東京新聞の緊急検証 <一強の果てに 安倍政権の7年8カ月> の第2弾です。
アベノミクスは最後までデフレ脱却を実現できませんでしたが、円安を導き株高を演じたことで富裕層や大企業を大いに富ませ、庶民をより貧しくさせました。
エンゲル係数は(政権発足時の)23・5%を26・9%に、実質賃金指数は(同)104・5を93・4にとそれぞれ悪化させました。
この20年間で労働者の賃金が切り下げられたのは世界広しといえども日本だけです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
緊急検証 <一強の果てに 安倍政権の7年8カ月(2)>
株価重視、生活上向かず 実質賃金低下、年収200万円以下増
東京新聞 2020年8月31日
◆「金持ちにはもうけさせたのに…」
「この7年余りで給料は徐々に下がった。新型コロナウイルスで、この先どうなるかも分からない」
在任7年8カ月の安倍晋三首相が辞任を表明した翌日の29日。東京都内に住むビル清掃員の男性(67)は、不安げな表情で都庁前に集まった160人の列に並び、ご飯やミニトマトなどの食料品を受け取った。
貧困問題に取り組む認定NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」(東京)などによる週2回の食料配布。コロナ禍の生活苦もあって支援を求める人が増え、29日に列に加わった人の数は例年の2.5倍に達した。
安倍政権の7年8カ月で年収1000万円を超える層が増えた一方、200万円以下の「ワーキングプア(働く貧困層)」も増加。格差の拡大が指摘されてきた。食料配布の列に並んだ年金暮らしの無職男性(72)は「金持ちにはもうけさせたのに、貧乏人には何もしてくれない」と憤った。
◆消費税率引き上げで支出増
「アベノミクス」の目玉政策として日銀は2013年に大規模な金融緩和を開始。大量に国債を買い入れ、市場にお金を流しこんできた。結果的に円の価値が下がり、為替相場は円安に。輸出で稼ぐ大企業の業績は回復したが、恩恵を受けた人は多くはなかった。
企業はたまった利益を「内部留保」に回し、賃金は大きくは上がらなかったためだ。失業率など雇用環境は改善したが、企業は人件費を抑えようと低賃金の非正規雇用を増やした。
こうした中で安倍政権は14年4月と19年10月に消費税率を引き上げた。給料は上がらないのに支出は増加。物価の伸びを超えて賃金が上がったかを示す「実質賃金指数」は低下を続け、家計に占める食費の割合を示し、高いほど生活が苦しいとされる「エンゲル係数」は上昇した。
◆株高演出でも「買うお金なんてない」
円安による大企業の業績回復は株高を演出。その後も安倍政権は株価を重視した。市場関係者の間では、支持率を維持するためとの見方がもっぱらだった。
株高は金融資産が多い富裕層ほど受ける恩恵が大きく、格差の拡大を助長した。都内の不動産関連会社で働く40歳代の女性は「アベノミクスはお金を持っている人に有利な政策なので、私たちのような業界にはありがたかった」。逆に、さいたま市の男性会社員(37)は「株を買うお金なんてない。自分とは関係ない人たちがもうけたようで悔しい」と話した。 (吉田通夫、原田晋也)