日本では「台湾有事」の可能性が当たり前のように口にされていますが、中台間ではずっと貿易が盛んで極めて友好的な関係にあり、一触即発というような関係にはありません。また米国の働きかけにもかかわらず「台湾独立」の動きも全くありません。それなのにあたかも近々にも「台湾有事」があるかのように喧伝しているのは米国です。
米国としては、発展途上にある中国がGDPで米国を追い越すのは25年頃と見ていて、そうなる前に何としても中国を叩いておきたいと考えている訳です。
もしも米国の都合で米中戦争が起こされれば、そこで主体的に中国と闘うのは自衛隊であり、挙句に焦土と化すのは沖縄と日本本土にほかなりません。
白井聡・准教授が「危機あおる米国 日本に犠牲負わせる対中戦略 ~ 『有事』になれば焦土と化すのは本土、沖繩」と題して、「台湾有事」の真相を赤旗日曜版に語りました。
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危機あおる米国 日本に犠牲負わせる対中戦略
戦争の〝空気″に乗ってはいけない 「有事」になれば焦土と化すのは本土、沖繩
京都精華大学准教授 白井聡さん
しんぶん赤旗日曜版 2023年3月6日号
統一地方選で問われる岸田内閣の大軍拡・大増税路線。京都精華大学の白井聡准教授(政治学)が、その問題点と対抗の方向について語りました。 田中倫央記者
しらい・さとし=1977年東京生まれ。早稲田大学卒。一橋大学大学院を経て
社会学博士。京都精華大学准教授。『永続敗戦論 戦後日本の核心』『国体
論 菊と星条旗』『長期腐敗体制』など著書多数
岸田内閣の大軍拡路線の背景にはアメリカと中国の対立、緊張関係があります。この「対立」が「軍事的衝突」になれば、日本や東アジアに計り知れない損害をもたらすことになります。
いま、米空軍高官が「台湾有事は2025年」だと「内部メモで準備指示」(「日経」1月28日付)したとか、バーンズCIA長官が「中国は2027年までに台湾を武力攻撃する」(2月2日、ロイター電)と公言したとか、危機をあおるような発言が相次いでいます。アメリカの安全保障に関わる有力者が、戦争をつくり出そうとしている〝空気″がありありとあります。
仮に「台湾有事」があるとすれば、主戦場はどこかというと、アメリカ本土ではない。台湾と日本なんです。アメリカにとっては「戦争の中で日本をどう使うか」という話なのです。
即座に経済崩壊
こんな戦争に日本が参画するなどということは、本来的にはありえない選択です。たとえば、日本の食料はカロリーベースで6割以上を輸入に頼っています。農林水産物の輸入相手国の1位はアメリカ、2位は中国です。野菜や鶏肉、大豆など年に1兆1907億円を輸入しています(20年)。もし、日本が台湾問題で軍事的にかかわると、中国は輸出を止めるでしょう。あっという間に食糧危機になります。
食料以外の全てを含む貿易全体でいえば、中国は日本にとって最大の貿易相手国です。中国相手の戦争に関われば、日本経済は即座に崩壊します。
ところが、日本の親米保守政権はこの戦争に一歩一歩近づいています。アメリカは米中対決のなかで、日本を犠牲にして中国を抑え込んでいく戦略です。日本は、その構造の中に飛び込んでいこうとしているわけです。
もちろん、中国の覇権主義も問題だということははっきりしています。武力による台湾統一など受け入れられないという日本人の気持ちは、当然です。台湾問題の武力による解決は絶対に止めなくてはなりません。
しかし、ウクライナで起きていることを見てください。もちろん、原因は国運憲章、国際法に反するロシアの侵略にあることは明白です。
要求で軍備強化
他方、アメリカは直接部隊を送り込まずに、武器・弾薬を供給し続け、敵対的な国を弱体化させるというやり方をとっています。「敵基地攻撃能力」という、先制攻撃能力の保有に日本が踏み切ったのは、同じようなアメリカの強い要求があったからです。
「ウクライナで起きたことは台湾でも起きる」という人がいます。それが起こるとすれば「米中戦争」というより、「日中戦争」として現れるかもしれません。台湾に米軍基地はなく、出撃は日本、沖縄の米軍基地からになります。焦土化するのは日本と沖縄です。
旧安保条約の締結の担当だったジョン・フォスター・ダレス米国務省顧問は、「我々は日本に、我々が望むだけの軍隊を望む場所に望む期間だけ駐留させる権利を獲得できるであろうか? これが根本的な問題である」(1951年1月26日)と言っていました。日米安保でアメリカはその「権利」を獲得し、この構造は70年以上たっても基本的に変わっていません。
軍事的な「獲得物」である日本が、もし「台湾有事」が起こったらどうなるのか。核攻撃の標的にもなりかねません。さらには日本海側には攻撃目標となる原発がずらりと並んでいます。攻撃されれば通常兵器でも核被害を招くことになります。
正面からたたかう共産党の躍進期待
この点で、今国会での共産党の政府追及は本質に迫るものです。志位和夫委員長は、敵基地攻撃能力の保有は米国の「統合防空ミサイル防衛」=IAMDへの参加を意味するものだとして、これは米国と同盟国が一体となって先制攻撃を行い、全面戦争と日本の焦土化を導く可能性があると指摘しました。日米安保を批判し続けてきた共産党ならではの的確な指摘です。
岸田政権が安倍・菅政権よりもマシだろうと考えるのは、根本的に間違っています。自民党のだれが首相になろうと、基本的にアメリカの「腹話術」の人形です。戦後の親米保守体制は、私に言わせれば、戦前の天皇制の「国体」の中身が「アメリカ」に入れ替わったものなのです。
今回の大軍拡と戦争への暴走に黙っていたら、日本は滅びます。私たちは「アメリカのために死ぬ」などまっぴらごめんです。私たちの前には、戦争で日本が滅ぶか、今の政権を交代させるかの重大な選択が突き付けられています。野党共闘の体制を立て直さないといけない。統一地方選挙、中間地方選挙で自民党を負けさせないといけない。
恥ずべき対米従属体制を倒す第一歩として、岸田大軍拡路線と正面からたたかう日本共産党が統一地方選挙で躍進することを期待しています。