19日の「平和を考える集い」には田中淳哉弁護士(上越中央法律事務所代表弁護士)に
お出で頂き、
「攻められたらどうするのか? という素朴な疑問について考えるうえで踏まえておくべき基本的な事柄について」
というやや長い演目で講演していただきました。
田中弁護士は5月9日と5月11日に同名のブログの前編と後編を発表されたので、それについての講演を「湯の町湯沢平和の輪」がお願いして実現の運びとなったものです。
田中弁護士には参加者宛にレジュメの他、A4判21ページのパワーポイント縮小画像集をご準備頂きました(1ページに画像4コマで計84コマ)。
会には近隣の9条の会の方々にもご参加頂いて17名の集いとなりました。
以下に、レジュメに青字で「メモ書き」を追記した形のものを紹介させていただきます。
講演内容の詳細は田中弁護士の下記のブログ
・「攻められたらどうするのか」という素朴な疑問について考えるうえで踏まえておくべき基本的な事柄(前編)
・「攻められたらどうするのか」という素朴な疑問について考えるうえで踏まえておくべき基本的な事柄(後編)
・どうすれば「戦争の時代」を防げるか~人類が憲法9条を手にした意味
を参照ください。
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「攻められたらどうするのか?」という素朴な疑問について考えるうえで
踏まえておくべき基本的な事柄について
20220918 弁護士 田中淳哉
(青字個所は事務局がレジュメに追記しました)
1 はじめに
・世論調査では
「防衛費増やすべきだ」 FNN 62% 毎日新聞 76% 読売新聞 72%
2 「攻められたらどうするのか?」という問いに潜む誤解
本気で攻められたら終りの現状
(資源小国・貿易立国)
・日本の食料自給率 39%(カロリーベース)
・日本の貿易相手国 輸出先1位 中国22% 輸入先1位 中国25・8%
繊維製品の輸入先 中国63%
・輸出入はほぼ100%海上輸送
(無防備な原発)
・日本海海岸に原発を多数設置
3 日本が採用する防衛政策の基本方針(抑止力)
(1)抑止力とは何か
拒否的抑止 懲罰的抑止 拡大抑止
日本はこれまで拒否的抑止を採用してきた 懲罰的抑止は米国の拡大抑止に依存
しかし抑止力は不確実で不安定 防衛力の増強は安全保障のジレンマを伴う
(2)「敵基地攻撃論」が出てきた背景
ア 「敵基地攻撃論」とは
敵基地攻撃は膨大な監視システムを必要とし現実的でない
攻撃は基地に限定されず敵地への侵入を伴うので憲法上許されない
イ きっかけはミサイル防衛の破綻
超音速ミサイルの登場で従来のミサイル迎撃システムによる防衛が無力化した
ウ アメリカの戦略の変化
ミサイル射程の長距離化によって対中国戦勃発時に米軍が一旦グアムに退避してか
ら反撃に移るという構想が無意味化した
4 それでうまくいくか
(1) 抑止力は不確実・不安定
抑止されるかどうかは相手国の受け止め方次第で 合理的に判断するとは限らない
(2) 抑止力の弊害
ア お金がかかり過ぎる
衛星衛星で完璧に世界全域を監視するには1000基超を要する
米国からの武器輸入はFMS方式で米国の言い値で買うしかない
イ 軍拡競争(安全保障のジレンマ)
他の軍備と同様にここでも軍拡競争が行われる
(3) 巻き込まれの危険(同盟のジレンマ)
米国との関係を緊密化すれば事ごとに巻き込まれることになり、距離を置けば万一
の際に見放される懸念
(4) もちろん憲法にも違反する
ア 保有することの問題
過去において政府が敵基地攻撃論を合憲と言明したというのは部分的解釈の誤り
攻撃型兵器の保有は違憲
イ 実行することの問題
海外派兵は自衛のための必要最小限度を超える(1969.12.29政府答弁書)
5 それに代わる方法は?
(1)国際法秩序の維持・強化
国連憲章は一切の戦争は違法 国家の安全は基本的には集団安全保障による
国際人道法は攻撃対象を軍事目標に限定し害敵手段を制限
2つの国連総会決議(22年3月.)
(2)地域安全保障をつくりあげる
東南アジア諸国連合による「ASEANインド太平洋構想」は優れている
(3)軍縮条約をつくり、広げる
核兵器禁止条約加盟国の拡大 INF条約の復活と拡大が重要
ヨーロッパ全土を反核世論が覆っている
6 憲法9条の意味
(1)2つのアプローチの共通点と相違点
国連憲章が謳う集団安全保障を何で確保するかについて 集団的自衛権によるかまた
は地域安全保障によるかについて、前者では軍縮や紛争の平和的解決は進みにくいの
に対して、後者はそれらの具体的方策を突き詰めていける
(2)憲法9条の意義と役割
パキスタンやアフガニスタンで医療活動や復興支援活動に尽力した中村哲医師は、憲法
9条が活動を支えるリアルで大きな力だったとして要旨次のように語っている
「武器など絶対に使用しないで、平和を具現化する。それが具体的な形として存在して
いるのが平和憲法9条ですよ。それを現地の人たちも分かってくれているんです。
だから、政府側も反政府側も、タリバンだって我々には手を出さない。むしろ、守っ
てくれているんです」
(3)憲法9条を、変えさせない十守らせる
戦後憲法9条に基づき「軍事」に対する統制機能を果たしてきた諸原則が次々に変更
/緩和され、それがさらにまた変更・解禁されようとしている
憲法9条を変えさせないとともにキチンと守らせることが重要
7 おわりに
直近の課題は3文書改定と軍拡予算
政府は22年末にいわゆる防衛関連3文書(国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛
力整備計画)の改定を目指している 23年度の防衛省予算は、100項目以上にわたると
言われている「事項要求」を別枠とした上で 5兆5947億円を要求している
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。