マスコミに載らない海外記事に「アメリカを置き去りにする地政学の地響き」という短い記事が載りました。
それによると中国は2月(24日)に「ウクライナ和平計画」を提示しましたが、アメリカは和平を拒否しました。
米国にすれば不倶戴天の敵である中国の提案など意地でも受け入れられないというところなのでしょうが、それだけでなく もっと長くウクライナ戦争を継続させたいというのが本心であり、それではウクライナ国民も世界中の人たちもたまったものではありません。
米国がウクライナ戦争の終結に同意しないのは、ウクライナ国民のためなどではなく、自国の利益のために他なりません。まことに因果な戦争国家です。
米国は過去30年、中東を裏庭と見做し 自由に操れると考えていましたが、実際に行ったことはイラクへの違法な侵略など、中東に深刻な被害・混乱・疲弊をもたらしただけでした。
それに対して中国は平和的手段により3月10日、ごく自然にサウジアラビアとイランの国交回復を成立させました。既にサウジアラビアのサルマン国王はイラン大統領をリヤド訪問に招待するなど、実質的な外交が行われています。
こうした成果は中東における中国への信頼が大きいことと中国の存在感が大きいことの顕れさです。
併せて櫻井ジャーナルの記事「米英の時代が終焉の時を迎えていることを示す習近平国家主席のロシア訪問」を紹介します。
ここには中国による「ウクライナ和平計画」の要点が示されているほか、ウクライナ戦争に至った事情にもやや詳細に触れています。
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アメリカを置き去りにする地政学の地響き
マスコミに載らない海外記事 2023年3月21日
Moon of Alabama 2023年3月20日
先月、我々は驚くべき地政学的発展を見た。
2月、中国はアメリカ覇権を公に非難し、世界的安全保障構想を発表し、ウクライナ和平計画を提示した。
3月10日、中国はサウジアラビアとイランの国交回復合意を仲介した。
3月15日、モスクワはシリアのバッシャール・アルアサド大統領を盛大に歓迎した。
昨日、アル・アサドと妻アスマはシェイク・モハメッドとの会談のためUAEを訪問した
また昨日、イランとイラクはCIAが支援するクルド人の対イラン活動を止める安全保障協力協定に署名した。
また昨日、サウジアラビアのサルマン国王はイラン大統領をリヤド訪問に招待した。
過去30年アメリカは中東を裏庭と見なしていた。20年前アメリカはイラクを違法に侵略し、10万人の死と数十年の混乱を引き起こした。現在中国は平和的手段により、わずか一か月以内に中東のバランスを変えた。
本日、中国の習主席はロシアのプーチン大統領との3日間会談のためモスクワに到着した。プーチン大統領による文章が人民日報に掲載され、ロシア・メディアは習主席の署名入り文章を掲載した。
アメリカはウクライナに対する中国の和平提案が確実な地歩を得るのを恐れている。アメリカは停戦と和平交渉に公然と反対している。それはウクライナが決めるものだと私は思っていたが?
プーチンは中国の和平計画を公式に支持する可能性が高いが、アメリカは実際和平が実現するかもしれないと疑心暗鬼だ。サウジアラビア・イラン合意を破壊したいとすら思っているかもしれない。
ちなみに中国の人々は世界で最も幸せだ。
習主席とプーチン氏は現在、多国間グローバル・ショーを展開している。バイデンと彼の周囲の不幸な「一極覇権主義」連中は取り残されている。
記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2023/03/geopolitical-rumblings-leave-us-behind.html
米英の時代が終焉の時を迎えていることを示す習近平国家主席のロシア訪問
櫻井ジャーナル 2023.03.21
中国の習近平国家主席が3月20日、モスクワに到着した。22日までロシアを訪問、両国の関係が強化されていることを世界に示す。中国政府は2月24日にウクライナ危機への立場を発表しているが、アメリカは和平を拒否している。
その立場とは、すべての国の主権尊重、冷戦的な精神構造の放棄、敵対行為の終了、和平交渉の再開、人道危機の解決、市民と捕虜の保護、原発の安全維持、戦略的リスクの軽減、穀物輸出の促進、一方的制裁の中止、製造や供給の安全維持、紛争後の復興促進。この提案やウクライナでの和平実現を アメリカ政府は拒否している。
ウクライナの戦乱は短期的に見ても2010年の1月から2月にかけて実施された大統領選挙から始まる。この選挙でウクライナの東部と南部を支持基盤とするビクトル・ヤヌコビッチが勝利、それを嫌ったバラク・オバマ政権がクーデタを計画、13年11月から実行に移したのだ。
クーデターは暴力的なもので、NATOの訓練を受けたネオ・ナチが利用された。ネオ・ナチのメンバーはチェーン、ナイフ、棍棒を手にしながら石や火炎瓶を投げ、トラクターやトラックを持ち出している。ピストルやライフルを撃っている様子を撮影した映像もインターネット上に流れていた。
ユーロマイダンでは2月中旬から無差別の狙撃が始まり、抗議活動の参加者も警官隊も狙われた。西側ではこの狙撃はヤヌコビッチ政権が実行したと宣伝されたが、2月25日にキエフ入りして事態を調べたエストニアのウルマス・パエト外相はその翌日、逆のことを報告していた。
2017年11月にはイタリアのドキュメント番組の中で3人のジョージア人が自分たちはユーロマイダンで狙撃したチームに参加していたと証言している。この3人は治安部隊のメンバーとしてジョージアから送り込まれたのだが、警官隊と抗議活動参加者、双方を手当たり次第に撃つよう命じられたとしている。(その1やその2)
この3人も狙撃の指揮者はクーデター派の幹部だったアンドレイ・パルビーだと語っているが、パルビーが狙撃手と見られる人びとが建物から出てくる様子を撮影した写真も存在する。
2014年5月2日にはオデッサで反クーデター派の市民を虐殺する出来事もあった。その日、オデッサではサッカーの試合が予定されていて、フーリガンを含むファンが列車で到着、街に出るのだが、その一団をネオ・ナチの中核組織である「右派セクター」が挑発、ファンの集団を反クーデター派の住民が2月から活動の拠点にしていた広場へと誘導していく。
一方、ネオ・ナチのメンバーは広場に集まっていた住民に暴漢が迫っていると伝え、労働組合会館へ避難するように説得、女性や子どもを中心に住民は建物の中へ逃げ込んだ。その建物の中でネオ・ナチのグループは住民を虐殺、上の階へ逃げた人びとを焼き殺すため、放火した。屋上へ逃げられないようドアはロックされ、外へ逃げた住民は撲殺されたようだ。この時、会館の外で撮影された少なからぬ映像が存在、内部の無残な様子も撮影されている。
この時に50名近くの住民が殺されたと伝えられているが、これは地上階で確認された死体の数にすぎない。地下室で惨殺された人を加えると120名から130名になると現地では言われていた。
5月9日にはクーデター軍がマリウポリの市内へ戦車を突入させ、住民を殺しているが、その様子も携帯電話で撮影され、世界へ流された。5月11日にはドンバスで自治(ドネツク)や独立(ルガンスク)の是非を問う住民投票が実施され、ドネツクでは89%が賛成(投票率75%)、ルガンスクでは96%が賛成(投票率75%)している。この結果を受けてドンバスの住民はロシア政府の支援を求めたが、ロシア政府は助けなかった。
デレク・チョレット米国防次官補がキエフ入りした6月2日にクーデター政権はルガンスクの住宅街を空爆、住民を殺しているが、その様子を撮影した映像もインターネット上にアップロードされていた。OSCE(欧州安保協力機構)も空爆があったことを認めている。
後にマリウポリはネオ・ナチを主体とするアゾフ特殊作戦分遣隊(通称、アゾフ大隊、あるいはアゾフ連隊)が拠点にしている。この武装勢力は内務省に設置された親衛隊の中核で、住民にとっては占領軍にほかならない。
アメリカのバラク・オバマ政権がネオ・ナチを利用してウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒してロシアに「チェックメイト」を宣言した当時、中国はアメリカの影響下にあると日本やアメリカなどでは信じる人が少なくなかった。「カネ儲けさせておけば中国人は言いなりになる」と言う人もいた。
しかし、こうした見方は間違っていた。ビジネスやアカデミーの世界はアメリカ支配層に支配されているが、政治の世界に食い込むことができなかったのだ。共産党の体制は盤石だった。2014年にはウクライナのクーデターと同時に香港で「佔領行動(雨傘運動)」と呼ばれる反中国政府の運動が実行されたが、中国の体制は揺るがない。この反政府運動はアメリカのCIAとイギリスのMI6が黒幕だと言われているが、そうした背景を中国政府もわかったはずだ。その後、パイプライン、道路、鉄道などでロシアと中国は結びつきを強め、戦略的同盟関係を結ぶことになった。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。