ウクライナのハリコフ州を奪還したウクライナ軍が「集団墓地」を発見したとして、埋葬されたのは民間人で、虐殺された痕跡があると盛んに報道されていますが、この集団墓地に関しては5月には、戦死したウクライナ兵の遺体をウクライナ軍が引き取らないため、ロシア軍がやむなく集団墓地に埋葬したという説明がされていて、その際の映像もアップロードされているということです。
そうであればここでも西側の有力メディアが戦時プロパガンダを展開しているということになります。櫻井ジャーナルの記事を紹介します。
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ウクライナ軍が兵士の遺体を引き取らず、露軍が集団墓地に埋葬したと5月に報道
櫻井ジャーナル 2022.09
ウクライナ北東部のハリコフ州にあるイジュムでロイターをはじめとする西側の有力メディアが戦時プロパガンダを展開している。「集団墓地」を発見したというのだが、集団墓地に関して5月に別の説明がなされていた。戦死したウクライナ兵の遺体をウクライナ軍が引き取らないため、ロシア軍がやむなく集団墓地に埋葬したというのだ。その際の映像もアップロードされている。ロシア軍に埋葬させるのはアメリカ/NATOの戦略なのかもしれない。
イジュムの件でロイターは集団墓地で掘り起こされた死体の首にロープが巻きついていたと主張、ロシア軍に殺されたことを示唆、それを西側の有力メディアは広めたのだが、数時間後にその「報道」をロイターは取り消している。最初に伝えた話で少なからぬ人びとがイメージを作り上げたので、その段階で目的は達成したとも言える。
ロイターはマリウポリの件でも偽情報を流している。この年は2014年2月のクーデター直後からネオ・ナチで編成されたアゾフ特殊作戦分遣隊(通称アゾフ大隊)に占領されていたが、ロシア軍によって解放された。
解放された住民は異口同音にネオ・ナチで編成された親衛隊の残虐な行為を告発していた。そうした告発は本ブログでも繰り返し紹介してきた。そうした住民のひとりがアゾフスタル製鉄所から脱出したナタリア・ウスマノバ。5月2日にシュピーゲル誌は3分間にわたる彼女の証言を伝えたが、すぐに削除されてしまった。証言の中で彼女は親衛隊の残虐な行為を告発、ロシアへ避難すると発言、戻るならその場所はドネツクしかないとしていた。
この証言はアメリカ/NATOやキエフ政権にとって都合が悪い事実である。その前にロイターもウスマノバの証言映像を流していたが、それは約1分間。シュピーゲル誌は映像をロイターから入手したとしているので、ロイターは編集で事実を捻じ曲げ、ロシア軍を批判しているかのように編集していたのだ。戦況が悪化してからの「大本営発表」だ。
勿論、こうしたプロパガンダを西側の有力メディアは以前から行っていた。2001年9月11日の出来事、アフガニスタンやイラクに対する先制攻撃でも偽情報が流されていたが、2011年春にリビアやシリアを攻撃した際には西側の有力メディアが伝える「報道」から事実を探し出すことが難しくなった。この時もハリウッド的な手法を使われている。
何度も引用しているが、シリアに対する侵略戦争が始まってから1年ほど後の2012年5月にシリア北部のホムスで住民が虐殺されたが、その出来事を現地で調査したメルキト東方典礼カトリック教会修道院長のフィリップ・トルニョル・クロは西側の有力メディアが事実に反する話を伝えていることに気づく。そして「もし、全ての人が真実を語るならば、シリアに平和をもたらすことができる。1年にわたる戦闘の後、西側メディアの押しつける偽情報が描く情景は地上の真実と全く違っている」と報告している。こうした状況は改善されないどころか悪化している。