2023年3月13日月曜日

13- さらに進む覇権の多極化/多極型覇権と中国(田中宇氏)

 フリーの国際情勢解説者田中宇氏が、「さらに進む覇権の多極化(前編)」、「多極型覇権と中国(後編)」の二つの記事を出しました。
 前編は、ウクライナ戦争における米国側の非を指摘する文章で始まっているので、米国の主張を最優先する日本のジャーナリズムに慣れている人たちには違和感があるかも知れませんが、田中氏は、長期化するウクライナ戦争を通じて米国覇権の崩壊が加速され、今後は中露主導の非米側が台頭し、既存の米国覇権は世界の全部から一部へと縮小すると見ています。

 そんな中で米国の覇権が今後の長期間にわたって継続することを前提にして、米国の意向(乃至価値観)を後生大事に信奉する日本の外交姿勢はやはりズレていると言わざるを得ません。記事は前・後編合わせて約9500字の長文ですが敢えてまとめて紹介します。
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さらに進む覇権の多極化
                  田中宇の国際ニュース解説 2023年3月6日
ウクライナ戦争の長期化で世界は、米国側と非米側に分断された状態が固定化している。米国はウクライナ開戦後、全世界がロシアを強く敵視してウクライナに味方することを強要した。米国は2014年にウクライナの反ロシア派(主にネオナチ)をテコ入れし、政権転覆して米傀儡の極右政権に替え、ウクライナのロシア系住民を殺害弾圧し続けてロシアを怒らせ、ウクライナを内戦に陥らせた。米国は2021年秋からウクライナ内戦を激化させ、ロシアが露系住民を守る正当防衛としてウクライナに侵攻するように仕向け、2022年2月の開戦につなげた。ウクライナ戦争は米国の策略として起こされた戦争で、ロシアは被害者の側だ。しかし米国側(米欧日)のマスコミは、善悪を逆転してロシアを極悪に描き、米傀儡のウクライナ軍が国内の露系住民を殺し続けたことを意図的に無視してウクライナを善玉に描く歪曲報道・プロパガンダのみに終止した
 (Escobar: Putin's "Civilizational" Speech Frames Conflict Between East And West

対米従属な米国側の諸国(先進諸国。米英EU日豪NZ加)は、米国の言いなりで善悪逆転のプロパガンダを鵜呑みにし、ロシア敵視・ウクライナ支援に邁進している。だが、米国の言いなりになる必要がない非米側の諸国は、米国のプロパガンダに乗らず、中立的な立場をとっている。米国は、中立国もロシアの仲間とみなして経済制裁する姿勢をとった。そのため、それまで米傀儡でないが米国と親しくして米覇権下にいた非米側諸国は、政治経済安保の全面で、米国を敬遠する傾向を強めた。ロシア敵視で進む多極化

非米諸国はそれまで(とくに冷戦後)バラバラに存在していたが、ウクライナ開戦後、米国から経済制裁されても平気なように、非米側として米国に依存しない国際的な決済機構や安保体制などの世界システムを持つ必要に迫られた。非米側の世界システムとして使えそうなものは、すでに存在していた。BRICS上海機構G20、中国の経済覇権戦略である一帯一路などがそうだ。
  China Says Ready To "Join Forces With Russia" To "Defend National Interests" As Putin Confirms Xi Visit

米国は2001年の911事件(あれもさんざん歪曲報道された話だった)の後、米国に従わない国々に侵攻したり政権転覆したり経済制裁したりする単独覇権主義を振りかざした。非米側の諸大国は荒ぶる米国に対する自衛組織として、BRICSを作ったり、中露が冷戦期の対立をすべて解消して結束して上海協力機構を作ったりした。

また2008年のリーマンショックで、ドルと米金融界が立脚していた債券金融システムが崩壊・凍結し、金融面からの米覇権崩壊が予測されたので、世界的な経済政策を決めるための事実上の最高意思決定機関を、それまでの米英傀儡組織のG7から、G7にBRICSなど非米側を加えたG20に替えることが正式決定された。その後、米金融システム(米覇権)は米日欧の中央銀行群が始めたQE⇒量的金融緩和の資金注入で延命したので、G7も延命的に復権し、G20は米国側と非米側(BRICS)が対立して機能低下した。 G8からG20への交代

G20は、米国側と非米側の両方の主要諸国が集まる唯一の世界機関だ(国連総会は小国と大国が対等で参加国が多すぎて詳細な戦略決定が困難)。今後、ウクライナ戦争が長引いて米国側の結束(G7諸国の対米従属)が崩れていくと、G20の重心が非米側に移動して意思決定できる機関になりそうだ。日本の岸田政権は、林外相に先日のG20外相会合を欠席させ、マスコミなどに非難誹謗されたが、これから米国側が衰退し、中国など非米側が台頭しそうなことを考えると、米傀儡の日本がのこのこG20に出ていって中国との無意味な対立を激化して米覇権崩壊後に困るという愚策に陥らないために、林芳正の欠席は賢明な策だった

非米側はウクライナ開戦後、BRICSや上海機構、一帯一路などの国際機構を活用して、米国に依存せず察知もされない政治経済の国際システムの形成を進めている。それらを推進する主導役は中国とロシアだ。ウクライナ戦争が長引くほど、中露が主導する非米側の世界システムが発達して使いやすくなり、今はまだお試し的にゆるやかに中露と付き合って非米システムを使っている「ちょっと非米」の諸国が、しだいに本格的に非米システムを使うようになる。そのうち米連銀ののQT⇒金融引き締めの自滅策がドル崩壊を引き起こし、米国側のシステムが使い物にならなくなり、人類が使えるのは非米システムだけになる。その前後に、自滅していく米国覇権に従属して苦しみが拡大する米国側の諸国の中からも、米国を見限って非米側に接近する国が出てくる。 中立が許されなくなる世界

米国側の自滅によって世界の中心になる非米側とは、つまるところ「中国覇権体制」でないのか。世界を支配する覇権国が米国から中国に替わるだけでないのか。独裁で人治の中国が、民主で法治な米国よりもましな覇権体制を作るとは思えないぞ。そんな風に考える読者が多いかもしれない。たしかに中国は、習近平の独裁体制で、情報公開も減り、意思決定方式や政策の実情が不透明だ。米国の方が政治経済などの現状や戦略に関して能弁だ。しかし能弁の中に詭弁が多く、ウクライナ戦争に象徴されるように、米国で語られる情報の中にインチキが急増している。米国は民主党による選挙不正がひどく、もう民主主義でない。米国は、中国と別の方向で無茶苦茶になっている。米国側のマスコミはこの状態を報じないので、多くの読者が間違った概念を持ち続けている。 ずっと続く米国の選挙不正

覇権に従属する側の諸国にとっては、米国覇権下よりも中国覇権下の方が住みやすい。中国覇権の方が支配が弱いからだ。米国覇権は絶対服従を強要する。米国(米英)は諜報力を駆使して同盟諸国(対米従属諸国)の政治経済などの内情を把握し、米国の都合の良いように従属国の体制をねじ曲げていく(英国は、大戦期に米国に覇権を譲渡した後、諜報力を駆使して米国の体制をねじ曲げ、米覇権の黒幕=軍産として隠然と君臨してきたが)。戦後の日本を見ればわかるように、米英の同盟国は徹頭徹尾の従属を続けてきた。米国覇権の支配はとても強い。細かく管理し、少しの離反も許さない
Iraq To Drop Dollar For Yuan In Trade With China

米国が世界を細かく管理して強圧的に支配したがるのは、米国の覇権が英国から譲渡されたものであり、譲渡後に英諜報界が米国の諜報力をつけてやると言って入り込んで米諜報界になって冷戦などを起こし、米国覇権の本質が英国覇権であるからだ。産業革命後、2度の大戦まで世界の覇権を握っていた英国は、欧州(オーストリア・ハンガリー帝国)、中東(オスマン帝国)、アフリカ、中南米などを細かい中小の国々に分割して相互に対立させ、世界に英国をはるかに超える大国がない状態を作ろうとし続けた。英国自身が中規模の国なので、大国に経済発展されると敗けてしまい、覇権を奪われかねない。世界中を、英国より弱い中小諸国の集まりにして、その上に英国好みの規則を設けた国際社会をかぶせ、英国が裏からそれを動かすのが19世紀以降の英国覇権体制だった。
多極化の目的は世界の安定化と経済成長

いま世界に存在している諸大国はいずれも英国の世界分割戦略が失敗したので存在している。中国は英国に分割されかけたが、米国が分割を阻止したインドは英国の直轄植民地だったので大きくて良かった。英国は出ていく時にインド植民地をヒンドゥ教徒のインドとイスラム教徒のパキスタンに分割して独立させて恒久対立させた。ブラジルは、ポルトガルの一部だったので分割できなかった(中南米のスペイン領は、ナポレオンがスペインを制服している間に、英国に扇動されて独立国になったが、そのさい英諜報界は地域ごとに別々の独立運動を支援し、中南米のスペイン領が無数の国々わかれて独立するように仕向けた。ポルトガルもナポレオンに征服されたが、その間ポルトガルの王政はブラジルで延命しており、英国が手を出せなかった)。 
 (覇権の起源:ユダヤ・ネットワーク) (世界のデザインをめぐる200年の暗闘

ロシアは、英国が海から東アジアに進出して植民地化するより少し先にシベリア鉄道を極東まで敷き終わって国土を急いで広げた。それ以上のロシアの拡大・南下を防ぐため、時間切れの英国は日本を植民地化せず、むしろ長州藩を支援して明治維新を起こさせて日本を親英反露の近代国家に仕立てたが、第一次大戦で大英帝国が英米資本家に自滅させられた後に日本は独自覇権を希求し始め、英米は太平洋戦争が必要になった。などなど。

このように大英帝国=英国覇権は、全世界の状況を細かく把握し、中小の諸国に分割したり、相互に対立させたり、内政干渉して政権をすげ替えたりして覇権を維持した。第二次大戦での敗北回避のために、英国は米国に覇権を譲渡する条件で参戦してもらって戦勝した。当時、世界の戦争のほとんどはユーラシア大陸で、英国の分割支配の世界戦略の結果として起きていた。米州大陸にある米国はユーラシアの戦争が他人事で、戦争体質をやめさせるため英国から覇権を取り上げ、米国が新設する国際連合に覇権を移す「覇権の機関化」をやって、世界の戦争体質を終わらせようとした。米国が作った国際連合は、相互に拒否権を持つ5大国(米英仏ソ中。P5)で構成する安保理常任理事会が機関として覇権(戦争と平和に関する最高意思決定権)を持つ多極型の世界体制だった。米国は多極型の覇権を好んでいた
田中宇史観:世界帝国から多極化へ

だが英国は、米国や国連に覇権を譲渡する一方で、お得意の諜報力を駆使し、米国にも諜報機関が必要だから作ってやると言って、戦時中に新設された米諜報界(のちのCIAなど)を英国系の勢力が牛耳り、戦争報道の管理を通じて英国傘下の米諜報界がマスコミや世論操作を管理する構造が出来上がった。米諜報界はマスコミや軍事産業や政財界(これらの総称が軍産複合体)を動かし、米国がソ連や中国を敵視する冷戦構造を作り上げ、国連のP5を内部分裂させて機能不全に陥れた。米国自身が国連を中ソに味方する悪い組織として退ける世論も扇動され、代わりに米国が英国と組んで独仏日など同盟諸国を傘下に入れつつソ連中国と恒久対立する冷戦型・NATO軍産の体制が組まれた。国連でなく、英国が操る軍産に牛耳られた米国が覇権を握り、英国流の強圧的で細かい世界支配を続ける状態になった。
George Soros is defending the unipolar world order, not freedom

このような経緯から、米国の覇権運営は強圧的で細かい日欧などの同盟諸国は米国に絶対服従させられている。同盟諸国は、米国というよりも、米国の背後にいる英国に絶対服従させられてきた(近年の英国は、米国側からの逆襲的な逆乗っ取りによっておかしくさせられているが)。英国の国益に沿って、冷戦を口実に、英国のライバルであるドイツが東西に長期分割された。

絶対服従の米国覇権に比べると、新たに出てきた(明清以来400年ぶりに復活してきた)中国の覇権は、明清時代と同様、ゆるやかで縛りが弱い。だから非米側は、中国が他の諸大国を圧倒する「中国覇権体制」でなく、中国が他の諸大国と立ち並ぶ「多極型覇権体制」になっている。この新世界秩序について考察する前に、すでに今回たくさん書いているので、ここでいったん打ち切って配信する。執筆がなかなか進まず、何日もかかってしまったし。続きは次回に書く。 (世界資本家とコラボする習近平の中国


多極型覇権と中国
                  田中宇の国際ニュース解説 2023年3月8日
この記事は「さらに進む覇権の多極化」の続きです。

前回配信した前編は、ウクライナ戦争の長期化でこれから中露主導の非米側が台頭し、既存の米国覇権は世界の全部から一部へと縮小することを書いた。非米側は中国やロシアの一極支配でなく、BRICSの5か国などの諸大国や地域連合(ASEAN、GCC、アフリカ連合など)が、力の優劣はあるもののおおむね対等に立ち並ぶ多極型の覇権体制になっている(少なくとも今のところ)。いずれ、米国側も単体または分裂した形(米国と欧州と英国系が別々に、とか)で、この多極型の新たな覇権体制(新世界秩序。笑)に入っていく。そのような、きたるべき多極型の世界はどのようなものになるのか。中国が米国に取って代わって中国の単独覇権の世界になるだけだよ、と言いたがる人もいる。多極型なんて不安定でうまく行くわけないとか、米覇権は強いから崩壊するわけないよ、と言うマスコミ鵜呑みの人もいる。どうなのか。

まず言えるのは、これから中国が世界を一極支配する単独覇権体制を作るのはとても難しいことだ。米国は第二次大戦後すぐに単独覇権を確立したが、米国がすぐやれたのは、それまで100年以上も覇権を維持してきた英国から覇権を移譲されて支配システムを引き継いだ(移譲詐欺にあって乗っ取られた)からだ。米国と対照的に、中国が覇権を構築するなら、それは誰かからの移譲でなく、少ない基盤から作り上げねばならない。中国はすでに、ユーラシアの経済覇権体制の一帯一路とか、ロシアと共同でユーラシアを支配する上海協力機構、非米諸大国が中国に協力して世界を運営できるBRICSなど、覇権構築に使えそうな国際政治システムをいくつか持っている。だが、それらはすべて創設から日が浅く開発途上だ。一帯一路が満足に機能するにはあと10-25年かかる。上海機構やBRICSは合議型の国際体制で、それらが実現する世界は多極型だ。まず多極型で始めて、いずれ中国が他の諸大国より力をつけたら中国の単独覇権に切り替えていくとしても、実現までに25-50年かかりそうだ。

そもそも単独覇権体制はコスト高で儲からない。中国はユーラシア東部、ロシアは西部、インドは南部、サウジは中東、南アがアフリカ、ブラジルが南米をまとめていくといった多極型の方が、中国にとっても効率的で、儲かる貿易やインフラ整備、資源開発などだけ中国がやるという都合の良い状況を作れる。損しても融資が焦げ付くぐらいですむ。焦げ付いても政治的に債務国に恩を売れて超長期的に収支が合う。支配・被支配の一極支配より、多極型の方が双方にとって良い。前編に書いたように米国も、もともと大戦を機に世界を多極型に転換して、国連に覇権を渡して機関化するつもりだったが、詐欺師の英諜報界に入り込まれて覇権運営を乗っ取られた。

中国は古代から明清までの各帝国が調子の良い時に、自国周辺の東アジアやユーラシアを支配する覇権体制(冊封体制、朝貢貿易)を敷いていた。これは、周辺諸国を宥和して味方につけ、中国の辺境地域を安定させる策だった。中国は地域ごとに多様性が強く、中央政府が力を失うと国内の反乱がひどくなり崩壊していく。だから今も中国は民主主義をやれず選挙をやると民意を集めて政治力をつけた各地方の指導者が中央の言うことを聞かなくなる)、多党制にもできず独裁を維持するしかない。そんな感じなので、今後しばらく中国は覇権拡大より先に国内の体制を安定させねばならない。中国の覇権は伝統的に、外国を支配するのでなく、外国によろしくと言う善隣外交だ。今の中国も、外国が台湾やウイグルや香港の分離独立を扇動して中国の内政が不安定になることを最も恐れている。

米国は2001年の911事件以降、単独覇権体制を振りかざして支配したので、世界は覇権を嫌うようになっている。支配を過激にやりすぎた米国が覇権を失い、その覇権を中国が取って世界を露骨に支配すると、中国は世界から警戒・嫌悪されてしまう。これは愚策だ。中国は覇権を拡大するとしても、表向き覇権など希求していませんと言い続け、裏で隠然と支配する「孫子の兵法」的なことをやる。露骨に覇権主義をやった米国は馬鹿だった(実は馬鹿でなく、英国系に牛耳られてやらされてきた覇権を意図的に自滅させ、米国自身を覇権役から解放しているのだが)。米英覇権崩壊後の世界は不可避的に、誰も一極支配を好まない多極型になる。「米国の覇権を中国が取るだけでしょ」と言っている人は浅はかだ。「米国は絶対に崩壊しない」と言ってる人も米プロパガンダの軽信者だ。

世界経済の発展史の観点からも、どこかの国が単独で全世界を一極支配する単独覇権体制はもう要らなくなっている。単独覇権が具現化する単一市場が必要とされたのは、英国発の産業革命が全世界に拡大、定着していく200年近くの期間だった。産業革命によって、1800年前後に内燃機関による船舶と鉄道の世界的な交通網や、電信電話による通信網が作られ始めた。それらは発達し続け、1970-90年代には大型ジェット機、高速鉄道、自動車や高速道路の技術の確立によって世界的な交通網が完成し、テレビや電話網、さらにはインターネットとスマホによる世界的な通信メディア網も完成した。世界中がだいたい同じ技術やサービスを共有する単一市場があり、十分発達できるようになった。ここまで世界が平準化すると不可逆的であり、もう覇権の体制がどうであれ単一市場が維持される

英国の単独覇権は、第一次大戦前にドイツや米国が英国と並ぶ経済大国になった時点で終わるべきものだった。もし英国が単独覇権を解体してドイツや米国や日本やロシアに覇権を分け与えて多極型に転換していたら、世界は2度の大戦なしで発展し続けられた。だが、英国は自国の凋落や覇権放棄を拒否し、米国を味方につけてドイツを潰す戦争を仕掛け、世界大戦になった。多極型覇権より、単独覇権の方が覇権維持のための戦争が起きるので不安定だ。国際連合の多極型(機関型)の覇権は冷戦で壊れたが、壊したのは単独覇権を維持したかった英国だ。単独覇権を完全に解体して不可逆的に多極型にするのが世界を平和にするための最善策だ。

米国はもともと中国の発展を助けてきた国だ。英国が欧日の列強を誘って中国を分割しようとした時、そこに割って入って分割を阻止したのは米国だ。清朝が滅びそうな時、中国を民主的な国にするため孫文を支援して中華民国の建国を実現したのも米国だ(中国を支配したがった当時の日本政府は孫文の建国運動を支援しなかった)。大戦期に日本の中国支配を阻止するため、重慶の国民党を支援して国共合作を仲裁したのも米国だった。米国は、戦後の多極型体制(国連P5)を作る際、日本によって重慶に追い込まれてゲリラ勢力になっていた国民党の蒋介石を米軍機に乗せてカイロ会談に招き、中華民国を5大国の一つにしてやった。米国は何としても、中国を自国と並ぶ世界の極の一つに仕立てたかった。

そんな米国が豹変したのは戦後、英諜報界に覇権譲渡詐欺をやられて入り込まれて牛耳られてからだ。その後の英米は、金日成を騙して南進させて朝鮮戦争を誘発し、毛沢東が北朝鮮を支援するよう仕向けて朝鮮で米中戦争を起こし、米国の非英勢力が進めようとしていた共産中国との和解策を潰した。国共内戦に敗けた国民党が台湾に立てこもって戦い続ける中台の冷戦構造を作ったのも米国だった。

英国に牛耳られて潰されていたもともとの米国(ロックフェラー系など多極型をこっそり希求する隠れ多極主義者たち)が復活し始めたのは、1972年のニクソン訪中からだった。1960年代に米国は経済力やドルの威力を(意図的に)浪費し、1971年の金ドル交換停止(ニクソン・ショック)でドルの覇権が崩壊した。これから米国の経済発展に期待できなくなるので、世界経済を回し続けるためには、中国への敵視をやめて米国からのテコ入れを再開し、中国を早く経済発展させないとだめだ、という資本家の声が強くなった。それで(隠れ多極主義者たちが米覇権の自滅策として泥沼化させた)ベトナム戦争をうまく終わらせるためという口実を設けてニクソンが訪中し、米中が和解した。当時まだ毛沢東が生きていて文革で中国を自滅させていたので、毛沢東が死んでトウ小平が1977年に復権するまで待ってから1978年に正式に米中が国交回復し、その直後からトウ小平の改革開放で中国の高度成長への道が始まった。

中国は米国と肩を並べるまで経済発展したが、同時に米国で英国系(軍産マスコミ)が扇動する中国脅威論や中国敵視が強まった。ロックフェラー系など隠れ多極主義者たちはこの状況を逆手にとり、米国が過激に中国を敵視し、米国に敵視された中国が安全保障策として経済を米国から切り離すように仕向けた。トウ小平の改革開放は、中国が米国の製造業の下請けとして発展する経済対米従属策だった。中国は儲けたカネで米国の債券を買い、金融主導になった米国覇権を下支えしていた。胡錦濤までの中共はトウ小平の方針を守っていたが、習近平になると方針転換し始め、米国の下請けでなく、一帯一路など世界の非米的な諸国との経済関係で発展していく戦略を開始した。多極主義的な覇権放棄屋のトランプ政権が、中国の経済対米自立に呼応して、中国を敵視(して強化)する策として経済の米中分離策を開始し、バイデン政権も米中分離策を受け継いでいる。中国経済はどんどん非米化している

ウクライナ開戦後、2000年から中国と親しかったロシアが米国側に経済制裁されて一気に経済を非米化し、中国もロシアに引きずられる形で非米型の経済システムを強化する策を加速した。中露が米国側(先進諸国)以外の世界中を非米的な多極型の覇権体制の中に引っ張り込み、世界の多極化と非米化を進めている。米国ではウクライナ開戦に同期して、隠れ多極主義者たちがインフレを悪化させて米連銀にQE終了とQT開始をやらせ、ドルと債券金融システムをバブル崩壊への道に追い込んでいる。あとは、ドルと債券のバブル崩壊がいつ具現化するかというタイミングの問題だけになっている。

きたるべき米国覇権の崩壊とともに、日本の対米従属も終わりにさせられる。もともと戦後日本の対米従属は、中国より強い日本が再び中国支配を試みないようにする「びんのふた」だった。昔から中国が内部崩壊すると、日本が中国に進出して支配したがる歴史が繰り返されてきた。しかし近年は中国が日本より強い状態になった。中国は今後さらに発展台頭し、対照的に日本は経済的にも、人材的・人々の叡智や技能的にも衰退する一方だ。日本は対米従属をやめても25年ぐらいは今のままのダメさだろう(その後に期待)。日本が中国を支配することはもう不可能で、びんのふたも要らなくなっている。

最近は韓国が日本に和解を提案している。これは、日韓から米軍・米覇権が撤退する時が近づいているからだ。従来の米覇権下では、日韓が仲違いし続けて米軍が日本と韓国に別々に駐留し続けている方が米国の軍事費が浪費できて、軍産と隠れ多極主義者の両方に好都合だった。日本と韓国の主流派である米傀儡勢力も、米国とのつながりを強くしておくため日韓が別々に米国に従属するハブ&スポーク型の恒久化を望んできた。しかし今後は米国が退潮し、日韓は対米自立を余儀なくされ、相互に対立し続けることが愚策に転じる。米国の退却後、極東は、日本と韓国が仲良く中国の朝貢国になる感じになっていく。台湾は話し合いで中国の傘下に入っていく。

北朝鮮は、金正恩が内政の転換をうまくやれれば、軍部の権力を削ぎ、かつて殺された張成沢の代わりになる経済運営の専門家たちに権力が移り、中国の傘下で経済発展していき、日韓と和解することになる。金正恩がうまくやれない場合、軍部が権力を握り続け、緊張緩和と発展への動きがゆっくりしか進まなくなる。韓国も中国も北朝鮮を追い詰めないことを優先するので、戦争にはならず、緊張緩和がゆっくり進む。