2022年12月31日土曜日

31- 裁量労働制の拡大 「定額働かせ放題」の規制こそ(しんぶん赤旗)

 裁量労働制の対象業務の「専門業務型」デザイナーなど)に新に金融機関での企業合併・買収を助言する業務が加わりました(他には事業運営に関する企画立案などの「企画業務型」があります)。
 裁量労働制は実際に働いた時間と関係なく事前に定めた時間だけ賃金しか支払われない制度で、その致命的な欠点は、当初の見積もり時間から大幅に超過してもその分は補償されないことです。それを避けるためにはそうしたリスクを見込んだ所要時間に設定する必要がありますが、使用者(発注者)と労働者(受注者)の力関係からそうはならず、結果的に当初から懸念されていた通り「定額働かせ放題」になっています。
 そもそも安倍政権がこの制度を導入しようとした際に、労働者の利益に合致するというデータを捏造したという経緯がありました。こうした労働者泣かせで労基法の精神に反する制度は、対象を拡大するのではなく規制を強化するべきです。しんぶん赤旗の「主張」を紹介します。
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主張裁量労働制の拡大 「定額働かせ放題」の規制こそ
                      しんぶん赤旗 2022年12月30日
 裁量労働制の適用対象拡大の動きに懸念の声が上がっています。裁量労働制では、実際に働いた時間と関係なく事前に定めた時間だけ働いたものとみなし、その時間しか賃金が払われません。デザイナーなどの「専門業務型」と事業運営に関する企画立案などの「企画業務型」があります。厚生労働省の労働政策審議会は27日、金融機関での企業合併・買収を助言する業務を専門業務型に加える案を了承しました。「定額働かせ放題」と批判される裁量労働制は、長時間労働が広がるなど問題が浮き彫りになっています。対象拡大ではなく規制強化が必要です。

過労死ライン労働者増加
 労働時間は1日原則8時間です。通常の労働者はタイムカードなどで時間を測り、延長分は、使用者が残業代を払う義務があります。一方、裁量労働制を適用された労働者は12時間など長時間働いても、労使合意で8時間働いたと「みなす」とされれば、超過分の残業代は払われません。時間管理も労働者の裁量に委ねるとしていますが、実態は、使用者に業務量を決められるケースが多く長時間労働をまん延させる温床になっています。
 2018年、安倍晋三政権は裁量労働制を「営業」などに広げる案を「働き方一括法案」に盛り込みました。しかし、「裁量労働制の労働時間は一般労働者より短い」などとした調査データのねつ造が発覚し、世論の批判で削除されました。岸田文雄政権は6月の骨太方針に速やかな見直しの方針を打ち出し、議論を進めようとしています。厚労省が労政審に出し直した「裁量労働制実態調査」(21年6月公表)では裁量労働制の適用者の労働時間はそうでない労働者より1日平均で21分長くなっています。1カ月に換算すると過労死ラインとなる週60時間以上働く裁量労働制の労働者は8・4%で、そうでない労働者4・6%の1・8倍です。
 裁量労働制の労働者は、午後10時~午前5時に仕事をすることが「よくある」(9・4%)、「ときどきある」(24・9%)で計34・3%を占めました。そうでない労働者の「よくある」、「ときどきある」の合計は17・8%です。
 裁量労働制の労働者が、自分で決めた時間内に終わらなかった仕事を自宅などに持ち帰ったことが「よくある」、「ときどきある」は合計39・1%で、そうでない労働者の合計18・2%の2・1倍でした。過酷な労働実態は明らかです。
 日本労働弁護団の裁量労働制アンケート(22年10月)には、「在職死亡が増え、精神疾患が激増した」(記者・編集者)、「業務量が多すぎて自由に働けない」(デザイナー)、「ただの長時間労働使い放題、メリットなんかない」(システムエンジニア)など労働者の切実な声が寄せられています。

対象拡大は命にかかわる
 裁量労働制の対象拡大は、残業代なしで労働者を働かせたいという財界の要求です。野村不動産が営業担当の労働者に企画業務型を違法に適用し、過労自殺に追い込んだ悲劇などを繰り返してはなりません。
 ホワイトカラーを際限のない長時間労働に追いやる企画業務型を廃止し、専門業務型も真に専門的な業務に限り、要件と運用の厳格化こそ急ぐべきです。