2023年3月4日土曜日

日本全土が戦場化 核・生物・化学攻撃を想定 小池書記局長 追及

  しんぶん赤旗日曜版2月26日号が、防衛省が全国283の自衛隊基地に保有している2万3000棟を、化学、生物、核兵器などの攻撃CBRNe)に耐えるよう「強靱化」するため、ゼネコン関係者との意見交換会を1223日と今年2月2日に開いていたことを明らかにしました

 防衛省は約4兆円をかけ、10年後までに300近くの自衛隊基地を強靱化することを構想しています。ここにきてそうした計画が急浮上したのは、他国から攻撃される惧れが生じたからで、それが岸田政権が実行しようとしている敵地攻撃能力の保有を含む大軍拡に起因しているのは明らかです。
 軍備を拡大すれば他国からの攻撃・侵攻を抑止できるからというのが大軍拡に奔る言い訳でしたが、実際は逆で、他国からの攻撃を招くことに直結していることを政府自身が良く認識していることが、これで証明されました。
 問題は他国からの攻撃が基地に留まるという保証は何もないことで、事実、太平洋戦争では多くの都市がB29による絨毯爆撃を受けて焦土と化しました。「先ずは自衛隊員の生命だけは守る」という姑息な策に走るのではなく、他国(・隣国)からの攻撃を受けないようにする外交努力こそが必要であり、憲法9条が政府に要請しているところの筈です。
 共産党の小池晃書記局長は2日の参院予算委で、安全保障3文書では抑止が破綻する可能性に言及していると指摘し、自衛隊施設の強靭化計画は「日本全土の戦場化」を想定したものだと追及しました。
 しんぶん赤旗が報じました。同紙は、基地施設の強靭化に関する小池氏の「質問の概要」とそれを含む「質問の詳細」の2つの記事を出しています。後者は長文のため「強靭化」関連の部分のみを紹介します(全文は別途原文にアクセス願います)。
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日本全土が戦場化 核・生物・化学攻撃を想定
  自衛隊300基地2万3000棟強化 
    参院予算委 小池書記局長、防衛省資料示し追及
                       しんぶん赤旗 2023年3月3日
 日本共産党の小池晃書記局長は2日の参院予算委員会で、防衛省が全国約300の自衛隊基地に保有している2万3000棟を、化学、生物、核兵器などの攻撃に耐えるよう「強靱(きょうじん)化」するため、ゼネコン関係者との意見交換会を昨年12月23日と今年2月2日に開いていたことを明らかにしました。小池氏は「日本全土の戦場化」を想定したものだと追及しました。質問詳報
 計画は「しんぶん赤旗」日曜版2月26日号がスクープ。これを受け、小池氏の求めに応じ防衛省が資料を提出しました。資料(図)には自衛隊施設の強靱化に関し「CBRNe(シーバーン)に対する防護性能の付与」などと明記。防衛省の杉山真人大臣官房施設監はCBRNeについて「化学、生物、核、爆発物等による攻撃のこと」だと答弁しました。
 防衛省は5年間で約4兆円をかけ、10年後までに約300の自衛隊基地を強靱化する計画を示しています。


出典 防衛省提出資料






 小池氏は、防衛省自身が「これまで経験したことのない規模の事業量だ」と書くほど、すさまじい基地強化だと指摘。「日本が敵基地攻撃を行えば反撃され、日本中が攻撃にさらされる危険があるから、これだけの基地の強靱化を進めるということだ」と迫りました。
 さらに、政府が敵基地攻撃能力の保有を「抑止」のためだと言いつつ、安全保障3文書では、その抑止が破綻する可能性に言及していると指摘。「軍事に対し軍事で構えれば、無限の悪循環になる」と批判しました。
 岸田文雄首相は「平和国家の歩みは変わらない。さまざまな装備は大事だが、問題はそれをどう運用するかだ」などと強弁。小池氏は「運用は政府に任せろということだ。法治国家が崩れてしまう。専守防衛を投げ捨てる敵基地攻撃、大軍拡は日本中に戦火を広げ、国民の命を危険にさらす」として、徹底した外交努力を行うよう求めました。


敵基地攻撃 「国中が攻撃対象」前提
参院予算委 小池書記局長の質問
                        しんぶん赤旗 2023年3月3日
 日本共産党の小池晃書記局長は2日の参院予算委員会で、日本の戦場化を想定した自衛隊基地「強靱(きょうじん)化」、敵基地攻撃ミサイルを保管する大型火薬庫の建設計画、物価上昇に見合った賃金引き上げ、インボイス中止、LGBTQなど性的少数者に対する差別禁止法・同性婚の法制化で論戦を展開しました。
日本全国283地区を列挙
自衛隊基地強靱化―防衛省も“未経験の事業”
 小池氏は、昨年12月23日と今年2月2日に防衛省が大手ゼネコン関係者などを集めて行った「自衛隊施設の強靱化」についての会合で配布された「各種脅威に対する施設の強靱化」と題した文書を提示。同文書は「武力攻撃・テロ行為等」に対抗し、自衛隊施設の整備を順次実施すると明記しています。

5年間で4兆円





















 具体的には▽主要司令部等の地下化▽主要施設のHEMP攻撃対策▽火薬庫の必要保管量の確保▽「CBRNe(シーバーン)に対する防護性能の付与」として施設の機能・重要度に応じた構造強化、施設再配置・集約化―などを挙げています。
 HEMP攻撃は、高高度(地上約30~400キロ)での核爆発などで生じる電磁パルスで広範囲の電気系統を破壊するもの。CBRNeは、核兵器をはじめ化学、生物、放射性物質などによる攻撃の総称です。
 小池氏は、こうした攻撃を想定した施設の▽空気ろ過フィルター設置▽壁厚の強化▽地下化―を列挙する防衛省の資料(図)を示し、「核兵器による攻撃を想定して、すべての司令部を地下化し、構造を強化するものだ」と指摘。現在の戦術核は広島型原爆の数倍の威力だと強調し、「もしも使用されたら筆舌に尽くしがたい惨禍をもたらす。断じてあってはならないことだ」と警告しました。
 防衛省は同計画について今後5年間で4兆円を投じ、10年後に完成する計画です。同省が提出した資料には、日本全国283地区が列挙されており(別項)、約2万3000棟の「強靱化」のためのマスタープランを作成するとしています。
 小池氏は「防衛省が『これまで経験したことのない規模の事業量』と書くぐらいすさまじい基地強化だ」と強調。日本が敵基地攻撃を行えば、反撃されて日本中が攻撃にさらされる危険があることを前提にした計画だと批判しました。

国会審議を愚弄
 さらに小池氏は、国会に予算案が提出される1カ月も前の昨年12月に、防衛省がゼネコン関係者を集めて意見交換を行っていたことを批判。「国会の予算審議を愚弄(ぐろう)し、財政民主主義を踏みにじるものだ」とただしました。
 小池氏は、古賀誠元自民党幹事長の「敵基地攻撃能力を持てば、完全に『専守防衛』を逸脱してしまう」との警告を紹介。「戦争がいかに愚かで、多くの人たちが苦しみ、血と涙を流したかということを僕は体で知っている。体験しているからこそ、自分の考える平和を言い続けたい」との古賀氏の決意を読み上げ、「重く受けとめるべきだ」と指摘しました。
住民の生活圏が戦場に
ミサイル保管の大型火薬庫―全国に130棟計画
 小池氏は、敵基地攻撃ミサイルの配備や大型火薬庫の新設を全国で進めれば、有事の際に住民の生活の場が攻撃対象になってしまうと厳しく批判しました。

「迎撃用」と説明
地図省略
 沖縄・石垣島には今月中旬に陸上自衛隊石垣駐屯地が開設され、敵基地攻撃ミサイルの配備が狙われています。小池氏は、島出身の若者が「将来この島に戻ってこられるだろうか」と話し合っていたと無党派の議員が涙ながらに語っていたことを紹介。また、長距離ミサイルの配備に反対する石垣市議会の意見書を巡り、防衛省は住民説明会で、配備されるミサイルは他国領土を攻撃するものでなく、「迎撃用」と説明したとしています。小池氏は、この説明を聞いて基地建設に賛成した人も少なくなく「政府は約束を守るべきだ。長距離ミサイルは配備しないと断言せよ」と迫りました。
 さらに、敵基地攻撃能力の配備に「明確に反対する」「抑止力の強化がかえって地域の緊張を高め、不測の事態が生ずる」とした沖縄県の玉城デニー知事の発言を紹介。「県民が求めているのは説明ではない。配備の中止だ」と強調しました。
 政府は敵基地攻撃を担う長射程ミサイルを保管する大型火薬庫の新設を全国で狙っています。
 防衛省は来年度予算案に、陸自大分分屯地(大分市)、海自大湊地方総監部(青森県むつ市)に大型火薬庫を新設し、陸自祝園(ほうぞの)分屯地(京都府精華町)、海自呉地方総監部(広島県呉市)で調査を行う予算を計上していると答弁(地図)。今後10年以内に、大型火薬庫を全国約130棟に整備する計画を明らかにしました。

ウクライナでも
写真省略
 小池氏は大分分屯地のすぐそばには、地区全体で2700世帯が暮らす団地や大学があり、祝園分屯地のある精華町もベッドタウンだと紹介。ロシアのウクライナ侵略でも火薬庫が攻撃目標になったことを挙げ、大型火薬庫が全国で拡大することで、「市街地のそばが真っ先に攻撃対象とされるのではないか」と迫りました。
 岸田文雄首相はこの追及にまともに答えず、火薬取締法などの「関係法令に基づいて安全面に配慮を行う」と述べました。小池氏は、火薬取締法は平時の法律であり攻撃を想定したものではないと反論しました。
 浜田靖一防衛相は、防衛省の資料に「スタンド・オフ・ミサイル(敵基地攻撃ミサイル)等の大型弾薬等の火薬庫」と明記してあるにもかかわらず、「スタンド・オフ・ミサイルを保管するか否かは決定していない」と強弁。しかし、小池氏の繰り返しの追及に「スタンド・オフ・ミサイル」の一つである「12式地対艦誘導弾能力向上型」の保管を想定していることを認めました。
                 (後 略