2022年12月5日月曜日

杉田政務官の言動 形ばかりの「撤回」では済まぬ(しんぶん赤旗)

 2日、参院予算委で杉田水脈・総務政務官が「謝罪して撤回する」と述べました。
     (12月3日)杉田水脈 総務政務官が「謝罪し発言取り消す」と
 しかしそれは過去の一連の差別発言のことではなく、「2016年の女性差別撤廃についての国連の会議に参加したアイヌや在日コリアンを誹謗した自身のブログ」と「LGBTの人たちを生産性がないなどと記述した2018年の月刊誌『新潮45』の寄稿」の2件についてだけでした。
 ではそれ以外の発言では「人を傷つけなかった」とでも言うのでしょうか。上司の総務相に言われたからしぶしぶ謝罪めいた発言をしたのであれば呆れ返る話です。
 任命責任を問われた岸田首相は「職責を果たす能力を持った人物と判断した」などと述べましたが、一体どんな特有の能力が彼女にあるというのでしょうか。ますます岸田首相の能力に疑問を持たざると得ません。
 しんぶん赤旗の3つの記事を紹介します。
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杉田氏「謝罪し取り消す」も… 差別発言かは明言せず 過去の投稿など
                       しんぶん赤旗 2022年12月4日
 杉田水脈総務政務官は2日の参院予算委員会で、過去にLGBTQなどの性的少数者を「生産性がない」などと月刊誌に寄稿したことや、「チマ・チョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさん」などとブログに投稿したことについて「傷つかれた方々に謝罪し、そうした表現を取り消す」と述べました。一方、「差別発言だと認めての謝罪・撤回か」と問われたのに対しては「精査して対応する」として認めませんでした。社民党の福島瑞穂議員への答弁です。
 杉田氏は「過去の配慮を欠いた表現を反省する」と発言。松本剛明総務相から謝罪と発言撤回の指示があったとして「内閣の一員としてそれに従い、謝罪し、表現を取り消す」と述べ、差別的だと指摘されているほかの発言に関しても「できるだけ時間をかけずに精査し、適正に対応したい」としました。
 任命責任を問われた岸田文雄首相は「内閣の一員になる前の発言は政治家の責任として自ら説明責任を果たすことが大事だ」「政府の一員になった以上は政府の方針に従って職務に専念してもらう」などとして更迭は拒否しました。
 杉田氏は過去に「男女平等は、絶対に実現しえない反道徳の妄想」など数々の差別発言を繰り返しています。11月30日の同委でも「日本には命にかかわるひどい女性差別は存在しない」などと発言していました。


主張杉田政務官の言動 形ばかりの「撤回」では済まぬ
                       しんぶん赤旗 2022年12月4日
 性的少数者の人たちなどに対し差別的言動を繰り返してきた杉田水脈(みお)総務政務官が2日の参院予算委員会で、過去の発言の一部について「謝罪し、取り消す」と述べました。11月30日の予算委では発言を正当化する答弁を続けましたが、松本剛明総務相の指示に従いました。しかし、取り消し対象はごく限られ、真摯(しんし)な反省とはかけ離れた態度です。厳しく問われるのは同氏の過去の問題を知りながら政務官にした岸田文雄首相の責任です。「職責を果たす能力を持った人物」といまだに擁護しています。到底許されません。

批判と追及かわす思惑か
 杉田氏が取り消すとしたのは
▽2016年の女性差別撤廃についての国連の会議に参加したアイヌや在日コリアンについて「チマ・チョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレのおばさんまで登場。完全に品格に問題」と書き込んだ自身のブログ
▽LGBTの人たちを「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がない」などと記述した2018年の月刊誌『新潮45』の寄稿
―での表現です。
 いずれも特定の民族や少数者を蔑視し、多様な生き方や個人の尊厳を否定する悪意に満ちた差別的言説です。政治家として口にしてはならない暴言であり、本来なら、もっと早く撤回し責任を明確にしなければならないものです。

 しかし、杉田氏は長い間、謝罪と撤回を拒み続けました。「『生産性』がない」発言には厳しい批判が集まり自民党本部前では議員辞職を求める抗議行動も取り組まれましたが、杉田氏は反省を示さず、自民党も不問に付しました。
 岸田氏が8月の内閣改造で杉田氏を総務政務官という要職に起用したことは、文字通りの免罪でした。政務官就任の会見で杉田氏は、過去に多様性を否定したり、性的マイノリティーを差別したりしたことはないと開き直りました。
 一転して過去の言動の一部「撤回」を表明したのは、野党の追及や批判をかわすための政権の思惑だと言われます。2日の予算委に先立つ記者会見で松本総務相が、二つの問題発言について「表現を取り消すよう申し渡した」と語り、その後の予算委で杉田氏が「内閣の一員として、指示に従い」とわざわざ述べてから取り消しました。しかし発言が差別にあたるかどうか明言しませんでした。この経過には「本心から反省しているのか」との批判が絶えません

 杉田氏の差別的言動は、取り消した2件だけではありません。性暴力被害をめぐって「女性はいくらでもうそをつけますから」と女性をおとしめ、尊厳を踏みにじる発言をしたことへの反省はありません。ジャーナリストの伊藤詩織さんを中傷するツイッターの投稿に「いいね」を押したことには東京高裁が同氏に賠償を命じました。今回の謝罪・取り消しでは済まされません。同氏の政治姿勢そのものが政務官の資格を欠き、罷免に値することは明らかです。

信頼失った政権は退陣を
 「政治とカネ」疑惑にまみれた秋葉賢也復興相らの続投に国民の不信は募ります。井野俊郎防衛副大臣にも公職選挙法違反の新疑惑が浮上しました。統一協会と自民党の癒着解明に背を向けていることにも批判が高まっています。信頼を失った政権は一刻も早く退陣するしかありません。


きょうの潮流
                       しんぶん赤旗 2022年12月4日
 「私はアイヌだ。何処(どこ)までもアイヌだ。それで人間ではないという事もない。同じ人ではないか。私はアイヌであったことを喜ぶ」
 日記につづった叫びのことばは、まさにアイヌの“宣言”でした。筆者の知里(ちり)幸恵は、みずからの民族が口づてに伝え継いできたユーカラを記録し、初めて日本語に訳した『アイヌ神謡集』の作者として知られます
 19歳という短い生涯を、アイヌ語を残すことにかけた彼女が亡くなってから今年で100年。明治以降、国から「未開社会」「旧土人」とさげすまれ、同化を強制されてきたアイヌの文化や権利を守るとりくみは今も引き継がれています
 先日も札幌でエカシ、フチと呼ばれる長老への特別支援を国や道に求める署名活動が行われ、アイヌの民族衣装をまとった伝承者が窮状を訴えたばかりです。ところが国会では、特定の民族や性的少数者、女性への侮辱をくり返してきた杉田水脈(みお)総務政務官の言動が問題になっています
 「チマ・チョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさん―。完全に品格に問題があります」。自身のブログに書き込んだ悪意と偏見にみちた表現。アイヌの人びとからは「ヘイトスピーチそのものだ」と憤りの声があがっています
 差別を認めない「撤回」は同氏の無反省ぶりを際立たせています。それをわかっていながら政務官に起用し、いまだにかばい更迭を拒む岸田首相の人権感覚も問われます。傷つけられる誇りと尊厳。アイヌとはアイヌ語で「人間」を意味します。