2022年9月22日木曜日

徹底追及 統一協会 信者2世編 Ⅱ(下)/大阪の大学に見る統一協会の活動

 シリーズ「徹底追及 統一協会 信者2世 」(下)です(本編Ⅱはこれで終了)
 冠木 結心(かぶらぎ けいこ)さんは統一教会の開祖 文鮮明の死去をきっかけに、彼が「メシアではない」と気づき、帰国し洗脳を解きました。しかし母親には頼れず、韓国に約10年間いた冠木さんには日本での社会的基盤がなかったため、子供を抱えて大変な苦労をしました。そうした中 人生をめちゃくちゃにされた怒りを持つ一方で、自身も統一協会にさまざまな人を引き込もうとした加害者であったと気づき、いまは同じような経験をする人がいなくなるよう願い、執筆活動んでいます
 併せて 大学における統一協会の活動組織CARPの実態に関する記事「学生勧誘し共同生活 ~ 大阪の大学にみる」を紹介します。
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徹底追及 統一協会 信者2世編Ⅱ(下)
   洗脳が解けても苦難 文鮮明の死きっかけに帰国
         作家 冠木 結心(かぶらぎけいこ)さん
                    しんぶん赤旗 2022年9月20日
 統一協会(世界平和統一家庭連合)の開祖、文鮮2012年に死去します。それをきっかけに集団結婚で韓国に渡っていた作家の冠木結心さんは、帰国を決断します。
 統一協会では、文鮮明をメシア=救世主 と信者を洗脳します。文鮮明の死は、冠木さんに「メシアではない」と気づかせ、洗脳を解きました

社会基盤がない
 最初の夫の暴力も、次の夫による借金苦も、洗脳されているときは苦労を神の国をつくるための試練″ととらえていました。「頭の中がお花畑だったのです」と冠木さん。
 しかし、洗脳が解けると、価値観や生き方をから築きなおす必要がありました。
 統一協会では、勉強よりも信仰が優先されます。学歴もなく、韓国に約10年いた冠木さんには、日本に社会基盤はありませんでした
 しかも2人の子どもをかかえた40歳手前のシングルマザーです。毎日のようにハローワークに通いましたが、安定した仕事を得られませんでした。
 雇用を破壊してきた日本の経済政策も追い打ちをかけます。
 就ける仕事は非正規で低賃金ばかり。いつも違う職場に通い、チラシ折りや梱包(こんぽう)など単純作業を行う日々が続きました。
 実の母親は子どもたちに信仰を強いるため、面倒を頼むことはできません。
 行政にSOSを出しても、窓口で「信教の自由」「親子の問題」と、門前払いされることがあるといいます。
 頼れる人も少なく、経済的にも追い込まれた冠木さんは、「いのちの電話」に電話しました。
 自己破産と心理治療を勧められました。母親の干渉から逃れるため、引っ越しを機に、住民票の閲覧に制限をかけました。

自身も加害側に
 洗脳が解けた当初、「だまされた」「人生ちゃくちゃにされた」と怒りがわきました。
 一方で、心理治療を通し、自身も統一協会にさまざまな人を引き込もうとした加害者であったと気づきました
 自身の行いに報いるため、また同じような経験をする人がいなくなるよう願い、執筆活動励みます
 私はたまたま、『人生を台無しにされた怒り』を転換できました。でも一歩でも間違えたら、安倍晋三元首相を撃った山上徹也容疑者のようになっていたのではと思うのです」
 家庭内でカルト問題を解決することは困難だとし、信仰の名のもとに虐待されている子どもや、苦しむ人たちの救済を求めます。そのためにも、「信仰ではなく虐待」という認識が、自治体や相談窓口で広がることが重要だと指摘します。
 冠木さんは訴えます。
 1990年代半ば以降、メディアで統一協会問題が取り上げられることがほとんどなくなりまた。『空白の30年』と言われていますが、私たちにとっては『苦しみの30年』でした。党派を超え、この問題に取り組んでほしいです (信者2世編Ⅱ おわり)


徹底追及 統一協会
学生勧誘し共同生活 「洗脳されそうで怖い」 大阪の大学にみる
                       しんぶん赤旗 2022年9月21日
 統一協会が学生を取り込み勧誘活動などに駆り立てる問題が各地で今も続いています。さまざまな問題が明らかになった今も、学生たちを集め共同生活を送らせ、勧誘活動をさせている実態を大阪に見ると  。(鈴木平人)
 日本で最大級の私立大学、近畿大学(大阪府)。ある学生が帰宅中、大学の近くで「世界平和統一家庭連合」と名乗る青年から声をかけられました。「大学生活の中で興味のあること」のアンケートだといわれ、統一協会について知らなかった学生が連絡先を伝えると後日、雑居ビルの一室に案内されました。入り口には「HJ Familia 世界平和統一家庭連合」との看板が掛かっていました。

発想に違和感
 部屋には学生風の男女数名が集まっており、ゲームをしたあと統一協会の「統一理論」についてパワーポイントで説明を受けました。
 「家庭の幸せが地域貢献につながり、やがて世界平和にも通じる」「人間には善と悪の面があり、悪の面から人間を救い出さなければならない」などの説明を受けましたが、悪い面を絶対に認めない発想に違和感がありました。
 統一協会はさまざまな大学の学生を勧誘。その1人によると、信者の学生たちがマンションの一室で共同生活を送っています。それを知った学生は「個人個人で見ると優しくいい人に見えるだけに、洗脳されそうで怖い」と語りました。
 安倍元首相の銃撃事件後に会ったとき、銃撃事件について話題にもあがらなかったことに違和感を覚えました。

阪大CARP
 他の大学でも暗躍しています。大阪大学では、「阪大CARP」を名乗る団体が活動しており、「ボランティア活動」の一環として近くの小学校の授業にも参加していました。
 2009年からカルト対策の授業を担当している太刀掛俊之教授によると、05年ごろは別の団体を装って商店街の活性化やボランティアなどの活動をしていましたが、11年以降は「阪大CARP」と名乗って活動しています。「正体を隠して他の学生を誘うのは認められないし、たとえCARPを名乗っていたとしても、活動実態や教義については説明不十分なケースがほとんど」だと話します。

小学校の土曜授業に参加
「対応遅い」と箕面・維新市長に批判
 前出の太刀掛教授は、「今ある相談のほとんどは、怪しい団体から声をかけられたなど接触の初期の段階のものですが、これまでには学生がCARPの合宿に参加したり、大阪大学の近くでも信者の学生たちが共同生活を送っていました」といいます。
 大阪だけでなく、東京大学や早稲田大学など他大学でも、近年では「カレッジサミット」という別組織を立ち上げ、「SDGs(持続可能な開発目標)」を掲げて学生を勧誘しています。
 「彼らにとっては、ボランティアや清掃活動、SDGsを掲げた活動なども教義の実践として取り組まれていますが、そうと知らずに巻き込まれていく学生もいるでしょう。敵(サタン・悪魔)か味方かどちらかしかないような考え方や、事実に基づかない非科学的な思考など、彼らの教義は教育現場とは相いれない考え方だと思います」
 大阪大学では、大学当局として学生に対しカルト問題の啓発・相談活動に取り組んでいます。取り組みを始めた2006年当時、学生が統一協会の教義を刷り込まれてしまうような事態も起こっており、大学は担当教授を置きました。
 CARPの学生が実態を隠して、大阪府内のいくつかの小学校のカリキュラムに参加していたことが明らかになっています。箕面市のある小学校では、土曜日授業の一環として取り組まれていた「科学実験講座」に、17年前からCARPの学生が参加していたことが最近になり発覚。それに対する市当局の姿勢が問題になっています。
 昨年8月、現職の上島一彦市長(大阪維新の会)のツイッター宛てに、ある人から「統一教会が市立小学校のプロジェクトに浸透している事実をご存じなのでしょうか」という書き込みがありました。これに対し市長は、承知していないとし、「今後注視します」として対応をとる考えのないことをツイート。
 箕面市は、安倍元首相の銃撃事件後に統一協会に関する報道が活発になったことを受けてようやく、統一協会や関連団体の「市行政への関与は認めない」とする対応方針を発表しました。
 昨年8月に関与が明らかになっていたにもかかわらず、統一協会が大きな話題となって以降の対応方針の発表に、市民からは「対応が遅すぎる」と批判の声が上がっています。
 村川まみ日本共産党市議は、「対応が遅いだけでなく、発表された対応方針では『保護者や児童生徒の不安に配慮』して今後関与させないとしているが、不安を理由にしているのがおかしい。行政がお墨付きを与えることで被害拡大につながった可能性もあり責任が問われる。今後、質疑を通して市の姿勢をただしていきたい」と話します。
 関係者は、「地域と学校が熱意をもって連携して取り組んでいた事業に、統一協会が巧妙に入っていたことが残念。非常に悔しい思いがある」と話しています