2022年12月16日金曜日

【連載】逃げる岸田政権 対決する日本共産党 臨時国会69日(1)~(2)

 コロナ禍で苦しむ国民の暮らしや経済の再建、外交・安全保障、エネルギーなど、国の針路をめぐる重大問題が問われるなか、すべてが中途半端な形で無理やり10日に臨時国会閉会になりました。
 しんぶん赤旗で、追及から逃げ回る岸田政権と真正面から対決した日本共産党の姿を振り返る連載記事が始まりましたその(1)と(2)を紹介します。
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逃げる岸田政権 対決する日本共産党 臨時国会69日(1)
統一協会被害者救済法 実効性求め独自修正案
                      しんぶん赤旗 2022年12月14日
 コロナ禍で苦しむ国民の暮らしや経済の再建、外交・安全保障、エネルギーなど、国の針路をめぐる重大問題が問われるなか、10日に閉会した臨時国会。追及から逃げ回る岸田政権と真正面から対決した日本共産党の姿を振り返ります。
 「ここで終わらせるのではなく、次の国会でも審議してもらい、一人でも多く救ってほしい」
 統一協会の被害者救済法が可決・成立した臨時国会最終日の10日、参院本会議場には、元妻による献金被害を訴えてきた橋田達夫さんの姿がありました。声を上げた被害者や問題に取り組んできた弁護士、世論の力が、悪質な寄付の勧誘の法規制に消極的だった岸田文雄政権を動かしました。
 しかし、統一協会の被害の中心であるマインドコントロール(洗脳)下の寄付の勧誘を明確に禁止せず、多くの被害者を救済できるものにはなりませんでした。

世論に押されて
 当初、政府・与党は臨時国会での救済法の提出を想定していませんでした。しかし、被害者の告発で、統一協会の悪質な活動による家庭や生活破壊の深刻な実態が次々に明らかに。“正体を隠して接近し、教義を植え付けて洗脳した上で、高額献金をさせる悪質な寄付勧誘を禁止しなければ、被害者を救済できない”―被害者救済の新法を求める世論が急速に高まりました。
 こうした声に押され岸田首相は10月19日、救済法を「臨時国会を含め早期に提出していきたい」と表明。11月9日には自民党の茂木敏充幹事長が各党の書記局長・幹事長に協力を要請するまでに事態を動かしました。しかし、政府案の概要は個人を「困惑」させて行う寄付の勧誘などを禁止するだけのものでした。
 「ほとんどの被害が救済できない」との批判が高まる中、茂木氏は教団など法人の配慮規定として「個人が適切な判断をすることが困難な状況にしない」ことなどを盛り込む案を提示。しかし洗脳下の「困惑」を伴わない寄付勧誘の禁止には背を向け続けました。
 日本共産党の小池晃書記局長は、寄付時には洗脳下にあり「困惑」していない事例が多いとして「『正常な判断ができない状態にあることに乗じた』勧誘を禁止する」などとするよう提起。しかし、修正はないまま、自民、公明、立民、維新などの合意で審議入りしました。
大きな足がかり
 日本共産党は洗脳下の寄付勧誘の禁止などを盛り込んだ修正案を衆院に独自に提出。憲法が保障する「信教の自由」などを持ち出して難色を示す政府に、洗脳こそ信教の自由の侵害だと追及しました。
 宮本徹衆院議員や山添拓参院議員らが、洗脳下の寄付を禁止する修正は憲法の範囲内でできると衆院法制局とも整理したと主張。宮本氏は「党の修正案を丸のみすべきだ」と迫りました。参院の参考人質疑では全国霊感商法対策弁護士連絡会の阿部克臣弁護士も修正案について「被害者救済にかなり役立つ」と評価しています。
 修正案は共産党以外の反対で否決されました。ただ、同法の付則には2年後の見直し規定が盛り込まれました。日本共産党が救済法を実効あるものとするために最後まで奮闘したことが、今後の見直しへ大きな足がかりをつくりました。

長年の癒着 被害者と徹底追及
 統一協会の被害者救済法をめぐっては、衆院本会議で採決が行われた日の夕方に参院で審議入りする乱暴な国会運営も行われました。日本共産党は、政府から概要が示された当初から「実効ある法案にする必要がある」と党派を超えたオープンな議論を主張。尾辻秀久参院議長に会期延長を申し入れ、十分な審議時間を保障し実効性を確保するよう呼びかけました。
 しかし、自民、公明、立民、維新などの合意で会期は延長されず、会期末の土曜日に審議を行うという異例の対応で同法は成立しました。重要法案にもかかわらず衆参の委員会での審議時間は約26時間です。参院の審議では、法案に賛成した党の議員からも「これで充実した審議と言えるのか」との声が上がりました。
 「これで終わりにはできない」。日本共産党の小池晃書記局長は同法成立後、法案を直ちに見直して実効ある救済制度をつくることや、統一協会への解散命令の請求、自民党との癒着の徹底解明を提起しました。
 参院の参考人質疑で、統一協会の元2世信者の小川さゆりさん(仮名)は、多くの被害者が妨害をうけ、体調を崩しながらも被害を告発し続けてきたわけを訴えました。「政府が本当に動いてくれるのか信じられない。被害拡大の張本人の与党側にそのような動きが見られないから、被害者がそこまでやるしかなかったという事実を忘れないでいただきたい」
 岸田首相には、この声を正面から受け止める責任があります。

自民・議長・政府丸ごと汚染




 岸田政権が十分な国会審議も行わず、法律も実効性あるものにならなかった背景には、自民党と統一協会の深刻な癒着関係があります。自民党が9月8日に公表した「点検」結果で、379人の同党国会議員のうち約180人が接点を持っていたことが判明。統一協会と接点を持つ閣僚ら政務三役は4割に及び、自民党・議長・政府が丸ごと汚染されていたことになります。
 日本共産党は臨時国会を「統一協会追及国会とすべきだ」と主張し、癒着解明を要求。志位和夫委員長は衆院本会議の代表質問で、岸田首相が統一協会と「関係を断つ」と言いながら行動が伴っていないとして、(1)自民党としての責任をもった調査(2)政権としての調査(3)行政がゆがめられた疑惑の調査(4)安倍元首相の癒着の調査(5)半世紀に及ぶ歴史的癒着の調査―の五つを提起。しかし岸田首相は明確な答弁を避け、癒着解明に背を向けました。
 臨時国会最終日の12月10日、山添拓参院議員が「自民党が統一協会と癒着を深めて被害を拡大してきた認識があるか」と迫りましたが、岸田首相は「さまざまなケースがあった」と繰り返すだけ。被害を拡大したという認識を示せないことが改めて浮き彫りとなりました。
 統一協会と自民党の癒着によって、行政がゆがめられた疑惑も未解明です。統一協会の名称変更の経過をめぐっては、宮本岳志衆院議員の質問に対する答弁で永岡桂子文部科学相が、2015年の名称変更当時、下村博文文科相に報告した資料が存在することを認めました。下村氏の参考人招致と資料の国会への提出は待ったなしです。
 穀田恵二衆院議員は東アフリカ・モザンビークの統一協会関連団体の派遣員に、政府が外務大臣表彰を与えていたことを告発。質問を受け同省は外務大臣表彰を取り消しましたが、その後、統一協会の関連団体が西アフリカ・セネガルで開校・運営する学校に、政府開発援助(ODA)として955万円余の無償資金協力を行っていたことも穀田氏の追及で発覚。この問題はいまだ調査中です。
 統一協会と自民党国会議員が選挙の際に事実上の「政策協定」を結んでいた問題では、井上哲士議員が参院本会議で、「外国に本拠を置く団体と政策協定を交わすことは、内政干渉につながる」と追及。岸田首相は「さまざまな団体と書面のやりとりは行っている」と開き直りました。

解散請求解釈 1日で変更
 「民法の不法行為も該当する」―宗教法人の解散命令請求を行う際の「法令違反の要件」について、岸田首相が10月19日の参院予算委員会でこう答弁しました。前日までは法令違反の要件を刑法罰に限定し、「民法は該当しない」と答えていましたが、一夜で政府解釈を転換。国会審議中の変更など異例中の異例です。前代未聞のこの答弁変更の裏側には、野党と世論の厳しい追及と被害者の奮闘がありました。
 政府はもともと、オウム真理教への解散命令の際に東京高裁が示した「刑法等の実定法規の定める禁止規範または命令規範に違反」などの基準にこだわり、統一協会の違法性が既に明らかになっている民法上の不法行為では「解散命令を請求できない」と消極的な態度を取り続けていました。
 民法は該当しないとする政府解釈の高い壁を打ち崩す力となったのが、共産党や立憲民主党など超党派の野党による統一協会問題の合同ヒアリングです。32回にわたる聞き取りの中で、「未成年のとき7日間断食させられた」「家族が全てばらばらになった」など政府関係者の前で声を詰まらせながら話す被害者の必死の訴えから、被害実態の広さと根深さが明らかになっていきました。
 被害者の切実な訴えと世論の批判を受け、岸田首相は10月17日に統一協会に対し、宗教法人法に基づく「報告徴収・質問権」を行使すると表明。質問権では、統一協会の民法上の不法行為を認めた判決が多数あることを理由に挙げたものの、解散命令請求の要件には「民法は該当しない」としたままでした。
 これに対し、日本共産党の宮本徹衆院議員は「質問権をいくら行使しても、統一協会の役員が刑事罰を食らわない限り解散命令請求をしないことになる」と追及。ヒアリングで問題意識を共有していた立憲民主党も「解釈を変えない限り解散請求できない」(長妻昭衆院議員)と述べるなど、野党からいっせいに批判の声があがり、政府解釈を変えさせる原動力となりました。
 統一協会をめぐっては、組織的な養子縁組を無許可で行っていた問題が新たに発覚し、山添氏は「養子縁組のあっせんを許可も得ず継続的に行っていた事実はこれだけで重大だ」と訴えました。政府は既に、統一協会の民法上の責任が認められた事件を少なくとも22件把握しています。「民法の不法行為が該当する」のが政府解釈であれば、解散命令請求にただちに踏み切るべきです。


逃げる岸田政権 対決する日本共産党 臨時国会69日(2)
敵基地攻撃能力 軍事強化でなく外交を
                      しんぶん赤旗 2022年12月15日
 岸田政権は、敵基地攻撃能力(反撃能力)保有を違憲としてきた歴代政府の見解を一方的に覆し、国会での議論を飛ばして同能力保有に向けた閣議決定を強行しようとしています。ところが、臨時国会でこの問題を問われた岸田文雄首相はまともに答えませんでした。前代未聞の憲法破壊に突き進む岸田政権の暴走が際立っています。

危険性をただす
 「相手国にとって、日本を攻めてないのに攻撃される。先制攻撃だと受け取られる」―。敵基地攻撃の危険性について真正面からただした山添拓参院議員。対して岸田首相は、「国際法違反にならないよう武力行使する」とはぐらかすだけ。山添氏が、政府が購入を検討する米国製「トマホーク」などの長射程ミサイルが違憲の攻撃型兵器にあたると追及しても浜田靖一防衛相は「反撃能力について検討中で一つひとつに答えられない」と答弁を拒絶しました。
 敵基地攻撃能力保有が「不可欠だ」とまで踏み込む「国家安全保障戦略」など安保関連3文書改定に関する報告書を提出した有識者会議に、「憲法学者」は一人もいません。
 浜田防衛相は、赤嶺政賢衆院議員に対し、民間空港・港湾の軍事利用拡大の対象として沖縄県の「下地島空港」や首都の国際玄関「成田空港」が挙がっていると答弁。「戦争する国」づくりの具体化が浮き彫りとなっています。

国民生活窮地に
 軍拡むけの大増税が強行されたら、物価高騰や円安に痛めつけられた国民生活はさらに窮地に追い込まれます。
 岸田首相は13日の自民党役員会で、「今を生きる国民が自らの責任としてその重みを背負って対応すべきだ」と発言。震災対策むけの復興特別所得税の転用、次世代に借金をかぶせる国債発行などさまざまな財源が取りざたされるなか、「軍拡増税」には自民党内や閣内からも異論が出ています。
 小池晃書記局長は12日の国会内での会見で「敵基地攻撃能力の保有、5年で43兆円の大軍拡、増税1兆円を3点セットで決めたことが破たんに直面している」と断じました。
 国際的な対立や紛争はどう解決すべきか―。臨時国会開会中の11月中旬、志位和夫委員長を団長とする日本共産党代表団は、トルコ・イスタンブールで開かれたアジア政党国際会議(ICAPP)第11回総会に参加。総会は19日に、「ブロック政治を回避し、競争より協力を重視する」ことなどをうたったイスタンブール宣言を採択し閉幕しました。宣言は日本共産党の「外交ビジョン」がアジアの政党の総意として確認された形です。
 田村智子参院議員は国会で、「軍事力強化ではなく外交で戦争の心配のないアジアを追求すべきだ」と主張。イスタンブール宣言が明記した「ブロック政治の回避」「対話と交渉こそが紛争解決の唯一の道」に「賛同するか」とただすと、岸田首相は「国際社会は分断でなく団結が必要」と答えざるを得ませんでした。(つづく)