杉田水脈氏が年末をもって総務政務官を辞任しました。ああいう考え方の人物が総務政務官であることは対外的に誤解を与えるもとなので、ようやくその地位を去ったのは喜ばしいことです。任命した岸田氏の不明は覆うべくもありません。
ただ最後の最後まで自分の差別発言がいわゆるヘイト発言であることを認めず、「誤解された、誤解を与えた」という表現に留まったことはいわば杉田氏の限界なのでしょう。
逆に「まだまだこれからも日本の為に頑張ります!」とか、「私を支援してくださっている方々がいっぱいいるので、その方々の代弁者として頑張って参りたい」という言い方は確信犯であることを思わせます(「一生懸命頑張っている人が報われる社会にしていきたい」には彼女なりの現状批判も)。
ヘイト発言を含めて、如何なる考え方にも一定の支持者はいるものです。問題はそういう少数勢力に依拠べきかどうかですが、依拠するというのであれば、自民党比例区候補ではなく小選挙区から立って、堂々と所信を述べるべきではないでしょうか。
澤藤統一郎弁護士のブログを紹介します(青字以外の着色部・太字強調個所は原文に拠っています)。
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杉田水脈の「信念」とはいったい何だ。「発言を応援してくれる支援者」とは誰のことだ。
澤藤統一郎の憲法日記 2022年12月27日
押し詰まった年の暮れに、慌ただしい閣内の人事。秋葉賢也復興相と杉田水脈・総務政務官が更迭された。形の上では、任意の辞表提出が受理された。
岸田首相は、いつもながらの口先だけの「私自身の任命責任について重く受け止めている」。既視感ある光景というほどのことではない。何度も見飽き聞き飽きたことの繰り返し。この内閣発足は8月10日。4か月前のあのときから「秋の山寺」という言葉が飛び交い、誰が見ても不適切な杉田水脈の政務官登用には、世論への挑戦という臭いがした。あるいは安倍晋三後継勢力への阿りであつたか。
これで、「秋の山寺+1」の閣僚と、ヘイトの杉田が一掃されたことになるが、この間岸田の支持率は下がり続けた。世論は、「岸田内閣の本性見たり」という気分になったのだ。
岸田首相の、杉田更迭の説明は以下のとおりである。
杉田から、「差別意識はなく、その旨説明を尽くしたが、結果として国会審議に迷惑をかけることになった。過去の言動について精査して、問題があると判断したものは撤回することとしたが、自らの信念に基づき、撤回できないものもある。行政に迷惑をかけることはできないため、区切りがついたこの時点で辞任したいとの意向が示された」
おやおや、杉田はちっとも反省していないのだ。むしろ、「自らの信念に基づき、撤回できない」とさえ言ってのけている。岸田は、杉田の無反省を咎めていない。叱責するでもなく、更迭理由とするでもなく、聞き置くだけ。さすが、「聞くだけが特技」のお人。
また、辞表を受理した松本総務大臣は、「政府の一員として迷惑をかけてはいけないと考え、判断したという報告だった」と述べている。杉田水脈には、政府に迷惑をかけたという認識があるだけ。差別された少数者や、人権を重んじる市民社会への責任は感じていないのだ。
そして、杉田水脈自身が、「真意伝わらなかった」と開き直っている。「こんな人物」が大手を振って歩けるのが、日本の保守政界であり、「安倍政治」であり、岸田政権なのだ。
杉田の「辞任記者会見」の要旨は、「私の過去の発言、拙い表現に厳しいご指摘があり、それを重く受け止めて反省し、一部を取り消したが、その真意がなかなか伝わらないということもあった」「内閣の一員として迷惑をかけられないということで総合的に判断して、年末の節目としてこのタイミングで(辞職願を)提出した」(朝日)というもの。虚飾を剥げば、次のようなものである。
「私の過去の差別発言、本音の表現が、思いがけなくも厳しい世論の批判に遭い、その批判に対して、心ならずも『重く受け止めて反省し、一部を取り消します』と言わねばならない羽目に陥った。それを『私の真意がなかなか伝わらない』と誤魔化してきたのだが、岸田内閣がとても支えきれないと私を切る判断と知らされた。たいへん不本意ではあるが、力関係を総合的に考慮して更迭に抵抗できない。やむを得ないので、年末の節目のこタイミングで(辞職願を)提出して、多少の体面を保つより仕方がない」
各社が、記者会見の一問一答を載せている。その一部を引用しておきたい。質問に対して、きちんと答えずにはぐらかす回答の仕方は、安倍晋三に学んだものだろう。何を言っているんだかよく分からず不愉快なやり取りだが、分かることは、この人のヘイトスピーチは「自分を応援する支援者もいる」という自信に支えられていることである。
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――このタイミングで辞職願を提出した理由は。
◆先の国会で、私の過去の発言、拙い表現にいろいろ厳しいご指摘があり、それを重く受け止めて反省し、一部は取り消したが、さまざまな発言を精査する中で、やはり私の真意を分かっていただきたいという思いがある一方、その真意がなかなか伝わらないのではないかということもあった。私自身、信念を持ってやってきたので、信念を貫きたいと思う一方で、内閣の一員として迷惑をかけるわけにはいかないという思いもあり、総合的に判断して、年末の節目ということでこのタイミングで辞表を提出した。
――信念を貫くために辞職願を提出したのか。
◆国会でも、私の発言の追及でずいぶんと時間をとってしまったこともあり、これ以上、迷惑をかけるわけにはいかないと思った。また、この間、岸田文雄首相と松本総務相にすごくしっかり支えていただいて、私からは感謝しかないが、これ以上、迷惑はかけられないと思った。
――謝罪、撤回した発言以外も精査したとのことだが、そういったものも含めて発言自体は、信念を持って発言したことであって問題ないという考えなのか。
◆そうだ。そういう発言を聞いて応援をしてくださっている支援者もたくさんいる。
――これ以上、謝罪、撤回することはないか。
◆はい。しっかりと皆さんに真意を理解していただければ(と思う)。何度も申し上げているが、差別はしていない。ただ、その真意が伝わりづらいということだ。
――過去の発言で性的少数者の団体などが抗議したが、対応はどう考えているのか。
◆何度も申し上げているように拙い表現によって傷つかれた方がいるのであれば、謝罪する。ただ、それ自身が差別ではないということはずっと申し上げている。国会の場で謝罪、撤回したので、それをもって今回の謝罪と撤回にさせていただいたということだ。
――今後の政治活動についてはどう考えているか。
◆私を支援してくださっている方々がいっぱいいるので、代議士として、その方々の代弁者として、しっかり政治家として頑張ってまいりたい。
――杉田氏の貫きたい信念とはどういったものか。
◆私自身は差別は絶対にあってはいけないと思っている。そんな中で、やはり正直者がばかを見るというような社会にはしたくないと思っている。やっぱり、一生懸命頑張っている人が報われる社会にしていきたい。(毎日より)