統一地方選が迫っているなかで、自民党議員を中心とする地方政界と統一協会の癒着が各地で問題になっています。
統一協会の関連団体が制定を求める「家庭教育支援法」の研修会に、多くの地方議員が強力していました。研修会の世話人に無所属などを含めて57人が加わっています。しんぶん赤旗がシリーズ「徹底追及 統一協会」で報じました。
自民党は昨年10月、「今後、旧統一教会及び関連団体とは一切関係を持たない」と明言し、「都道府県支部連合会を通じて、地方組織にも周知・徹底を図っていく」としています。
共同通信が1月に公表した旧統一教会との関係遮断についての調査結果によると、自民党の32都道府県連が「既に確認したり今後調べたりする方針」などと回答しましたが、12県連が「旧統一教会との接点や関係遮断の意思を確認しない」と回答し、2県連が「無回答」でした。
AERA dot.が、「確認をしない」「無回答」だった14県連についてアンケートを取った結果を発表しましたので、併せて紹介します。
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徹底追及 統一協会
統一協会が推進する「家庭教育支援法」 自民地方議員 研修会に協力
世話人 無所属など含め57人
しんぶん赤旗 2023年3月22日
自民党議員を中心とする地方政界と統一協会(世界平和統一家庭連合)の癒着が各地で問題になっています。本紙の調べで、統一協会の関連団体が制定を求める「家庭教育支援法」の研修会に、多くの地方議員が協力していた実態が浮き彫りになりました。(統一協会取材班)
2018年5月14日、東京・永田町の衆院第2議員会館にある会議室(定員125人)で「第3回全国地方議員研修会」が開かれました。主催団体は、全国地方議員連絡会議世話人会です。
西川憲雄・鳥取県議(自民党)が提出した政務活動費の報告書に同研修会の案内状が添付されていました。これによると、全国の都道府県で初めて家庭教育支援条例を制定した熊本県の溝口幸治県議(自民党)や大学教授を講師に迎え、同条例の「成果」や家庭教育支援法の必要性を学ぶ内容でした。
案内状には、同世話人会の名簿があり、地方議員(当時)と元議員の計57人が記載されていました。このうち少なくとも37人が自民党に所属し、国政に転じた東国幹、石橋林太郎の両衆院議員と加田裕之参院議員の名前もありました。
代表世話人の一人は、学生時代から昨年9月まで統一協会に入信していたと認めた自民党の藤曲(ふじまがり)敬宏・静岡県議です。
藤曲氏は第3回研修会に参加した際、会費(3000円)と交通費の計1万1470円を「調査研究」名目の政活費で支出していました。県政との関連性について「静岡県で制定された家庭教育支援条例を全国展開するため、地方議員のセミナーを開催し、啓発を行う」としています。
同研修会の開催に向けた「担当者との打ち合わせ」で、藤曲氏が政活費を支出した記録もありました。打ち合わせは18年3月19日、統一協会の日本本部がある東京都渋谷区松濤(しょうとう)で行われていました。
応対したのは、統一協会の政治組織「国際勝共連合」の幹部でもある一般社団法人「教育問題国民会議」の青津和代氏です。藤曲氏と青津氏は、講師など研修会の内容を話し合っていました。
旧統一教会が無所属候補者に"秋波”? 「喉元過ぎれば」の意識が透ける自民14県連アンケ
AERA dot. 2023/03/19
統一地方選が今月下旬から始まる。注目したいのは、自民党と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関係だ。岸田文雄首相は「関係を断つ」と明言したが、地方議員にもその方針が徹底されているのだろうか。取材を進めると、地域によって温度差があるように見える。
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「自民党は国会議員に対しても自己申告ということで、調査はしていない。自治体議員に対してはさらに甘く、人数も公表しない、どの県連がどういう対応をしているかも公表しない」
2月28日の衆院予算委員会で立憲民主党の西村智奈美議員が、旧統一教会と自民党との関係について指摘した。
「未来にむけて関係を断つということをしっかりと確認する。過去どのような関係があったかについても、それぞれの議員が説明をすることによって、有権者に対して信頼を回復するために努力をする、これがあるべき姿であると認識をしております」
と答弁している。
自民党は昨年10月、旧統一教会との関係について茂木敏充幹事長が、
「今後、旧統一教会及び関連団体とは一切関係を持たない」
と明言し、この点をガバナンスコード(行動指針)に盛り込んで徹底すると公表した。地方組織についても「都道府県支部連合会を通じて、地方組織にも周知・徹底を図っていく」とした。
統一地方選が間近に迫り、果たして、自民党の都道府県連はどういった対応をしているのだろうか。
共同通信が1月に公表した調査結果によると、自民党の32都道府県連が「既に確認したり今後調べたりする方針」などと回答。12県連が「旧統一教会との接点や関係遮断の意思を確認しない」と回答し、2県連が「無回答」だった。(昨年、地方選を終えた沖縄を除く)
そこでAERA dot.は改めて「確認をしない」「無回答」だった14県連(宮城、秋田、千葉、新潟、富山、愛知、兵庫、和歌山、鳥取、島根、岡山、熊本、福島、山口)に、
(1)今春の統一地方選を前に、立候補予定者を公認・推薦する際、旧統一教会との接点を確認するか
(2)公認・推薦する際、旧統一教会との関係を持たないという意思を確認するか
の2点について尋ねるアンケート形式の書面を送った。
まず(1)、(2)ともに「する」もしくは「している」と回答したのは千葉、秋田、富山。
「誓約書を提出させている」(千葉)、「ガバナンスコードの方針に則り活動していくことについて確認済み」(秋田)、「すでに個々が関係を明らかにしている」(富山)など。
(1)は「しない」が、(2)は「する」と回答したのは熊本。理由は「公認証、推薦証を交付する際、意思確認を行った」。
いずれも「しない」と回答したのは、新潟、福島、鳥取、島根。
理由は、「党の方針を厳守し適切に対応していくことを県連内で確認済み」(福島)、「ガバナンスコードの違反行為が確認できた時には(公認・推薦の)取り消し及び党を離れてもらう」(新潟)、「党の品位を汚すことのないよう『誓約書』を交わしている」(島根)などで、「する」と回答した県と内容自体は大きく変わらなかった。
書面はなく、口頭で回答があったのは岡山と兵庫。
岡山は「旧統一教会関係の対応は党本部からの指示に準じている」、兵庫は「党本部が地方議員センターをつくり、県連所属の議員が直接つながっている。接点の確認や関係を持たない意思については、本部で確認できるようになっている」。
地方議員センターとは自民党が昨年6月に新設したもので、「地方議員と党本部の連携をより一層強化するため、地方議員の活動に資する情報提供やイベント運営の支援、ワンストップでの要望・相談窓口等の機能を担う」とホームページにある。
意思確認のために使う予定があるのか、党本部の見解を聞くと、
「地方議員センターの専用サイトを設け、党所属の地方議員に対し、政策、選挙、広報、組織活動などに関する情報提供を行っております」(幹事長室)
とのこと。党本部から情報提供をする、ということ以外はわからなかった。
そして、(1)(2)のいずれについても「回答は控えたい」「責任者がいない」などで、回答を得られなかったのは宮城、愛知、和歌山、山口だった。
こうした自民党組織の動きについては有権者も注目している。旧統一教会との関係性がはっきりしないため、議員に直接アンケートする動きもあった。
山口県では市民団体が県議に旧統一教会との関係についてアンケートをしたが、自民党所属の30人の現職県議のうち回答したのは5人だけ。
それを踏まえ、「県議と旧統一教会との関わりの調査と説明を求める」請願を県議会に提出したが、不採択に。担当者は「県民の問いに答えていない」と憤る。
千葉県でも自民党と統一教会の関係について「調査が十分ではない」と不満の声が上がっている地域があった。
習志野市では選出された県議や市議が、旧統一教会の会合にたびたび出ていたことがわかった。
千葉県議のI氏は、習志野市議だった時期の活動報告を見ると、2018年11月25日に「世界平和家庭連合 勉強会」とある。同年10月18日、25日にも「家庭平和連合(勉強会)」と記載されていた。
AERA dot.編集部が確認したところ、少なくとも2017年11月~18年11月に、計14回の会合に出席していた。
習志野市に住む男性は、「旧統一教会関連団体の平和大使に任命され、韓国で開かれた『ワールドサミット2020』にも参加したと言われています。しかし、I氏からこれらの関係について、一切説明はありません」と話した。別の市民からは「I氏の後援会関係者に尋ねてもほとんど否定されました」との声があった。
実際はどうなのか。I氏を直撃すると「家庭連合の勉強会には地元の人に誘われて参加するようになった。ほかの議員も参加していて、問題がある団体だとは気づかなかった」と話した。
平和大使に任命されたことや、韓国で開催されたイベント「ワールドサミット2020」に参加したことも事実として認め、イベントの参加についてはこう弁明した。
「イベントには招待されましたが、自費で行きました。政務活動費でもないです。この会合には各国の首脳らが参加しており、見聞を広めるために参加しました」
イベントには旧統一教会の韓鶴子総裁も出席し、「合同結婚式」も開催されていたのだが、I氏は「あの統一教会だとは気が付かなった」という。
今後の関係や、現在の状況についてはこう明言した。
「家庭連合で一緒に勉強してきた方々からは『残念だ』と言われましたが、『今回はお付き合いを断念させていただきます』とはっきりとお伝えしています。今後も付き合うことはありません。疑いを持たれたくないので、今回はボランティアなどを入れることなく、自力で活動しています。人を採用するにしても、かならず信者かどうか確認することになると思います」
一部の自治体では、議会が旧統一教会との関係を明確に断ち切る姿勢を示しているところも出てきている。
富山市議会は昨年9月、「旧統一教会および関係団体と一切の関係を断つ決議」を全会一致で可決。北九州市、富田林市(大阪府)、大阪市、大阪府でも同様の決議をした。
こうした自治体の動きに対して、旧統一教会の信者や関連団体が「請願権を侵害している」などとして訴えを起こしている。一連の訴訟を担当している徳永信一弁護士がこう話す。
「決議自体が差別的な取り扱いになっており、信仰の自由に反している。それを正当化できるのは、旧統一教会が反社会的な団体ということになるが、そう認定する適切な手続きを経ていないので問題だ」
旧統一教会は、自民党の方針や統一地方選についてどう考えているのだろうか。
教団本部広報に尋ねると、
「法人としては一貫して特定の政治家および政党にかかわらないというスタンスです。政治活動についてはあくまでも世界平和連合など関連団体での活動です」
と前置きした上で、
「ご存じのように、自民党さんからは関係断絶といわれているので、(自民党を)応援することは基本的にはないです。ただ、世界平和連合など友好団体が無所属の方を応援することはあると思います」
と選挙活動について言及した。
どのような無所属の候補を支援するのかについては、
「要請がある無所属の候補者については、政治理念やどのようなお考えで出馬されたか、方向性が一致すれば応援も辞さないということになります」
と説明した。
「ただ、私は教団の広報なのでそれを友好団体がするかどうかは臆測です」
とも付け加えた。
友好団体である世界平和連合に“臆測”が正しいのか尋ねると、「選挙に関するご質問は回答を控えさせていただきます」と答えるのみだった。
専門家はどう見るか。政治ジャーナリストの角谷浩一さんは、自民党が積極的に調査しないことについてこう語る。
「自民党と統一教会の関係については、今は少し落ち着いたような雰囲気があります。こうした状況を見て、自民党も積極的な対応をしていないように思えます。ただ、『のど元過ぎれば……』などと考えていると、統一地方選で影響が出る可能性もあります」
角谷さんが注目するのが、昨年12月に実施された茨城県議選だ。33人が無所属で立候補し、15人が当選。その後、8人が自民会派になった。自民党は44人から35人に減った。
「自民党の名前を前面に出さなくても選挙に勝てるということが示されたと見ています。旧統一教会の問題を経て、候補者や有権者の意識が変わったのではないでしょうか。安倍晋三元首相が亡くなったことで行われる補欠選には、元参院議員の有田氏が立候補を表明しており、自民党と旧統一教会の関係に再び注目が集まることも考えられます」
他方で、旧統一教会は関連団体が無所属の候補者を支援することを示唆している。これについてはどう見るか。
「無所属で当選しても、その後自民の会派に入るとなれば、旧統一教会とつながっているようにも見えてしまう。そうなれば世論の不信感は高まるでしょう。候補者は統一教会との関係だけではなく、宗教との関係についてどうけじめをつけているのか有権者に公表しておくべきです。有権者も各候補者がこうした点に口をつぐもうとしていないか、しっかりチェックする必要があります」 (AERA dot.編集部・吉崎洋夫)