2022年9月12日月曜日

岸田首相「聞く力」裏目に 国葬問題で押し切られ/最後は菅氏に頼る

 いま岸田首相は安倍氏の国葬をどうするかで進退が極まっているようですが、国葬を決めた当事者なのですから自分で始末をつけるしかありません。

 6日付のSmartFLASHによると、当初は内閣と自民党の合同葬という形で進んでいたようなのですが、麻生副総裁がこれに反対し、岸田首相に3回も電話し最後には「これは理屈じゃねえんだよ」と強い口調で説得したということです。
 10日付のFRIDAYはそのことに触れる記事と、岸田首相が「国葬は麻生さんが言い出したことだと一部メディアが書いているが、そうじゃない。安倍元首相が亡くなったと聞いたその瞬間、俺が、国葬と決めた。…浅慮だった」と、議員仲間や新聞記者に対し麻生氏の関与を否定したことを伝える2つの記事を出しました。
 岸田氏が「敢えて」麻生氏の働きかけを否定したように受け取れますが、真相はどうなのでしょうか。FRIDAYデジタルの2つの記事を紹介します。
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岸田文雄首相「聞く力」が裏目に…統一教会&国葬問題で押し切られ
                    FRIDAYデジタル 2022年09月10日
「聞く力」をアピールする岸田文雄首相だが…
自民党の岸田文雄首相が持ち前の“聞く力”を存分に発揮し、いいようにやられてしまっている。
自民党は9月8日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と党所属国会議員の関係をめぐる「点検」結果を公表した。自民党の衆参国会議員379名のうち、濃淡はともかく接点のあった議員の数は179名。そのうち、会合への出席や資金のやりとり、選挙支援などがあった議員は121名で、氏名が公表された。
茂木敏充幹事長は会見で
「今回、氏名を公表した議員本人が出席をし、あいさつをしたケースでも、大半の議員は当時、旧統一教会の関連団体であると認識はなかったと話している」
と説明したが、野党の立憲民主党・安住淳国対委員長は
「世間に向けてやってます感を出すだけのことで、本当の真実ではないというふうに断ぜざるを得ない」と断罪。
国民からも 《全員の氏名公表を》《結果は不十分》という声が相次いでいる。
岸田首相は当初、濃淡に関わらず接点のあった議員全員の氏名を発表し、関わりの深い案件については人数で公表する構えだったという。政界関係者によると
「旧統一教会問題が出てきてから内閣支持率は右肩下がり。向こう3年間、選挙がないといっても岸田首相は危機感をあらわにしていた。
国民が納得する形で、旧統一教会との関係を清算しないことには前に進めない。岸田首相も教団との接点があるが、自身の名前も公表し、謝罪した上で幕引きを図ろうと考えていた
という。ところが、これに猛反対したのが茂木幹事長だったという。時事通信によると、茂木氏らは議員名の公表は関わりの深かった数十人程度にとどめるべきだと訴えて譲らなかったという。岸田首相は
「一部でも議員名を伏せれば、国民の理解を得られない」
と主張したが、結局、茂木氏らに押し切られる形で121人の名前を公表する“玉虫色”の決着となったと報じている。
「岸田首相の“聞く力”がブレブレで、聞いているうちに丸め込まれてしまう。調査結果に対しては、案の定、国民から反発の声が上がっている。教団関連の会合に出席した細田博之衆院議長らは会派離脱中という理由で対象に含めず、亡くなった安倍晋三元首相や地方議員も調査の対象外。幕引きどころか、疑惑は一層深まってしまった」(野党関係者)

岸田首相の“聞く力”は安倍元首相の国葬でも発揮された。
世論調査で国葬反対が賛成を上回る中、振り上げた拳を下ろせない状況に陥っている。実はここでも岸田首相は当初、国葬ではなく、内閣と自民党の“合同葬”を模索していたのだという。
これに「待った」をかけたのが、安倍元首相の盟友である麻生太郎副総裁。岸田首相に3回電話し、最後は
「これは理屈じゃねぇんだよ!」
とまくし立てたという。直後に岸田首相は国葬実施を決めた。
ここでも麻生さんに押し切られた。岸田首相は『検討中』という言葉を乱発することから“検討士”と揶揄されていますが、自分の信念がないんですよね。あったとしても、“聞く力”で簡単に翻ってしまう。一連の出来事で一国の首相として頼りなさを感じた人も多いのではないでしょうか」(全国紙記者)
前出の調査結果で言えば、関わりが薄いと判断され氏名非公表となった議員の中に、これまで1度も報じられていない大物議員がしれっとカウントされているという。早速、メディアが動いており、公になるのは時間の問題だ。
岸田首相は新たな難題を突き付けられることになりそうだ…。


「俺が決めた」国葬失敗で窮地の岸田政権が頼った「大物議員」の名
                     FRIDAYデジタル 2022年09月10日
「なにもしない」首相が「してしまった」大失態の耐えられない重さ
「国葬は俺が決めた」岸田首相は、そう明言した。発足から1年。内閣初の最大のピンチは「なにもしない」首相が「なにかしようとした」ことから始まった… 
安倍晋三元首相が銃撃され亡くなってから2か月が経った。理不尽な死を悼む声とは別に、安倍氏の「国葬」については疑問の声が噴出。岸田文雄政権にとって初めての大きな「逆風」になっている。
「国葬は麻生さんが言い出したことだと一部メディアが書いているが、そうじゃない。安倍元首相が亡くなったと聞いたその瞬間、俺が、国葬と決めた。…浅慮だった」
岸田首相は、議員仲間や新聞記者に対し、はっきりそう言った。

国会で「説明」された「国葬の理由」
その岸田首相が8日の衆参両院の議員運営委員会、閉会中審査でようやく、国葬を決めた理由を説明した。
「憲政133年の歴史の中でもっとも長い政権を担い、外交展開は大きな実績があった。海外からの弔意は日本国民にも向けられていることから、国として礼節をもって応じるべきと判断し国葬儀を閣議決定した」
これに対し法的根拠を問われ、
「国葬の基準法はないので、内閣府設置法で閣議決定した」
と答えた。また、大きな問題となっている統一教会と安倍元首相の関係については、
「お亡くなりになった今、実態を十分に把握することは限界がある」
「丁寧に説明していかなければならない、個々に点検、説明責任をしっかり果たしていく」
と、苦し紛れの答弁を繰り返した。野党は当然猛反発。世論もさらにヒートアップしている。

自民党北海道議の道見泰憲氏のツイート「賛成してくれという野暮はいわない。もう黙ってろ」は、岸田首相と周辺の「本音」かもしれない。
「しかしこれでは『いくらかかるかわからないけど盛大な葬式をしたいのでその費用は出してもらいたい』…おもちゃを欲しがる子どもが泣いて駄々をこねる言い草にしか聞こえませんね」(全国紙政治部記者)
維新、国民民主党は、国葬への参列を表明した。判断を留保しているのは立憲。憲法の精神に反するとして欠席を決めたのは共産党。れいわ新選組、社民党も欠席を明言した。地方のある首長は困惑しこう話す。
「国葬には反対です。が、内閣府国葬実行委員会から『国葬案内』が届いたので、参列することは決めました。でもね、ケチで言うんじゃないですが、行くにあたって交通費は公費なのか、私費なのか迷います。国葬というんだから、とりあえず公費だろうと判断しました。しかし、後になって議会で、共産党などから交通費返還請求があるかもしれない。こういう事態になって、亡くなった安倍さんはどう思うだろうか。ご遺族にとっても、いたたまれない嫌なお気持ちになっているんじゃないかと思う」
感情論先行の国葬決定は、地方行政にも波及し、混乱を招いているのだ。
岸田首相が、国会閉会中審査への出席を決める直前、内閣支持率が大きく下落した。さらに自身のコロナ感染もあり、情緒が乱れていたと官邸スタッフが語った。
「総理は今夏、参院選挙に勝てば政権は安泰などとは微塵も思っていませんでした。目の前のコロナ新規感染者急増、円安や物価高、エネルギー政策の180度転換など問題山積だったからです。そこに、安倍元首相の急死、国葬そして統一教会問題が襲ってきて、ついに、国葬について『俺の判断が早すぎた』と吐露しました」
自らの論理破綻に苛まれ、自尊心は傷ついた。岸田首相の「為政者のプライド」はズタズタとなっている。「政権崩壊は時間の問題」(関係者)という精神状況に追い込まれているという。
さらに五輪汚職がいよいよ本丸へ、森喜朗元首相が参考人聴取を受けている。政権初の最大の危機だ。

虚な目はどこを見ているのか
「岸田氏がもっとも頼りにする最側近の、木原誠二官房副長官、村井英樹首相補佐官、嶋田隆首相秘書官が機能していません。彼らから局面打開のアイデアがまったく出てこない。この3人は政策推進には頼もしい反面、政治のなんたるかを知らない。安倍政権には、役所を辞めて駆けつけた今井尚哉秘書官のような絶対的な側近がいた。岸田首相にはそのような人材がいない。だから結局、そのあたりに強い菅義偉元首相に頼らざるを得ない。議員会館の菅事務所にわざわざ足を運んで話し込んでいます」(岸田周辺議員)
反対を押し切って決行する「国葬」では、菅元首相に友人代表として弔辞を願ったという。菅元首相は二つ返事で快諾した。
「菅さんに友人代表を強く願ったのは安倍昭恵さんでした。今井内閣官房参与と昭恵未亡人が安倍政権を振り返った時に、一番に出た名前が『菅官房長官』だったのです」(自民党幹部)
岸田政権が発足して1年。勇足のように走り出してしまった「国葬」は、「なにもしない」ことで政権を安全運転してきた岸田首相にとって大きな失策になってしまった。
「首相は、政権が危険水域に入ったことを自覚しているようだ」(岸田周辺議員)
今、岸田首相の目は、議論の相手を正視することができない弱々しさだ。
取材・文:岩城周太郎