2023年3月6日月曜日

白川方明・前日銀総裁 アベノミクスを「壮大な金融実験」とバッサリ

 異次元金融緩和をすれば2年で2%の物価上昇(デフレ脱却)ができるとしてスタートしたアベノミクスでしたが、結局10年経っても目標を達成できませんでした。そもそも異次元緩和は2年程度が限度で、こんなに引っ張ってよいものではありません。それに伴って発生したマイネス面は余りにも大き過ぎ、それを安全に解消する方法などはありません。
 現在起きている物価の高騰は基本的には国際的な要因に拠っていますが、アベノミクスによる円安が極めて大きく作用していることも即座に理解できるところです。
 白川方明日銀総裁IMF(国際通貨基金)の季刊誌に「変化の時」と題した〝金融政策の新たな方向性に関する3ページの論文″を寄稿して、アベノミクスを痛烈批判しました。当然、話題になっているということです。
 その中で「異次元緩和は必要なときに簡単に解除できるという、ややナイーブな前提があった」(ナイーブ⇒おばかさん)」とソフトに批判をしているようですが、10年も続けたのですからそう批判されても仕方がありません。経済評論家の斎藤満氏も「黒田氏は金融政策の限界に対する認識が甘かった」と述べています

 ここにきて「おばかさんキャラ」で光っている人に世耕弘成参院幹事長がいます。彼は5日のNHK日曜討論で野党からアベノミクスは失敗でないかとの指摘されると、早速、白川氏の名前を挙げながら、「失敗ならば自民党は6回の国政選挙で勝っていない。失敗ではない」との方向違いの見解を示し13年1月の政府と日本銀行の共同声明アコード)は修正すべきではないと述べました。
    2%の物価目標をできるだけ早期に達成するために積極的な緩和を行う責務を課したもの
 ここまで現実を直視できないというのは珍しいことで、世耕氏は2月27日に行われた日銀新総裁候補・上田和雄氏に対する質疑にも志願して質問者席に立ち、「アベノミクス」を継続べきで2%の物価安定目標を達成すべきこと、また政府・日銀の共同声明を守るべきことを事実上強要する発言を行いました。一応 安倍派重鎮の一人といわれていますが、ここまでズレていては話になりません。
  ⇒日銀総裁候補所信 アベノミクス転換けん制 安倍派世耕氏、直接ただす 静岡新聞 
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白川方明・日銀前総裁が“アベクロ”猛批判…アベノミクスを「壮大な金融実験」とバッサリ
                           日刊ゲンダイ2023/03/04
 日銀総裁候補の国会同意人事案の採決まで1週間となる中、アベノミクスの立役者である黒田総裁に対する痛烈な批判が話題だ。10年に及ぶ異次元緩和は国際競争力を低下させ、足元の輸入物価高を招いている。酷評されて当然なのだが、発言の主が言葉を選んできた白川方明前総裁だからインパクトは絶大だ。
 白川氏はIMF(国際通貨基金)の季刊誌に「変化の時(Time for Change)」と題して寄稿。金融政策の新たな方向性に関する3ページの論文で、IMFのHPで1日に配信された。安倍政権と一体化した黒田氏が推し進めた異次元緩和を「壮大な金融実験」「ややナイーブな前提があった」などとクサし、こう批評している。

異次元緩和は「おばかさん」
2013年以降、日本銀行のバランスシートがGDP比30%から120%に拡大した「壮大な金融実験」を改めて振り返る。インフレの面ではその影響は控えめだった。そして、成長面でもその効果は控えめだった
〈中央銀行が政策金利の動向を市場に強く示唆し、長期金利に影響を与える「フォワードガイダンス」。経済が低迷しているときは、市場参加者は低金利が続くと予想しているので、フォワードガイダンスはあまり効果的でない
異次元緩和は)必要なときに簡単に解除できるという、ややナイーブ⇒おばかさんな前提があった

 財務省出身の黒田氏が導入したフォワードガイダンス(先行き指針)などの非伝統的な金融政策は意味ナシ。インフレも成長も促せなかった「実験」は失敗だったと総括したのである。ちなみに、「ナイーブ」には「おばかさん」の意味がある。

黒田氏の認識の甘さを一刀両断
 経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
黒田氏は金融政策の限界に対する認識が甘かった。白川氏の指摘をひと言で言い表せばそういうことで、実際にその通りだと思います。過剰な思い込みにより、当初掲げた『2年で物価上昇率2%』に固執し、これでもかと黒田バズーカをぶっぱなした結果、日銀のバランスシートは膨れ上がり、利上げすれば債務超過必至。日本経済はメチャクチャになった。とんでもない事態に日銀OBとして怒りが収まらないのでしょう」
 黒田体制ラストの金融政策決定会合は9、10日。事実上の利上げに再び踏み込むのか。プライドの高い黒田氏が白川氏の苦言にどう反応するのかも注目だ。
「黒田総裁は自分の仕事は終えたとの認識で、現状維持で退任するつもりのようです」(金融関係者)

 無傷でトンズラされたら、白川氏でなくても怒りは収まらない。