松本総務相は7日、放送法の「政治的公平」の解釈変更をめぐる首相官邸と総務省のやりとりを記述したとされる文書(立民党の小西洋之参院議員が2日に公表)は、全て総務省の行政文書であると述べ、安倍政権が報道機関への介入を行ってきたことが明らかになりました。
共産党の小池晃書記局長は7日、国会内で記者会見し、「自分たちの意に沿わない番組に放送法の解釈を変えて圧力をかけたもの」「放送事業者の自主性、報道の自由を脅かす重大な問題」「表現の自由を定めた憲法21条を踏みにじるもの」と述べ、放送法の解釈変更の政府統一見解の白紙撤回、〝電波停止がありうる″などとした当時の高市早苗総務相の全ての関連する国会答弁の撤回を求めたい」と表明しました。
また高市氏については「議員を辞職するというご自身の答弁に責任を持つべきだ。自らの言明に従って大臣、議員を辞職すべきだ」と主張しました。
しんぶん赤旗日曜版12日号に、この問題についての一連の経過が載りましたので紹介します。
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放送法 解釈変更へ官邸が介入 報道の自由脅かす 総務省行政文書と認める
しんぶん赤旗日曜版 2023年3月12日号
安倍政権が報道機関への介入を行ってきたことが明らかになりました。松本剛明総務相は7日、放送法の「政治的公平」の解釈変更をめぐる首相官邸と総務省のやりとりを記述したとされる文書について「全て総務省の行政文書であることが確認できた」と述べ、公開しました。
小池書記局長「政府見解の撤回を」
日本共産党の小池晃書記局長は同日、国会内で記者会見し「放送事業者の自主性、報道の自由を脅かす重大な問題だ。放送法の解釈変更の政府統一見解の白紙撤回、〝電波停止がありうる″などとした当時の高市(早苗)総務相の全ての関連する国会答弁の撤回を求めたい」と表明しました。
文書は約80枚で、2日に立憲民主党の小西洋之参院議員が公表したものです。
放送法4条は「政治的に公平であること」などと定めています。公平については一つ一つの番組でなく、放送事業者の番組全体を見て判断するというのが長年の政府解釈でした。ところが2015年5月の国会で、当時の高市総務相は、一つの番組でも判断できると新しい解釈を示しました。同氏は16年2月の国会で、放送局が政治的公平を欠く放送を繰り返した場合は電波停止を命じる可能性に言及し、批判を浴びました。
今回明らかになった文書では14年11月~15年5月にかけて、当時の礒崎陽輔首相補佐官(元自民党参院議員)が総務省に新しい解釈をするように強く求めた状況が時系列で具体的に記されています。
同氏はTBS系番組「サンデーモーニング」でコメンテーターが全員同じ主張をしていたことなどを挙げ、一つの番組でも明らかにおかしい場面があると総務省に検討を指示していました。従来の法解釈を変えることに難色を示す総務省を、礒崎氏が厳しく批判した様子も書かれています。当時の安倍晋三首相が「現在の放送番組にはおかしいものもあり、現状は正すべき」だと述べたこと、安倍氏が高市氏との電話で「今までの放送法の解釈がおかしい」旨を発言したことも記されていました。
岸田文雄首相は7日の衆院本会議で、文書について「引き続き精査が必要」と表明。放送法の解釈については「放送法を所管する総務省において従来の解釈を変更することなく補充的な説明を行ったもの」だとして報道の自由への介入ではないと主張しました。
自らの発言に関する文書4枚を「挫造(ねつぞう)」と批判し、狸造でなければ議員辞職する考えを示していた高市経済安全保障担当相は同日の会見で「内容が不正確」だとして、「辞職を迫るのであれば完全に正確なものであることを相手(小西氏)も立証しなければならない」と主張しました。
小池氏は、放送法第4条の政治的公平は、一つひとつの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断するのが長年の政府解釈だったと指摘。磯崎元首相補佐官と総務省とのやりとりを経て、当時の高市総務相が国会で「一つの番組のみでも判断できると答え、その後電波停止を命じる可能性にまで言及したとして「決して岸田文雄首相の言うような『補充的な説明』ではなく、明らかな解釈の変更だ」と述べました。
文書では、あるテレビ番組のコメンテーター全員が同じ主張をしていたことが問題視され解釈変更に至っているとして「自分たちの意に沿わない番組に放送法の解釈を変えて圧力をかけたものだ。民主主義社会ではあってはならないことだ」と批判。「(表現の自由を定めた)憲法21条を踏みにじる深刻な問題だ」と述べました。
放送法の解釈変更をめぐる一連の答弁の撤回と、礒崎氏の証人喚問を要求。高市氏については「議員を辞職するというご自身の答弁に責任を持つべきだ。自らの言明に従って大臣、議員を辞職すべきだ」と主張。高市氏が、文書の正確性の立証を野党側に求めていることについて「なんで政府の行政文書を野党が立証しなければならないのか。許されない開き直りだ」と批判しました。