2日の参院予算委で共産党の小池晃書記局長が、全国283地区の自衛隊基地・防衛省施設の約2万3000棟を、核・生物・化学兵器や電磁パルスといった、あらゆる攻撃に耐えられるよう、地下化や構造強化などの「強靭化」を進める計画を明記した内部文書を公開しました。強靭化には10年が掛かり、前半の5年間に4兆円を投じる予定です。
自衛隊が発足してから約70年になりますが、これまでそんなことは話題にもなりませんでした。それが急にこんなことが言われ出した理由は明らかで、安保3文書が目指す通り「専守防衛」をかなぐり捨て、米軍と完全に融合して先制攻撃を含む海外での戦争に参加すれば、結果として日本への報復攻撃を招き国土が戦場になる惧れがあるからです。
政府は「軍備拡大が抑止力になる」と強調しますが、それは逆で、「軍備を拡大すれば日本全土が火の海なる惧れが高まる」というのが事実です。
政府自身2月6日の衆院予算委で、共産党の穀田恵二議員の質疑に対して、大規模な報復攻撃で日本が甚大な被害を受ける可能性を認めています。
自衛隊施設の強靭化は、日本の全土が焦土となっても自衛隊基地だけは生き残らせるという考え方に拠っています。
小池晃氏が「市街地のすぐそぱに弾薬庫をつくれば、真っ先に攻撃対象になる」と追及したのに対して、岸田首相は「火薬取締法など、関係法令に従って安全面に配慮する」と答弁しました。当然小池氏から「火薬取締法は平時の法律だ。攻撃を想定した法律なのか」と突っ込まれましたが、火薬取締法で安全が保たれるのであれば、自衛隊の施設は全て建築基準法に準拠しているから安全という理屈になります。
小池氏は「軍事に対して軍事で構えると、無限の悪循環になることが、はっきり出ている」と指摘し、「今やるべきは戦争の準備ではない。徹底した外交努力で、地域の緊張を緩和する平和な環境をつくることが、政治の責任だ」と述べました。
岸田政権は根本的に誤った道を進もうとしています。しんぶん赤旗が報じました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
シリーズ 浮かびあがる敵基地攻撃の危険
47都道府県で基地「強靭化」 日本全土が戦場化 報復による大規模被害想定
しんぶん赤旗 2023年3月15日
「専守防衛」をかなぐり捨て、米軍と完全に融合・一体化して先制攻撃を含む海外での戦争に参加し、その結果として日本への報復攻撃を招き、国土が戦場になる ー。違憲の「敵基地攻撃能力」保有を柱とした岸田大軍拡。その危険性が、日本共産党の追及で明らかになってきました。
全国に大きな衝撃を与えたのが、2日の参院予算委員会で小池晃書記局長が明らかにした防衛省の内部文書です。全国283地区の自衛隊基地・防衛省施設の約2万3000棟を核・生物・化学兵器(CBRNe)や高高度での核爆発に伴う電磁パルス(HEMP)といった、あらゆる脅威に耐えられるよう、地下化や構造強化、フィルターの設置などの「強靭化」を進める計画を明記。本紙日曜版が暴露し、防衛省が小池氏の要求に応じて提出したものです。
283地区の所任地を整理したところ、全47都道府県に分布していることが分かりました。東京・市ケ谷の防衛省本省、陸海空の主要司令部や戦闘機、戦闘艦、戦車などを運用する実動部隊の拠点、補給基地やレーダーサイト、研究施設にいたるまで、自衛隊のインフラをほぽ網羅。文字通り、日本全土の戦場化が想定されています。
資料によれば、対象となる建物は2万3254棟にのぽります。うち1万9017棟を建て替え・改修。残りは「予防保全」(防水など一部改修)を行うとしています。防衛省自身、「これまで経験したことのない規模の事業章」だと認める大規模事業です。
予算措置は2023年度から10年。前半5年だけで4兆円となっており、工事が本格化する後半5年含めれば、膨大な金額が想定されます。防衛省はこうした計画を、23年度予算案が国会に提出大手ゼネコンに提示。戦前、陸海軍が大手ゼネコンを「軍建協カ会」「海軍施設協力会」に組み入れ、軍事インフラの建設を進めてきた歴史を彷彿とさせます。
小池氏は、「結局、日本が敵基地攻撃を行えば、反撃されて、日本中が攻撃さる危険があるから、こうした規模の『強靭化』を進めるということだ」と指摘しました。
政府自身、敵基地攻撃に伴う大規模な報復攻撃で、日本が甚大な被害を受ける可能性を、2月6日の衆院予算委員会での穀田恵二議員の質疑で認めています。
報復による大規模被害想定
穀田氏は2月6日の衆院予算委員会で、集団的自衛権を行使した後に相手国から武力攻撃を受け、「日本に被害が及ぶことがないと言えるか」と追及。集団的自衛権の行使とは、日本が攻撃を受けていなくても、他国の戦争に武力行使をもって参戦することであり、国際法違反の先制攻撃と紙一重の戦争行為です。
浜田靖一防衛相は「わが国が限定的な集団的自衛権を行使した後、事態の推移によっては他国からの武力攻撃が発生し、被害を及ぼす可能性がある」ど認めました。さらに、穀田氏が「大規模な被害が生じることも否定できないのではないか」とただしたのに対して、浜田氏は「一般諭」としつつ、その可能性を認めました。
政府が集団的自衛権の行使に伴う報復攻撃で「大規模な被害」を認めたのは初めて。小池氏の追及と重ね合わせれば、「大規模な被害」として核攻撃も排除されません。
安保法制のもとで集団的自衛権を行使して米軍の戦争に参加し、敵基地攻撃能力を使用した結果、日本の全土が焦土となり、自衛隊基地だけが生き残るー。そのために、国民生活そっちのけで巨額の税金が投入されようとしているのです。
ミサイル保管
小池氏の追及では、もう一つの重大な事実が明らかになりました。政府が長射程の「スタンド・オフ・ミサ,イル」=敵基地攻撃兵器の保管を想定した大型弾薬庫を、今後10年間で全国に130棟建設する計画です。27年度までに70棟、28~32年度に60棟を建設するとしています。
政府は敵基地攻撃兵器として、▽長距離巡航ミサイル・トマホーク ▽JSM ▽JASSM ▽12式地対艦誘導弾・能力向上型 ▽極超音速誘導弾 ▽極超音速高速滑空弾-の6種類の保有を想定。全国に大量のミサイル配備が狙われています。
政府はすでにトマホーク400発の取得を公表。防衛省はイージス艦への配備を計画しており、同艦の母港である4基地(横須賀、舞鶴、呉、佐世保)へのトマホーク配備の危険が高まります。
また、南西諸島(奄美大島、沖縄本島、宮古島、石垣島)には、12式地対艦誘導弾部隊を並べます。長射程の「能力向上型」と入れ替える可能性は濃厚です。
2023年度予算案では、「スタンド・オフ・ミサイル等」の大型弾薬庫確保のため58億円を計上。▼大分分屯地(大分県) ▼大湊地方総監部(青森県)-に2棟ずつ新設し、 ▼同総監部 ▼祝園分屯地(京都府) ▼呉地方聡監部(広島県)ーで新設に向けた調査を行います。さらに政府は、小池氏の追及に対し、新設された石垣駐屯地(沖縄県)への敵基地攻撃兵器の配備を否定しませんでした。
大型弾薬庫130棟 民家の隣が標的に
重大なのは、自衛隊の弾薬庫の多くは、民家が近くに存在することです。小池氏は、大分分屯地の近くに。は2700世帯が暮らす住宅地区が存在し、祝園分屯地がある京都府精華町もベッドタウンだと指摘。大湊、呉も同様です。
小池氏は「ウクライナを侵略したロシアは弾薬庫を攻撃した。市街地のすぐそぱに弾薬庫をつくれば、真っ先に攻撃対象になる」と追及しました。
岸田文雄首相は「火薬取締法など、関係法令に従って安全面に配慮する」と答弁。小池氏は、「火薬取締法は平時の法律だ。攻撃を想定した法律なのか」と反論しました。
外交努力こそ
日本中に敵基地攻撃のための弾薬庫を配備し、核兵器も含めた報復攻撃に備えるための自衛隊基地「強靭化」を進めるー。小池氏は「軍事に対して軍事で構えると、無限の悪循環になることが、はっきり出ている」と指摘。「今やるべきは戦争の準備ではない。徹底した外交努力で、地域の緊張を緩和する平和な環境をつくることが、政治の責任だ」と訴えました。
導入するスタンド・オフ・ミサイル (長射程ミサイル)
国産(いずれも研究・開発中)(画像は省略) |