28日夜、衆議院本会議で新年度・平成30年度予算案の採決が行われ、自民・公明両党の賛成多数で可決され、法案は参議院に送られました。
佐川国税庁長官のかつての虚偽答弁や安倍内閣が政策の目玉であると謳った「働き方改革」の虚偽データに関する解明が全く煮詰まらないなかでした。
野党からは「野党6党が一致して要求した裁量労働制の再調査や働き方改革関連法案をやめることや『森友・加計疑惑』の証人喚問に、政府・与党は全くのゼロ回答のまま審議を断ち切ったのは、大変横暴なやり方で強く抗議したい(共産・志位)」、「本来やるべき予算案の問題点の議論が深まらなかったことは残念。強引な審議のあり方には厳しく抗議したい(希望・玉木代表)」などの抗議の声が上がりました。
LITERAは、このように審議を打ち切って採決を急いだのは、裁量労働制をめぐるデータ捏造や森友、加計問題で、安倍首相がこれ以上追及されないための措置で、首相は審議の中でこれから裁量労働制データをめぐる厚労省の捏造だけでなく、官邸や自分自身の指示の証拠が出てくる可能性を考えてかなり怯えている」からではないかとしています。
ところで予算案が衆院を通過した後、安倍首相は記者団に対し、労働時間の調査に多数の誤りが見つかり国民の疑念を招いたなどとして、法案から「裁量労働制の適用業務の拡大」を全面的に削除するよう指示したことを明らかにしました。
それはこれまで野党に追及されても、絶対に受け入れようとしなかったものです。それだけでなく、これまでの特定秘密保護法にせよ、新安保法(戦争法)にせよ、共謀罪法にせよ、いずれも政府の答弁は極めて不十分であって審議が尽くされためしなどありませんでした。それなのに急にそれを取り下げるとは、一体どういう心境の変化なのでしょうか。
多分、今後大本命である改憲の発議を行う中で、いま国民の多数が反対している法案を成立させるのは得策ではないと考えたのではないでしょうか。
その一方で「高度プロフェッショナル制度」は削除しないとしています。これは第1次安倍政権時代の2007年に、突然安倍首相が提唱した「ホワイトカラー・エグゼンプション」と同じものです。現在の法案では対象が年収1057万円(以前は900万円)以上に限定されていますが、一旦導入されてしまえば年収制限などは早晩削除されるか大幅に低められるのは目に見えています。
したがって甘言に乗って「高度プロフェッショナル制度」の導入を許すようなことがあってはなりません。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
安倍首相が国会でありえない行動に!
裁量労働制データ捏造隠しで予算案強行採決、過労死の危険性を問われてニヤニヤ
LITERA 2018年2月28日
生活保護や医療・介護給付のカットなど社会保障を削り、軍事費に約5兆円も注ぎ込むという国民の暮らしを切り捨てる2018年度予算案が、本日午前、衆院予算委員会で「強行採決」された。衆院予算委では、国会に提出予定の「働き方改革関連法案」をめぐってデータ捏造問題が浮上したが、安倍政権は無責任な答弁を連発。にもかかわらず、審議も不十分なまま、与党は衆院本会議できょう予算案の強行採決に踏み切る予定だ。
これは明らかに、裁量労働制をめぐるデータ捏造や森友、加計問題で安倍首相がこれ以上、追及されないための措置だろう。衆院の予算審議を早く終わらせてしまえば、安倍首相が答弁に立たなければいけない状況、その様子をテレビ中継される機会はぐっと少なくなる。だから、国会のもっとも重要な議論をすっとばしてしまおうというのだ。
まさに卑劣と言うしかないが、安倍首相は自分の失態や不正を封じこめるために、他にもさまざまな姑息な行動に出ている。。裁量労働制について、午前の締めくくり質疑で「(裁量労働の)きっちり実態把握をしない限り政府全体として前に進めない」と発言、法案の提出時期がずれ込む可能性を示唆したが、これも世論の反発をそらして、ほとぼりを冷ますために先延ばしにする作戦だろう。
そもそも、安倍首相は「裁量労働制のほうが労働時間は短いデータもある」と答弁し、それが捏造データだと判明したあとも、「精査中の情報に基づく答弁は撤回したがデータを撤回したわけではない」「(答弁前にデータが)正しいかどうか確認しろなんてことは、あり得ないんですよ」などと開き直ってきた。
しかも、データからはあり得ない異常な数値が次々に見つかり、その上、加藤勝信厚労相が「なくなった」と答弁していた調査票まで発見されたというのに、安倍首相はデータの撤回も、法案提出の撤回もせず、「自由な働き方をしたいと言う方がおられるのは事実」「(働く人の)目線に立っている」と強調してきた。しかし、安倍首相が一貫して立っているのは「雇用主、経営者」の目線であることは明白だ。事実、26日に経団連の榊原定征会長は「(データの)ミスの問題と法改正の趣旨は別問題」と、安倍首相と同じ主張をおこなった上で、「改正案を今国会中に成立させてほしいというのが我々の立場」と述べている。
「過労死」問題を追及されてニヤニヤ笑いだす安倍首相
安倍首相はこうしたスタンスをいまもまったく変えてはいない。それがよくわかったのが、26日の衆院予算委だった。希望の党・玉木雄一郎代表が「多くの働く人の健康と命にかかわる問題」であると追及しているのに、安倍首相は玉木代表が質問している最中に自席でニヤニヤと笑いを浮かべてみせた。このことに玉木代表が「人が死んでる話なんですよ! そのことをなんでこんなに笑えるんですか。そんなにおかしい質問なんですか! おかしいでしょ!」と反発すると、安倍首相は「あまりにも玉木委員が興奮されるから、こういうのはしっかりと落ち着いた議論をしましょうよ」などとのたまったのである。
昨年、過労自殺に追い込まれた電通の高橋まつりさんの母親と安倍首相が対面した際、安倍首相は“若干涙ぐみながら(話を)聞いていた”と言い、長時間労働に対する実効性のある規制を求められて「私は何としてでもやりたい」と答えたと報じられた。──それがどうだ。捏造データを用いて「裁量労働は一般より労働時間が短い」という明らかな嘘をつき、裁量労働制は過労死につながる危険があることを指摘されていても、ニヤニヤ笑うという不誠実極まりない態度をとっては「落ち着いた議論を」などと言っているのだ。
しかし一番「落ち着いて」いないのは実は安倍首相だろう。安倍首相のこういう言動は、状況がまずいと焦り、なんとかごまそうとしているときのパターンだ。おそらく、安倍首相はこれから裁量労働制データをめぐって厚生労働省の捏造だけでなく、官邸や自分自身の指示の証拠が出てくる可能性を考え、かなり怯えているのではないか。
そうした影響か、同日の衆院予算委で、安倍首相は森友問題をめぐってもとんでもないことを口走っていた。
それは、立憲民主党の本多平直議員が総理大臣夫人付きだった谷査恵子氏が森友学園の「国有地の売買予約付定期借地契約」についての要望FAXを財務省に送っていた問題をとりあげたときのことだ。安倍首相は1年前、「私や妻が関係していたということになれば、私は総理大臣首相も国会議員も辞めるということははっきりと申し上げておきたい」と答弁したが、本多議員は総理夫人付け秘書の谷査恵子氏の要望FAX送付は「関わっていた」ことになるのではないか、と質問した。
すると安倍首相は、こんなことを言い出したのだ。
「国有地の払い下げ、あるいは認可について、一切関わっていないということであります」
「国有地の払い下げか認可について、私や私の妻や事務所が関われば、責任をとると言うことを申し上げたわけでございます」
国有地貸付への関与追及され「払い下げに関係してたら辞任」と条件変更
ようするに、FAXは国有地の「貸付の段階」の話であって、「私や妻が関係していたら総理も国会議員も辞める」という発言にはつながらない、と言うのだ。1年前、安倍首相が辞める発言をしたとき、「払い下げや認可には関係していたら」なんて一言も言っていなかったのに、いきなり自分の発言を改ざんして、辞任の条件を狭いものにしてしまったのである。
しかし、これ、裏を返せば、安倍首相は妻・昭恵夫人が“貸付に関わった”ことを認めているようなものではないか。
実際、安倍首相自身もこの答弁がまずいと思ったのか、きょうの締めくくり質疑で再度、この問題を問われると、今度は貸付についても「貸付そのものに何か便宜を与えるという意味における関与はまったくない」と、わけのわからない表現でごまかす始末だった。
「強行採決」で裁量労働制データ捏造も、森友、加計疑惑もすべて蓋をしてしまおうという安倍首相。しかし、あの壊れ方をみていると、そのやり口はそろそろ限界にきているのかもしれない。 (編集部)
“国民の疑念招いた” 首相 裁量労働制拡大の全面削除指示
NHK NEWS WEB 2018年3月1日
働き方改革関連法案をめぐり、安倍総理大臣は28日夜、加藤厚生労働大臣らと会談したあと、記者団に対し、厚生労働省の労働時間の調査に誤りとみられる例が見つかり国民の疑念を招いたなどとして、法案から裁量労働制の適用業務の拡大を全面的に削除するよう指示したことを明らかにしました。
政府が今の国会の最重要法案と位置づける働き方改革関連法案をめぐって、安倍総理大臣は28日夜遅く、総理大臣官邸で、菅官房長官や加藤厚生労働大臣、それに、自民・公明両党の幹事長や政務調査会長と会談しました。
この後、安倍総理大臣は記者団に対し、厚生労働省が行った一般労働者と裁量労働制で働く人の労働時間の調査に誤りとみられる例が多数見つかったことについて、「国民が疑念を抱く結果になった。そこで、働き方改革関連法案の中で裁量労働制は全面削除するよう指示した」と述べ、法案から裁量労働制の適用業務の拡大を全面的に削除するよう指示したことを明らかにしました。
そのうえで、安倍総理大臣は「働き方改革は極めて重要だ。提出する法案においては、長時間労働の慣行を断ち切るための時間外労働の上限規制や、非正規・正規の格差を埋めるための同一労働同一賃金の導入、それに『高度プロフェッショナル制度』の3つの柱を盛り込んで提出していきたい」と述べました。
また、安倍総理大臣は裁量労働制の適用業務の拡大については、厚生労働省で裁量労働制で働く人の労働時間などの実態を把握したうえで、議論し直す考えを示しました。
そして、安倍総理大臣は「この国会で、しっかりと働き方改革関連法案を成立させ、アベノミクスの最大のチャレンジである働き方改革を前に進めたい。与党のプロセスを経たうえで法案を閣議決定して国会に提出したい」と述べ、成立に全力をあげる考えを示しました。
加藤厚生労働相「国民に疑念抱かせたこと反省し実態把握検討」
加藤厚生労働大臣は、総理大臣官邸で記者団に対し、「厚生労働省の調査で国民に疑念を抱かせたことをしっかり反省したうえで、裁量労働制で働く人の労働時間などの実態把握について具体的に検討していく。『高度プロフェッショナル制度』の創設などを盛り込んだ働き方改革関連法案は、与党の審査を経た上で今の国会に提出し、成立を図りたい」と述べました。