2022年9月23日金曜日

“統一教会”は「信仰の自由を侵害している」(郷路征記弁護士)

 全国弁連代表世話人の郷路(ごうろ)征記氏は1987(昭和62)年3月、統一協会の『洗脳手法による伝道違法』を柱とする前人未踏の訴訟を起こしました(青春を返せ訴訟)。
 それに対して札幌地裁2001年6月、「統一教会の伝道・教化活動は社会的にみて相当性が認められる範囲を逸脱した方法及び手段を駆使した、原告らの信仰の自由や財産権等を侵害するおそれのある行為であって、違法性があると判断すべきものである」などとする画期的な判決を下し、最終的に最高裁で確定しました。
 そして04年には元信者40名とその近親者を含む23名を原告にした「信仰の自由侵害回復訴訟」を起こし、札幌地裁は12年3月、「信仰による隷属は、あくまで自由な意思決定を経たものでなければならない。信仰を得るかどうかは情緒的な決定であるから、ここでいう自由とは、健全な情緒形成が可能な状態でなされる自由な意思決定であるということができる」、「旧統一教会の場合、入信後の宗教活動が極めて収奪的なものであるから、宗教性の秘匿は許容し難いといわざるを得ない」などとする判決を下しました。統一教会側は控訴を断念したためそのまま判決は確定しました。これは入信後の本人の献金も損害であると認めた画期的なものでした。
 その郷路弁護士が9月6日放送の日テレ「情報ライブ ミヤネ」に登場しました。それを文字起こしした記事が12日の讀賣テレビ載りましたので紹介します(ブログ「青天とら日和」より転載)。
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【独自解説】“統一教会”は「信仰の自由を侵害している」 
教団追及の第一人者が語る、「1件で数百件分の重さ」という壮絶な裁判の実態
                        讀賣テレビ 2022/9/12
  正体を隠しての勧誘は“信仰の自由侵害”
 いわゆる“統一教会”をめぐる問題に対応するため、国の相談ダイヤルが、9月5日に開設されました。(合同電話相談窓口:0120-090590【平日午前9時半~午後5時】)相談ダイヤルでは法務省・警察庁・消費者庁などの担当者が、教団に関連した相談を受け付け、問題解決のための専門的な窓口を紹介するもので、政府が本格的に“統一教会”の被害の実態把握に乗り出しています。

 実は、そんな教団の勧誘手法そのものが、「信仰の自由を侵害している恐れがある」という判決が最高裁で確定しています。その判決を勝ち取った、“統一教会”追及の第一人者で、30年以上、被害者の救済に携わってきた札幌弁護士会の郷路征記(ごうろ・まさき)弁護士が、これまでの闘いについて解説します。

教団被害者救済活動のキッカケは、加害者となり苦しんだ元信者の存在
  “統一教会”追及の第一人者 郷路征記弁護士
 郷路弁護士は、「信仰の自由侵害」を提起した唯一の弁護士です。1987年、“統一教会”の「伝道そのものが信仰の自由を侵害している」とし、『青春を返せ訴訟』を起こしました。この訴訟は2001年に勝訴し、その後も教団側と裁判で争い続け、最高裁でも勝訴を勝ち取りました。現在も3件の訴訟中だということです。

  「絶対許せない」という気持ちから始まった、教団被害者の救済活動
 郷路弁護士が、教団被害者の救済活動を行うようになったきっかけは、1980年代に出会った“統一教会”の元信者の女性だったと言います。元信者の女性は霊能師役として壺を売り、自責の念に苦しんでおり、「教団の教えが正しいと信じ、いつの間にかお金を奪う側に回っていた」と話したそうです。その発言を聞いた郷路弁護士は「涙を拭おうともせず話し続ける女性を見て、自分の金儲けのために若者を騙して奴隷にし、加害の苦しみまで与えるなんて絶対許せない」と思い、被害者救済活動に取り組み始めたということです。

Q.相談に来たこの元信者の女性は、加害者であり被害者でもあるというつらい立場にあったということですね?
(郷路征記弁護士)
「そのとおりです。私はそれまで加害者にまでさせられているということが分かりませんでした。そのことを知らされて、こんなひどい目に遭わせる組織は、私の想定の範囲を超えていたので、衝撃を受けました」

「正体を隠しての勧誘は信教の自由を侵害」 画期的な判決を勝ち取れたワケ
  2001年「青春を返せ訴訟」で勝訴
 郷路弁護士は、訴訟から約14年経った2001年に勝訴した『青春を返せ訴訟』について、「『伝道・教化の初期段階で正体を隠していることが、信仰の自由を侵害する恐れがある行為だから不法行為だ』とした当時の裁判所は大英断だった」と振り返っています。

Q.最初、この『青春を返せ訴訟』を起こしたときには、「こんなの認めるわけない」と周りから言われたのではないですか?
(郷路弁護士)
「はい。特に弁護士の仲間のある人から、『日本の裁判所がこんなことを認めるわけがないよ』と言われました。それはたぶん、発言はしなかったけれども、多くの弁護士たちの本心だったのではないかなと思います。それから統一教会側は、『変な裁判起こされた、慰謝料請求だってよ』というようなことを言っていると漏れ伝え聞きました」

Q.「信仰の自由の侵害」を問題にするということは、やはりハードルが高いと皆さんは思っていらっしゃったということでしょうか?
(郷路弁護士)
「宗教の問題を裁判で扱うことについては、裁判所にも、それから弁護士の中にも、ハードルの高さを感じている人たちが多いと思います。今でもそうだと思います」

Q.そんな中、札幌地裁は本当に画期的な判決を出しましたね?
(郷路弁護士)
「ええ、本当にそうだと思います。やっぱりそれができたのは、原告20名の方々のしっかりとした証言があったこと、それから“統一教会”の内部で渡されていたマニュアルやそれから受講ノートなど、たくさんの内部資料があったこと。それを分析して裁判所の前に提示することができた。証拠があったということが大きいと思います」

  2012年「信仰の自由侵害回復訴訟」で勝訴
 さらに2004年、元信者40人と元信者を通して物品を買わされた近親者を含む23人が、“統一教会”を相手取り裁判を起こしました。2012年に札幌地裁は、教団の違法な布教活動を認定し、慰謝料など約2億7800万円の支払いを命じました。教団は控訴しましたが、2013年に札幌高裁は控訴を棄却しています。訴訟からは約9年が経過していました。

Q.日本には信教の自由がありますが、宗教であることを伏せて勧誘するのは違法だということは、つまり「“統一教会”の者ですが」と先に明かせばいいのですか?
(郷路弁護士)
「まず大きなハードルはクリアできると思います。ただ、私は現在では、“統一教会”のやり方では、最初に“統一教会”であることは明かしたとしても、違法になる可能性があるのではないかと思っています。ただ、一番大きな問題は宗教であることを隠して伝道するところです」

Q.入信後の宗教的実践内容を明かさないのも、おかしいのではないかということですか?
(郷路弁護士)
「そうです。実際に、誠を尽くした献金、全財産を自己破産するまでの献金や命がけの物販活動、それから愛情を込めた伝道活動をしなければいけないということを課題にされるわけです。それを最初の段階などで聞かされたら、全員辞めてしまうと思うのですが、“統一教会”は文鮮明氏がメシアであるということを実感・確信させた後で、もう逃れることができない状態にしてから、そのことを明らかにするのです。その結果、こんなことをやらざるをえないってことにされてしまう、そこが不当だということです」

Q.先生に相談された方の多くは元信者の方ですが、裁判を起こすということは元信者の方のマインドコントロールがふと解けるのですか?
(郷路弁護士)
「“統一教会”との連絡を断ち切ることができれば、しばらくすると教団の教えが少しずつ解けてきて、自然に昔の自分に戻っていくという現象が発生します。“統一教会”との連絡を断つということが、一番大事です」

Q.色々な専門家の方が、無理やり教団からの脱退を強要してもダメで、やっぱり団体と距離を置く、連絡を取らないっていうところで、冷静になって家族で話し合うというのは大事なのですね?
(郷路弁護士)
「それはとても大事です。ただ統一教会側は、そのことが分かっていますから、『教団と連絡を取らなければ、あなたは救われない』と教義で教え込んでいるわけです。だから必死になって連絡を取ろうとします。さらに親が話し合いを求めてきたら、『それはサタンの仕業だから、逃げ出してこい』と指示をしています。だから話し合いの場、そのものが成立しないという状況が、難しさとしてあります」

 ミヤネ屋は旧統一教会側に、この2つの裁判の判決をどう受け止めているか、また現在も正体を隠しての勧誘が行われているかなどを問い合わせましたが、回答は得られませんでした。

  2021年に勝訴した裁判、東京地裁の判断は・・・
 一方で異なる判断をされたこともあります。裁判の原告は元信者の3人で“統一教会”を相手取り、損害賠償などを求め2017年に提訴しました。東京地裁は、2021年3月に合わせて1億1600万円の支払いを命じましたが、「被告(“統一教会”)が組織的に、全財産の収奪を当初からの目的として、伝道活動を行っていたと認めるに足らない」として、献金ごとの勧誘行為について違法性を検討するのが相当だと判断しました。郷路弁護士は「東京地裁は、信者になる過程の違法性については検討してくれなかった」としています。

Q.勝訴していますが、裁判所によって捉え方が違うんですね?
(郷路弁護士)
「そうですね。私も想定外で、こういう判決になるとは思っていませんでした。これはやはり裁判所によって、まだ“統一教会”の伝道・教化過程そのものに違法性があるのか、ということについて、温度差があることを示している事例だと思います」

“統一教会”の伝導行為はマインドコントロールではなく信仰の「植え付け」

Q.1世と呼ばれる方はマインドコントロールされ、道を閉ざされて入らざるをえないという状況が、信教の自由の侵害ではないかと思いますが、2世信者に関しても、信教の自由はないし、恋愛の自由もないってことですよね。これも人権侵害に当たらないのですか?
(郷路弁護士)
「難しい問題があります。親が自分の価値観を子どもに対して引き継いでもらう、そのために適切な配慮をしたり、行為をすること自体は違法と言うことはできないと思うんです。私の考え方は、“統一教会”の違法な伝道の結果、親である1世が、統一原理が正しいという宗教的な確信を持たされてしまう。その違法な伝道の結果もたらされた宗教的な確信に基づいて、子どもに対して、『恋愛はしてはいけない。テレビは見てはいけない。これらはみんなサタンの道具だ』などという宗教的価値観を子どもに押しつけ、それが社会的な価値観と格差がありすぎて、子どもの内部で分裂が起きてしまう。“統一教会”の違法な伝道行為を問題にすることによって、初めて2世に対する親の行為を、“統一教会”の行為と捉え直して、法的には教団に対して違法性を追及できるのではないかと構想しているところです」

Q.マインドコントロールは目に見えないので、そのもの自体が立証されない、裁判の中で認定されないとよく聞きますが?
(郷路弁護士)
「私はそもそもマインドコントロールという言葉は使っていません。その言葉で表現するには、“統一教会”の伝道行為は、少し外れているなと思っています。一致している部分もありますが、教団がやっていることは、マインドコントロールの枠ではなく、信仰を植え付けてしまうことです。人というのは一定の条件を与えれば、かなりの確率で信仰を持つものです。例えば、罪意識などを植えつけられてしまうと、罪から救われたいと思います。そこへ『原罪を救ってくれるのは、唯一、再臨のメシア・文鮮明だ』という説明をされてしまえば、その罪の意識が深ければ深いほど飛びつくのです。その心理を利用して、神様に対する信仰、それから文鮮明氏が再臨のメシアだという信仰を植えつけてしまうことに、“統一教会”の伝道・教化過程の最大の問題があると私は捉えています」

Q.様々な宗教があって、様々な教えがある。それは自由であって、そこを規制することはできないが、“統一教会”のやり方は「植え付け」というところ、この違いですよね?
(郷路弁護士)
「宗教が様々であることはその通りですし、宗教の中の教義の是非を裁判所に問うことができないこともその通りです。ただ、宗教の教義について、国民が批判することは国民の当然の権利です。言論の自由ですから。例えば、オウム真理教のポアという考え方について、それはおかしいという批判はできます。批判だけではなくて、その教義が信じられた場合に、信者にどう受け止められて、信者の行動をどうコントロールするものになるか、というところの裏付けとして、『こういう教義があるから、こういう行動をする』と説明することは、教義を批判していることにはなりません。人間の心理のありようの説明をしているだけのことですから、当然のこととして行うことができると思います」

Q.郷路弁護士は宗教法人格を外す、もっと言うと解散命令に関しては慎重なご意見だと伺いましたが?
(郷路弁護士)
「以前はそうだったのですが、最近少し考えが変わってきました。“統一教会”のやっていること、山上家の例を見ても、あれが裁判所で立証できれば、裁判所も解散命令を出してくれるだろうなと思います。ただ問題は、その立証が全国規模のこの巨大な教団に対して誰ができるのか・・・やはり国以外にできないと思います。国が本腰を入れるかどうかが鍵だと思っています」

Q.郷路弁護士もたくさんの方を助けていらっしゃいますが、こうやって見ますと、本当に勝訴を勝ち取るまでにものすごい年月と根気がいるものですね?
(郷路弁護士)
大変な裁判なんです。1件で数百件分ぐらいの重さがあります。人の心が変えられたということを裁判で認めるのは難しいですね

                 (情報ライブ ミヤネ屋 2022年9月6日放送)