しんぶん赤旗に掲題の記事が載りました。
安倍元首相は、立憲主義を破壊して政治を私物化し、日本を「戦争する国」に変えました。
内閣発足後早々に内閣法制局長を自分好みの人物に替えた上で、集団的自衛権の行使容認を閣議決定し、「特定秘密保護法」「戦争法」「共謀罪法」を成立させ、さらには「憲法9条の空文化」を画策しました。そして「敵基地(・敵中枢)攻撃可能」の政府答弁書を出し、「防衛費GDP比2%の大軍拡」を米国に約束しました。
経済政策では早々に「アベノミクス」を打上げ、円安を誘導し、年金積立金を投入するなどして株価の釣り上げを図り、結果的に大企業の内部留保増大させ、投資家・金持ちは株の投資で大儲けをしました。その一方で働く人の実質賃金は約8年間で年収が約22万円減少し、世界でも例を見ない「賃金が上がらない国」「成長できない国」となりました。
いまは世界で唯一利上げが出来ない国となって、この先円安がどこまで進むのかは誰にも予測出来ないという状況にあります。これは自国通貨の防衛策まで振り捨てて「アベノミクス」に狂奔した結果です。
国政の私物化、公的行事の私物化も顕著で、自己保身のためには公文書の大規模改ざんも厭いませんでした。国会において118回の虚偽答弁を行うという前代未聞の汚点も残しました。
安倍政権は、戦後50年の「村山談話」で示された歴史認識を実質的に覆し、日韓「慰安婦」合意では結果的に被害者の名誉と尊厳を傷つけました。
外交面では60兆円ものバラマキを行ったと言われていますが、北方領土問題を大きく後退させたことや拉致問題で象徴されるように、成果らしいものは何一つ残せませんでした。目立つのは対米隷従の深化で、トランプによる米国製武器爆買い要求を次々受け入れて、現在の軍事費膨張の大きな要因をつくりました。
14年に発足させた内閣人事局制度は官僚を忖度(政治)に向かわせる温床となり、自らの保身のために意中の人物を検事総長に据えようという画策までしました。
また海底の地耐力不足で完成させることが不可能な沖縄の辺野古基地に拘るなど、沖縄県民の意向無視の政策を続けました。新型コロナ問題では公立病院を大幅に削減してきた新自由主義政策の誤りも明らかになりました。
何もかもが話になりません。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
これが安倍政治の実像 それでも「国葬」か
しんぶん赤旗 2022年9月26日
岸田政権は、憲法違反の安倍晋三元首相の「国葬」を強行しようとしています。安倍「国葬」の狙いは、「個人に対する敬意と弔意を国全体として表す」(岸田文雄首相、8月10日)ことにあります。国民への弔意の強制であり憲法違反であることはもちろん、安倍氏への「敬意」を強制することは、安倍政治を礼賛し、安倍政治の継承をかかげる岸田政権の政治基盤を強化しようとする思惑が透けて見えます。「安倍政治」とはなんだったのか、今こそ検証が必要です。(安倍氏と統一協会との関係については、27日付で続報します)
立憲主義破壊し「戦争する国」
安倍氏は、2012年12月の第2次政権発足以来、近代政治の根本原則である立憲主義の破壊を繰り返してきました。政権復帰直後から改憲を公言し、それと一体に「戦争する国」づくりのための悪法を次々に強行しました。
戦争法を強行
安倍政権の立憲主義破壊の最たるものは、集団的自衛権の行使を容認する「閣議決定」(14年7月)と、それに基づいた安保法制=戦争法の強行(15年9月)です。
歴代政権は、自衛隊の海外での武力行使を可能にする集団的自衛権の行使は「憲法9条の下では許されない」としてきました。しかし、安倍政権は60年以上積み上げてきた憲法解釈を一内閣の判断で百八十度転換。多くの憲法学者からも「憲法違反」との批判があがりました。列島を揺るがす戦争法反対の運動が広がり、12万人が国会を包囲しました(15年8月)。にもかかわらず、安倍政権は数の力で強行採決を繰り返し、安保法制を成立させました。立憲主義を踏みにじる暴走は、まさに“憲法破壊のクーデター”です。
「戦争する国」づくりの一環として、国民の自由と権利を侵す治安立法も強行しました。
安保・外交に関する情報を行政の長の一存で秘密指定しアクセスするものを厳罰にする「特定秘密保護法」(13年12月)を強行し、国民の知る権利と表現の自由を破壊。人々の「内心」にまで法が踏み込み規制を加える「共謀罪法」(17年6月)など、国民の目と耳と口をふさぎ、自由と権利を侵害し、モノ言えぬ監視社会への動きを加速させました。
改憲への執念
「憲法改正、志半ばで職を去ることは断腸の思いだ」。安倍氏は、退陣表明の会見でも改憲への執念を口にしていました。
安倍氏は、17年5月、9条1・2項を残して自衛隊を明記する改憲案を提示し、9条2項の削除からその「空文化」路線に踏み出し“20年までに施行する”と表明。その後も自ら改憲策動を先導し、首相に課された憲法尊重擁護義務(憲法99条)を踏みにじってきました。
首相退陣直前には、違憲の「敵基地攻撃能力」の保有などを次期政権で検討するよう促す異例の「談話」を発表(20年9月)。「迎撃能力を向上させるだけで本当に国民の命と平和な暮らしを守り抜くことができるのか」として、「抑止力」の強化を提唱しました。
安倍氏は岸田政権発足後も、「敵基地に限定されない反撃力」「中枢を狙う」などと違憲の攻撃的兵器の保有をけしかけ、「防衛費GDP比2%」への大軍拡を主導してきました。
岸田首相は、参院選後、改憲に向けた「民意」が示されたなどとのべ早期の改憲発議を進めていくと宣言。「敵基地攻撃能力」の保有の検討に踏み込み、「防衛力を5年以内に抜本的に強化」すると表明し、安保法制で集団的自衛権を行使するさいにも「敵基地攻撃」はできるとの答弁書を決定するなど、新たな段階の危険性もあらわれています。
格差と負担増のアベノミクス
安倍氏が第2次政権下で主導した経済政策「アベノミクス」は国民の間に格差と貧困を広げました。
その柱となったのが、日本銀行に大量に国債を買わせてかわりにマネー(円)を市場に供給させる「異次元の金融緩和」です。大量に市場に供給されたマネーが、為替を円安に誘導し、輸出大企業の利益を増やすとともに空前の株高を演出してきました。さらに、安倍政権は年金積立金を株式市場に投入するなど株価維持に狂奔。大企業と大株主をもうけさせました。
安倍政権はほかにもアベノミクスの一環として、ゼネコン向けの大型開発や、大企業減税、労働法制の規制緩和などを推進しました。
一方、庶民には14年、19年と2度にわたる消費税の増税を押し付けました。第2次政権下での5%から10%への増税で年13兆円もの実質可処分所得を国民から奪い、長期にわたる景気の落ち込みをもたらしました。
この結果、12年度から20年度にかけて、大企業の内部留保は約133兆円増えて約467兆円になる一方、働く人の実質賃金は年収約22万円も減りました。
ところが、岸田首相は看板政策「新しい資本主義」の「実行計画」でアベノミクスの「枠組みを堅持する」と明記。いっさい反省がありません。
いま岸田政権の下で「異次元の金融緩和」が1ドル=140円台という異常円安をもたらし、それが物価高に拍車をかけています。物価上昇を加味した実質賃金は4月以降、前年同月比マイナスが続いており、原料高により多くの中小企業が苦境に立たされています。
一方、大企業は過去最高の経常利益を更新し、21年度末で約484兆円(前年度比約18兆円増)の内部留保を積み上げています。
安倍氏が始めた「アベノミクス」で格差と貧困が深刻になっただけではなく、日本は、世界でも例外的な「賃金が上がらない国」となり、「成長できない国」に落ち込んだというのが実態です。
モリ・カケ・サクラ 国政私物化
安倍政権のもとで、国政私物化をめぐる問題が噴出しました。
森友学園問題では、安倍氏の妻の昭恵氏が名誉校長だった小学校の建設予定地として、国有地が8億円も値引きして売却されました。昭恵氏付の政府職員が、学園側から財務省に厚遇措置を求める問い合わせをしていたことも明らかになりました。
安倍氏は国会で追及され、「私や妻が関係していたということになれば、総理大臣も国会議員もやめる」と答弁しました。その後、土地の売却の経緯を記した公文書の大規模な改ざんが行われました。
改ざんを強要された財務省近畿財務局職員の赤木俊夫さんが自ら命を絶ちました。赤木さんの妻・雅子さんは第三者による再調査を求めていますが、安倍、菅、岸田の歴代首相は拒否しています。
安倍氏の「腹心の友」が理事長を務める加計学園の獣医学部新設で、学園側に便宜がはかられました。特区を担当する内閣府は「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向」と文部科学省に圧力をかけていました。
首相主催の「桜を見る会」では、税金を使う公的行事の私物化が問題となりました。第2次政権発足以降、参加者は年々増加。本来の趣旨は、功績や功労があった各界の人を慰労するものです。安倍氏は、自身の後援会員を多数招待し接遇していました。参加者には、詐欺罪で告発されたマルチ商法の経営者や、カジノ汚職の証人買収で起訴されているマルチ会社元社長までいました。
こうした国政私物化をごまかすために、公文書の廃棄と改ざん、虚偽答弁が横行しました。
「桜を見る会」の前夜祭をめぐる選挙買収疑惑では、安倍氏は118回もの虚偽答弁を繰
り返していたことが明らかになりました。(20年12月25日の衆参議院運営委員会)
日本の孤立招く侵略戦争美化
安倍政治は、日本の侵略戦争と植民地支配の歴史を歪曲(わいきょく)し、正当化してきました。
安倍氏は、第2次政権発足から1年がたった13年12月末に靖国神社参拝を強行。その後も祭具の真榊(まさかき)や玉ぐし料の奉納を繰り返してきました。
靖国神社は、日本の過去の侵略戦争を「自存自衛の正義のたたかい」「アジア解放の戦争」と美化し、宣伝する特殊な施設です。安倍氏の行動は、首相として同神社と同じ立場に身を置くことを世界に示すもので、アジア諸国はもちろん米国からも厳しい批判を受けました。
安倍氏の歴史観は、15年8月に発表された戦後70年にあたっての談話に如実にあらわれています。
「安倍談話」では、「侵略」「植民地支配」という文言を用いながら、それが日本自身の行為であったことを明示せず、戦後50年の「村山談話」で示された歴史認識を覆しました。「反省」と「お詫(わ)び」も首相自身の言葉で語らず、歴代政権が表明してきたと述べるだけの欺瞞(ぎまん)に満ちたものでした。逆に、日露戦争でロシアを破ったことを「植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけた」などと美化し、この戦争が朝鮮に対する日本の植民地支配をすすめた歴史をねじ曲げました。
「安倍談話」は、日本の植民地犯罪である日本軍「慰安婦」問題にまったく言及していません。
15年12月の日韓「慰安婦」合意では、「(慰安婦)問題の最終的かつ不可逆的解決」が確認され、すでに終わったことのように扱われました。「合意」の裏には秘密協議が存在し、「性奴隷」の事実を認めない安倍政権の無反省ぶりが露呈。被害者の名誉と尊厳を傷つけました。
日本の戦争の加害責任を放棄し歴史に逆行する安倍政治は、アジア諸国との関係を悪化させ、日本を国際社会から孤立させるものでした。
大国の顔色うかがい国益損失
第2次安倍政権で、安倍氏は「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」と称して、首脳外交を展開。政権の“売り”にしてきましたが、その本質は米国、ロシア、中国といった大国への屈従外交でした。
なかでも、対ロ外交では、プーチン大統領にすり寄ることで領土問題を解決しようとの思惑から、現在のウクライナ侵略につながるクリミア併合など、プーチン政権の数々の無法を不問にしてきました。さらに、日ロが条約で日本の領土として確定した全千島の返還要求はおろか「4島返還」という日本政府の従来の立場さえ投げ捨て、「2島返還」に後退。それでもプーチン氏を動かすことはできず、ロシアはついに領土割譲の禁止を盛り込んだ憲法改定を強行しました。
安倍氏のすり寄りは結果的にプーチン氏を増長させ、ウクライナ侵略を誘発する要因の一つになりました。安倍氏の対ロ外交は大罪といわざるをえません。
対米外交では、安倍氏は第2次政権発足後、最初に会談したオバマ米大統領(当時)から冷遇されたことに震え上がり、「反対」という公約を転換して環太平洋連携協定(TPP)を強行。続くトランプ政権の米国製武器爆買い要求を次々受け入れ、現在の軍事費膨張の大きな要因をつくり、日本の財政をゆがめてしまったのです。
沖縄民意無視・官僚支配の強権
秘密保護法や戦争法、共謀罪など国民の多数が反対する法律を強行してきた安倍強権政治が、最も露骨に表れたのが、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設問題です。
13年1月に県内全市町村長と議長、全県議らが署名した普天間基地の「県内移設断念」を求めた「建白書」が、安倍首相(当時)に提出されました。しかし、安倍氏は同年11月に自民党の県選出国会議員、12月に仲井真弘多県知事(同)に公約を撤回させます。14年7月に新基地建設の閣議決定を行います。
第2次政権下の2回の県知事選で、新基地建設反対を掲げる「オール沖縄」の翁長雄志県政(14年)と玉城デニー県政(18年)が実現しました。19年の辺野古新基地建設の埋め立ての賛否を問う沖縄県民投票では、圧倒的多数で「反対」の意思が示されました。
安倍政権は、再三示された沖縄の民意を無視して、新基地建設を強行しようとしました。地方自治と民主主義を根底から踏みにじり、沖縄の民意を一顧だにしない強権姿勢です。
安倍政治は人事権を使って官僚を官邸の意のままに動かす強権政治を行ってきました。
集団的自衛権の行使を可能にする戦争法を強行するために、内閣法制局長官に「内部昇格」の慣例を無視して集団的自衛権行使容認派の小松一郎元駐仏大使を起用(13年8月)。翌年に歴代政権が維持してきた憲法解釈を百八十度変更し、集団的自衛権行使を容認する閣議決定を強行します。
14年に中央省庁の幹部人事を一元管理する内閣人事局が発足。菅義偉官房長官(同)が幹部の適格性審査を行い、実質的な人事を担いました。官邸が人事権を掌握する中で、官僚は官邸に逆らえなくなり忖度(そんたく)政治の温床となりました。
森友学園問題やカジノ疑惑で安倍氏が刑事告発を受ける中、検察幹部の定年延長を閣議決定し、政権に近い人物を検事総長に据えようと画策。違憲・違法の批判を受けると、閣議決定を追認する検察庁法改悪案を強行しようとしました。同法案は検察内部を含む、広範な世論と野党の反対で廃案となりました。
安倍政権は、強権的にメディアの口をふさいできました。官房長官会見で、するどい質問を続ける記者を敵視し、内閣記者会に異例の申し入れをして、記者の質問を封じようとしました。
ジェンダー平等に逆行の政治
安倍政権は「女性が輝く社会」と言い「女性活躍」を目玉政策に掲げましたが、ジェンダー平等に逆行する政治を続けてきました。
労働法制改悪で雇用を破壊し、医療・介護・保育などケア労働に冷たい政治を行ってきました。働く女性の5割以上は非正規雇用で、コロナ禍で仕事を失うなどしわ寄せを受けてきました。男女賃金格差の解消にむけた企業への賃金格差の開示義務付けについても「求職者の誤解や混乱を招く」(20年1月の衆院本会議)などと後ろ向きの姿勢をとってきました。
20年までに指導的地位に占める女性の割合を30%にするという目標も30年まで先送りに。選択的夫婦別姓や同性婚を求める声にも一貫して背を向け続けてきました。
政権の内部からは「子どもを産まないのが問題」「セクハラ罪という罪はない」など女性差別発言が繰り返され、「生産性がない」など性的少数者への差別発言を行った議員を擁護してきました。根底には戦前の家父長制や男尊女卑、個人の尊厳の否定など時代逆行の思想があります。
コロナ対応は非科学的・破たん
「全国一斉休校」や「アベノマスク」の配布など科学的知見に基づかない対策にはじまった安倍・菅両政権による1年半におよぶコロナ対応には、致命的な欠陥がありました。
第1は科学無視の姿勢です。厚生労働省はコロナ感染拡大の初期に「PCR検査を広げると医療崩壊が起こる」などとする内部文書を作成し、検査を抑制してきました。「Gp To」事業や東京五輪開催の強行も医療関係者、専門家の意見を無視して行われ、急激な感染拡大をもたらしました。
第2は、コロナ対策にまで新自由主義的な自己責任を押し付けたことです。緊急事態宣言で自粛を繰り返し求めながら、国民への特別給付金10万円を1回で打ち切り。中小企業への補償や、医療機関への減収補填(ほてん)も拒否し続けました。
とくに最悪の事態を招いたのは、医療崩壊の中で、原則「自宅療養」の方針を打ち出し、見直しを求められても撤回しなかったことです。適切な治療を受けられず自宅で死亡する事例はいまなお相次いでいます。
コロナ禍で浮き彫りになったのは、新自由主義政策によって痛めつけられてきた日本の医療体制の現実です。自公政権の20年間で、社会保障予算が削減され続け、病院数はピーク時から1796減、感染症病床は半数になるなど医療体制は弱体化。全国の保健所も半数に激減しました。
安倍政権は、コロナの感染拡大の影響による人員・体制不足などで感染者の受け入れ病床がひっ迫する事態となったにもかかわらず、病床削減を進める「地域医療構想」に固執。「効率的な医療提供体制の構築」を名目に、経済効率を優先し、健康さえも「自己責任化」しました。
安倍政権のコロナ政策を無反省に引き継ぐ岸田政権下では、なりゆき任せの対応によってコロナ関連の累積死者数が4万4000人超となる最悪の事態となっています。