2022年9月25日日曜日

トップが絶対に使ってはいけないフレーズ 岸田首相の口癖に学ぶ

 コラムニストの石原壮一郎氏がトップが絶対に使ってはいけないフレーズ」として、岸田首相の口癖・・・我々が常日頃 耳にタコが出来るほど聞かされれている・・・のいくつかを挙げました。

 まず「丁寧な説明を尽くしたい」というフレーズが挙げられ、岸田首相はそう言って閉会中審査に出席しましたが、そこで述べられた国葬挙行の理由は、すべて一旦は説明はしたものの「理由になっていない」と一蹴されたものでした。それを敢えてまた並べ立てたのですから、その虚しさは「ご丁寧にも」といわれるしかないものでした。
 最後に挙げられたのは「あらゆる選択肢を排除せず(検討していきたい)」で、それこそは岸田氏特有のセリフです。他の人たちがそんなことを口にしないのは、通常「他の選択肢」については「それなり」の判断を下して排除しているからで、敢えてそう言うのであれば、先ずあらゆる選択肢を提示してその一つひとつについての考察を説明する必要がありますが、タダの一度も聞いたことがありません。
 岸田氏は流暢な口調で「ヤル ヤル」というものの、その実「何もやらない」人であることはもう国民に知れ渡りました。そんな人間が「使ってはいけないフレーズ」を使いまくっているのでは、この国は良くなりようがありません。
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トップが絶対に使ってはいけないフレーズ 岸田首相の口癖に学ぶ
                石原壮一郎 NEWSポストセブン 2022/09/24
 リーダーの言葉は重要だ。コラムニストの石原壮一郎氏が「国葬」を機会に考えた。
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 もうすぐ、国をあげての大きなお葬式が行なわれます。故人を悼む気持ちは十分にあるつもりですが、なぜそういう形式のお葬式にしたのかは、よくわかりません。それはきっと、そういう形でやることを決めた責任者が理由や根拠を説明しようとしないから。

 そう、安倍元首相の国葬と、国のトップである岸田首相の話です。政府は「国葬」ではなく「国葬儀」と呼びたいようですが、姑息な理由の言い換えにつき合う義理はないので「国葬」でいいですよね。ともあれ賛否入り混じる騒がしい状況の中、いよいよ当日を迎えようとしています。

 勢いで決めたのか長老に恫喝されたからかはわかりませんが、国葬にすることで支持率が上がると思っていたであろう岸田首相としては、完全にアテが外れました。国葬ではなく自民党葬にするのと、反対の声のほうが多い中で国葬を執り行うのと、さてどっちが故人に対して失礼だったのでしょうか。

 就任当時から「体裁のいいことを言うだけで実際は何もしない」と言われ続けている岸田首相は、国葬の件でも本領を発揮しました。国葬について議論される国会の閉会中審査で答弁することを決めた岸田首相は、事前に「丁寧な説明を尽くしたい」と丁寧に言い続けました。

 ところが実際には、これまでの主張を丁寧に繰り返すばかり。なぜ安倍元首相を特別扱いしたのか、根拠はあるのかなどについての「丁寧な説明」はありませんでした。ま、誠実に「丁寧な説明」をしようとしたら、表には出せない事情や黒い本音が出てきそうです。きっと苦渋の決断としての丁寧な繰り返しだったのでしょう。

 国葬をめぐる対応は、岸田首相の「見習ってはいけない部分」の一例。話はコロッと変わって、たとえば中小企業の社長が「社員の親睦を深めたい。久しぶりに社内運動会をやろう」と言い出したとします。ところが、多くの社員から反対の声が上がりました。総務がアンケートを取ってみたところ、なんと大半の社員が反対という結果に。

 社長としてはそんな“世論”を無視するわけには行きません。「私から社員に丁寧な説明を尽くすとしよう」と言い出しました。社員は「説明されてもなあ」と半信半疑で聞いていたら、社長の口から出てくるのは精神論や言い訳ばかり。即座に「この社長、ダメだ」と、社員から見切りを付けられてしまうでしょう。

 岸田首相の口癖には、ほかにもトップが絶対に使ってはいけない反面教師フレーズが多々あります。「高い緊張感を持って注視していきたい」もそのひとつ。政治家の常套句ではありますが、岸田首相はひときわ頻繁に使っている印象があります。

 部下から「社長、ウチの株価が急速に値下がりしています!」と報告されて、「そりゃたいへんだ。高い緊張感を持って注視していかなけらばな」と答えているようでは、その会社に未来はありません。つまりは「何もしない」という意味。注視してもいいですけど、そのあとどんな行動を起こすかが大切です。

慎重に検討していく」「慎重に対応する」「慎重に議論を重ねる」あたりも、岸田首相が頻繁に使ってくれるおかげで、多くのトップが「これは使ってはいけない」と思い知りました。聞いている側は「具体的には何もする気はない」と言っているようにしか聞こえないし、その場を適当に切り抜けようという人をバカにした姿勢も見えます。

 国会で防衛計画やガソリン高騰への対応策を質問されたときなど、何かというと使っているのが「あらゆる選択肢を排除せず(検討していきたい)」というフレーズ。一見カッコいいのですが、とくに何も言っていません。上司やチームリーダーが会議の冒頭で「今日は、あらゆる選択肢を排除せずに検討しよう」と言ったら、確実に人望を失うでしょう。

 ふたたび国葬に話を戻します。賛成の人はさておき、反対の人は当日をどう過ごせばいいのか。同じ意見を持つ人と「あらゆる選択肢を排除せず」「慎重に議論を重ね」れば、きっと「高い緊張を持って注視」しようという話になりそうです。別の人に「どんな議論をしたの?」と尋ねられたら、「丁寧な説明を尽くし」ましょう。

 国のリーダーである岸田首相推奨の対応策なので、日本国民のひとりとして何の問題もないはず。結局は「何もしない」ということなので、賛成の人がしんみり悼んでいる邪魔をすることもなく、平穏な一日を過ごせます。