2018年3月11日日曜日

「残業代ゼロ」制度の危険性

 政府は、「働き方改革」一括法案から「裁量労働制の拡大はいったん削除しましたが、「残業代ゼロ制度」高度プロフェッショナル制度はそのまま導入しようとしています。
 いまは対象者「1075万円以上」に限定していますが、経団連は年収400万円を主張しています。いったん導入すれば年収はどんどん引き下げられます。
 政府が財界に対して、「いまは我慢」「とりあえず通すことだ」と述べているのはそういう意味です。

 しんぶん赤旗が残業代ゼロ法案の危険性を取り上げました。
11日8:30に公開したつもりでしたが、誤操作で「下書き」モードのままになっていました)
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これでわかる「残業代ゼロ」制度
しんぶん赤旗 2018年3月10日
 安倍内閣は、「働き方改革」一括法案に盛り込んだ裁量労働制の拡大はいったん削除するものの、「残業代ゼロ制度」(高度プロフェッショナル制度)はそのまま導入をねらっています。改めて仕組みや危険性をみると―。

Q どんな仕組み?
A 労働時間規制を撤廃
 「高度の専門的知識」を持つ労働者に対し労働基準法が定める労働時間規制などを適用除外します。対象業務は省令で定めますが、「金融商品開発」「アナリスト(分析)」などがあがっています。時間規制などの適用除外は、財界が「生産性を向上させ、国際競争力の強化につながる」として求めてきたものです。
 これが適用されると1日8時間・週40時間の上限(労基法32条)、6時間超で45分間の休憩(34条)、週1日の休日(35条)、時間外労働の「三六協定」締結(36条)、時間外・休日・深夜の割増賃金(37条)はすべて除外されてしまいます。深夜・休日の割増賃金などの規制が残る裁量労働制に比べて「異次元の危険性」があります。

 年104日かつ4週4日以上の休日を義務付けますが、24時間休憩もなく、48日間連続で働かせることも可能です。長時間労働の野放しで過労死を激増させることは必至です。
   表 労働時間規制の適用状況 

Q 健康確保措置は?
A 過労死ラインで実施
 安倍首相は「年104日」以上の休日を義務付け、「健康確保措置」を課しているので、健康を壊す心配はないと説明しています。
 しかし、「年104日」とは週休2日相当ですが、「4週4日」でよいので毎週休ませる必要はありません。4週間の最初に4日休めば次の休みまで48日間連続で働かせることも可能です。1日の規制がないので24時間ぶっ通しで働かせることができます。
「健康確保措置」とは、(1)勤務間インターバル(次の勤務まで休息保障)導入(2)「健康管理時間」(在社時間と事業場外時間)の上限(3)2週間連続休暇(4)健康診断―のうちから、一つ選ぶものです。

 しかし、これらは守らなくても罰則はありません。健康診断を選べば、企業にとって負担はほとんどありません。その健康診断も、健康管理時間が過労死ラインと同じ「月80時間超」の場合に実施されるもので、「健康確保」とは偽りです。

Q 成果で評価する制度?
A 義務付けなし
 安倍首相は「時間ではなく成果で評価する制度だ」と強調しています。しかし、法案に成果で評価して賃金を払う制度を義務付ける規定はありません。
 成果主義賃金は現行法でいくらでも可能であり、4割の企業が導入しています(厚労省就労条件調査)。新たに法律など必要なく、この法律で行われるのは労働時間規制を外して残業代も払わずに働かせることだけです。
 むしろ成果主義賃金は、目標達成のため際限のない長時間労働を強いられる危険性を抱えています。労働時間の規制撤廃ではなく規制強化こそ必要です。

Q 高収入が対象?
A 基本給500万円でも可能
 安倍首相は、対象者は「平均賃金の3倍、1075万円以上」なので「交渉力」があり、長時間労働を押し付けられないといいます。
 しかし、基本給が500万円程度でも、残業代込みで1075万円以上を支給する場合は適用されます。
 経団連は、年収400万円を主張。榊原定征会長は労働者の10%に導入することを求めてきました。塩崎恭久厚労相(当時)も15年4月に財界人の会合で「いまは我慢」「とりあえず通すことだ」と述べていました。
 いったん導入すれば、年収が引き下げられることは必至です。
 そもそも年収と「交渉力」は関係ありません。法案では、使用者が適用労働者に指揮命令をしたり、具体的な業務指示をすることを禁じていません。業務量を決めるのも使用者であり、労働者は拒否できない仕組みです。