2022年9月15日木曜日

統一教会と自民党との癒着 反共活動で関係深め被害拡大

 しんぶん赤旗の「焦点・論点」のコーナーに、大学内におけるカルト問題についても長年追及してきた櫻井義秀・北大大学院教授(宗教社会学)のインタビュー記事が載りました。
 宗教社会学者からみた統一教会の実態が分かりやすく語られています。
 カルト規制法の制定については現行法の枠の中で対応すべきだとして、宗教法人法81条の「解散命令」の項目で、解散の要件として「著しく公共の福祉を害する」あるいは「宗数的な活動の実態がない」の2つが挙げられているのに対して、統一教会が「公共の利益に反する」ことについては既に確定された判決で明らかになっているとしています。
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焦点・論点 統一教会と自民党との癒着をどうみる
   反共活動で関係深め被害拡大 宗教法人法による解散命令を
       北海道大学大学院教授(宗教社会学) 櫻井義秀さん
                       しんぶん赤旗 2022年9月14日
 長にわたって社会的被害をもたらしている統一協会(世界平和統一家庭連合)と自民党政治の癒着についてどうみるか問題解決のためには何が必要か、北海道大学大学院教授(宗教社会学)櫻井義秀さんに聞きました。 (伊藤紀夫)
         さくらい・よしひで 櫻井義秀
          1961年生まれ。北海道大学大学院教授。宗教社会学。『統一教会
          日本宣教の戦略と韓日祝福』『大学のカルト対策』『カルト問題と
          公共性裁判・メディア・宗教研究はどう論じたか』など著書多数
 そもそも統一協会とはどんな団休なのか、その特徴をどう見ていますか。
 統一協会は反社会的カルト団体だというだけでは、問題を燦小化してしまう気がします。カルトというと、たとえばオウム真理数もそうだし、その他いくつかの団体があります。しかし、これらの団体は国内で極めて小さな集団にとどまっていて、オウム真理数は大変な事件を起こしましたが、ただその活動の範囲は小さいわけです。
 ところが、統一協会は規模が大きく、6万人とか7万人の信者がいます。歴史的にも長く、1954年に設立して今日まで約70年の歴史があります。
 そして何よりもこの団体の特徴は、政治宗教なのです。要するに、政治的な動きと宗数的な活動を車の両輪のごとく、創立当初からずっとやってきているのです。
 統一協会の目的としては、自民党政治家とのパイプを使いながら、一つには自分たちの活動に対して便宜を与えてもらうという戦略が当初からあるわけです。それにとどまらず、二つ目としては、自分たちの活動理念を日本の政治の中に実現しようとしているわけです。開運団体である国際勝共連合などを使って、反共という価値観を広め、スパイ防止法制定や改憲などの運反共活動で関係深め被害拡大宗教法人法による解散命令を動をやってきました。
 また、「家庭教育」を強調する保守的な家族観や夫婦同姓を主張し、選択的夫婦別姓に反対しています。ところが、韓国は夫婦別姓で、韓国で生まれた統一協会、そして教祖ファミリーはすべて夫婦別姓ですこうした矛盾を抱えながら、日本では自民党寄りの保守的な政治観・家族観を広めるキャンペーンをしています。このような形で日本の政治過程に関わってこよう.としているところが問題なのです。
 しかも、政治家への選挙協力とか、その姿を秘匿して見えない形で政治活動に問わってきて、いつの間にか自分たちの価値観を地方自治体の条例などという形で実現していく。これが統一協会の特徴なのです。

 -国政ではもちろん、地方政治での自民党との癒着も広がっており、家庭教育支援条例などをめぐる癒着も表面化していますね。
 家庭の中でDVが起きるとか、子どもに対するネグレクがあるとか、家庭教育がうく機能しないとかいうのは、親が悪いとか、親がちゃと子どもをしつけないからということではありません。
 むしろ、家庭に余裕がないことや子どもの貧困化などが背景にあり、本来、地方自治体がもっと手当てすべき問題。家庭が十分に機能できるように、子どもの扶養や学費の支援などの環境を整えることを一番にやるべきです。家族の中で男性と女性の役割はこうだとか、親はこうだとか、子どもはこうならなければいけないとか、そういうことをすべきではありません
 しかも、統一協会がいう家庭というのは、合同結婚式に参加して無原罪の子どもを産むという、きわめて特異な家庭像です。それだけが真の家庭で、それ以外は偽りの家庭というふうに彼らは考えています。
 そのことを自民党の政治家はわざと知らないふりをして、お互いくっついているわけです。その意味で、保守を自認する政治家であれば、本来、一緒にやれる相手かどうかを考えなければいけないのに、

 統一教会との関りが指摘された政治家の中には知らなかったという人もいますが、まったくの言い訳だと思います。一般の人だって、ホームページをちょっと見ればわかります。この程度の情報も収集できない政治家が日本の政治・経済・社会をどうするかを予測しながら政策をつくっているとしたら、それ自体が茶番ですよね。

 ー統一協会と自民党政治家との癒着を断ち、問題を解決するためには何が必要でしょうか。
 カルト規制法の制定をいう人もいますが、私は現行法の枠の中で対応すべきだと思います。
 宗教法人法の81条に「解散命令」という項目があります。解散の理由としては、「著しく公共の福祉を害する」、あるいは宗数的な活動の実態がない、この二つです。公共の利益に反するということについては、統一協会の反社会的活動と被害については判決を合めて多くの証拠が出ています
 具体的には宗教法人審議会の中で議諭して、その意見を参照しながら、文部科学省が解散の請求を行う。裁判所で解散の命令が出せるのかどうか、教団からも聴聞の機会に資料を出してもらい、政府も資料を集め、裁判の中で明らかにしていく。これによって、統一協会の問題が非常にクリアになります。
 結果的に解散ということになれば、政治家が関係を持ち続けることは問題になるので、しにくくなります。同時にこの団体に対して国民の多くが警戒心を抱くので、被害者、信者になる人は減ります。統一協会は韓国や世界で日本からの資金収奪を財政基盤に活動しているので、縮小していくしかなくなります。
 ですから、統一協会を宗教
法人としてどう扱うのか、こ
こに諭点を集約して、対応策を考えていくべきではないかと思っています。

 -統一協会と政権を担う自民党の癒着に国民の批判が高まっています。いま政治に何が求められるでしょうか。
 特定の宗教団体とか、一部の国民のために国税を費やすようなことは、統一協会と深い関係があった安倍晋三元首相の国葬を含め、やるべきではありません。公正さとか平等ということを政治家がないがしろにすると、政治的な信頼が低下し、政府は何をやっても国民は支持しないし、うまくいきません。岸田文雄政権と自民党は、そこをあまりにも軽視しているのではないでしょうか

 国民は公正さを求めているのです。ここで何かしないと、政治的な不信は深まり、根本的な政治不信になってしまいます。そういう意味で今は瀬戸際で、統一協会問題を含め、公正な政治を取り戻すことが求められていると考えます。