2022年12月8日木曜日

真実に肉薄する者は攻撃される/軍備増強したら平和になるのか(植草一秀氏)

 12月4日に開催された「温暖化とコロナの真相を探るシンポジウム」の第2部にパネラーとして参加した植草一秀氏が5日、「真実に肉薄する者は攻撃される」という記事を出しました。

 日本では、温暖化とコロナ、それにウクライナ問題と軍事費増大については反論を許さない空気が形成されてきたと述べ、情報のコントロールはマスメディアだけではなくSNSとインターネットのポータルサイトが全面的に活用されていて、そこに共通するのは大資本の支配下にあることだとしています。
 特定の判断、見解、主張だけが一方的に流布される仕組みになっていて、それに反する意見は排除される環境になっていると指摘します。
 そして地球温暖化については「CO2主因論」が真実とされていますが、異論も沢山あってそれらには十分に説得力があり、中立、公正の立場から両論を比較衡量するなら、反論の側に分があると判断されるとしています
 CO2大量排出の問題はせいぜい200年足らずの間で起きたことですが、地球の温暖化は遥か億年の単位で5℃の変動や10万年周期で10℃の変動、1千年強の範囲でも気温の変化が生じているとして、CO2による温室効果を全面的に否定しているわけではないものの、人為的気温上昇説では現実を十分に説明できず、気温変化の主因は別に存在するという主張があるとしています。
 そしてCO2と気温変化との間には逆の因果関係、即ち気温変化に連動して海水から発生するCO2量が変化するとの指摘を紹介しています。それは地球の歴史を調べると気温の上昇に遅れて大気中のCO2濃度が上昇が確認されるということで、このことは物理化学で容易に説明できます。
 CO2は水に極めて溶けやすく一定量の水に溶ける量を気体の体積で比較すると、空気の46倍、窒素の55倍、酸素の28倍です。CO2は海水には真水よりも溶けやすく、その量は水温20℃で海水1㎏(約1ℓ)当たり0.87ℓです。
 そして20℃近辺では水温が1℃上がるごとに溶解度は3%減じるので、水温が1℃上昇するごとに膨大な量のCO2が大気中に放出されることになります。興味深い話です。

 それとは別に植草一秀氏は7日、「軍備増強したら平和になるのか」という記事を出しました。
 それは日本にとって最も重要な中国との関係について論じていますので併せて紹介します。
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真実に肉薄する者は攻撃される
               植草一秀の「知られざる真実」 2022年12月 5日
12月4日に開催された「温暖化とコロナの真相を探るシンポジウム」に多数の市民が参加下さった。
時間の制約で会場からの質問に対して回答する十分な時間を確保できなかったが意義あるシンポジウムになった。

温暖化とコロナについては反論を許さない空気が形成されてきた。
同様の取り扱いがなされているのがウクライナと軍事費増大。
情報のコントロールはマスメディアだけによるものではない。
SNSならびにインターネットのポータルサイトが全面的に活用されている。
共通するのは大資本の支配下にあること。特定の判断、見解、主張だけが一方的に流布される
よほど特殊な方法を取らない限り、情報の誘導に太刀打ちすることができない。

外形的には民主主義の体裁が施されるが、その民主主義が形骸化している。
人々が判断するための情報が独占されているからだ。
大資本はメディア、学者、政治屋を支配下において、市民を洗脳することによって民主主義を偽装して目的を達成している。

地球温暖化が進行している。
その主因はCO2排出であり、CO2排出を抑制しなければ人類や地球は滅亡してしまう。
このような主張だけが流布される。反論を唱える者は攻撃を受ける。
情報空間の統制が強まっている。
しかし、よく調べてみると、多くの専門家が異論を唱えている。
その異論の内容を精査すると、十分に説得力を有している。
中立、公正の立場から両論を比較衡量するなら、反論の側に分があると判断される。

そもそも、地球の気温は大きな幅で変動を繰り返してきた。
10万年周期での温度変化が存在してきたと見られている。温度変化の幅は10℃に達する。
地球の公転軌道が変化することにより、この温度変化が生じてきたものと考えられている。
さらに、億年単位での気温変化も生じてきたと見られる。その変動幅は5℃程度である
人類のエネルギー多消費による人為的要因による温度変化ではない
過去1000年強の時間範囲でも気温変化は生じている。
中世温暖期は現在よりも気温が高かったとの見方もある。

20世紀の気温変化についても、1910年から1940年に気温が上昇し、1940年から1975年に気温が低下している。
1975年から1998年の期間は気温が上昇したが、1998年以降は気温上昇が観察されていない。
人為的気温上昇説では現実を十分に説明できない。

人為的要因による温暖化に疑問を提示する懐疑派の主張は説得力がある。
懐疑派はCO2の温室効果を全面的に否定しているわけではない
一定程度の影響は存在すると認めた上で、気温変化の主因は別に存在すると主張する。
最大の要因と捉えているのが太陽活動の変化。
太陽活動の変化に伴い、宇宙線量、ならびに大気中の水蒸気量や雲の量が変化する。
また、CO2と気温変化との間には人為的要因を主張する者とは逆の因果関係が存在することが指摘される。
人為的要因を主張する者は、CO2の発生拡大が温暖化の要因だと主張するが、過去の歴史を検証すると、気温変化に連動して海水から発生するCO2量が変化するとの指摘がある。
過去のデータ検証では温度変化が先行し、CO2変化が遅行するとの分析もある。

温暖化効果を持つガスに占めるCO2のウェイトが小さいとの指摘もある。
温暖化と寒冷化とを比較したとき、人類にとってより大きな脅威となるのは寒冷化である。
ところが、巨大資本が支配する情報空間では温暖化仮説に対する懐疑論は攻撃の対象になる
逆に言えば、攻撃の対象になるからこそ、真実に肉薄している可能性が高い。
真実に肉薄する者は攻撃される。真実を明らかにすることが巨大資本にとって脅威になるからだ。
攻撃を受ける主張を尊重する意味が大きい。

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軍備増強したら平和になるのか
                       しんぶん赤旗 2022年12月 7日
日本の軍事費を倍増させる動きが加速している。
かつてGDP比1%という縛りが課せられていた。
この縛りが破棄されて一気に2倍の規模に軍事費が増額されようとしている。2023年から2028年の5年間の軍事費総額を43兆円に増大させる方針が定められようとしている。
単純計算すれば1年間の軍事費が8.6兆円に達することになる。
日本の中央政府の1年間の社会保障以外のすべての政策支出合計金額は34兆円
公共事業から科学技術振興、文教、エネルギー、などすべての政策支出の合計値が34兆円である。
この金額と比較したときに8.6兆円がいかに突出した金額であるかがよくわかる。

軍事費増大は何のためのものなのか。日本の安全保障のためだという。
しかし、軍事費を激増させることが本当に日本の安全保障につながるのか。
全国の公立小中学校の給食費を無償にするための費用は約5000億円。
軍事費を倍増させる資金の余裕があるなら、給食費を無償化するべきだ。
軍事費増大は日本の安全保障を目的とするものではない。
軍事産業と軍事産業に関与する関係者の利益増大を目的とするものだ。
軍備を拡大したら平和になるのか。逆である。軍備拡大は相互に連鎖する。
世界的に軍事費が増大し、大量殺戮につながる戦争が誘発されることになる。

軍事費拡大ではない平和を確立する方策を実行すべきだ。
軍事費増大が緊張関係を増大させる原因になる。
日本では中国の脅威が喧伝されるが、なぜ日本は中国との友好関係を高めようとしないのか
中国政府の行政対応に対しても日本のメディアは好意的な見方を排除する。
中国はコロナに対して厳格な姿勢を示してきた。
さまざまな対応があり得るが、中国は中国の判断で一つのやり方を示してきた。
他国が中国政府の方策をいたずらに攻撃する必要は乏しい。
国と国が良好な関係を維持する方策の基本は 相互尊重、相互理解、相互信頼だ。

これは人間関係も同じ。相手を尊重し、相手を理解し、相手を信頼すること。
信頼するところに到達するには時間を要するが、相手を尊重するところから始めなければ良好な関係は構築されない。

何度も指摘するが、日中関係が急激に悪化したきっかけになったのは2010年9月7日の尖閣海域中国漁船衝突事件。この事件が発生した原因は日本側にある
日本と中国の国交正常化交渉の過程で、尖閣諸島の領有権問題で衝突した。
このとき、日中両国政府は領有権問題が存在することを認めた上で、その解決を将来に委ねることで合意した。いわゆる「棚上げ合意」だ。
このことを明記しているのが1979年5月31日付の読売新聞社説。
領有権問題が存在することを日中両国政府が認めている。
ところが、2010年6月8日に菅直人内閣は、「尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権問題は存在しない」とする政府答弁書を閣議決定した。
この閣議決定に基づき尖閣海域の中国漁船への対応を日本政府が一方的に変更し、中国漁船衝突事件を創作した。
この事件を契機に日本では「中国の脅威」が喧伝され、野田佳彦内閣は尖閣諸島の国有化まで実行した。

日本が逆の立場だったらどうなのか。
日本政府は烈火のごとくに激怒し、相手国を非難する世論が沸騰するだろう。
こうしたプロセスを経て日中関係悪化が創作され、その延長線上に軍事費激増の政策が推進されている。
どこかおかしくないか。
日本人が日本をひいき目で見ることは理解できるが、国際社会において近隣諸国と相互尊重、相互理解を深めるためには、他国に対する誠実な対応が必要である。
過去の歴史事実を直視することが必要不可欠だ。
                (以下省略)