2023年3月17日金曜日

辞任は秒読みの高市大臣 ますます逆切れ暴走(日刊ゲンダイ)

 高市経済安保相は、総務省の行政文書の自分に関する部分が「捏造」乃至「不正確」だと主張して譲りません。自民党を含めて周囲は呆れているし、国民の73%は高市氏の主張に納得していないなど懐疑の目で見ています。

 日刊ゲンダイは高市氏のそんな態度を「大立ち回り」と評します。当然、滑稽さへの揶揄が含まれています。それにしても高市氏は一体何が気に入らなくて「捏造だ」「不正だ」と騒いでいるのでしょうか。
 彼女は総務相とし15年5月の総務委員会で「一つの番組でも放送法に抵触する場合がある」と答弁して「統一見解」を誘導し、16年2月には放送局の電波停止にまで踏み込む発言をしてTV局を震え上がらせるなど、極右振りを遺憾なく発揮してきました。
 しかし磯崎氏が騒ぎ出したころには、「本気でやるのか」とか「放送局の反発が大きいのでは…」というような、彼女のいわば正当な(弱気の)発言が記載されているだけで、総務官僚の高市氏への配慮を感じこそすれ高市氏が激高するような記述は見当たりません。
 しかしそう見るのは間違いで、真相はそうした弱気な発言が高市応援団の目に触れると困るということなのかも知れません。そうであればとても付き合い切れません。
 日刊ゲンダイの2つの記事、「政権に牙を抜かれたTV局 墓穴の高市辞任は秒読みだが、~ 」(15日付)と「高市大臣ますます逆切れ暴走…~ 自民党内でも大ブーイング」(16日)を紹介します。
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政権に牙を抜かれたTV局 墓穴の高市辞任は秒読みだが、それで幕引きとはいかない
                          日刊ゲンダイ 2023/03/15
                        (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 放送法の「政治的公平」に関する総務省の行政文書をめぐり、大立ち回りを演じている高市経済安保担当相がいよいよ土俵際に追い詰められてきた。自身に関わる文書4枚を「捏造」「不正確」と断じて一歩も引かないが、姑息にもまた防衛ラインを下げている。
 高市がとりわけこだわっているのが、2015年2月13日付の大臣レクだ。行政文書には「2月13日(金)15:45~16:00」「大臣室」などと日時や場所、6人の出席者の名前のほか、「そもそもテレビ朝日に公平な番組なんてある?」「民放相手に徹底抗戦するか」などの高市の発言が記載されている。
 14日の閣議後の会見でも「放送法の政治的公平に関する説明を受けたことはない」「紙に書かれてある内容のようなレクを受けるはずもない」と繰り返しつつ、当時はNHKの予算案を国会に提出する準備をしていた時期にあたるとして「そういうところを詰めたレクはあり得たのではないか」などと、微修正した。
 一方、松本総務相の方は閣議後の会見で「放送関係の大臣レクはあった可能性が高いと考えられる」「聞き取りを総合した結果を申し上げた」と説明。女傑の孤立は深まるばかりだ。
 高市はその後の衆院本会議でも持論を展開。総務相時代の15年5月に「一つの番組でも、極端な場合は政治的公平を確保しているとは認められない」と国会答弁し、政治的公平をめぐる解釈を変更した経緯についてまくし立てた。
 行政文書には安倍元首相と高市が電話会談したと記されているが、官邸の影響を受けた事実はないと主張。立証のために答弁前夜の自身と大臣室とのやりとりを示したメールなどの資料を国会に出す用意があると強調し、「求めがあれば提出したい」と明言した。資料提出を通じ、行政文書の内容はウソだという言い分を正当化する狙いだが、しかし、である。

高市主張「納得せず」73%
 公文書管理法に基づく行政文書だと総務省が認めた文書を怪文書だの、捏造だの言っておいて、手元にある役所とのやりとりメールは真正だという主張はトンチンカンだ。それに、パズルのピースのひとつに過ぎず、言い分を裏付ける客観的事実にはなり得ない。どうしたことか、理性を失いつつあるのだろうか。
 共同通信の世論調査(11~13日実施)によると、行政文書は「不正確で捏造だ」という高市の主張に対し、「納得できない」との回答は73.0%に上った。高市の見苦しい答弁を見て、国民もようやく、この国の政治の異常事態に気づいたのではないか。
 墓穴を掘った高市の辞任は秒読みだが、それで幕引きとはいかない。問題の本質は、第2次安倍政権が端緒を開いたメディアに対する政府の不当な介入だからだ。15年5月の解釈変更、つづく16年2月の停波言及。高市答弁の結果、テレビ局は牙を抜かれたも同然となった。放送法の解釈を歪めたことで、法改正せずに権力監視機能を弱体化させたのだ。
 高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言う。
「解釈変更について安倍政権は『補充的な説明』とごまかしましたが、言いぶりの違いはあるにせよ、政府見解を岸田政権も踏襲している。野党は厳しくただし、撤回させなければダメです。高市大臣と総務省側とのやりとりや辞職うんぬんとは別問題ですし、原則論なのですから、水掛け論の収束を待つ必要はない。手を打たなければ、政府が公然とテレビ局の番組制作に介入し、批判的なキャスターを降板させ、あまつさえ番組ごとぶっつぶす蛮行がまかり通ってしまう。〈一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断する〉とする従来の解釈に押し戻さなければ、テレビは愚民政策に徹底的に利用されることになります」

張本人は釈明ツイート連投で言いっぱなし
 安倍官邸の手先となって、総務省に猛烈な圧力をかけた礒崎陽輔首相補佐官(当時)の証人喚問も外せない。野党が要求するのは当然だ。共同通信の調査でも礒崎の行為について、報道の自由への「介入だ」「どちらかといえば介入だ」との回答は計65.2%を占めた。本人も言いたいことが相当あるようだし、国会で公明正大にやり合った方がいい。礒崎は「#放送法」とハッシュタグを付け、こんな具合に釈明ツイートを連投している。
〈法律論ですから分かりにくいかも知れませんが、政府は、昭和の時代から、政治的公平性は、極端な場合を除き、「番組全体」を見て判断するという解釈を示しているのです。しかし、極端な場合は、そうでない場合もあるということです。これは定着した解釈であり、変えようはありません〉
〈まだ多くのマスコミが8年前の総務大臣答弁によって政治的公平性の判断基準が番組全体(チャンネル)から一番組に変わったかのような誤った報道をしていますが、昭和39年の電波監理局長答弁の中に「極端な場合」は一番組でも判断できるとする趣旨の内容があり、放送法の解釈は変わっていません〉
 首相補佐官時代の礒崎の職掌は安全保障と選挙制度だった。東大法学部を卒業後、旧自治省入り。総務官僚として霞が関のキャリアを終えているが、放送行政は門外漢のはずなのに冗舌だ。

昭和の局長答弁も「全体の構成」
「昭和39年」(1964年)は臨時国会と通常国会が開かれたが、郵政省の電波監理局長の答弁は見当たらない。65年の通常国会では電波監理局長が政治的公平について答弁。長いが、引用する。
〈「政治的に公平であること」ということにつきまして、ただいま御質問がございましたが、これにつきまして、放送の番組というものが、当然これに従って規制されていかなければならないわけでございますが、一つの番組そのものにつきまして、一々すべての政治的な観点をそこに打ち出していくということは、なかなか編集上にもむずかしいと思いますし、事実、そういうことまで配慮するということよりも、むしろ問題の一番大きな点は、全体の番組構成というものの中におきましての政治的な公平性というものが保たれていることが必要なのではなかろうか、こういうふうに考えています〉
〈番組の中におきまして、一人の人がものを語りました場合におきましても、それを問いただす形において、おのずからそこにいろいろの対立点というようなものが浮き彫りにされるというような形の番組編成もございますし、これは番組編成の態度とか、あるいは全体的な企画とか、あるいはその番組だけでなく、その番組は一人の人といたしましても、別の番組においてほかの人に聞く、こういうような形の編集企画もございましょうし、そういうようなことを総合的に考えまして、やはり政治的に公平であること、及び御指摘の放送法第一条第二二号、第四十四条のその点の判断をしてまいる、こういうふうにいかなければならぬと考えております〉
 礒崎の主張とは重ならない。参院議員を2期務め、首相を補佐する立場にいた人物がSNSで言いっぱなしはどうなのか。やはり、国会で話を聞かなければ始まらない
 いまだ真相が解明されないモリカケ桜疑惑。黒を白と言い張り、それが通ったのが安倍・菅政権だった。森友学園に国有地をタダ同然で払い下げた問題では、安倍が「私や妻が関係していたら総理大臣も国会議員も辞める」と国会でタンカを切ったことで、国家機関がつじつま合わせに走らされた。
 財務省は民主主義の根幹をなす公文書を改ざんし、不正に関与させられた職員が自死に追い込まれた。裏を返せば、財務省文書が正確を期していたからこそ起きた悲劇でもあった。この流れは岸田政権下でも変わらない。
 専守防衛を逸脱する敵基地攻撃能力保有や防衛費を倍増させる軍拡、3.11の被災者を踏みにじる原発回帰、アベノミクスを踏襲するデタラメ経済政策。国民の暮らしに直結する大問題にもかかわらず、ロクに説明しない。噛みつく番組はないに等しい
「22年の報道の自由度ランキング(国境なき記者団発表)で、日本は世界180カ国・地域中71位。安倍政権以降、下落が止まりません。国家安全維持法施行でメディアが統制された香港と同じ事態がこの国でも起きているととらえたほうがいい」(五野井郁夫氏=前出)
 いま強権政治を断ち切らなければ、取り返しがつかなくなる。


高市大臣ますます逆切れ暴走…最大NGワード「質問するな!」を放ち、自民党内でも大ブーイング
                          日刊ゲンダイ 2023/03/16
 総務省の行政文書に記録されている「大臣レク」が行われたのか否かで、15日も国会は大炎上だ。総務省が「レクは行われた可能性が高い」としているのに、当時の高市総務相(現・経済安保担当相)は、15日も「レクはなかった」と断言。野党議員に追及されると、とうとう「もう質問するな!」と逆切れする始末だ。
  ◇  ◇  ◇
 問題になっているのは〈高市大臣レク結果(政治的公平について)〉と題された行政文書。日付は2015年2月13日で、場所は総務大臣室。出席者は高市氏本人と参事官、秘書官の大臣室側の3人と、レクに上がった総務官僚3人の計6人と記されている。
 15日の参院予算委員会では、レクの存在自体を否定する高市氏に対し、立憲民主党の杉尾秀哉議員が「高市大臣の発言には根拠がない。全く信用できない」と追及。すると高市氏は、怒りをにじませながらこう吐き捨てたのだ。
「私の答弁が信用できないんだったら、もう質問なさらないで下さい」
 大臣が野党議員に「質問するな」とは、前代未聞だ。
 さらに、「なぜ答弁拒否するのか」と食い下がる杉尾氏に、「答弁をしても杉尾議員が私の発言を信用できないとおっしゃったからだ」と発言。まるで小学生の言い訳である。
 行政監視機能を持つ国会を否定するトンデモナイ暴言だが、高市氏はさらに事態をややこしくさせる答弁を展開した。大臣レクの存在を否定する自身の主張を補強するため、「(文書に記されている)大臣室側の2人は『絶対にない』と言ってくれています」と発言したのだ。

言ってはいけない「最大のNGワード」
「大臣レク」文書によれば、大臣室側の2人とは、当時の平川薫参事官と松井正幸秘書官のこと。現職の総務官僚である松井氏は総務省の聞き取り調査を受けているはずだが、高市氏が言うように「大臣レクは絶対になかった」と断言したのだろうか。実際は、「よく覚えていない」程度のことしか言っていないのではないか。もう一人の平川氏は、現在、内閣法制局に所属している。
 いずれにせよ、高市氏が「2人は『絶対にない』と言ってくれています」と“新しい証拠”を出してきたことで、今後、野党の追及がさらに激しさを増すのは間違いない。実際、杉尾氏は2人の参考人招致を求めていた

 火に油を注ぎ続ける高市氏に対し、さすがに、自民党内から大ブーイングが噴出している。
「『質問するな』は閣僚が言ってはいけない最大のNGワード。あり得ない態度だ。この調子では、批判報道に拍車をかけることになるに違いない。ただでさえ、自らの調整不足で高市さんの地元・奈良県知事選は保守分裂の様相となっている。これ以上“悪目立ち”すれば選挙に影響するのではないか。普段はあそこまで感情的になるタイプではないはずだが、相当、精神的に追い込まれているのだろう」(閣僚経験者)
 暴言を繰り返す高市氏の様子は連日、テレビで報じられている。このままだと、奈良県知事選だけでなく、4月の統一地方選全体を直撃しかねない。そうなれば、いよいよ党内から完全に見放されてもおかしくない。