2022年12月3日土曜日

被害者救済新法 「政府案では救われない」

 岸田政権が進めてきた統一協会被害者の救済新法に対して、「政府案では救われない」という声は被害者の救済に当たってきた弁護士グループや元信者、信者2世から、早い段階で上がっていました。それなのにそうした事柄が何も解決されないまま閣議決定され、1日に国会に提出されました。

 河野消費者担当相はしたり顔をして国会で的確な法文化の困難さを強調していますが、そうであれば何故、数十年来被害者の救済に取り組み数多くの成果を挙げている全国弁護士連合会の知恵を借りようとしないのでしょうか。効果の乏しい法案を拙速に成立させるよりも十分に練られた法案を作ることの方が重要です。
 以下の4つの記事を紹介します。
 (記事タイトル)
 ・  被害者救済新法 「政府案では救われない」家族被害に課題 2世憤り
 ・ 配慮義務でなく禁止に 寄付勧誘めぐる規定 田村氏指摘
 ・ 救済新法案見直しを 統一協会 木村参考人が要求 参院
 ・「献金返せば…“地獄に落ちる”」 ~ 救済法案閣議決定も野党修正求める
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
徹底追及 統一協会 被害者救済新法 「政府案では救われない」家族被害に課題 2世憤り
                        しんぶん赤旗 2022年12月2日
 政府は統一協会(世界平和統一家庭連合)の被害者救済法案(救済新法)を1日、閣議決定しました。統一協会の信者2世たちからは「政府案では救われない」と、実効性がある法律にするよう求める声が上がっています。(統一協会取材班)
 政府案は、▽自由な意思を抑圧し、適切な判断が困難な状態に陥らないようにする▽寄付者や配偶者、親族の生活の維持を困難にしないようにする―などを「配慮義務」としています。

禁止にして
 「配慮ではなく、『禁止』にしてほしい」。両親が統一協会信者の鈴木みらいさん(仮名)は、そう要望します。
 両親は統一協会に約1・6億円も献金しました。鈴木さんは両親にかわって返金交渉を繰り返したものの、協会側は「本人の自由意思で献金した」「本人でないと返金交渉はできない」と言うばかりでらちがあきません。
 鈴木さんは両親に返金を求めるよう説得し、やっと3000万円が戻されました。「ただ、そのお金をまた献金するのではないか」と懸念します。
 統一協会は、世界中の人と財物はすべてサタンが支配しており、それを神の側(開祖文鮮明、韓鶴子夫妻)に取り返すことが世界平和につながると信者をマインドコントロール(洗脳)します。「返金は親からすれば、せっかく神にささげたお金をサタンに戻すことに見えるのです。マインドコントロールによる献金を禁止すべきです」と鈴木さんは強調します。

範囲が限定
 大きな問題になっているのが、信者2世ら家族被害の救済です。政府案では子どもや配偶者がうけた被害について、取り戻せる範囲が養育費などに限られ、金額も少なすぎるなどの課題があります。
 同じく両親が信者だった山本サエコさん(仮名)は「政府案では2世が救済されない」と憤ります。祖父母が自身に残してくれた進学費用を両親は統一協会に献金したといいます。
 両親は統一協会の職員でしたが、突然解雇されました。「退職金をもらえず、失業手当も受け取れませんでした」と山本さん。進学で借りた奨学金は、家族の生活費に回しました。「私が親を扶養していました。政府案だと私が統一協会へ返金請求できる金額はごくわずか。この先、高齢でお金がない親の世話は協会がすべきです」

 政府は法案を国会に提出し、10日までの会期内に成立させたい意向です。鈴木さんはこう批判します。「政府は法案成立を急ぎすぎています。被害者救済のためではなく、法律を作ったことで被害者を封じ込め、黙らせようとしているのでは。憤りしかない」


配慮義務でなく禁止に 寄付勧誘めぐる規定 田村氏指摘
                       しんぶん赤旗 2022年12月2日
 日本共産党の田村智子議員は1日の参院予算委員会で、統一協会(世界平和統一家庭連合)の被害者救済のための新法案について、寄付勧誘で「自由な意思を抑圧しない」「適切な判断が困難な状態にしない」などの規定は、法人の配慮義務ではなく「禁止規定」にすべきだと指摘しました。
 田村氏は、統一協会被害の特徴は、正体隠しなどの不当な勧誘によって教義を植え付けられ、自由な意思が抑圧された状態で献金してしまうことだと説明。「マインドコントロール下での献金を明確に禁止する法規制が求められている」と強調しました。
 岸田文雄首相は、禁止行為の対象とするには要件の明確化が必要であり「不適当な寄付はさまざまなものが想定され、一概に要件を規定できない」と答弁。田村氏は、被害者とその家族、被害救済に尽力してきた全国霊感商法対策弁護士連絡会の意見を反映し、「実効性のある法規制となるよう努力してほしい」と訴えました。
 田村氏は、統一協会の反社会的活動への「対策」と「被害者救済」がこれほどまでに遅れた背景には、自民党と統一協会の癒着があると改めて指摘し「うみを出し切る責任が首相にはある」と主張しました。


救済新法案見直しを 統一協会 木村参考人が要求 参院
                        しんぶん赤旗 2022年12月2日
 全国霊感商法対策弁護士連絡会の木村壮弁護士は、11月30日の参院予算委員会に参考人として出席し、政府が示した統一協会による被害救済のための新法案では「十分な被害救済、被害防止を図ることはできない」として見直しを求めました
 木村氏は、統一協会による被害実態は、正体を隠し不安をあおった上で統一協会への信仰を持たせ、その状態を利用して数年または数十年にわたって献金をさせ続けることにあると指摘。寄付の取り消し要件に「困惑させること」を入れている新法案では、「被害実態を十分にとらえきれるのか、大きな疑問を感じざるを得ない」と述べました。
 また、新法案に設けられた法人側の配慮義務
 ▽自由な意思を抑圧し適切な判断が困難な状態にしない
 ▽個人や家族の生活の維持を困難にしない
 ▽勧誘する法人名を明らかにし、寄付の使途を誤認させない
―について、「この部分こそが取り消し権の対象にならなければいけない」と強調。罰則などの刑事上の処分がなければ「また被害が温存されてしまう」として、刑事罰が科されない配慮義務規定に懸念を示しました。


「献金返せば…“地獄に落ちる”」旧統一教会が信者に誓約書を書かせ… 
“救済法案”閣議決定も野党修正求める
                         TBS NEWS  2022/12/02
政府は旧統一教会をめぐる被害者救済の為の新法を閣議決定し、国会に提出しました。一方、教団は信者に対し「献金は自らの意思で行った」とする誓約書にサインさせていることが明らかに。目的は“返金阻止”なのでしょうか。

■誓約書を持ってこられ… 元信者語る教団の“返金阻止”の実態
11月に旧統一教会を脱会した70代の女性。庭の土の中から出てきたのは水晶玉でした。
元信者の女性(70代)「あ、これ。出てきました。この水晶パワーで、うちの運勢が全部良いほうに変わっていく」

いくらぐらいだったのか?
元信者の女性「全部で120万やったかなと思う」

女性は信者から勧められて4年ほど前に購入。家の四隅に埋めました。
これまで献金や物品の購入で、合わせて2500万円ほど使ったといいます。
脱会する直前の2022年9月下旬~10月上旬、顔見知りの信者2人が訪ね、ある書類にサインを求めてきたといいます。
元信者の女性「これ書いてほしいと言って書類を持ってこられた。『私は強制されて献金したのではなくて、自分から進んでした』ような」

過去の献金や物品購入について「教団からの強制ではなく自らの意思で行った」とする誓約書だったといいます。
元信者の女性「これを書いてしまったら大変なことになると思いながら書いた。誓約書によってこれがネックになって、お金は一切、1円も戻らないと思った」

誓約書にサインしたことを悩んでいたとき、今度は婦人部長らが現れ、“返金を求めた別の信者”の話をしたといいます。
元信者の女性「『全部、献金したものを返してくれ』と言われて返したら、そこの息子さんが自死したという話をした。結局、地獄に落ちるということ

■被害者救済法・政府案めぐり攻防 「禁止行為」はどこまで?
岸田総理は11月29日、誓約書などを書かせる行為について、こんな見解を示しました。
岸田総理
「個人に対して念書を作成させ、あるいはビデオ撮影していること自体が、法人等の勧誘の違法性を基礎づける要素の1つとなり、損害賠償請求が認められやすくなる可能性があると判断しています」

一方、政府は12月1日、旧統一教会をめぐる被害者救済の法案を閣議決定し、国会に提出しました。
法案では数々の問題点が指摘された寄付について「配慮義務」と「禁止行為」の2段階で規制を設けました。

【配慮義務】
▼自由な意思を抑圧することで適切に判断することを困難にさせない
▼個人や家族の生活の維持を困難にさせない
▼勧誘する法人を明らかに

【禁止行為】
▼霊感を用いて不安をあおる
▼勧誘場所から退去させない or 退去しない
▼借り入れや特定の財産処分による寄付の要求など

「配慮義務」には罰則規定がなく、「禁止行為」には罰則規定があります。
野党は「配慮義務も禁止行為にすべき」と訴えました。
共産党 田村智子政策委員長「統一教会の被害の特徴は、自由の意思が抑圧された、あるいは歪められた状態に陥ったまま献金をしてしまう。少なくとも3つの『配慮義務』を禁止規定にしていくことが必要だと思います」
河野太郎消費者担当大臣「『配慮義務』に反するような不当な寄付勧誘が行われた場合、民法上の不法行為の認定や、それに基づく損害賠償請求が容易となり、さらに実効性が高まるものと考えております」

政府側は「禁止行為」にするためには「要件の明確化が必要」と説明し、求めに応じませんでした。野党側はさらなる修正を求めています。