2023年3月15日水曜日

問題はTV局トップの在り方/チンピラを重用し国民を舐めていた安倍(日刊ゲンダイ)

 久しぶりに「阿修羅」に日刊ゲンダイの文字起こし記事が載りました。

 タイトルは「安倍・菅強権政権に唯々諾々 放送法の解釈よりも問題はTV局トップの在り方」です。
 放送「政治的公平」は従来、一つの番組ではなく放送局の番組全体から判断するというのが一貫した見解でした。それが15年5月高市総務相(当時)の「一つの番組でも放送法に抵触する場合がある」という答弁によって根本から変わり、翌16年2月には高市氏は放送局の電波停止にまで踏み込みました。
 これこそは安倍政権によるメディアへの不当な政治介入であり、総務省の行政文書が告発しているものです。
 問題はそれに対してメディアがどう反発したのかですが、TV局の幹部たち強権政権におもねり、唯々諾々と恭順の態度を示したのでした。それは現在にまで及んでいて、岸田首相の「大軍拡・大増税」という反動政治に対してもロクな批判を加えていません。
 TVは死んでいるに等しいと言えます。

 併せて「改めて暴かれるデタラメの数々 チンピラを重用し国民を舐めていた安倍晋三」を紹介します。ここではそうした安倍元首相の手足になって働いたのが、安倍氏へのゴマすりのチンピラたちだったことが報じられています。
 メディア側の体たらくといい、政権側のデタラメといい救いようのない話です。それにしても国民は何故そんなことを許してきたのでしょうか。
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安倍・菅強権政権に唯々諾々 放送法の解釈よりも問題はTV局トップの在り方
                         日刊ゲンダイ 2023/ 03/ 14
                        (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 「恥ずかしながら、羽鳥アナウンサーの大ファンで、朝は8時から8時5分までの間は、羽鳥さんの顔をひと目見て出かけるくらいでございます」
 いよいよ、詭弁のネタも底をつきたらしい。13日の参院予算委員会で高市経済安保担当相は放送法の「政治的公平」に関する総務省の行政文書のうち、当時総務相だった自身のものとされる「そもそもテレビ朝日に公平な番組なんてある?」との発言録を否定。同局朝の情報番組のMCを務める羽鳥慎一アナへの熱い思いを告白し、「テレビ朝日をディスるはずもございません」と言ってのけた。
 国会審議で愛を打ち明けるのは異例だが、総務省側はこの日、高市が実施の事実を認めない2015年2月の担当局長によるレクについて「あった可能性が高い」と答弁。追い詰められた高市の言い訳のダシに使われる羽鳥アナもいい迷惑だろう。
 高市の去就に問題が矮小化されがちだが、本質を見失ってはいけない。総務省の行政文書が突きつけているのは、安倍政権下における政府のメディアに対する不当な政治介入だ。
 安倍元首相の個人的感情と「変なヤクザ」と評された礒崎陽輔首相補佐官の忖度により、憲法や放送法が保障する「表現の自由」が密室で歪められたおぞましい経緯の検証が必要である。
 放送法4条の「政治的公平」は従来、一つの番組ではなく、放送局の番組全体から判断するという見解だったが、安倍政権下で「一番組でも放送法に抵触する場合がある」に変わった。それを15年5月に国会で答弁したのは高市だ。翌16年2月には放送局の電波停止にまで踏み込んだ

メディアの掌握だけが唯一のレガシー
 いくら高市が「文書は捏造」と言い張っても、過去の自身の答弁は覆らない。国会では連日、野党議員が安倍周辺のチンピラ補佐官の提案によって、放送行政が歪められたと追及しているが、肝心のTV局はおとなしい。本来なら「報道、放送、表現の自由」に関わる法解釈の変更を「見直せ!」と岸田政権に迫ってしかるべきなのに、NHKや民放キー局の幹部からはついぞ、そんな抗議の声は聞こえない。
 思い返せばTV局への威嚇・ドーカツは約10年に及んだ安倍・菅両政権の常套手段。そしてその都度、強権政権におもねり、唯々諾々と恭順の態度を示してきたのが、この国のTV局の幹部たちである。政治評論家の本澤二郎氏はこう言った。
 「数々の政治介入に、当事者である放送局側は少しでも抵抗したのか。正当な反論・批判を繰り返していれば、今回の行政文書が問題視されることはなかった。あたかも放送行政が歪められたかのような追及は後の祭り。安倍政権時代は、どのTV局も幹部連中は首相と『夜の会食』三昧。中にはフジテレビ会長だった日枝久氏のように、ゴルフコンペが恒例となっていた経営者までいた。TV局側が進んで政権に籠絡されたようなもので、高市大臣を図に乗らせているのも、TV局が怒らないから。アベノミクスや北方領土交渉など内政も外交もことごとく失敗した安倍政権でしたが、メディアの掌握だけが唯一の“レガシー”とは、皮肉な話です」
 12年12月に第2次安倍政権が発足して以降、日本のTV史は時の権力に屈服し、自滅していった事象の連続だ。まずロコツな人事介入を受けたのはNHKである。

政権の暴走と重なる屈服と自滅の歴史
 安倍は13年11月に会長職の決定権を握る経営委員に作家の百田尚樹氏ら“シンパ”を送り込み、政権のイエスマン、籾井勝人会長を誕生させた。経営委員として籾井氏を推薦したのは、JR九州会長だった石原進氏。彼は財界人による安倍応援団「四季の会」のメンバーで、会を立ち上げたのは昨年亡くなったJR東海の葛西敬之名誉会長だ。
 ジャーナリスト・森功氏の著書「国商 最後のフィクサー葛西敬之」には、安倍と蜜月関係にあった葛西氏が歴代NHK会長の人選に関与した経緯が描かれている。前会長の前田晃伸氏も四季の会メンバーで、安倍・菅両政権下の会長人事は「アベ友」の葛西氏に仕切られたという。
 安倍政権は13年12月に特定秘密保護法を強行採決し、14年7月には集団的自衛権行使容認の閣議決定を断行。暴走の加速と放送局への圧力を強めた時期は奇妙に一致する。
 14年11月18日の会見で、安倍は消費税増税の延期を理由に衆院解散を表明。TBS系「NEWS23」に出演中、街頭インタビューに「厳しい意見を意図的に選んでいる」とブチ切れたのは、この日夜だ。その2日後、自民党は総裁特別補佐の萩生田光一筆頭副幹事長(当時)らの連名で、在京の全民放キー局に選挙報道での「公平中立、公正の確保」を求める文書を送り付けた
 以降、ニュース番組からはアベノミクス批判どころか、選挙報道そのものが自粛したかのように激減した。
 渦中の行政文書によると、礒崎は「圧力文書」送付の3日後、11月23日OAのTBS系「サンデーモーニング」の番組内容が政権批判に「偏っている」と問題視。26日に総務省の担当部局に電話し、「政治的公平」に関するレクを持ちかけ、2日後に実現。総選挙の自民大勝を挟み、「けしからん番組は取り締まる」との趣旨で、法解釈は大きく歪められていく。

「報道の自由」は国民の側に立ってこそ
 翌15年1月にテレビ朝日系「報道ステーション」のコメンテーターだった元経産官僚の古賀茂明氏が番組内で「I am not Abe」のフリップを掲げ、政権を批判。官邸からの圧力で降板させられると、同年4月、この件で自民党はテレ朝幹部を党の会議に呼び出し、事情聴取した。この時はNHK幹部も「クローズアップ現代」のヤラセ疑惑について説明を求められた。
 政権与党が放送局の幹部を特定の番組に関して呼びつけるのは、圧力以外の何ものでもない。ところが、強制力のない聴取に応じたテレ朝の福田俊男専務(当時)は反発することもなく、「誤解が生じたら困るので、いい機会と捉えて出席した」と媚びたものだ。
 15年11月には読売・産経両紙に突如、NEWS23のアンカーを務めていた故・岸井成格氏を名指しで糾弾する「放送法遵守を求める視聴者の会」の全面意見広告が掲載。ヤリ玉に挙げたのは安保法制審議が大詰めを迎えた同年9月の放送で、岸井氏が「メディアとしても廃案に向けて声をずっと上げ続けるべきだ」と発言したこと。岸井氏は、礒崎が問題視した「サンモニ」にも出演していた。
 安倍応援団の文化人による意見広告の体裁を取っていたが、この時も礒崎は「極めて冷静で妥当な意見です」と即座にツイート。この会がTBSや総務省、岸井氏個人に放送法4条の遵守を求める公開質問状を送り、軌を一にするように高市の「停波」発言が飛び出したのだ。
 そして翌16年春に岸井氏や、行政文書にも名前が出てくる「報ステ」の古舘伊知郎氏、「クロ現」の国谷裕子氏ら政権に批判的なキャスターたちが、軒並み番組を降ろされた。古賀・古舘両氏の降板当時、テレ朝の放送番組審議委員長は幻冬舎の見城徹社長だった。同社は多くの「安倍ヨイショ本」を出版。ここにも「アベ友」が影を落としている。

「権力の暴走を監視するマスコミは時の政権に煙たがられる存在でなくてはいけません。『報道の自由』が憲法で守られているのは主権者・国民の側に立ってこそ。政権にやすやすと切り崩され、迎合してしまえば『政権御用放送』と変わらない。健全な民主主義社会を維持するにはこれ以上、TV局の傍観は許されません」(立正大名誉教授・金子勝=憲法)
 情けないことに、この国では放送法の解釈よりも、TV局トップの在り方が問題になってしまう。今こそ、その見識が問われる。


改めて暴かれるデタラメの数々 チンピラを重用し国民を舐めていた安倍晋三
                         日刊ゲンダイ 2023/03/13
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 放送法の「政治的公平」に関する行政文書をめぐる問題。その本質は、憲法や放送法が保障する表現の自由に対する不当な政治介入だが、当時総務相だった高市経済安保相が「捏造だ」と言い張るため、岸田政権は調査に及び腰総務省が10日に発表した途中経過も、「作成者が確認できていない」「実際にやりとりがあったかどうか内容を精査」などノラリクラリだった
 中でも驚いたのが、執拗に介入を繰り返した礒崎陽輔首相補佐官(当時=参院議員)について、「強要があったとの認識は関係者全員が示さなかった」としたこと。曖昧決着で収束させたい一心なのだろうが、行政文書に残された礒崎発言を読んで、「強要がなかった」に納得する人がどこにいるのか。「局長ごときが言う話ではない」「俺の顔をつぶすようなことになれば、ただじゃあ済まないぞ。クビが飛ぶぞ」「俺を信用しろ。ちゃんとやってくれれば悪いようにしない」──。総務省から安倍官邸に出向していた山田真貴子首相秘書官の「今回の話は変なヤクザに絡まれたって話だ」という発言が文書に残っているとおりで、誰もが眉をひそめるような“ヤクザ”まがいの言動以外の何ものでもない
「礒崎さんには、当時、自民党内の一部も冷ややかでした。失言を繰り返し、安倍政権の“アキレス腱”と報じられたこともあった。側近偏重で倒れた第1次の『お友達』政権の二の舞いかと危惧されたものです」(自民党関係者)

集まるのはゴマスリばかり
 いま礒崎は、2019年の参院選で落選してタダの人だ。しかし、忘れちゃならないのは、礒崎が第2次安倍政権当時、首相補佐官として13年に成立した特定秘密保護法や15年の安保関連法制を担当し、安倍首相の“知恵袋”“懐刀”と呼ばれていたことである。東大法学部を卒業し、旧自治省(現総務省)に入省したエリート政治家が、虎の威を借って傍若無人なふるまい。
 実は、今回の行政文書の件以外でもトンデモ発言を連発して問題になっていた。
 憲法で権力を縛る「立憲主義」は憲法学の常識なのに、「この言葉は、学生時代の憲法講義では聴いたことがありません。昔からある学説なのでしょうか」とツイッターでつぶやき、憲法改正について講演で「国民に一回味わってもらう」と言い放った。極め付きは安保法制をめぐって飛び出した「法的安定性など関係ない」という暴言。与党も問題視し、礒崎は国会に参考人招致され、発言を撤回、謝罪させられた。
 ところが、補佐官辞任論も出たのに安倍がかばって辞めさせず、結局、有権者が選挙で良識を見せて落選させた形だ。こんなチンピラを重用したことに、安倍政権の体質が表れていると言える。
 政治評論家の野上忠興氏がこう言う。
「安倍さんは『自分が一番かわいい』という人なので、自分のために働いてくれる者が“愛いやつ”になる。政治家としての能力や資質は二の次で、自分の主義主張を広めてくれればいい。だから、安倍さんの周囲に集まってくるのはゴマすりタイプばかりなのです。今回、渦中の人となっている高市さんもそう。『捏造』だとか『大臣も議員も辞める』とか、森友問題での安倍さんと同じ発言をすれば、安倍シンパが喜ぶと思っているのでしょう」

「類は友を呼ぶ」の格言通りの強権政権だった
 自分のために働くならどんな人物だろうが重用するという意味では、安倍のインタビューを口述記録として出版した「安倍晋三 回顧録」に、目を剥くような話がいくつも出てくる。
 安倍は戦後70年の節目に当たる2015年に、日本の首相としては初めて米国連邦議会の上下両院合同会議で演説した。これは安倍が誇る実績のひとつだが、「回顧録」によれば安倍の意を受けて米国でロビー外交を行ったのは、河井克行首相補佐官(当時)だったという。
<後に加重買収の罪で逮捕、起訴され、実刑が確定した河井克行首相補佐官は、足繁く米国の議員を回って人脈をつくってくれました>と安倍が語っている。そう、妻の案里元参院議員の選挙に絡む公職選挙法違反(買収、事前運動)の罪で、懲役3年、追徴金130万円の実刑が確定し、現在服役中の、あの河井元法相のことである。
 河井の公判で証人として出廷した元広島県議が、こう証言している。
「選挙戦の演説会場でトイレの小便器の前に立つと、上着のポケットに突然封筒が入れられ、横に元法相がいた。会話はせず、元法相はすぐトイレを出た。現金は30万円だった」
 トイレで有無を言わせず、金を掴ませる。国会議員と地方議員の上下関係は明らかで、「分かっているな」という無言の圧力。これもヤクザかチンピラの手口だ。
回顧録」で安倍は河井事件についても話しているが、自民党本部が案里側に提供した1億5000万円の使途がウヤムヤになっている件について説明することはなく、<1選挙区で1億円以上出費した例はいくらでもあります>と涼しい顔。
 安倍の順法意識の低さという点では、黒川弘務東京高検検事長(当時)が賭け麻雀で辞任した件について、<レートは1000点100円のテンピンだったんでしょ。普通のサラリーマンでもやっています。検察審査会は起訴相当という判断を下しましたが。過酷に過ぎる気がしますね>と言ってのけるのだからア然である。
 その一方で、安保法制に反対し、国会前でデモ活動を繰り広げた学生たち「SEALDs」については、<私が子どもの頃にテレビで見ていた60年安保闘争に比べれば、正直、彼らの運動は大したことはなかったですよ>とバカにする。当時の世論は安保法制に反対が多数だった。平和憲法と相いれない集団的自衛権の行使容認で戦争のできる国になってしまうことを真剣に止めようとしているのに、為政者は火炎瓶を投げられなければ動じないのか。国民愚弄も甚だしい。
「選挙応援で『こんな人たちに負けるわけにはいかない』と演説したように、安倍さんには『敵か味方か』という分断の論理しかないのですよ。コンプレックスと劣等感から来るものですが、マスコミに対してもそういう手法でしたね」(野上忠興氏=前出)

アベ政治にからめとられた自民党では絶望的
 つまるところ、親分がチンピラだから子分にも同類が集まる。安倍政権で官房副長官だった世耕弘成参院幹事長のアベノミクスをめぐる最近の発言もチンピラ同然だ。
 日銀の黒田東彦総裁が推し進めた「異次元緩和」について、日銀前総裁の白川方明氏が「壮大な金融実験」と批判したことに噛みつき、「まずご自身の時代をしっかり総括していただきたい」とドーカツした一件のことである。
 その世耕と安倍派の跡目争いをしている萩生田光一政調会長も安倍政権時代の官房副長官であり、党の役職でも総裁特別補佐を務めた。思い返せば萩生田こそ、選挙報道で政治的公平を事細かに求めるペーパーを出して放送局に圧力をかけた張本人である。
 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。
「『類は友を呼ぶ』という格言通りの政権でした。社会を分断して、敵をつくって攻撃。丁寧な手続きを軽視して、強権的に政策を遂行。そして、嘘もつき続ければ、真実になると考えている。そんな手法のとんでもない政権でした。ハト派の宏池会の岸田首相は、本来、安倍氏とは異なる方向性が出せるはずなのに、安倍氏なきアベ政治にからめとられた自民党には、もはや振り子の論理が働かない。安倍氏に乗っ取られた自民党は、多様性や柔軟性を失い、硬直化してしまいました
 安倍がいなくなったことで、安倍政権のデタラメの数々が改めて暴かれる。よくもまあこんな政権が8年も続いたものだ。
 アベ政治と決別できない自民党政権では、この国は決して良くならない。