2022年12月22日木曜日

22- 旧統一教会が日本での布教に活路を見出した経緯/統一教会スラップ訴訟は教団の反社会性立証の舞台に

 日刊ゲンダイが【日本マネーが支える韓国「統一教」に迫る】#1、#2 で、韓国では旧統一教会がキリスト教の異端扱いをされたため、国内では満足に布教活動が出来なくなり、その分を日本での布教活動に活路を見出した経過を明らかにしました。

 韓国ではキリスト教徒が人口比30%(仏教徒は20%)と圧倒的に多く、プロテスタントとカトリック系の比率はほぼ2:1です。そのプロテスタント長老会議が、統一教会について1971年から疑惑の目を向けていたのですが、最終的に2008年に「異端の宗教」との宣告を出しました。
 文鮮明は自らを「メシアの再来」と名乗り、信者たちにキリストと同等視させたのですから当然のことでした(異端宣告まで随分と時間が掛かったのはいずれ改まると思っていたからと思われます) 
  ⇒(10月6日)韓国での統一教会 宗教というより多角的な企業体というイメージ
 韓国内の信者は公称30万人とされていますが、実際は2万人とも言われます。統一教会の教義では日本はイブの国とされ、アダム国である韓国に貢ぐべき立場とされています。
 日刊ゲンダイの記事を紹介します。

 併せて澤藤統一郎弁護士による記事「『統一教会スラップ・有田事件』の訴訟進行は、統一教会の反社会性立証の舞台となる」を紹介します。
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【日本マネーが支える韓国「統一教」に迫る】#1
竹島から約90kmの僻地「鬱陵島」に5人暮らす日本人女性信者の暮らしぶり
                          日刊ゲンダイ 2022/12/20
 大手製鉄会社「ポスコ」の本社がある韓国南東部・浦項から、フェリーで約3時間。日本海に浮かぶ人口約1万人の鬱陵島を訪れたのは、2008年9月のことだ。
旧統一教会が北朝鮮に流した巨額マネーがミサイル開発資金に? 救済法案成立でも疑念消えず
 島から東南に約90キロ離れた場所には、韓国が実効支配し、日本が領有権を主張する竹島(韓国名・独島)がある。日韓対立の象徴となってきた竹島に程近い鬱陵島の人たちは、日韓関係についてどう考えているのか。島の住民や訪れる人に話を聞くのが目的だった。

 鬱陵島は、韓国語で「ウルルンド」と発音する。どこか明るい響きだが、平地が少なく海岸は絶壁が続き、厳しい自然環境にさらされている島で、漢字のイメージがよく似合う。嵐に見舞われる日が多く、海がしければ本土と結ぶ唯一のルートである船は欠航し、島から出ることはできなくなる。
 この時も悪天候で帰りの船が欠航となり、昼食をとるために近くの食堂に入った。食事を終えてお茶を飲んでいた時のことだ。「日本の方ですか」と日本語で話しかけられ、顔を向けると40歳くらいの店員の女性が立っていた。
 サンダル履きにエプロンという質素ないでたちで、頬は赤みがかっている。現地の韓国人だと思い込み、韓国語で「はい、日本人です」と答えると、やはり日本語で「私も日本人です」と返してきた。10年ほど前から韓国人の夫と鬱陵島で暮らし、家計のために食堂で働いているという。
 ここに日本人が暮らしているとは思わず、話を聞くと、島には自分を含めて5人の日本人女性が住んでいると教えてくれた。いずれも韓国人の夫がいて、食堂や漁港で働いているという。
 漁業や農業が中心の島に、なぜ日本から来たのか。その理由を尋ねると、女性は笑顔で「私、統一教会の信者なんです。合同結婚式で相手が島の男性だったので、ここに来ました。5人とも、みんなそうですよ」と答えた。旧統一教会は本拠地の韓国では統一教と呼ばれる。
 韓国内でも「僻地」である島に渡るとなった時は、大きな不安があったことだろう。女性は「選んでいただいた相手ですから」と言葉を濁したが、表情や雰囲気には日々の苦労がにじみ出ていた。

 合同結婚式によって、韓国の各地で暮らす日本人女性の存在を知って衝撃を覚えてから14年。安倍晋三元首相の銃撃を機に、旧統一教会の問題が再びクローズアップされている。関連のニュースに触れるたびに、絶海の孤島に暮らしていた女性の姿を思い出す。彼女たちは果たして今も、鬱陵島で暮らしているのだろうか。=つづく
(共同通信編集委員兼論説委員・佐藤大介)


【日本マネーが支える韓国「統一教」に迫る】#2
韓国では「キリスト教の異端」扱い 旧統一教会が日本での布教に活路を見出した経緯
                          日刊ゲンダイ 2022/12/21
旧統一教会は、教祖である故・文鮮明氏が1954年、韓国で創設した宗教団体だ。日本では2015年、「世界基督教統一神霊協会」(統一教会)から「世界平和統一家庭連合」へ名称変更が認証された。だが、日本では霊感商法で高価なつぼや印鑑を買わされたなどとする被害の訴えが相次ぎ、社会問題化したことから「統一教会」という名称が現在まで広く知られてきた。韓国では「統一教」と呼ばれている。
旧統一教会は、韓国でどれくらいの規模を有しているのだろうか。2016年2月、有力紙の中央日報が「統一教 改革と和合の“希望の4年”」と題した、教団幹部へのインタビュー記事を掲載した。2世信者として初めて教団の韓国会長に就任したというユ・ギョンソク氏は「(信者数が)2020年までに、世界で1000万人を目指している」とぶち上げている。
現在の信者数について問われると、ユ氏は「世界的に300万人程度で、韓国では約30万人」と答えている。一方で、日本の信者数は公称約60万人と、その規模は倍だ。韓国内では目立った布教活動は行っておらず、実際には韓国での信者数は2万人程度との見方もある。この差はどこから生まれてきたものなのだろうか。

■キリスト教信者が3割を占める韓国
旧統一教会は、韓国でキリスト教系の新宗教として創設された。教団内で文氏は「真のお父さま」と呼ばれ、絶対的な影響力を持っていた。妻で現総裁の韓鶴子氏は「真のお母さま」という位置づけになっている。
だが、それは教団という限られた世界のみで通用する話だ。韓国は人口の約2割がプロテスタントの信者で、カトリックも加えるとキリスト教の信者が3割ほどを占める。仏教は2割程度で、キリスト教が社会に与える影響は大きい。そうした中で、新宗教として登場した旧統一教会が「キリスト教の異端」とみられるのは当然のことだろう。
文氏を教祖としてあがめる教義を持つ旧統一教会と、既存のキリスト教は路線が大きく異なる旧統一教会はキリスト教団体の批判にさらされ、布教活動を行うのは困難だった。
こうした中、旧統一教会は新たな活路を見いだす。それが日本での布教だった。
           (共同通信編集委員兼論説委員・佐藤大介)


「統一教会スラップ・有田事件」の訴訟進行は、統一教会の反社会性立証の舞台となる。
                   澤藤統一郎の憲法日記 2022年12月20日
 逆風に晒されている統一教会が、その組織防衛策として提起した5件のスラップ訴訟。いずれも、同教団に対する批判の言論を嫌って、コメンテーターとメディアの萎縮効果を狙ったもの。そのうちの1件として、ジャーナリスト有田芳生を被告として訴えた「統一教会スラップ・有田事件」がある。私も、その常任弁護団の一人となった。
 この事件の訴訟記録はいずれWeb上で閲覧できるように整備する予定だが、訴状のできは、はなはだよくない。何とも迫力に欠ける請求原因の記載だが、それでもスラップとしての萎縮効果は十分に発揮している現実がある。
 有田さんは、8月19日放送の日本テレビ番組「スッキリ」で、統一教会問題の解説をした。10月27日に至って、統一教会は有田と日本テレビを被告として、東京地裁に名誉毀損訴訟を提起した。「スッキリ」での有田発言の一部が、教団に対する名誉毀損となるという主張。請求金額は2200万円、典型的なスラップ訴訟である。
 この訴状において主張されている有田さんの統一教会に対する名誉毀損文言をそのまま転記すれば、以下のとおりである。
「一時期距離を置いていた国会議員達も、もう一度あの今のような関係を造ってしまったっていうその二つの問題があるということを思うんですが、どうすればいいかっていうのは、やはりあの、もう霊感商法をやってきた反社会的集団だって言うのは警察庁ももう認めているわけですから、そういう団体とは今回の問題をきっかけに、一切関係をもたないと、そういうことをあのスッキリ言わなきゃだめだと思うんですけどね」
 原告(統一教会)主張の名誉毀損文言を要約すれば、「(統一教会が)霊感商法をやってきた反社会的集団だっていうのは警察庁ももう認めている」というもの。果たして、これが違法な言論として損害賠償請求の根拠となり得るだろうか。そんなバカなことはない。この程度のことが言えなくては民主主義社会は成り立たない

 原告のいう名誉毀損文言は、意味の上で二つの命題から成る。
 A 「(統一教会は)霊感商法をやってきた反社会的集団である」
 B 「そのこと(A)は、警察庁ももう認めている」
 命題Aの「反社会的集団」という表現は《事実の摘示》ではなく、《意見(ないし論評・評価)》の範疇。すると、統一教会を「反社会的」とする「意見」の根拠となる前提事実の真実性が、Aの命題の違法性を阻却する立証の対象となる。
 これは興味深い。統一教会の「反社会性」の根拠となる前提事実は、「霊感商法」を筆頭に山ほどにもなろう。その中から、必要にして十分なものを抜き出して立証を重ねることになる。ということは、この有田訴訟が、統一教会の反社会性立証の舞台となることを意味する。被告有田側での攻勢的な訴訟進行が可能というだけでなく必然なのだ。
 そして、命題Bである。起訴に至っていない捜査の秘密が公的に暴露されることはない。しかし、複数のジャーナリストが、下記の有田さんと同様の体験を語っている
 「1995年秋に警察庁と警視庁の幹部の依頼で、対象者を聞かずに20~30人を相手にレクチャーを行い、その際に、『統一教会の摘発』を視野に入れていると聞いた」
 「その10年後のこと、幹部2人と話をした時に、10年たって、今だから言えることを教えてくれって聞いたんですよ。なんでダメだったんですか。一言ですよ。『政治の力』だったって。『圧力』」
 
 この点でも、攻勢的な立証活動が可能である。
 その他には、被告の側の抗弁として、公共性・公益性を挙証しなければならないが、名誉毀損訴訟の実務において、公共性と公益性の立証のハードルはさして高いものではない。
 スラップは、やられた被害者には面倒この上なく、社会的にも実害が大きい。しかし、この統一教会スラップ・有田事件には、貴重な反撃の舞台設定が用意されている。攻勢的に闘って、統一教会の反社会性を徹底して立証する場となることが約束されているのだ。
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