安倍首相が退陣すればあの熱狂的だった安倍応援団はどうなるのだろう、多分主人公を失うのだから静かになって、ようやく本来の言論空間に戻るのではないかと思ったのですが、どうもそうではなさそうです。
立憲民主党の石垣のりこ参院議員が、安倍首相について「大事な時に体を壊す癖がある危機管理能力のない人物」とツイートしたことに非難が殺到したため、同議員は謝罪したのですがそのあとも批判は鳴りやまず、議員辞職を求める声まで広がっているということです。
公人である首相が美食三昧の挙句に前回と同じ病名で退陣を表明したのですから、危機管理能力の欠如を指摘されても仕方のないことで、周囲に憤慨する自由はあるにしても本来受忍すべきものです。
特に本人の説明によれば6月に潰瘍性大腸炎再発の兆候がわかり、7月中旬に体調に異変を感じたというのですが、首相動静を見るとそれ以降も(コロナ禍で行動の自粛が叫ばれていた中で)ステーキやフランス料理などの会食は止めず、普段も官邸で一流どころの仕出し料理の食事をし毎夕それを食べてから帰宅したようなので、潰瘍性大腸炎の悪化を防ぐうえで問題があったと思われます。
安倍応援団は要するに「病人を批判するのはけしからん」ということなのですが、首相は別に入院治療や静養をしている訳ではなく、本人曰く「(後任が決まるまでの間)私の体調のほうは絶対に大丈夫だと思っております」と執務を続けることを宣言し、「次なる政権に対してもですね、影響力……」と言いかけて「1議員として協力していく」と述べたほどに気力は旺盛なわけです。
それを石垣議員だけでなくTVのMCである膳場貴子氏や星浩氏の言動についても、首相に批判がましいことを言うのはけしからんと攻撃するのでは、安倍応援団一流の衆を頼んだ「批判の抑え込み」に他ならず、彼らは今もなおその手法を続けているということです。
LITERAが取り上げました。
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石垣のりこ議員を非難する安倍応援団の倒錯!
膳場貴子や星浩にまで炎上攻撃で、安倍首相の政権投げ出し批判がタブーに
LITERA 2020.08.31
いったいこの国の言論はどうなっているのか。二度目の無責任な政権投げ出しで、流石にメディアも国民も安倍首相の無責任体質を糾弾するだろうと思っていたら、逆に安倍首相を批判した人たちが集中砲火を浴びている。
とくに、「大事な時に体を壊す癖がある危機管理能力のない人物」とツイートした立憲民主党・石垣のりこ参院議員には、非難が殺到。石垣議員が謝罪をしたあとも批判はなりやまず、議員辞職を求める声まで広がっている。ネットだけではなく、きのうの『ワイドナショー』(フジテレビ)や『サンデー・ジャポン』(TBS)でもこの発言を取り上げ、出演者から石垣議員を批判する声が相次いだ。
この程度のツイートがなぜ、こんなふうに非難されなければならないのか、意味がわからない。
石垣議員を批判する連中はもっともらしく「難病差別」「難病の人を貶める行為」などといった声を上げているが、難病差別でもなんでもない。安倍首相は一般国民でなく、その政策判断によって国民の生命や生活を左右する一国の総理大臣なのだ。そんな権力者が自ら辞任の理由に「病気」をもちだしたのだから、その経緯や真偽を追及するのは当然ではないか。
しかも、安倍首相は1次政権でも今回の2次政権でも、支持率が急落して政治的に追い詰められたとたん、まったく同じように「潰瘍性大腸炎」をもちだして政権を放り出しているのだ。これをたまたまと片付けるほうがおかしいだろう。
実際、29日の記事で書いたように、安倍首相の辞任会見は矛盾だらけだった。会見では、6月に潰瘍性大腸炎再発の兆候がわかり、7月中旬に体調に異変を感じたと説明していたが、首相動静を見ると、体調異変の以降も連日、ステーキやフランス料理などの会食ざんまいの日々を送っていた。また、健康不安を理由に辞任を宣言しながら、会見では入院や静養はせず、「(後任が決まるまでの間)私の体調のほうは絶対に大丈夫だと思っております」と執務を続けることを宣言。さらに、今後について聞かれると、「次なる政権に対してもですね、影響力……」と言いかけて、慌てて「一議員として協力していく」と言いなおす始末だった。
これらをみれば、安倍首相の本当の辞任理由が「病気の悪化」などではないのは明らかではないか。コロナ危機や支持率低下、見通しの立たない政治状況に嫌気がさして政権を投げ出したのである。
そういう意味では、石垣議員は「癖」などという皮肉に逃げずに、安倍首相の責任と辞任の真相をもっと堂々と主張するべきだったとは言えるかもしれない。しかし、だとしても石垣議員のツイートが非難される筋合いはまったくないし、謝罪する必要もなかった。
町山智浩が〈安倍さんに辞職を求めず、石垣のり子議員に辞職を求める人たちの不思議〉
本来、今回の辞任でもっとも批判されなければならないのは、政権を途中で投げ出した安倍首相の無責任ぶりなのだ。もっといえば、無責任に政権を投げ出しながら、その辞任会見で「新体制を1議員として、支えて参りたい」「次なる政権に対してもですね、影響力……」などと平気でうそぶく総理大臣に対してこそ、議員辞職を突きつけるべきだろう
ところが、ネットもマスコミも、安倍首相の問題は一切批判せずに、野党の新人議員を叩くことに夢中になっている。おかしいのは、明らかに石垣議員を非難している側、議員辞職を要求している側なのだ。
映画評論家の町山智浩氏はツイッターで石垣攻撃がいかに倒錯しているかをこう皮肉っていた。
〈森友文書改ざん問題でひとり死んでるのに安倍さんに辞職を求めず、石垣のり子議員に辞職を求める人たちの不思議〉
〈失言した石垣のり子議員に辞任を求める人はその前に「90才になって老後が心配とか、わけのわかんないこと言っている人がこないだテレビに出てた。『オイ、いつまで生きてるつもりだよ』と思いながら見てました」などと発言した麻生太郎議員を辞任させてください〉
〈失言で石垣のり子議員に辞任を求める人はその前に「(終末期医療について)さっさと死ねるようにしてもらうとか、考えないといけない」「(延命治療について)その金が政府のお金でやってもらっているなんて思うと、ますます寝覚めが悪い」と述べた麻生太郎議員を辞任させてください〉
まさにそのとおりだろう。ネットでは「難病を差別している」「病気の人を馬鹿にしている」などと石垣議員を攻撃する意見が殺到しているが、ほんとうに病気の人や障害者を排除し、人命を軽視してきたのは、安倍政権の側ではないか。
いや、それはいま、石垣議員を攻撃しているネトウヨや安倍応援団も同じだ。彼らの多くは「難病差別」や「病気の人を馬鹿にしている」などとわめきながら、アベ政権の医療費削減や福祉削減を推し進める政権を支持してきた。なかには、自ら障害者や弱者差別を口にしてきたものもいる。ようするに彼らは「難病」を利用して、安倍首相の政権投げ出し批判を抑え込みたいだけなのだ。
実際、連中は石垣議員だけではなく、誤読のしようのないごく穏当なコメントをしただけのジャーナリストたちにも次々襲いかかっている。
ごく穏当なコメントをしただけの膳場貴子、星浩にも「クズ」「人間じゃない」
たとえば、29日の『報道特集』(TBS)でキャスターの膳場貴子が「今回、安倍首相が病気を理由に辞意表明したことで、これまでの安倍内閣が行なってきた様々な問題への責任追及がなされない、真実が葬り去られてしまうのではないかという懸念が、国民の中に少なからずあると思う。政権に対する不信感に政権与党は向き合っていく必要がある」と真っ当な指摘をしたが、この膳場の発言にまで安倍応援団やネトウヨがからんできているのだ。
〈原稿を読まされているにしろ病気を揶揄すると必ず己に返ってきますよ〉
〈立憲民主党から立候補してアナウンサーあがりの政治家になりゃええんじゃない?かの有名な石垣のりこさんみたく。〉
〈その原稿、 #膳場貴子 読んでて恥ずかしくないのか?〉
〈早よ、放送免許取り消せよ! 酷い番組だね!いったいどんな人達が集まっているのだろう? 膳場貴子さんは残念な人だ!〉
〈このクズは許さんわ! #膳場貴子〉
また、安倍首相が辞任を発表した28日夜の『news23』(TBS)で、キャスターの星浩氏が「第一次政権の時に投げ出したとか無責任だと言われたのですが」「任期途中の辞任ですからこのコロナ危機の中でやはりまた、政権を投げ出したという印象はぬぐいきれないんだと思います」と解説したが、これに対してもこんなツイートが殺到している。
〈お前、大病を患っても辞めないんだな?」
〈倒れて入院するまで黙って働き続ければ文句無いのか?後任が決まるまで続投できる余裕のある今辞任の意向を示すのがベストだろ?〉
〈星浩が首相の辞任を「投げ出した」と言ったそうな。 理由が病気だろうと、その病気が難病だろうと、途中でやめたから「投げ出した」なんだな? それは、すべての病気を抱えている人達へのヘイトだ! これこそ差別主義者の思考だし、絶対に許されてはならない。〉
〈星浩、人間じゃないですね。〉
これらの攻撃ツイートの中身は呆れてものも言えないような低レベルなものが多いが、しかし、問題はこうした「難病」を利用した恫喝、批判封じ込めによって、ネットの一般ユーザーやメディアまでが凍りつき、マスコミでは安倍首相の辞任の経緯を検証することや安倍政権の批判的総括がタブーになりつつあることだ。
まさに膳場貴子が指摘していた「安倍首相が病気を理由に辞意表明したことで、これまでの安倍内閣が行なってきた様々な問題への責任追及がなされない、真実が葬り去られてしまう」という事態が進行しているのである。
安倍首相がいなくなっても、“権力者は何をやっても批判されず、弱者だけが叩かれる”というこの国の暗黒的な言論状況は何も変わらないということらしい。 (編集部)