権延命の目的で不用意に「解散総選挙」をブラフし、最大派閥領袖で最高権力者の安倍晋三によって封殺されたという顛末だった。迫っていたのは国政選挙ではなく自民党総裁選である。これらの挙例で反証は十分だろう。「『首相降ろし』は国政選挙の直前に吹き荒れるものなのだ」という主張は事実誤認であり、そのような政局過程の法則性はない。錯覚である。事実は、「首相降ろし」は屡々「解散総選挙」とセットになるという永田町のダイナミズムであり、「首相降ろし」を避けるために、首相が「解散総選挙」をツールとしてハンドリングするということだ。

現在の岸田政権の支持率低下が傾向的に続くと、11月の内閣支持率は、NHKと朝日新聞でも、共同通信と日経新聞とFNN産経新聞でも、30%を切る可能性が高い。11月に30%台を維持しているのは、JNNと読売新聞だけだろう。ANNと時事通信は10月に30%を確実に切る。マスコミ全社の支持率が30%を切る局面は、かなりの異常事態であり、政権末期の状態である。テレビの報道番組(反町・松原など)は、毎晩岸田叩きを流す編成になる。普通に考えて、自民党内で岸田降ろしがハプンしないはずがない。ポスト岸田を狙う者にとって最大の好機到来だからだ。野党は弱く、支持を集められる情勢になく、マスコミはポスト岸田の期待を煽る報道にシフトする。

具体的に、①本命-河野太郎、②対抗-茂木敏充、③穴馬-高市早苗、という構図と競争になるだろう。実際のところ、自民党内と右翼勢力はこの展開と推移を睨んで準備を始めた気配があり、11月になっても空気が変わらず、支持率下降に歯止めがかからなかった場合は、岸田降ろしにゴーサインを出すと予想される。誰が岸田降ろしを差配するかというと、麻生太郎であり、菅義偉であり、田崎史郎と反町理である。現在の自民党権力の中枢だ。なぜ岸田降ろしに踏み切るかといえば、支持率が低いままだと本来予定していた政策が頓挫するからである。本来予定していた政策とは、改憲発議であり、台湾有事(対中戦争)に向けての戦時体制の本格的整備に他ならない

支持率の高い政権でないと、改憲発議を主導・実行するのは難しく、防衛3文書に核武装(IMF配備の方針と計画)を明記するのは難しい。マスコミ全社で内閣支持率が30%切った弱体の岸田政権では、9条改憲の発議は強行できず、断念して延期せざるを得ない。そうなると、改憲のモメンタムは下がって仕切り直しとなる。本来予定していた政策の遂行は躓いて遅れる。櫻井よしこらのヒステリー祭りとなる。それは、自民党や右翼だけでなく、海の向こうのやんごとなき権力にも不興な失態だ。台湾有事の工程表はやんごとなき権力が統括する戦略事項で、属国日本の政権の事情でスタック⇒頓挫が発生するのは許されない。畢竟、首相を替えよというディレクションになるだろう。

内閣支持率がさらに下がれば、岸田降ろしは必然だ。現在、岸田政権のゴッドファーザーを任じているのは麻生太郎である。だが、二人のイデオロギーは(表面的には)水と油で、そのため岸田文雄の「新しい資本主義」もすっかり換骨奪胎させられ、分配重視は消え、当初の理念とは逆の新自由主義の中身に変質を強いられた。岸田政権の今の経済政策は、アソウノミクスそのものの内実と化している。麻生太郎の思想は高市早苗に近く、河野太郎と茂木敏充に近い。したがって、総理総裁のチェンジに躊躇する動機は小さい。党内で二番目に影響力のある菅義偉も、宏池会とは対極に位置する猛毒のネオリベ(⇒新自由主義)右翼であり、一刻も早く河野太郎を据えて黒幕に収まろうと目論んでいる。

岸田文雄の支持率の下降が止まらない理由の一つに、マスコミでは「保守のコア」などと表現されるところの、極右からの支持が脆弱な点がある。安倍政権下で増殖し、自分たちこそ日本政治のメインストリームであると自負し、多数派であると「自覚」する極右勢力。ヤフコメでもツイッターのトレンドでも必ず先頭表面に顔を出す極右。物理的な数はさほど多くないが、声が大きく、政治の圧力と轟音を作っていて、マスコミでもネットでも言論を支配している。安倍レジームの基盤勢力だ。この層が岸田文雄に冷淡で、コミットが弱く、支持率低下の窮状を援護しようという行動にならない。彼らは、河野太郎へのチェンジと菅義偉のカムバックを望んでいる。この点は事実として確認できるだろう。

自民党の中には派閥があり、次を狙うハングリーな野獣が必ず複数匹存在する。自民党が政権交代のネイティブな環境であり、権力闘争のアリーナ⇒試合場に他ならない。小泉純一郎や安倍晋三の手によって、党内で政権交代が起きにくいシステムに改変されたが、派閥政治の原型は崩れておらず、常に自然状態に戻ろうとする。自民党の中で権力を維持するためには支持率を維持しなくてはならない。何かの難局や醜聞で支持率が一時的に下がっても、時間が経てば自然回復する特徴と秘術を持った政権でなくてはならない。その要素がないと、1年ほどで減価償却されてしまう。麻生政権は1年、菅政権も1年の短命だった。福田政権も1年、第1次安倍政権も1年だった。

長期政権の秘訣は何か。それは、大衆に幻想を抱かせる経済政策の看板である。小泉政権の「構造改革」、第2次安倍政権の「アベノミクス」。これがあったから二つの政権は長期化が可能だった。イデオロギーではなく経済政策。それも、大衆を騙し続ける詐欺のコンセプトとビジョンである。無知で愚昧な大衆は経済政策の美名と宣伝に操られる。バブル崩壊以降の、日本の没落中間層は、小泉・竹中の「構造改革」に騙され続け、安倍晋三の「アベノミクス」に騙され続けた。恰も、高額の壺と印鑑を買って貢ぎ続ける統一教会の信者のように、小泉純一郎と安倍晋三を信じて票を捧げ続けた。中間層大衆を信者として掴んだから、小泉純一郎と安倍晋三は支持率を自然回復させられたのだ。

そうした芸当は、麻生太郎も菅義偉もできなかった。菅義偉に至っては、もろに正直に「自助、共助、公序」と恐るべき信念を宣言したため、コロナと五輪の失策で支持率が落ちた後は終焉まで一直線だった。もし鳩山政権が途中で変節せず、マニフェストどおりに増税なしの財源捻出策(一般会計と特別会計の統合棚卸し)を貫徹していれば、支持率の基盤装置として機能し、自然回復が可能な長期政権となっただろうと推測する。簡単に言えば、「釣れて騙せる経済政策」の掲揚に成功すれば、日本の政権は長持ちするのであり、それがなければ政権は短命に終わる。この現象を一つの法則性として仮説提起できるだろう。岸田政権には「釣れて騙せる経済政策」がなく、どうやら短命のカテゴリーだと判断される。

仮に「岸田降ろし」の端緒が見えたとして、岸田文雄はどうやってそれに対抗し防衛するか。手段は「解散総選挙」しかない。しかも、それを選ぶなら、マスコミ全社の世論調査で支持率が30%を割り、政権運営の余力がなくなった後からでは遅い。全派閥から退陣を突きつけられる前に勝負に出ないといけない。そしてまた「解散総選挙」の大義名分として、統一教会の汚染一掃を打ち上げて国民の期待に正面から応える必要がある。統一教会の完全排除を争点にすることで、岸田文雄は国民の支持を獲得し、シングルイシューの選挙の勝算を得ることができよう。05年の郵政選挙の小泉純一郎の立場を踏襲することができる。それは、自民党を二つに割る果敢な試みである。

当然、統一教会寄りの議員は抵抗するし、安倍派を筆頭に、解散総選挙を封じて岸田降ろしを詰める攻勢に出るだろう。その機先を制して小泉純一郎の方法を真似し、統一教会と関係の深い(萩生田や下村のような)壺議員を公認せず、選挙区に刺客を立てればいい。そうすれば、投票率を上げて岸田文雄は圧勝でき、自民党の中を岸田派の新人だらけにすることができる。ヘゲモニーを掌握できる。無論、私には岸田文雄にそうした挑戦に賭ける胆力があるとは思えない。想定されるのは、無条件降伏であっさり退陣する進行である。せっかく来年5月に広島でG7サミットも開催されるのだから、意地を見せて「岸田劇場」上演の勝負に出てもらいたいが、どうもそういう資質や性格の政治家ではないようだ。