シリーズ「岸田大軍拡異議あり」に、元文部科学事務次官の前川喜平さんが登場しました。前川さんは、安保3文書は経済力や技術力などすべての力を安全保障に集約させようとするもので、国家総動員体制的であり先軍政治ではないかと懸念されるとします。学問の成果は万人が享受すべきであるのに、政治が介入することで軍事産業にそうした成果を動員しようとするのは耐えがたいことだと述べました。
そして人類は21世紀の今日、戦争が違法となるまで努力してきたのであり、力ではなく、法の支配で平和を維持していくべきだとしています。
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岸田大軍拡異議あり 力でなく法の下で平和を
元文部科学事務次官 前川喜平さん
しんぶん赤旗 2023年3月1日
安保3文書は経済力や技術力など、すべての力を安全保障に集約させるとなっています。「安全保障分野における政府と企業・学術界との実践的な連携の強化」とも書かれており、大学の学術研究を軍事技術に動員しようという発想があります。国家総動員体制的であり、軍事を優先する先軍政治ではないかと懸念します。
その考えは今国会で出されようとしている日本学術会議法改定案にも表れています。第三者機関をつくって会員選出に介入することで、政権の血のかかった人たちが任命されることになります。学術会議は戦争目的の研究をしないとしていますが、会員選出に介入されれば、「軍事研究もいいではないか」と変えられていくのではないでしょう
か。
学術、学問は人類の幸福のために真理を追究します。発見された真理は人類の共有物であって万人が享受する。他方、軍事産業は人間の生活を効果的に破壊する武器をつくります。人が幸せにならない産業です。そのために学術、学問が動員されるのは耐えがたい。
戦争が起こればもうかる人がいます。軍事産業です。その人たちに支えられた自民党が軍備拡大にかじを切っています。このままでは戦争を起こそうとする力が日本に生まれてしまいます。本当に危ない。
戦争は人間が防ぐことができます。人類は100年単位でみれば少しずつ進化しています。19世紀は国家がいつでも戦争をできました。21世紀の今日は戦争が違法となるまで努力をしてきました。ロシアのプーチン大統領のような19世紀に戻る指導者は出てきますが、そのもくろみは最終的には失敗するに決まっています。
国際社会は、国連憲章、国際人道法、核兵器禁止条約といった人類の普遍的な価値を共有する努力を続けてきましだ。法の支配の下で平和を維持していこうという知恵が進んでいることは間違いない。力ではなく、法の支配で平和を維持していくべきです。
(聞き手 三浦誠)
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。