2020年9月1日火曜日

何もかも行き詰まった安倍首相 辞意と病気の全真相 <下> (日刊ゲンダイ)

 日刊ゲンダイ29日号の巻頭特集「何もかも行き詰まった安倍首相 辞意と病気の全真相」の <下> 編の「文字起こし版」が阿修羅に載りましたので紹介します。

 ここでは、一番の悲劇は新政権安倍政権の『居抜き』の内閣」になることで、安倍政権と一線を画した本格政権の誕生がなくては、安倍政権が遺した壮大な負のレガシーを克服することなど出来ないと述べています。

 ところが30日辺りから、菅官房長官が次期首相に意欲を示し、最有力であると報じられるようになりました。しかし菅氏ではあまりにも安倍首相と重なり過ぎるし、さらに陰険の度が加わる感じこそあれ何の変わり映えもしません。
 新内閣の最重要課題のコロナ禍対策をはじめ、安倍首相が遺した壮大な負のレガシーが改まるなどとはとても思われません。

 日刊ゲンダイは
7年8カ月続いた歴代最長政権が史上最悪政権というのは国民にとって不幸でしかない」とし、「安倍首相が辞めても、その亜流が新政権を牛耳るなら何も変わらない。次の政権は少なくとも、ごまかしのない、正直な政権でなければならない。国民を騙してきた“共犯者”に出番を与えてはいけない
としていますが、どうもそれとはうらはらに最も不幸な方向に向かっている感じです。
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何もかも行き詰まった安倍首相 辞意と病気の全真相 <下>
 日刊ゲンダイ 2020/08/29
記事集約サイト「阿修羅」より転載
安倍の病気を最大限悪用する「新内閣で冒頭解散」現実味
 9月に新首相が誕生することが決まり、早くも政界では「解散・総選挙はいつか」が取り沙汰されている。衆院議員の任期は来年10月までだ。どんなに遅くても1年後には衆院選が実施される。
 常識的には、このコロナ禍が収まるまで解散は打ちづらい。選挙となったら1カ月の政治空白が生じるうえ、選挙運動は“密”となるからだ。ところが、早期解散説が浮上している。日程は「10・25」投開票だ。
「10・25選挙は、以前から囁かれていました。年内に解散するとしたらこの日しかないとみられていた。実際、この日を逃すと、限りなく任期満了選挙に近づきます。来年までズレ込むと、予算が成立するまで解散は事実上、不可能だし、予算成立直後も、7月に公明党が重視する東京都議選があるので難しい。公明党は都議選とのダブルを嫌がりますからね。早期の解散を狙うなら、10・25投開票はワンチャンスなのです」(政界関係者)

 早期解散の方が、自民党にとっても断然有利だという。自民党内からは、「早い解散なら病気で辞任した安倍さんへの同情票も集まる」という声さえ飛んでいる。
 政治評論家の有馬晴海氏はこう言う。
「新政権が誕生した後、新しい総理がすぐに解散に打って出る可能性は十分あると思います。特に国民の人気が高い石破首相ならば、自民党内で早期解散への期待が高まるでしょう。まず、政権発足直後ならご祝儀もあり、支持率は高い。9月解散なら、野党の選挙態勢も整っていない。それに長くやれば必ずボロが出てきます。時間をかけても、内政も外交も難問山積だから、成果を上げることも難しい。勝敗だけを考えたら、新政権は早期解散に動くはずです」
 勢力結集にもたついている野党は、新党結成を急いだ方がいい。

ロクでもない首相の辞任で最悪事態は免れた
 もし、無能な安倍政権がいつまでも続いていたら、コロナ禍は拡大し、経済も落ち込み、日本はトンデモナイことになっていたはずだ。
 新型コロナの第1波が収まった後、安倍が「日本モデル」と胸を張ったのも束の間、7月に入り感染が再拡大。新規感染者数は第1波を超える勢いだ。高齢者感染が増えるにつれ、重症者数や死者数もジワジワ増えている。人口10万人当たりの死者数も、アジア圏で比較すれば日本はフィリピンに次ぐワースト2位。PCR検査数も増えない
 涼しくなる秋以降はウイルスが活発になり、もっと強烈な波が襲うと心配されている。手を打とうとしない安倍政権が続いていたら恐ろしいことになっていたはずだ。

 アベノミクスは失敗し、足元の日本経済もボロボロ。20年4~6月期の実質GDPは、年率換算27・8%減の戦後最大のマイナス成長だった。消費増税が直撃した昨年の10~12月、今年1~3月に続き、3四半期連続のマイナス成長である。経済無策の安倍政権では、この先も絶望的だった。経済評論家の斎藤満氏が言う。
「秋以降、経済状況は厳しくなります。GDPも20年10~12月期以降に2番底、3番底が来てもおかしくありません。問題は第1波の時と違い、国も自治体も企業も、もうお金がないことです。これまでは資金繰りの脆弱な中小企業の倒産が中心でしたが、内部留保を吐き出した大企業の資金繰りも厳しくなるでしょう」
 このままいけば地獄へまっしぐらだった国民生活。安倍の辞任で政策が修正される可能性が出てきたのが唯一の救いだ。

権力亡者たちが流す「コロナだから政策継続」というオタメゴカシ
 ポスト安倍レースの号砲に自民党は浮足立っている。辞意表明会見に先立つ臨時役員会で、総裁選の時期、形式について一任された二階幹事長は、国会議員と各都道府県連3票による投票で実施する方針を固めた。来月1日の総務会で決定し、同15日に総裁選を実施する見通しだ。二階は「首相の実績を汚さず、やがて上回る人を選びたい」と言い、ブン投げ当事者の安倍は「ウィズコロナ、ポストコロナ時代に向けてビジョンを示しているわけで、そうしたものを共有していただきたい」と発言。「コロナ禍に政治空白は許されない」を免罪符に、新政権は「アベ居抜き内閣」となりそうな雲行きである。
「長らく主要閣僚を動かさなかったので人材が育っていません。だから、ポスト安倍に名前が挙がっているのは、安倍政権のヒモ付きばかり。安倍政権と一線を画した本格政権の誕生は期待薄です」(角谷浩一氏=前出)

 ポスト安倍の亜流は「悪夢の安倍政権」の継続に他ならない。安倍は権力を悪用し、徹底して国家を私物化してきた。身内に甘い汁を吸わせたモリカケ桜疑惑のド真ん中にいるのは安倍本人だ。森友疑惑を巡って「私や妻が関係していたら総理大臣も国会議員も辞める」とタンカを切り、財務省は公文書の改ざんに手を染め、不正を強いられた職員は自殺に追い込まれた。アベノミクスの演出で厚労省は統計不正に走った。民主主義の根幹である公文書をメチャクチャに扱い、犯罪行為をもみ消すために検察人事にまで手を突っ込む犯罪者集団なのである。
 権力の暴走を厳しく監視する役割を負うはずのメディアもアメとムチで飼いならされ、政権の言い分を垂れ流し。数々のペテンやインチキに目をつぶってきた。安倍がこの国に残したのは負のレガシーしかないのを決して忘れてはいけない。

悪政の膿を出し切るには安倍一派の一掃が必要
 安倍の健康不安が強まったきっかけは、慶大病院を最初に受診した17日の前日、テレビ出演した“盟友”の甘利明自民党税制調査会長が安倍の体調について「ちょっと休んでもらいたい」と発言したことだ。「そこまで悪いのか」という驚きが永田町に広がったのだった。
 麻生財務相も「147日間、休まず働いたら普通、体調はおかしくなるんじゃないの」と安倍を擁護していたが、今から考えれば「安倍退陣」を先読みして、その後の流れを自分たちでつくろうという魂胆ではなかったか。
 健康問題すらも政局にする。それが安倍政権の正体。7年8カ月続いた歴代最長政権が史上最悪政権というのは国民にとって不幸でしかない。
 政権初期から、安倍に麻生、甘利、菅を加えた「3A+S」が“骨格”と言われてきた。途中から、二階を加えて政権の“屋台骨”とされてきたが、安倍を筆頭に彼らは「自分たちの権力を脅かす危険な芽は、早めに摘んでおく」という利害の一致で、後継人材をマトモに育ててこなかった。
 安倍が辞めても、この連中が新政権を牛耳るなら、何も変わらない。悪政の膿を出し切るには安倍一派の一掃が必要である。

 政治評論家の森田実氏が言う。
「論語の『巧言令色、鮮し仁』。うまい言葉を操って飾り立てる者は仁(本当の愛)が少ない、という意味ですが、安倍政権はまさにこれでした。長きにわたって日本に害毒を流してきたのです。次の政権は少なくとも、ごまかしのない、正直な政権でなければなりません。国民を騙してきた“共犯者”に出番を与えてはいけません
 今こそ、ドラスチックな人心刷新がなければ、自民党は国民から見放されるだけだ。