2022年9月24日土曜日

暖房全開で冷気注入のドル売り介入(植草一秀氏)

 8月の企業物価・輸入物価指数は前年比42・5%の上昇を示しました。最早猶予できない状態です。

 9月22日、政府ドル売り・円買い介入を実施しました。その結果1ドル145円だったのが140円台まで触れましたが、直ぐに142円台まで戻ってしまいました。
 植草一秀氏は、主要国が足並みを揃えて金融引締め政策を実行しているのに、日銀がそれを行わずに単に「ドル売り・円買い」をしても、暖房を全開にしながら冷気を注ぎ込む”ようなもので、金融政策の修正を伴わない為替介入は一時的な効果しかなく、必ず政策修正に追い込まれると述べています
 日銀が突如政策修正を表明すれば当然金融市場に大きな波乱が生じますが、それは当初から分かっていたことで、黒田日銀総裁はそれを承知の上でアベノミクスを10年近く進めてきたわけです。
 ここにきてもさらにそれを継続するというのは無責任の極みで、責任上も軌道の修正を図るべきです。
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暖房全開で冷気注入のドル売り介入
               植草一秀の「知られざる真実」 2022年9月23日
9月22日、日本政府がドル売り・円買い介入を実施した。
岸田首相は「過度な変動に対しては断固として必要な対応を取りたい」と述べた。
「断固として必要な対応」と威勢は良いが介入効果は限定的。
1ドル145円台にまで進行したドル円レートは介入実施後に一時1ドル140円台にまで円高に振れたが、その後はドルが値を戻し、現在は1ドル142円台で推移している。
円安が加速した背景は内外金利差および内外金融政策スタンスの相違。
米国をはじめとして主要国が金融引締め政策を推進するなかで日本銀行は金融緩和政策に固執している。

9月21日、米国FRBはFFレートを0.75%ポイント引き上げる措置を決定した。
直近3回の政策決定会合(=FOMC)で0.75%幅の利上げを3回連続で決定した。
米国でインフレ率上昇が加速し、インフレ抑制の政策方針を明示している。
欧州でもECB(欧州中央銀行)は9月8日の定例理事会で0.75%幅の利上げを決定した。
ウクライナ戦乱を背景に資源価格が急騰。これらの事象を背景に世界的にインフレ圧力が高まっている。これに対応して主要国が足並みを揃えて金融引締め政策を実行している。

これに背を向けているのが日本銀行。日本銀行は9月22日の政策決定会合で大規模金融緩和政策の維持を決定した。お金は金利の低いところから金利の高いところに向けて流れる。
海外金利が上昇し、国内金利が超低金利に据え置かれれば、お金は日本円から他通貨へ向かって流れる。このために円安=ドル高・他通貨高が生じる。
円安を止めるには日本の金融政策修正が必要不可欠。
9月22日の日銀金融政策決定会合で日銀が金融政策修正を発表し、併せてドル売り=円買い介入を実施したなら効果は絶大なものになった。一気に円高に回帰したと考えられる。
しかし、日銀の決定は逆向きだった。大規模金融緩和政策維持を決定し、同時に日本政府がドル売り=円買い介入を実施した。暖房を全開にしながら冷気を注ぎ込んだようなもの。
冷気を注ぎ込んだ瞬間は一部の温度が低下するが、冷気の注入をやめれば部屋の温度はまた上がる。意味不明・支離滅裂介入のそしりを免れない

日銀は物価安定の責務を負っている。物価安定とは言い方を変えれば「通貨価値の維持」。
いま日本円の通貨価値が著しく毀損している。グローバルスタンダードで円の価値が暴落している。
かつて70円で1ドルを購入できた。いまや140円出さなければ1ドルを購入できない。
日本円の価値が半分に暴落している。
日本円を保有する日本国民の財産価値は国際標準で半分に目減りしている。
円の通貨価値が半分に暴落しているということ。日本国民は巨大な損失を蒙っている。

それだけではない。日本でもインフレが確実に進行している。
9月20日に発表された8月全国消費者物価上昇率は前年同月比3.0%上昇を示した。
30年ぶりのインフレ率だ。
物価上昇の最大原因は円安。円安に伴い輸入物価が激しい上昇を示している。
8月の企業物価・輸入物価指数は前年比42.5%の上昇を示した。
日銀はインフレ抑制のために金融政策運営を修正しなければならない。
ところが、日銀の黒田東彦氏が金融緩和政策に執着している。
金融政策の目的と方法をまったく理解していない、あるいは無視しているからだと思われる。
金融政策の修正を伴わない為替介入は一時的な効果しか発揮しない。日銀は必ず政策修正に追い込まれる。
日銀が突如、政策修正を表明する際、金融市場に大きな波乱が生じることに警戒が求められる。

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