2023年3月25日土曜日

徴用工問題 韓国財団が日本企業の賠償肩代わり それでいい筈がない

 16日初来日した韓国の尹錫悦大統領は、元徴用工への賠償を日本企業に求めた18年の韓国大法院判決に関連して、韓国の財団が肩代わりするとした「解決策」を提示しました。それに対して日本は19年から続く韓国への半導体関連3品目フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素の輸出規制強化措置を解除輸出手続き上の優遇対象国再指定は未了)しました。

 かつての植民地支配の問題については、岸田首相は「日本政府は199810月の日韓共同宣言を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる」と述べただけで、同宣言に明記している「痛切な反省と心からのおわび」には直接言及しませんでした。
 これについて共産党の志位委員長は、「日韓が未来にわたって心の通った友好関係を築こうというのならば、岸田首相は歴史問題にどう向き合うかについて、自分の言葉で語るべき」と述べました。
   ⇒ (3月18日)歴史問題にどう向き合うか 首相は自分の言葉で語るべきだ
 日本側が徴用工問題で謝罪と賠償の意思を示さないことに韓国民は怒りをあらわにしています。赤旗日曜版3月26日号が取り上げました。
 記事の中で、一橋大学准教授の加藤圭木(けいき)さんは、「根底に植民地支配への無反省があり、それは今も続く差別と地続きの問題」と述べています。
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徴用工問題 韓国財団が日本企業の賠償肩代わり 被害者「謝罪が先だ
                    しんぶん赤旗日曜版 2023年3月26日号
「(解決は)必ず謝罪を先にしてからだ」。徴用工問題の強制動員被害者で原告の梁錦徳(ヤン・クムドク)さん(93)は、日本側が謝罪と賠償の意思を示さない韓国政府の「解決策」に怒りをあらわにしました。日本でも批判の声が上がっています。 本吉真希記者

謝罪は譲れない一線。偽物の解決はいらない」。10日、東京都内の三菱重工本社前で俳優の武藤陽子さんは訴えました。武藤さんは被害を描いた演劇で梁さんを演じました。梁さんは「金が稼げて女学校にも入れる」とだまされ、名古屋・三菱重工の軍需工場で働かされました
 問題解決を求め同本社前で16年運動してきた「名古屋三菱・朝鮮女子勤労挺身(ていしん)隊訴訟を支援する会」。社員に向け「強制動員の本質は被害者救済という人権問題だ」と訴えました。
 被害者が一貫して求めてきたのは、日本政府と加害企業の謝罪です。支援する会の高橋信(まこと)共同代表(80)はいいます。
 「人をだまして連れてきて給料も払わず、78年間も放っている。そこが謝罪にこだわる一番の根拠です」
 徴用工問題に関し韓国政府が6日に示した「解決策」は、2018年に大法院(最高裁)が被告の三菱重工と日本製鉄(旧新日鉄住金)に命じた賠償を韓国政府傘下の財団が肩代わりするもの。10日の韓国の世論調査では「謝罪と賠償がなく反対」が59、「韓日関係と国益のため賛成」が35でした。

根底に植民地支配への無反省 今も続く差別と地続きの問題
      一橋大学准教授 加藤圭木さん
 徴用工問題の根底について、朝鮮近現代史を研究する加藤圭木・一橋大学准教授に聞きました。

 植民地支配は列強国を中心に長年、正当化されてきました。しかし、植民地支配と奴隷制は過去にさかのぽって非難されなけれぱならないとした「ダーバン宣言」が、2001年に国連が開いた会議で採択されると、植民地支配は人道に対する罪として議論が活性化されました。植民地支配そのものが不当だという認識を国際社会が確立していく過程で、韓国の大法院判決(18年)が出されました。
 大法院判決は強制動員だけでなく、植民地支配も不法としました。「植民地支配は不法な国家犯罪で人道に対する罪だ」と、日本政府がきちんと認めて責任を果たさなければ、問題は絶対に解決しません。罪を認めないことが、被害者へのさらなる人権侵害となっています。
 韓国はじめ国際社会では、従来置き去りにされてきた戦争や植民地支配の被害者たちの声が重要視されています。日本はその大きな動きの正当性を認識できていません。まさに旧宗主国の論理で被害者の声をつぶそうとしています
 1965年の日韓請求権協定は、国交回復にあたって日本が韓国に経済的な協力をするというものです。不法行為への賠償という性格は一切ありません。
 そもそも日韓会談(51~65年)の過程で、日本は植民地支配の責任を否定しています。「何度おわびしたらいいのか」という人もいますが、国家責任を認めて賠償することで初めて謝罪として認められるのです。
 日本は朝鮮への侵略と植民地支配の過程で大量の虐殺を行い、日本の経済発展のために収奪を重ねました。日本人を頂点とする地主制度によって、農民たちは絶対的貧困に追いやられました。生活基盤を破壊され、日本や満州に渡り民族が離散する事態も起こりました。多数が教育から排除され、教育を受けられたとしても日本語や日本の文化を押しつけられました。
 日本が朝鮮を支配し続けたその暴力性に、私たちは想像力をもたなけれぱいけません。
 日本政府はきちんとした歴史認識に基づく謝罪も賠償も、再発防止措置もしていません。再発防止には歴史教育が重要です。しかし菅政権は朝鮮人強制動員について、強制連行・強制労働を否定する答弁書を閣議決定し、教科書の記述に介入しました
 近代の植民地支配は現在の問題と地続きです。一番に在日朝鮮人への差別が挙げられます。植民地支配と密接な関係を有していた日本「慰安婦」制度は、民族差別、女性差別、階級差別を伴っていましたが、これらは今日も続いています。

            日本の朝鮮植民地支配とその後の動き

1904~05年  日露戦争を機に朝鮮を軍事占領

    10年 「韓国併合」
    39年  朝鮮人強制動員が始まる
    45年  日本の敗戦で植民地支配から解放
    65年  日韓基本条約、日韓請求権協定を締結
   2012年  韓国大法院が「日韓請求権協定で個人の請求権は消滅して いない」
         と判断
    18年  大法院が被告の日本企業2社に賠償命じる判決を確定