2023年3月8日水曜日

総務省の内部文書に“クビ”を懸けた高市早苗氏の誤算と窮地(日刊ゲンダイ)

 立民党の小西洋之参院議員が2日、記者会見し、総務省の職員から提供を受けたとして総務省の内部文書(A4版78枚)を公表しました。それは安倍政権が「民主主義の根幹である放送法の解釈を、少人数の権力者だけで作ってしまった」(小西洋之氏)ことを証明するものでした。
 内部文書に登場する主役は礒崎陽輔首相補佐官(当時)で、彼は最終的には安倍首相の強い意向を笠に着て政治的公平性をめぐる放送法の解釈について、従来は「一つの番組ではなく放送事業者の番組全体をみて判断する」でしたが、安倍政権下でそれが「一つの番組で判断できる」に一転させたのでした。
 この内部文書の真偽について、松本総務相は7日午前、「すべて総務省の行政文書であることが確認できた」と明らかにしました。

 ところで7,8年も前の文書が暴露された理由について、日刊ゲンダイは「落選中の礒崎氏が4月に行われる参院大分補選に立候補するのを牽制する目的なのか」と述べています。

 磯崎氏が標的の一人であるのは明らかですが、総務省の官僚が恐れていた「一つの番組で公平性を判断できる」ことを国会答弁などを通じて、積極的に実現したのは高市早苗総務相(当時)でした。
 その高市経済安保相は小西氏の質問に対して、開口一番「まったくの捏造文書」と決めつけ、「捏造でなければ辞職」と威勢よくタンカを切りました。彼女はこのところ政治資金規正法違反で追及されたり地元の奈良県が知事選を巡って内部分裂していて調整能力を疑われていることなどもあって過剰反応したのでしょうか。
 その後内部文書が正規のものであると明らかにされると、高市氏は今度は自分に関する部分が捏造だとして辞任を否定しました。これは始めから予想されていたことですが、さすがに見苦しくタンカなど切るべきではありませんでした。
 日刊ゲンダイの記事を紹介します。

 なおこの内部文書問題についてはLITERAが下記の記事を出しています(5日付)。
 ⇒ 安倍政権の言論弾圧「放送法解釈変更」をめぐる総務省内部文書のリアルすぎる中身! 高市早苗はこれでも「捏造」と言い張るのか
 これは8800字に及ぶ長文なものなので、ここでは紹介できません。興味のある方は上記から原文にアクセス願います。
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総務省の内部文書に“クビ”を懸けた高市早苗氏の誤算と窮地…行政文書認定でも「捏造」強調
                          日刊ゲンダイ 2023/03/07
「捏造でなければ辞職」と威勢よくタンカを切ったものの、どうも旗色がよくない。高市早苗経済安保相にとっては誤算だったのではないか。
 放送法の政治的公平性の解釈をめぐり、第2次安倍政権が総務省に“圧力”をかけたとされる内部文書が注目を集めていたが、松本総務相が7日午前、「すべて総務省の行政文書であることが確認できた」と明らかにした。
 当時、総務相だった高市氏は、3日の参院予算委員会でこの文書を「まったくの捏造」と断言。立憲民主党の小西洋之参院議員から「もし捏造でなければ議員辞職するのか」と迫られると「結構ですよ」と応じていた。
 売り言葉に買い言葉の展開で、高市氏が自らの進退を懸けたことで、この文書に対する関心が一気に高まった。
 「官僚経験者が見れば、捏造文書でないことはすぐ分かる。発言記録が一言一句まで正確かはともかく、大まかな流れは文書の通りなのだろう。それを捏造と言い切り、自分のクビまで懸けてしまうのは、閣僚としてあまりに不用意だ。文書を読むと、放送法の解釈変更を居丈高になって主導していたのは礒崎陽輔首相補佐官(当時)で、高市さんは乗り気でなかった。なぜ、高市さんがあんなムキになって文書の信憑性を否定したのか分かりません」(官僚出身の自民党議員)
 6日の参院予算委員会でも、この文書について質疑が交わされ、松本総務相は「総務省が礒崎総理補佐官から問い合わせを受け、これを契機として当該解釈の補充的な説明が示されたことは確認されている」と答弁。文書に記載された経緯を認めた形だ。
 岸田首相は「総務省において精査することが必要」と繰り返し、我関せずを決め込んでいる。

■答弁を微妙に修正
 さすがに分が悪いと感じたのか、6日の予算委で文書のどこが捏造なのかと問われた高市氏は、「私の発言や、私と安倍総理の電話にかかる内容だとされる文書計4枚」「文書のうち、私が読んだのは4枚だけ」と微妙に修正。計78枚の文書のうち、問題にしているのは自分に関わる4枚だけという理屈で、文書そのものの真贋から防衛ラインを下げてきた。
 それにしても、8年も前の文書が、今になって表に出てきた理由はハッキリしない。報道の自由に政治が介入することへの義憤だけであれば、もっと早く内部告発があってもよかったはずだ。
 このタイミングなのは、落選中の礒崎氏が4月に行われる参院大分補選に立候補するのを牽制する目的なのか。それとも、高市氏自身が言っていたように「非常に悪意を持って私(高市)を辞めさせようと」する“高市潰し”の動きなのか。
「自民党内では、“これで高市さんも終わり”と冷ややかに見ている人が多い。地元の奈良県知事選で分裂を招き、党内対立を抱えているし、後ろ盾だった安倍元首相がいなくなった今は守ってくれる人もいない。総務省の文書でダメージを負い、4月の知事選でも野党に負けるようなことになれば、万事休すです。ただ、総務省の文書は高市氏が進退に踏み込んで、自ら問題を大きくしてしまったとも言える。こういう事態に陥ったのは自業自得という声もあります」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)