防衛省が23年度予算として、過去最大の5兆5947億円の概算要求を決めました。その他に金額を示さない「事項要求」が多数あるので、年末に最終決定する軍事費は6兆円台半ばに達すると見込まれています。戦争を放棄した日本においてあり得ない金額ですが、自民政権は少なくとも今後5年間は軍事費が11兆円レベルに達するまで年々増額させる方針です。それだけ軍事費に予算を割けばその分民生費が削られるのは明らかで、国はいまやらなければならないことと真逆のことを目指しています。
しんぶん赤旗が「軍事費の概算要求 平和と生活壊す大軍拡許すな」という主張を掲げました。
併せて同紙の記事「大企業内部留保17・5兆円増 賃金は横ばいなのに…」を紹介します。
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【主張】軍事費の概算要求 平和と生活壊す大軍拡許すな
しんぶん赤旗 2022年9月2日
防衛省が2023年度予算(軍事費)の概算要求を決めました。過去最大の5兆5947億円を計上したのに加え、金額を示さない「事項要求」を多数盛り込み、年末に最終決定する軍事費は6兆円台半ばに達するとも見込まれています。ロシアのウクライナ侵略に乗じ、中国への軍事的対抗姿勢をあらわに、戦後かつてない大軍拡に乗り出そうとするものです。これを許せば東アジアの軍事緊張はいっそう激化し、コロナ禍や物価高に苦しむ国民の暮らし関連予算が押しつぶされるのは明白です。
首相の対米誓約に基づく
防衛省の要求は、中国との軍事対決を強める米国に追随した岸田文雄政権の誓約に基づきます。
同省が8月31日に公表した概算要求の資料は▽岸田首相が5月のバイデン米大統領との会談で「防衛費の相当な増額を確保する決意を表明」したこと ▽岸田政権が6月に決定した経済財政運営方針(骨太方針)が、北大西洋条約機構(NATO)諸国が国防予算の目標を国内総生産(GDP)比2%以上にしているのも踏まえ、「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」と明記したこと ―を紹介しています。日本の場合、GDP比2%は約11兆円になります。
「事項要求」は、「防衛力の5年以内の抜本的強化」のためと位置付けられています。具体的な額は、岸田政権が年末に改定する「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」など安保関連3文書を踏まえ、予算編成の中で確定されることになります。
重大なのは、安保関連3文書の改定に向けた作業の中で必要性を検討するとしている「敵基地攻撃能力」の保有が、長射程ミサイルの量産化などの形で既成事実にされていることです。
長射程ミサイルは、▽中国本土にまで届く飛距離1000キロの「12式地対艦誘導弾能力向上型」(地上発射型)の量産 ▽変則軌道を描く「島しょ防衛用高速滑空弾」(早期装備型)の量産 ▽F35A戦闘機搭載の長射程ミサイルJSMに続き、F15戦闘機搭載の同ミサイルJASSMの取得 ▽音速の5倍以上で飛行する極超音速誘導弾の研究―などが計上されました。いずれも、相手国領域内をたたく「敵基地攻撃」に転用可能です。
計画が破綻したミサイル防衛システム「イージス・アショア」に代わる「イージス・システム搭載艦」に「12式地対艦誘導弾能力向上型」の搭載も検討します。「戦闘用無人機」の研究も進めます。
防衛省は概算要求の資料で、長射程ミサイルの能力強化などによって「わが国への侵攻そのものを抑止する」と強調しています。一方で、「万一抑止が破られた場合」として、司令部の地下化や航空基地の防護といった施策も盛り込んでいます。日本の国土が戦場になることを想定したものです。
「国が滅びる」の指摘も
元内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)の柳沢協二氏は、今回の防衛省の概算要求は「無限の軍拡ループ」を導くとし、「何としても戦争を回避する決意がなければ、軍備の重圧で国が滅びる心配がある」と述べています(「東京」1日付)。
大軍拡を許さず、憲法9条を生かした外交で東アジアに平和をつくる政治への転換を求める国民的な運動が必要です。
(中国や北朝鮮も狙える? 長射程ミサイルの「量産を開始」 防衛省23年度概算要求で過去最大5・5兆円:東京新聞 ) より抜粋 ↓ )
無限の軍拡ループに陥る<柳沢協二さんのウオッチ安全保障>
防衛省の概算要求で目に付くのは、長射程ミサイルの取得や既存のミサイルの長射程化といったミサイル戦を意識した項目だ。離島配備のミサイルの射程が延びれば、確実に中国大陸を射程に収める。「敵基地攻撃」とは、相手の本土を攻撃することだ。相手の本土を攻撃すれば、日本本土に反撃が来る。そのため、航空基地の防護策も予定されているが、国民の防護は全く考慮されていない。
過去最高額の予算要求だが、増額の大半は米国から爆買いした装備のつけ払いと、取得した装備の維持費だ。予算が増えた分だけ「強くなった」と錯覚してはいけない。極超音速兵器など今後開発すべき項目も多い。これらが実戦配備されるころには相手はもっと強くなっている。こうして、無限の軍拡ループに陥ることになる。借金まみれで少子化が進む日本がそれに耐えられるのだろうか。
概算要求では、自衛官の募集難にも触れているが、民間活用以外の抜本的対策は見当たらない。人がいないのにモノだけ増やせば、遊休装備の山ができるだけだ。国力の限界を見極め、足らざる部分を外交力で補って、何としても戦争を回避する決意がなければ、軍備の重圧で国が滅びる心配がある。
大企業内部留保17・5兆円増 賃金は横ばいなのに…
しんぶん赤旗 2022年9月2日
大企業の内部留保が500兆円に迫っています。財務省が1日発表した法人企業統計によると、大企業の内部留保は2021年度末で484・3兆円となり、前年度末と比べ17・5兆円増えました。
内部留保は、本紙が算出したもの。資本金10億円以上の大企業を対象に、利益剰余金のほか、引当金などを合計しました。算出対象となる業種には金融・保険業を含みます。なお、金融・保険業を除き、中小企業も含めた利益剰余金(狭義の内部留保)は516・5兆円でした。
コロナ禍に加え、年明け以降は円安の加速で物価が急上昇し、中小企業や国民生活は打撃を受けています。一方、輸出大企業を中心に円安の恩恵を受け、経常利益が過去最高を更新。内部留保も増加しました。
大企業の諸指標について、第2次安倍晋三政権が発足した12年度からの推移を見ると、売上高が1・02倍と横ばいにとどまる一方、配当金は2・02倍に急増。賃金は1・05倍にしか増えていません。大企業は売上高が伸びないなか、賃金を抑え込み、株主への配当金と内部留保に回している実態が示されました。
日本共産党は2月、アベノミクスで増えた内部留保に総額10兆円程度の課税を行い、税収増を財源に最低賃金引き上げに向けた中小・中堅企業支援を行うことを提起。同時に、賃上げや国内での設備投資を課税対象から控除することで、大企業での賃上げやグリーン投資を促進することを提案しています。日本共産党の内部留保課税への提案がいよいよ求められています。