しんぶん赤旗の連載記事「安保3文書 危険な大転換」の(6)です。
今回で本連載は終了です。
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【連載】安保3文書 危険な大転換(6) 情報戦 強まる国民監視
しんぶん赤旗 2022年12月23日
「偽情報の拡散等の情報戦が展開され、今後さらに洗練された形で実施される」。安保3文書の一つ「国家安全保障戦略」は、軍事・非軍事の手段を組み合せた「ハイプリッド戦」の重要性に言及し、「認知領域における情報戦への対応能力を強化する」と記述。「認知領域」=国民の意識を新たな「戦闘領域」に位置付けています。
ハイブリッド戦における「情報戦」は、サイバー攻撃やSNSなどを通じて流すプロパガシダ(宣伝戦略)で軍事的優位に立つ戦略です。2014年のクリミア半島侵略戦争の際、口シアはこの戦略で国内外の声を抑えたといわれています。
情報戦の具体的な措置として見過ごせないのは、防衛省の諜報(インテリジェンス)機関である情報本部の強化です。同本部は自衛隊の秘密組織だった「陸幕別班」が前身とされており、1997年度に創設。年々増員が進んでいます。
「防衛力整備計画」は「各国等」の動向に関する情報の常時継続的な収集・分析を可能とするため、「人工知能(AI)」の活用に言及。「各国等」などによる情報発信の真偽を見極めるためのSNS上の情報等を自動収集する機能を整備するとしています。
「反戦デモ」敵視 陸自が資料作成
「各国等」が諜報の対象とされていますが、諜報機関は「敵国」の工作員が紛れ込んでいることを想定しており、その対象は一般市民のSNS情報にもおよぴ国民監視につながることは必至です。
今年3月、陸上自衛隊が市民の「反戦デモ」敵視・報道機関監視を盛り込んだ資料や動画を作成していたことが明らかになりました。資料を暴露した日本共産党の穀田恵二衆院議員の調査によれば、作成した陸上幕僚監部の担当者は「反戦デモ」を敵視した意図について、「他国の諜報員に扇動されたデモがエスカレーション(段階的に拡大)することによって、我が国の主権が脅かされる可能性がある」と説明しています。
また、「認知領域」を戦場ととらえる以上、そこで「勝利」するために、SNSなどを活用して防衛省・自衛隊に都合のよい世論誘導が行われる危険もあります。
土地利用規制法 際限なく広範に
加えて「国家安保戦略」は「民間施設等によって自衛隊の施設や活動に否定的な影響が及ばないようにするための措置をとる」とし、「土地利用規制法」にも言及。同法で政府は、自衛隊・米軍基地周辺の約1キロ内にある土地や建物等の所有者・利用者を調査し、「基地機能の阻害」を理由に利用中止の勧告・罰則付きの命令ができます。基地反対行動など際限なく広範な調査・監視が及ぶ恐れがあります。
政府の国民監視強化は、裏を返せば「戦争国家」づくりを許さない国民世論を恐れていることの表れです。政府の国民監視にも揺るがない世論の盛り上がりが求められます。
(おわり)
(この連載は竹下岳、石橋さくら、小林司が担当しました)