2022年12月15日木曜日

防衛省世論工作の恐怖 ・「情報戦・認知戦」で反戦の声を封殺、思想犯罪化(世に倦む日々)

 世に倦む日々氏が、防衛省がAI技術を使い、SNSで世論工作する研究に着手したという報道が10流れたことに対して怒りの記事を出しました。
 同氏は、マスコミはそもそも岸田政権の大軍拡政策に対しても我が国の安全保障の大転換と言い、肯定した論調で国民に伝えており、「国民が国を守る防衛の負担をするのは当然の責任」とか「安全保障は最大の福祉」とかと述べて、防衛費GDP比2%の政策を正当視し、反対論をTVにも紙面に一切載せず排除したから、防衛費倍増は正しい政策となり、世論調査で賛成多数となったが、それは国家の基本理念の転換なので本来は憲法を改変して行うべきものだと述べています。
 そして、いまや多くの国民にとって最高法規は日米安保条約になっているので、7年前に安倍政権が集団自衛権の行使に踏み切ったときのような反対運動起きないだろうとみていてます。
 そこに持ってきてのこの防衛省によるAI技術を使用しての国民洗脳手法の研究開始声明です。東京新聞は警戒を持って報じましたが。他のマスコミからは批判的な記事を出ていないということです。
 これでは徴兵制もスパイ防止法もあっと言う間に賛成多数になっておかしくないと述べています。いつもの重厚な記事です。
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防衛省世論工作の恐怖 -「情報戦・認知戦」で反戦の声を封殺、思想犯罪化
                      世に倦む日日 2022年12月14日
12月10日(土)、防衛省がAI技術を使い、SNSで世論工作する研究に着手したという報道が流れた。日本の防衛政策への支持を広げたり、有事で敵国へ敵対心を醸成したり、国民の間での反戦・厭戦の気運を払拭するのが狙いだとある。発信元は共同通信で、複数の政府関係者を取材して明らかになったと情報源を記している。中日新聞が論説を加えた最も詳しい記事を書いていて、内心の自由を侵すことを禁じた憲法19条違反であると指弾する志田陽子の解説を載せていた。朝起きたらツイッターのトレンド欄で事件が話題になっていて、クリックすると何人かの左翼系の定番論者が批判の反応を書き込んでいるのが目に入った。

一方、ヤフーに上がった記事のヤフコメ欄を確認すると、三牧聖子や高橋浩佑や岡部芳彦が登場して、この防衛省の世論工作政策を支持し正当化する意見を書き込んでいる。上位のコメントは賛成派の声ばかりで埋まっている。中露など権威主義国家が「認知戦」でそれをやっているのだから、日本も防衛上同じ対策措置を講じるのが当然だという主張だ。ヤフーニュースの編集者がこの立場なのだろう。反応はツイッターとヤフーで二つに割れた形になっている。おそらく、防衛省の人間が意図的に「告知」の意味で共同通信に流し、それを知った中日新聞が批判記事にして一面トップのスクープにしたのが経緯だろうと推察される。防衛省側としては、中日新聞方面の批判はガス抜きの地均しだ。

■告知と地均し
防衛省によるこのリークそのものが、卑劣でな情報作戦であり、悍ましい政治工作に他ならない。暴力装置たる軍による市民社会への政治介入であり、圧力行使である。威嚇と操縦だ。共同通信とヤフーは情報戦の協力機関だ。日本国憲法の前提と環境の下ではあってはならない、許されない行為だ。一体、誰がこんなリーク(作戦)を実行したのだろうと思い、防衛研究所政策研究室長の高橋杉雄の顔が浮かんだ。今、テレビに出てやりたい放題やっている。オレが国の戦略を動かしているという有頂天気分が丸見えで、軍国支配者の振る舞いに抑制がなくなっている。そろそろ頃合いだから一発リーク(布告)しとくかという時機判断と作戦決行だったのだろうか。

使い切れない青天井の予算が来年度来るから、その処理の便宜、すなわち軽費のエクスキューズにもうってつけだという事情も考えられる。AIシステム開発などという費目と使途を設定すれば、幾ら使ってもお構いなしで会計検査院の監査をスリ抜けられる。実際、防衛省はすでにこの「『情報戦』行政」に着手していて、4月に「フェイクニュースによる世論誘導を防ぐ役割を担う『グローバル戦略情報官』を新設」している。このリークの後、「フェイクニュースによる情報戦に確実に対処できる体制の構築と対外発信の強化や、情報本部でAIを活用した公開情報の自動収集・分析機能を整備すること、などが検討されています」と、TBSが後追いで防衛省の公式見解を代弁している。

■内心の自由の圧殺、言論の統制と一元化
そして「安保関連3文書の中にも盛り込まれる見通しです」と念を押している。防衛省と岸田文雄は、「国内世論を誘導することを目的とした取り組みを行うことはありえない」と否定したが、典型的なマッチポンプの図であり、既成事実化の政治であり、そもそも世論誘導の目的のない「情報戦」や「認知戦」などあり得ない。軍事行動なのであり、国内を一色に染めるための軍の作戦だから。3文書が出た後、年末から来年1月にかけて、この機能と活動について報道1930とプライムニュースとNHK-NW9が特集を組み、畳みかけるように正当化し、志田陽子的な反論を押し潰して抹殺していくだろう。テレビに出るのは常に同じ顔ぶれである。志田陽子や中日新聞の論説的な意見の持ち主は登場しない。

現実としては、ネットもテレビも、もうすでにこうした「認知戦」の世論工作で充満していて、特にテレビは毎日毎晩が「認知戦」のオペレーションで埋まっている。中国のミサイルが日本のEEZ内に落下したとされる問題は、その場所は台湾と中国が自国のEEZとしている海上であり、日本との間で線引きは合意されていない。だが、その公平な情報は一度も日本のマスコミで紹介されておらず、国民に正しい事実が伝えられていない。政府側の一方的な「情報戦」がマスコミの場で遂行され、佞悪な世論誘導がされ、中国に対する憎悪と敵愾心ばかりが掻き立てられている。もうとっくに、対中関係については国民が正常な認識と判断ができない環境にされていて、中国との戦争遂行と軍事打倒だけが「正義」になっている。

■時代の恐怖、禍害の予感
丸山真男の何かの文章で、たしか、南京陥落の報を聞いたとき、足の裏がザラザラする感覚を持ったと書いていた。23歳のとき。時代への恐怖と我が身に降りかかる不幸への予感を、独特の表現で伝えていた。その後、召集され入営して、内務班の初年兵に対するリンチ禍に遭い、宇品の船舶司令部で原爆投下に遭う。帝大卒の二等兵という身で、思想犯逮捕歴のあるピンク学生上がりだったから、古年兵による私的制裁と部隊ぐるみの辱めは凄惨を極めた。原爆投下直後の広島市内で救護活動に当ったため、被爆し、それが原因で終戦後に肺結核を発症、最終的に肝臓がんで死んでいる。丸山真男の「足の裏がザラザラする感覚」。それに近いものを今回のニュースで感じた。これからの「認知戦・思想戦」でどんな目に遭うのだろう。

テレビの報道番組では、毎晩のように同じメンバーが出て、「国民が国を守る防衛の負担をするのは当然の責任」とか、「安全保障は最大の福祉」だとか言いまくっている。松原耕二と堤伸輔が「そうですね」「私もその意見に同感です」と相槌を打っている。現代の軍国支配者たちの軍国主義のプロパガンダを正論化し、「国民的な中立の主張」にクレンジングしている。マスコミが、ずっと防衛費GDP比2%の政策を正当視し、必要で当然だと言い、反対論を画面と紙面に一切載せず排除したから、防衛費倍増は正しい政策となり、世論調査で賛成多数となった。アメリカと中国に次ぐ世界第3位の軍事大国に向けて疾走が始まった。それを世論が認めている。目の前の出来事が信じられない。これが、あの上皇様と上皇后様の国なのかと腰が抜ける。

■「ミサイル配備で島を安全に守れる」
司馬遼太郎が、戦前戦中の日本に対して、いつからこんなにバカな国になったのだろうと憤り、昔はこうではなかったはずだと思ったと言っていた。その司馬遼太郎の当時の鬱屈と憤激と悲嘆を、まさか自分が今、生きている現実の中で再現的に体験するとは、本当に信じられない気がして、言葉にあらわしようがない。NW9で与那国島の住民の声が出ていて、自衛隊が基地にミサイルを配備してくれたら、他の国が手を出しにくくなって島の安全が保たれるだろうと言っていた。本気で言っているんだろうかと思う。前の戦争で地上戦を経験した沖縄の人間の言葉とは思えない。衆愚政治の恐ろしさを思う。プラトンがなぜ哲人政治を唱えたかが分かる。その後の欧州の思想が、一貫してデモクラシーを警戒し忌避した理由が頷ける。

マスコミは、我が国の安全保障の大転換ですと言い、肯定した論調で国民に伝えている。日本の安全保障政策の大転換は何度も行われてきた。2014年から15年にかけての、集団的自衛権の行使容認と安保法制がそうだった。アメリカの要請を受けて、それに応えた重大な体制改変である。2011年の有事法制もそうである。このときからJアラート(空襲警報)が制度化した。有事法制も、集団的自衛権も、敵基地攻撃能力も、単なる安全保障政策の転換ではない。どれも国家の基本理念の転換であり、本来は憲法を改変して行うべきものだ。日本国憲法はそれらを認めていない。憲法の理念を真向から否定する政策が実行されている。国制の大転換が行われている。日本がどんな憲法の国かを、松原耕二と堤伸輔は言わず、関口宏も言おうとしない。

■左派の静けさ
だけでなく、憲法学者も今回は口を開かない。別に憲法学者に護憲主張を求めているのではない。立憲主義を求めているのだ。立憲主義の憲法学者なら、反撃能力も防衛費GDP2%も、憲法を変えてからやれと言うべきではないのか。今の日本は、事実上憲法のない国家である。主権国家に憲法がないはずがないのだが、実は主権国家ではなくアメリカの属国だから、憲法なしでも国家の体裁を維持できている。この国には、無論、国家の最高法規がある。最高法規は日米安保条約であり、日米地位協定である。そして、数年毎に具体的なプログラムとして押しつけられるアーミテージ・ナイレポートである。マスコミや政治家が「日米同盟の重要性」というフレーズを言うとき、そこには「憲法」の響きがあり、絶対性と普遍性の契機がある。

今回、安全保障政策の大転換が実行され、中国との戦争がまた近づき、軍国主義体制の強化となった。が、今回は7年前のような反対運動が起きない。左派や野党の反対が強くない。熱とエネルギーがない。3文書の閣議決定後、来年もこの静けさのままだろうか。秋国会で争点となったのは統一教会問題だった。左派が最も注力したのは杉田水脈の首獲りだった。今、ネットの左翼が熱中している政治問題は、Colabo の経理報告書をめぐる闘争であり、仁藤夢乃の擁護の運動である。戦争体制と軍備増強の問題など後回しという空気で、しばき隊軍団が杉田水脈と仁藤夢乃の政治で扇動を繰り広げ、左翼の関心を方向づけてきた。あくまで、ジェンダー・マイノリティ・LGBTQが最優先課題で、平和や憲法9条はセカンド・アジェンダ⇒検討課題の位置づけにある。

■スパイ防止法、徴兵制、靖国国営化
左翼の中心にいる日本共産党にその姿勢が顕著で、軍拡反対に切実さが感じられない。中国敵視を明確にしたからという方針の問題もあるだろう。来年は、台湾有事へ向けてのアメリカの挑発が一層露骨になり、戦争開始が必至の状況になるだろう。アメリカの方が軍事力が優勢で、時間が経てば米中の軍事力差が縮まる関係にあるから、制限時間前立ち会いはアメリカに有利である。習近平の独裁と独善の資質傾向を考えると、プーチン以上にアメリカの仕掛ける挑発に乗せられやすく、自己の能力を過信して謀略の罠に搦め取られやすいと危惧する。日本にはトマホークが配備され、統合司令部が設置されて動き始める。あと、日本に残されているのは、自衛隊の兵卒の人数を増やすことと、認知戦を実効化するスパイ防止法である。

今回の防衛省の予算膨張は、おそらく、装備(武器)以上に隊員の給料・年金が真の狙いなのだろう。自衛隊に若者が応募しなくなっていて、兵卒が深刻に不足している現状と聞く。セクハラ・パワハラ体質の超ブラック組織ゆえに人が来ない。ミサイルだけでは戦争はできない。高橋杉雄と河野勝俊の口が幾つあっても戦争はできず、戦力にならない。最前線の地上部隊で血を流して死ぬ兵卒が要る。とりあえず、給料を上げて補おうとするだろう。それでも人員が満たない場合は、「国民には防衛の責任がある」と言って、徴兵制を施行するに違いない。血を流して死ぬ兵卒を国家で祀る靖国神社国営法も必要だ。1年前は公明党も反対していた反撃能力がこんなに簡単に世論で賛成多数になるのだから、徴兵制もスパイ防止法もあっと言う間に賛成多数になっておかしくない