2022年9月20日火曜日

徹底追及 統一協会 信者2世編 Ⅱ(上)/09年以降も計8億円の被害

 シリーズ「徹底追及 統一協会 信者2世 」が始まりました。
 冠木 結心(かぶらぎ けいこ)さんは親孝行のつもりで入信しましたが、一軒家で約30人の信者と暮らす(そこから出勤)うちに21日間の修練会に行くことが決まりやむなく退職しました。
 統一協会が選んだ結婚相手は年下の韓国人で夫は家にお金も入れず、毎日のように飲みに出かけ殴る蹴るなどの暴力をふるうこともありました。親や協会の幹部に相談しても埒が明かないので最終的に自分で覚悟を決め離婚を告げると、夫は養育費を支払わないことを条件にした上、家中の金目になるものを奪い姿を消しました。
 
 それとは別に、統一協会は09年以後 壺などの販売はやめたようですが、その分献金による収奪が過酷になり、相談を受けた分だけで被害総額は16年までに計8億円に達しています。最も額が大きかったのは90年に入信した女性で、09年以降だけで1240万円を支払っていました。
 またSmartFLASHは、入信3カ月間ビデオセンターに通い、さらに4日間の合宿に参加したあと、“マイクロ隊” の一員として北海道に送りこまれたAさんの体験談を報じました。
 マイクロ隊とはマイクロバス隊の意味で、東京からワンボックスカー2台に16人が分乗し、その中で寝泊まりしながら北海道でハンカチなどの訪問販売を1カ月間やりました。
 現在Aさんは脱会し、元信者の救済活動に従事しているということです
 3つの記事を紹介します。
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徹底追及 統一協会 信者2世編Ⅱ(上)
  洗脳され集団結婚 14万円で買われた 〝どんな相手でも甘受せよ″
        作家 冠木 結心(かぶらぎけいこ)さん
                    しんぶん赤旗 2022年9月19日
 1992年、高校のテスト休み中で家にいた作家の冠木結心さんは、のワイドショーを見て愕然(がくぜん)としました。東京ドームの映像と「宗教団体の大会が行われているもようです」との声が流れたからです。東京ドームはその日、母親が「集会がある」と出かけた場所でした。統一協会(世界平和統一家庭連合)の大会だったのです。

「親孝行」で入信
 良心の仲が悪く、母親は、仏教の一派を名乗る天地正教にはまっていきました数万円する数珠や大理石の弥勒菩薩(みろくばさつ)を買うことも。実は天地正教は、統一協会のダミー団体でした。
 「母親は仏教を信じていたと思っていました」と冠木さん。母親は天地正教から統一協会へのみ込まれていきます。
 母親は、冠木さんを統一協会に勧誘するようになります当時、統一協会に関する報道が盛んでした。ただ生き生きとしていぐように見えた母親の誘いを断ることはできません。親孝行のつもりで入信しました。
 会社員になってから、母親は冠木さんに「献身」出家をすすめました。
 「身も心も全て神にささげるというもので、ホームと呼ばれる一軒家で約30人の信者と暮らしました。圧倒的に女性が多かったです」
 夜中まで抗議を受け15畳ほどの部屋に雑魚寝。朝5時に起きて祈祷(きとう)し、勤務先ヘ向かう生活を送りました。
 ある日、21日間の修練会に行くことが決まります。長期間仕事を休むわけにはいかず、やむなく退職することに。
 修練会では四六時中講義を聞かされます。深く洗脳され、集団結婚を決めました。

殴る蹴るの暴行
 統一協会が選んだ結婚相手は、年下の韓国人でした。
 教義をまとめた『原理講論』の教えでは日本は韓国に奉仕する「エバ国家」です。日本人にとって韓国人とつながれることは光栄なことで、「どんな男性でも甘受しろ」と教えちれました。
 当時、集団結婚のために統一協会に、日本人は140万円、韓国人は140万ウォン(約14万円)を払う仕組みでした。
 「韓国では『日本人と結婚できる』と宣伝され仰心がない人が集まりました。『14万円で嫁を買う』という感覚なのだと思います。まるで人身売買です」    {
 言葉が全く通じない状況で家庭生活が始まりました。夫は家にお金も入れず、毎日のように飲みに出かけました。怒鳴りつけることや、殴る蹴るなどの暴力をふるうことも。
 出産を機に離婚を決意。「子どもに暴カガふるわれるかもしれないということが一番怖かったです」
 それでも統一協会は「離婚はサタンが喜ぶ」と脅します。やっとの思いで親に切り出しましたが、専門機関ではなく、統一協会の教区長に相談することに。教区長は「うまく彼を立てれば大丈夫」と夫の肩を持ちました。
 失望した冠木さんは、覚悟を決め、離婚を告げました。夫は養育費を支払わないことを条件にした上、家中の金目になるものを奪い、姿を消しました (つづく)
                                (統一協会取材班)

統一協会被害 09年以降も計8億円 「法令順守徹底」主張後
                       しんぶん赤旗 2022年9月19日
 統一協会(世界平和統一家庭連合)が「コンプライアンス(法令順守)を徹底した」と主張している2009年の後も被害が続いており、相談があっただけで少なくとも16年までに64件、金額で計7億9150万円に上ることが、全国霊感商法対策弁護士連絡会の集計でわかりました。(統一協会取材班)
 同会が16日に都内で開いた全国集会で明らかにしました。
 それによると、09年以降に被害があったケースの被害者の入信時期は1976年から16年。09年以降に入信したケースも12件ありました。最も額が大きかったのは90年に入信した女性で、09年以降だけで1億240万円を支払っていました09年以降に入信した被害者も、12万~1630万円を支払っています
 統一協会の霊感商法をめぐっては09年、社長以下全従業員が信者の印鑑販売会社「新世」(東京都渋谷区)を警視庁が捜索し、東京地裁が社長に特定商取引法違反の罪で懲役2年、罰金300万円、執行猶予4年を言い渡しました。法人としての新世も罰金800万円とし、判決は確定しました。
 これを受けて統一協会はコンプライアンスを宣言。田中富広会長は今年8月の会見で「09年以降、当法人は社会的法的に問題と指摘される行為をしないようコンプライアンスの徹底に努めている」と主張していました。
 統一協会は勧誘・伝道の際、宗教団体であることを伏せて教義を教え込むため「正体隠しの伝道」として批判を受けてきました。これについても田中会長は会見で「09年以降、当初から協会名を名乗るよう指導を徹底してきた」と強調しました。
 しかし全国弁連の調査によると、09年以降の「入信契機」には「正体を隠し自宅訪問」「正体を隠したアンケート」などが多数あります。全国弁連の川井康雄事務局長は「統一協会の説明が虚偽なのは明らかだ」と語りました。


旧統一教会、元 “マイクロ隊員” が明かす訪問販売の手口「狙い目は独居老人、ときには歌をうたって親近感を」
                        SmartFLASH   2022/09/19
「私は、街頭で『月2500円で映画を見ながら人生を語りませんか』と誘われたことがきっかけで入信しました。その後、3カ月間ビデオセンターに通い、さらに4日間の合宿に参加したあと、“マイクロ隊” の一員として北海道に送りこまれました」
こう語るのは、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)元信者の男性Aさんだ。Aさんは1990年代前半、19歳で入信。同時に、10~20代の若い信者がグループになって訪問販売をおこなう“マイクロ隊”に加わり、3年間活動した後に脱会した。「マイクロ」とはマイクロバスの略称で、実際は、ハイエースなどのワンボックスカーのことである。
北海道大学の櫻井義秀教授と大阪公立大の中西尋子研究員の共著『統一教会』によると、教団は創設期に資金調達活動としておこなっていた花売りの延長で、珍味や茶、コーヒー、ハンカチなどを売り始めた。“マイクロ隊”の活動は1980~90年代にもっとも盛んだったが、現在でも商品を変えて地方で続けられているという。
“マイクロ隊” とは具体的にどのような活動をしているのか。Aさんがビジネスの実態を明かす。
東京からワンボックスカー2台に16人が分乗し、北海道でハンカチの訪問販売を1カ月間やりました。両親には自転車で北海道旅行をしているとウソをつきました。3カ月間の研修のときも家出状態でしたが、両親はまだ統一教会の実態などを知らなかったので、とくに心配していませんでした」
車は日産の「キャラバン」で、レンタカーだった。
「運転手はリーダー格の男性。運転席以外、後部座席は全部取っ払って床にコンパネを敷き、1台に8人が寝起きしました。全員布団で互い違いに寝ました。つまり、私の頭のそばに隣の信者の足があるといった状態。だからときおり、足で顔を蹴られることもありました」
異性とは目も合わせられないという。
「たとえば、私が女性の布団に寄りかかったりすると、たちまちリーダーに『バカヤロー』とぶん殴られるんです。これは女性がやった場合も同じ。また、異性と会話するときは相手と視線を合わせてはダメ。顔をあさってのほうに向けて話すから、会話にならない。もちろん体に手が触れるなんて、とんでもない。だから、車内では両手を腰の後ろに回した状態で乗っているんです」
公園の空き地に駐車して寝起きするため、隊員は朝5時に起床して公園の水道で洗面。6時に結団式をおこない、車で移動する。
「結団式とは、全員が今日の売り上げ目標を声高に宣言することです。このとき、低い金額を言ったりすると、リーダーから『そんなカネで家族が生活できると思うか』と怒鳴られる。だから、ムリとわかっても20万円、30万円などと高い金額を叫ぶんです」
午前7時、目的地に到着すると信者たちは車から降ろされ、いよいよ販売がスタート。単独行動で、それぞれ受け持ちエリアに散ってゆく。
「このとき、リーダーからコピーされた地図がめいめいに渡されます。地図には自分が訪問販売するエリアだけ載っているので、仲間のことはわかりません。ハンカチは3枚セットで3000円。ちょっと高いですが、じつは相手を口説くときの “殺し文句” があるんです。『収益金の一部は世界の恵まれない子供たちのために寄付されます』といって、領収書のコピーをチラ見せして、相手を信用させるんです。金額にかかわらず、福祉施設に寄付すれば領収書は発行されますからね」
Aさんによると、売りやすい相手とそうでない相手がいると言う。
「売りやすいのは、話にのりやすいタイプの人です。典型は一人暮らしの高齢者。『おばぁーちゃん(おじぃーちゃん)、元気で長生きしようね』とやさしい言葉をかけたり、ときには歌をうたって親しみを持たせて売るんです。
売りにくいのは、買うのか買わないのかはっきり言わず、説明だけ長々とさせる人。それに『統一教会お断り』と、玄関のドアをピシャリと閉めてしまう人。この2つです」
ノルマは1日売り上げ3万円以上。これがあるから、押し売りまがいにならざるを得ないという。
「公衆電話からリーダーに1時間ごとに連絡する義務もあり、その時点の達成金額が少なければまた怒鳴られる。それでいて給料はゼロ。無料奉仕です。昼食は出ますが、コンビニ弁当でした。また1週間に1度、地区長らしき幹部が飛行機で北海道までやってきて、売上金をすべて持ち帰るんです。銀行振込など金融機関を利用しないところを見て、知られてはまずいのかと思いました」
こうして夜の8時まで売り歩く。だが、車に戻ってからも受難は続く。
「反省会と称する時間があり、売り上げが少ないと自分を責め立てるよう仕向けられ、明日こそはと、決心を新たにさせられます。就寝は深夜になることもしばしばでした。それでも訪問販売がいやだ、やめたいとは思いません。むしろ厳しいからこそ、かえって世界平和のためになると信じて疑わないんです。これが “洗脳” の恐ろしいところです」
マイクロ隊は、部隊ごとに販売商品が決められている。Aさんはハンカチだったが、そのほかにボールペン、健康食品、珍味、化学ぞうきんなどが売られているという。

現在、Aさんは脱会し、元信者の救済活動に従事している。
「足を骨折し、しばらく活動を離れたのが脱会のきっかけでした。この間に聖書をじっくり読み直し、既存のキリスト教団と統一教会の違いなどを冷静に考えるなかでようやく気づいたんです。宗教とは、本来、人々の幸福を願うもの。ところが統一教会は人々に不安や不幸を煽るんです」
脱会にあたり、「サタンに呪われるぞ」「地獄に落ちろ」などとさまざまな脅迫に加え、暴力まで受けたが、それでも屈せず、教団から逃れることに成功したという。
                             取材・文/岡村青