15日、全日本教職員組合(全教)、教組共闘連絡会など4団体の主催で安倍元首相の「国葬」に反対する緊急抗議集会が行われ、学校現場で半旗の掲揚など「子どもと学校に、弔意を押し付けるな」とアピールしました。
全教の宮下直樹委員長は、「国葬を実施することが弔意の強制そのもの、安倍元首相が行ってきた政治を国家として評価するメッセージにもなる」と指摘し、和光大学教授の山本由美さんは、「憲法違反である「国葬」をなぜするのか、子どもたちに説明できない」と述べました。しんぶん赤旗が報じました。
同紙は「『国葬』は憲法違反 くっきり」とする記事を出しましたので併せて紹介します。
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子どもに「弔意」強制するな 「国葬」反対 教育関係者が国会前抗議
しんぶん赤旗 2022年9月16日
安倍元首相の「国葬」に反対して15日、教育関係者が衆院第2議員会館前で緊急抗議を行いました。学校現場で半旗の掲揚など「子どもと学校に、弔意を押し付けるな」とアピールしました。
全日本教職員組合(全教)の宮下直樹委員長が主催者あいさつし、政府は自治体や教育委員会などに弔意の表明を要望しないとしているが、「国葬を実施することが弔意の強制そのものです。安倍元首相が行ってきた政治を、国家として評価するメッセージにもなる」と指摘。「国葬」中止と同時に、弔意の強制は許さないと声をあげていこうと述べました。
東京都教職員組合書記長の尾賀弘美さんは、国政の私物化や教育基本法の改悪などの悪政を続けた安倍元首相を、「一人の教員として許すことはできません。子どもたちに弔意を押し付ける国葬は反対だと声をあげ続けます」と語りました。
和光大学教授の山本由美さん(民主教育研究所副代表)は、憲法違反である「国葬」をなぜするのか、子どもたちに説明できないと述べ、「教育にかかわるものとして国葬に反対」と訴えました。
日本共産党の吉良よし子参院議員は、多額の税金を使い、国民に弔意を押し付ける憲法違反の「国葬」は中止しかないと述べ、「ご一緒に声をあげていきましょう」と語りました。
抗議は、全教や教組共闘連絡会など4団体が呼びかけました。
「国葬」は憲法違反 くっきり
しんぶん赤旗 2022年9月16日
岸田文雄首相は、国民多数が反対する安倍晋三元首相の「国葬」を、27日にあくまでも強行しようとしています。しかし、この間の岸田政権の対応や発言を通して、「国葬」の強行が憲法違反であることが、いよいよ明瞭になっています。日本共産党の志位和夫委員長が声明「憲法違反の『国葬』を中止せよ」(1日)で指摘した二つの憲法違反について、改めて見てみます。(中祖寅一)
14条「法の下の平等」違反
特別扱い 根拠示せず
憲法違反の第1は、憲法14条が規定する「法の下の平等」に反することです。
14条は「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と定めています。
個人の人格価値はそれぞれ至高のもので、人は自由を侵害されないと同時に不当な差別を受けないことが、個人の尊厳にとって決定的に重要であることを定めた規定です。
ここでの差別の禁止は、「合理的理由」のない差別を禁止するものと理解されています。政府が閣議決定で、安倍氏の「国葬」を行い、同氏を特別扱いし、広く一般国民と差別的に扱うことに「合理的理由」はあるでしょうか。特に葬儀は、故人の尊厳に極めて重要な意義を持つものです。その合理性は厳格に検討されなければなりません。
主観的評価
岸田首相は「国葬」開催を表明した7月14日の記者会見で、「国葬」とする理由を4点あげました。(1)安倍氏が憲政史上最長の8年8カ月にわたり内閣総理大臣の重責を担ったこと (2)東日本大震災からの復興、日本経済の再生、日米関係を基軸とした外交の展開等の大きな実績をさまざまな分野で残したこと (3)国際社会から極めて高い評価を受けていること (4)民主主義の根幹たる選挙が行われている中、突然の蛮行による死であること―です。
しかし、この4点とも「国葬」を行う「合理的理由」にはなりえません。首相の地位に最も長くいたというだけで、その実績を抜きに全国民的な追悼の対象とする合理性があるとはいえません。その政治業績をめぐっては、安保法制=戦争法強行による立憲主義破壊の問題に加え、森友学園・加計学園問題や「桜を見る会」など政治の私物化も噴出しました。「誠に素晴らしい」というのは岸田政権の主観的評価にすぎません。
政治的意図
これらの問題について、8日に行われた衆参議院運営委員会での閉会中審査で岸田首相は、同じ答弁を繰り返すだけで、合理的な説明はできませんでした。直後の世論調査でも、「国葬」開催についての政府の説明に「納得できない」が6割を超え、内閣支持率も下落を続けています。
もともと「国葬」は、身分が平等ではなかった戦前の天皇主権の体制のもとで、「国家に偉勲ある」ものに対し天皇から「賜る」ものでした。日本国憲法の人格価値の平等原則の下で、「国葬」を合理化すること自体困難です。
にもかかわらず、なぜ「国葬」か。結局、そこには政権の「隠された意図」、すなわち安倍氏の「国葬」で「安倍政治」を美化し、「安倍政治の継承」を掲げる自らの政権基盤を強化しようという政治的意図があると言わざるを得ません。
19条「思想・良心の自由」違反
同調迫り弔意を強制
第2は、憲法19条が定める「思想及び良心の自由」に反することです。
岸田首相は8月31日の記者会見で、「国民に弔意を強制するものではない」と述べましたが、同10日には「国葬」は「故人に対する敬意と弔意を国全体としてあらわす儀式だ」と述べています。
仁比氏追及
9月8日の閉会中審査で、日本共産党の仁比聡平参院議員は「『国全体』に『国民』は入るのか」と追及。岸田首相は問いには答えず、「国民一人ひとりに喪に服することを求めるというものではない」「国葬儀の実施によって内心の自由が侵害されることはない」などと繰り返すばかりでした。
仁比氏は「国民主権の日本で、国民が入らない『国全体』なんてあり得ない。事実上、あれこれの形で弔意を強要することになる」として思想・良心の自由に反すると批判しました。
そもそも「弔意を持つか持たないか」は純粋に内心の事柄で、本来、規制の対象にはなり得ません。内心の自由の侵害は直ちに重大な違憲の問題を生じさせます。現に政府は、岸田首相が「葬儀委員長」として、「国葬」当日に「哀悼の意を表するため、各府省においては弔旗を掲揚するとともに、葬儀中の一定時刻に黙とうすることとする」と決定しています(8月31日)。これは「各府省」とそこで働く労働者に「弔意」を強制するもので、内心の自由を侵害します。
また、仮に国がそれを直接強制せずとも、「国全体として弔意をあらわす儀式」だと政府が喧伝(けんでん)するもとで、社会全体として事実上の弔意の強制が起こることになります。日本武道館に国会議員、地方自治体の首長など6000人もの参列者を集め、「国葬」として大々的に儀式を行うことが、日本社会全体に同調を迫り、安倍氏への「弔意」を事実上強制する重大な危険を持つことは明らかです。
世論を誘導
また、日本国憲法が信教の自由(20条)、学問の自由(23条)、そして表現の自由(21条)を厳格に保障しつつ、さらに19条で「思想及び良心の自由」を保障した背景には、戦前の天皇制政府が個人の内面そのものを支配・統制し、軍国主義に駆り立てた歴史的経緯があります。
今回の「国葬」をめぐっては、まさに「安倍政治」の礼賛という政治的害悪にとどまらない、大規模な国民の世論誘導という形での内心の操作の危険があり、このような行為こそ憲法19条が絶対に許さないとしているものなのです。
このように憲法違反が明白な「国葬」を、国民多数の反対の声を封じて強行することは、絶対に許されません。いまからでも中止すべきです。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。