2022年12月23日金曜日

23- 【連載】安保3文書 危険な大転換(3)~(5) 暮らし壊す大軍拡の道 ほか

 しんぶん赤旗の連載記事「安保3文書 危険な大転換」の(3)~(5)です。
 各回のタイトルは下記の通りです。
  (3)暮らし壊す大軍拡の道
  (4)新たな国家総動員宣言(上)軍事研究に民間「活用」
  (5)新たな国家総動員宣言(下)海保も 空港・港も軍事下
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【連載】安保3文書 危険な大転換(3) 暮らし壊す大軍拡の道
                       しんぶん赤旗 2022年12月20日
 安保3文書が打ち出した敵基地攻撃能力保有などのための大軍拡。その財源として増税路線を打ち出したことで批判が高まっています。

軍事費5年間で 15倍超の43兆円
 3文書の一つである「防衛力整備計画」は、軍事費を、2023年度から27年度までの5年間で、行5年間の計画から15倍超となる43兆円に増額。不足分を補うための財源として、▽増税▽決算剰余金の活用▽防衛力強化資金▽歳出改革-を明記しました。
 3文書と同日に決定された与党税制大綱は増税について、27年度までに①所得税②法人税③たばこ税の増税で1兆円強の財源を確保すると明記しました。
 東日本大震災の復興費に充てている復興特別所得税の税率を現行の2・1%から1%引き下げる一方、所得税には税率1%を上乗せする付加税を課します。これはまさに「軍拡税」と言えるものです。しかも課税期間は期限を示さず延長されます。たばこ税は1本あたり3円相当の引き上げを段階的に実施します。
 決算剰余金はこれまで補正予算の財源に使われていました。これを軍事費に回せば、補正予算の財源が不足し、増税につながりかねません。「防衛力強化資金」には、医療関係の積立金やコロナ対策費の未使用分など、医療、暮らしの予算の流用が狙われています
 「歳出改革」については、社会保障や文教費などの削減の加速が懸念されます。

戦前の反省ほご 財源に国債使う
 さらに、政府は、財源の不足をまかなうため、「軍事費の財源として公債を発行することはしない」(1966年の福田赳夫蔵相の答弁)としてきた政府見解を反故(ほご)にして、自衛隊の施設建設のため建設国債約1・6兆円の発行にも踏み切ります。巨額の国債発行が侵略戦争の拡大につながった戦前・戦中の歴史の反省を踏まえ、国債の発行に厳しい規制が設けられている財政法を踏みにじるものです。
 増税以外の財源は、いずれも一時的な財源にしかなりません。増税については1兆円超でとどまる保証はなぐ、消費税増税の危険性もあります。国債の増発は将来に負担を先送りするものです。
 さらに、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設などに使われている在日米軍再経費やSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)経費などは「43兆円」の別枠であり、実際にはさらに巨額の負担となります。
 5月にNATO(北大西洋条約機構)への加盟を申請し、28年までに国防費を対GDP(国内総生産)比2に引き上げると表明しているスウェーデンでは、財源について増税か社会保障などの削減が議論されています。財務省は増税、社会保障削減を狙っており、日本もこの道をたどらざるを得ません

「5年間で約43兆円」軍拡予算

 

本予算

現在の軍事費(防衛予算)の5年分⇒年5兆円超、過去最大規模の水準を維持

 

 

 ①歳出改革  ⇒社会保障、文教費などの削減も   

 

 

 ②決算剰余金 ⇒補正予算の財源に充当(これがなくなれば増税につながる)

 

不足分

 ③防衛力強化資金  ⇒コロナ対策資金などを充当(一度だけの収入、継続性がない)

 

 

 ④増税  ・法人税

 

 

      ・所得税  ⇒消費税含む大増税も

 

 

      ・たばこ税

 

 

 (その他) 建設国債など ⇒戦時国債乱発の戦前の反省を無視

 

 

 米軍再編経費、SACO経費は「43兆円」の別枠!

 

                                   (つづく)

安保3文書 危険な大転換(4)新たな国家総動員宣言(上)軍事研究に民間「活用」
                      しんぶん赤旗 2022年12月21日
 「防衛力のみならず、外交力・経済力を含む総合的な国力を活用し、我が国の.防衛に当たる」。安保3文書の一つ「国家安全保障戦略」はこう述べ、国力のあらゆる要素を「防衛」にあてる考えを示しました。戦前の国家総動員体制による侵略戦争の反省を踏みにじる新たな「国家総動員」宣言といえます。
 「官民の高い技術力を幅広くかつ積極的に安全保障に活用」。国家安保戦略はこう明記し、科学技術の軍事動員を掲げました。その狙いは、最新兵器の開発にあります。

民生分野の成果 秘とくの危険も
 具体的には「経済安全保障重要技術育成プログラム」に言及。同プログラムは安全保障分野に企業や大学などを組みこむことを目的とした経済安保にもとづくもので、国の予算から拠出される5000億円の基金を使って大学・研究機関や企業などに研究開発を委託します。
 同プログラムの第1回の研究課題公募には、無人機技術や海洋・宇宙関連技術などが挙がっており、ミサイル防衛の装置として使用することを想定した研究テーマもあります。
 より重大なことに、「アカデミアを含む最先端の研究者の参画促進等に取り組む」として、研究者を軍事研究に動員することを狙っています 防衛省はすでに、先進的な民生技術の軍事利用を目的とした「安全保障技術研究推進制度」を創設しており、大学などから公募し、助成を行っています。
 安保3文書の閣議決定に先立って開かれた政府の有識者会議では、科学技術研究費のうち防衛省分が少ないとして、その比重を高めるよう求める意見が出ていました。大学や研究機関ヘの交付金・補助金の削減が進むなか、軍事研究の比率を高めれば、多くの研究者が研究費を得るために軍事研究に動員される危険があります。
 その結果、民生分野の研究成果も軍事情報として秘とくされてしまう危険もあります。

JAXAと空自連携強化を推進
 国家安保戦略は「宇宙航空研究開発機構」(JAXA)等と自衛隊の連携の強化を進めるとしています。防衛省は航空自衛隊を航空宇宙自衛隊に改編する方針であり、JAXAをより深く軍事に関与させる狙いです。
 すでに政府は、違憲の敵基地攻撃兵器「スタンド・オフ・ミサイル」のうち、極超音速(マッハ5以上)で飛翔できる巡航ミサイル「極超速誘導弾」の開発にJAXAを動員。極超速技術の研究には、岡山大・東海大も参加しています。
 政府は1969年の衆院決議に基づき、宇宙政策を非軍事分野に限定していましたが、2008年に成立した宇宙基本法は、宇宙開発利用を「我が国の安全保障に資するするよう行われなければならない」と百八十度転換。12年にはJAXA法が改悪されて「安全保障」の研究開発が追加され、宇宙の軍事利用を加速しています。 (つづく)


安保3文書 危険な大転換(4)新たな国家総動員宣言(下)海保も 空港・港も軍事
                      しんぶん赤旗 2022年12月22日
「有事の際の防衛大臣による海上保安庁(海保)に対する統制を含め、海保と自衛隊の連携・協力を不断に強化する」。安保3文書の一つ「家安全保障略」は、海保の軍事動員を示しています。自衛隊法80条では武力攻撃事態の際、「海上保安庁の全部、又は一防衛大臣の統制下に入れることができる」と規定。一方、海上保安庁法25条は「海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない」とし、海保の軍隊化を禁じています。「海保の憲法9条」と呼ぱれ、海保と自衛隊の一線を画してきた同条と自衛隊法はいれません
 このためこれまで保を統制下に置く「統制要領」はつくられてきまんでした。しかし政府は16日、海上保安庁の体制強化に関する閣僚会議で「統制要領」の策定を決定。安保3文書改定に合わせ、人命救助や海上交通の安全確保を主任務とする海保の軍事化を次々と押し進めています

本土の部隊展開 南西諸島戦場化
 さらに、国家安全保障戦略会議では、有事の際の対応能の強化として、「自衛隊・海保のニーズ(必要)に基いた、空港・港湾等の公共インフラの整備や機能化」の仕組み創設に言及。空港・港湾の軍事利用拡大する考えを示しました。その対象として狙っているのが南西諸島です。
 「国会防衛戦略」は「南西地域における空港・港湾等を整備・強化し、既存の空港・港湾等を運用基盤とし、平素から訓練を含めた使用」に言及。その狙いは、本土の自衛隊部隊を機動展開するためです。まさに南西諸島の戦場化を見据えた体制づくりです。またこれらの計画を「地方公共団体・住民等の協力を得つつ、推進する」と明記。港湾・空港の多くを管理する各地方自治体に「有事」の名を借りた公共設備提供の圧力がかかるのは必至です。
 日本共産党の赤嶺政賢議員の8日の衆院安全保障委員会での追及に浜田靖一防衛相は、空港の軍事利用の対象に下地空港(沖縄県)を初めて挙げまじた。赤嶺氏は、同空港の港時に琉球政府(当時)と日本政府が自衛隊や米軍等が軍事目的で使用しないと確認した1971年の「屋良覚書」に違反すると強調。さらに離島住民の避難に不可欠な空港・港湾が自衛隊などの軍事利用で攻撃対象にされる危険を指摘しました。

民間も戦時動員 標的になる危険
 安保3文書はさらに自衛隊の機動展開のための「民間船舶・民間航空機」の利用拡大にも言及。国際民間航空条約(シカゴ条約)は、民間機の保護をうたっていますが、自衛隊の部隊や装備を起動すれば、こうした保護から外れ、軍事攻撃の対象となります。また、戦時の負傷者を想定し、「南西地域から本州等の後送先病院の医療・後送態勢確立」まで盛り込むなど、医療機関を軍事利用に取り込む計画まで示しています。 (つづく)