2018年3月1日木曜日

米朝対話の開始が確実に 日本は北に「雑談」を懇請(世に倦む日々)

 平昌五輪の閉会式に訪韓した北朝鮮NO2の金英哲氏は25日、韓国の文在寅大統領と会談、「アメリカと対話をする十分な用意がある。南北関係と米朝関係は一緒に発展すべきだ」と米朝対話の再開に前向きな姿勢を示しました。それは水面下での成り行きから米朝対話について十分な成算があったからでした。

「世に倦む日々」氏は、「米朝対話遂にスタートしたことは確定で、後戻りはなく、関係各国の思惑と利害で駆け引きが進行するだろう」と述べています。同氏は、
自分がトランプならと彼の立場に即して分析すれば、ロシア疑惑を掛けられている中で直近の11月の中間選挙に勝つためには、北に軍事行動を掛け制圧し占領するのは、あまりにもリスクが大き過ぎ(莫大なコストと時間が掛かり、米国民の死傷者も出る)るし、韓国の被害と犠牲想像を絶する規模になるので採用できないが、北との対話に転じて、態度を軟化させ、核凍結方向性を示し、米国との友好関係を望む路線を掲げるようになれば、トランプ外交の勝利と成果に他ならないので、中間選挙で誇示でき、宣伝できる
から米朝対話に向かう筈と予測していたということです。

 驚いたのは安倍首相で、これまで対話のための対話は意味がないと執拗に言い続けてきたのに、これでは立つ瀬がないからと、今度は「北朝鮮が核放棄を明言しない、雑談を名目とした会話でも応じる」と言い出したということです。
日朝対話したいからコンタクトして来てくれとシグナルを送っているのは爆笑を誘う変節と失態」だ、と「世に倦む日々」氏は述べています。まことにこれほど無様な話はありません。

 日本はこれまで東シナ海の沖合で、北朝鮮が外国のタンカーから石油を「瀬取り」しているところを4、5回にわたって哨戒機で撮影しては国連安保理に通報し、取締りの強化を訴えてきました。厳冬期文字通り酷寒になる北朝鮮にとって、石油は国民が生き延びるための必需品です。日本のそうした行為を北朝鮮国民がどれほど憎悪しているのかの認識は、安倍首相の頭の中には片鱗もないのでしょうか。
 自分の面子を保ちたいからということで、いまさら「何でもいいから対話に応じてください」と頼み込むとは、あまりにも没人格的な行為です。
(せめて、「この際に拉致問題の解決のために突っ込んだ話合いをしたい」と言ったというのであれば世界も納得すると思うのですが、拉致問題は全く念頭にないのでしょう)

「世に倦む日々」氏のブログを紹介します。
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米朝対話の開始が確実に - 焦った日本は北朝鮮に「雑談の対話」を懇請
世に倦む日々 2018年2月28日
米朝対話のプロセスは確実に始動した。ここへ来て、梯子を外された格好の安倍晋三が急にバタバタしている姿が看て取れる。25日夜、NHKのクロ現に岩田明子が出演して奇妙な特集を放送していたが、狼狽えて右往左往しながら、懸命にアリバイ工作して世論操作に腐心している官邸の様子が透けて見え、テレビの前で苦笑させられた。番組では、ペンスが来日した7日に、安倍晋三はペンスから北朝鮮代表団との会談を知らされていたと釈明していたが、これは後付けの作り話だろう。知らされてなかったはずだ。安倍晋三がそれを知ったのは、14日夜のトランプとの電話会談のときで、安倍晋三は驚いて真っ青になったはずだ。米国が公表したのは20日。会談は米朝両国のNo.2同士によるもの(準首脳会談)だから、極秘会談などという形式はあり得ない。実現すれば必ずステートメントが発表されていた。通常、こうした外交が破談になる場合は、ステートメントの文言の詰めで合意できなかった場合が多い。普通に考えられるのは、北朝鮮側が欲張ってきて、キャンセルを前提に米国側に無理難題を要求したということだ。北朝鮮のいつもの行動パターンと言える。

北朝鮮は米国しか見てないから、ドタキャンがどうのという悪役の体裁(世間の見てくれ)は問題ではないのだ。米朝準首脳が会談すると合意した二国間の事実、発表予定のステートメントで事前に合意に達していた中身、それが重要で、それが今回の外交で獲得した成果であり、次の米朝交渉に臨むスタートラインなのである。それは表には出ていない。ペンスが北朝鮮に核放棄せよと言うつもりだったとかどうとか、そんな説明は表向きのエクスキューズであって意味のない取り繕いだ。大事なことは、この事実を米国が公表したことで、要するにそこに北朝鮮に対するメッセージがあり、イバンカ訪韓の際に第2ラウンドをやろうと探りを入れる意思伝達がある。米朝対話のプロセスが始まったことを世界に告知したという意味がある。それを受けて、北朝鮮側は金英哲に「米国と対話の用意がある」と言葉で応じさせた。残念ながら、イバンカ訪韓の2泊3日の間には米朝接触はなかったが、水面下では米朝韓の3か国の間で外交のポーリング情報が激しく飛び交っていたことだろう。金英哲の「対話の用意」の言葉を受け、トランプは「適切な環境の下でなら我々も対話を望んでいる」と応じた。

このトランプの発言を素直に聞いて、4月に米韓合同軍事演習があると想定する米軍の司令官はいるだろうか。そもそも、米韓合同軍事演習というのは、米軍と韓国軍の合同演習で、韓国軍の最高司令官は文在寅である。文在寅が同意しなければ演習の実施はない。4月に合同演習を実行すれば、当然、悲願の南北首脳会談は潰れてしまう。積み上げた南北融和の努力はリセットされる。日本のマスコミは、米韓合同軍事演習が米国の都合と判断でのみ行われるように報道しているが、これは明らかに悪質な情報操作で、デマの刷り込みとミスリードの作為だろう。保守側のフェイクニュースの拡散と言える。韓国軍と自衛隊を一緒にしてはいけない。マスコミの言論空間で、誰かが一言、文在寅が4月の米韓合同軍事演習をOKするはずがないじゃないかと、そう指摘しないといけない。この論点は重要で、米韓合同軍事演習には多額の費用がかかっていて、韓国政府の負担も小さくない。日本では、米軍が小川原湖に落とした燃料タンクを回収するのも、自衛隊がやるのが当たり前だという論調と世論になっている。米軍のお世話をするのが自衛隊だという認識がマスコミで固められていて、誰もそれに反発しない。

昨日の報道で呵々大笑してしまったのは、共同が配信した「北朝鮮との対話条件を緩和ー政府、雑談名目なら応じる」という記事だ。北朝鮮が核放棄を明言しなくても「雑談」を名目とした会話であれば応じる方針に変更した、とある。こんな情報をリークできるのは菅義偉ぐらいしかいない。これまで、対話のための対話は意味がないと執拗に言い続けてきた安倍晋三と日本政府が、一転して北朝鮮と雑談の会話に応じると言い出した。日朝対話したいからコンタクトして来てくれとシグナルを送っている。爆笑を誘う変節と失態ではないか。櫻井よしこの反応をぜひ見てみたい。雑談での会話を所望のようだから、朝鮮総連の幹部は手ぶらで官邸を訪問するといい。銃撃事件の捜査はどうなっているか説明を聴きたいと玄関で言えばいい。菅義偉が丁重に応接してくれるだろう。ついでに、朝鮮学校の補助金も何とかしてもらえないかと陳情すればいい。「雑談でもいいから」と日朝対話に一気に転換したのは、米朝対話がスタートしたからであり、そのままでいるとバスに乗り遅れてつ□□桟敷の状態に置かれるからだ。核放棄を明言しなくても対話に応じると言っている点が重要で、トランプの発言より踏み込んでいる。

要するに、この日本政府の慌てぶりは、米朝対話が核放棄の前提なしに進行している事実を裏づけていて、それが先取りされたものだ。安倍晋三の焦りが丸見えになっていて面白い。つい昨日までは、北朝鮮が政策を変えて核を放棄するまで、制裁の手を緩めてはならないと言い、対話には応じてはならぬと強硬に言い張っていた。今でも、この共同の記事を読んでないマスコミ論者は同じ台詞を言っているだろう。日本は昨日まで、北朝鮮と外交関係のある国々に対して国交を断絶しろと迫っていた。その日本が、雑談から対話を始めたいから接触してくれと北朝鮮に哀願している。あれほど、対話は核開発の時間稼ぎをさせるだけだから無駄だと切り捨て、「時間稼ぎ」というキーワードを振り回して対北朝鮮の戦争プロパガンダを煽ってきた日本が、北朝鮮との雑談に意欲を見せるのはどういう風の吹き回しなのだ。諸外国は唖然だろう。日本政府が北朝鮮と雑談の対話外交を始める以上、喧伝されてきた「時間稼ぎ」のフレーズは世論上の政治言説として意味を失う。無意味になる。マスコミで「時間稼ぎ」を連呼する者はいなくなるはずだ。NHKも、他のテレビ局も、あの北朝鮮のミサイル発射映像を放送しなくなるだろう。

雑談から対話の糸口を見つけないといけないのだから、北朝鮮が嫌がる態度をいつまでも日本がとり続けることはできない。米朝対話は遂にスタートした。この事実は確定で、後戻りはなく、関係各国の思惑と利害で駆け引きが進行するだろう。北朝鮮の韓国に向けた融和外交(文化交流)と米国に向けた安保交渉(核の取引)の形が明確になるだろう。中国が出番を窺い、米国が牽引してきた国連安保理での北朝鮮制裁の一本道に留保を入れ、北朝鮮問題の主導権を握り直す動きに出るに違いない。自慢するつもりはないが、私は、昨年末からの米国の動きを観察して、米国が対話に動く可能性を予見していた。なぜ、その見方に自信を持ったかというと、自分がトランプならどうするだろうと、トランプの立場に即して分析した上での推論からだ。トランプの政治手法については、一般にディールという言葉で性格づけがされている。が、トランプの政治は、「ディールの政治」以上に「ゲームの政治」で、敵と喧嘩して目の前の勝利を誇示することに何より重点を置くスタイルが特徴として際立っている。これは、例の海兵隊上がりの教官による全寮制スパルタ教育で体得した哲学と方法論だろう。トランプの直近のバトルフィールド(戦場)は11月の中間選挙だ。

ロシア疑惑でさらに窮地に立たされる中、この選挙戦に勝ち抜き、喧嘩強者のカリスマ証明をしなくてはならないトランプの思考回路をエミュレート自分に代替して展開したとき、北朝鮮問題はどう采配してどう結果を出せばよいか。軍事攻撃で北朝鮮を殲滅することもできる。だが、この政策決定はリスクが極端に大きく、米地上軍による北朝鮮全土の制圧と占領は難しい。イラク戦争を超える時間とコストがかかる。米兵の死傷者が出る。戦後ケアの出費がかさむ。韓国の被害と犠牲は想像を絶する規模になる。中国軍との間でアクシデントが起きる危険性も孕む。戦争の決断は容易にはできない。一方、対話外交で勝利を得る方法はある。北朝鮮が態度を軟化させ、核凍結から核放棄に進む方向性を示し、米国との友好関係を望む路線を掲げるようになれば、それはトランプ外交の勝利と成果に他ならない。そのアチーブメント達成中間選挙で誇示でき、宣伝できる。無能なオバマが失敗したことをオレは成功させたぞ、金正恩が偉大な米国に屈服したぞ、オレは米国と同盟国の平和を守ったぞと、大きな声で自画自賛できる。その政治のピクチャーを手に入れられる。私がトランプならその判断と選択に出る、その方が合理的だと、そう考えて、米政権が対話に出る可能性を予測した。

その可能性と現実性を、誰かマスコミで論理的に唱えてくれる者はいないだろうかと、そう念じていたら、海の向こうで胆力のある文在寅が動き、あれよあれよと迅速に南北融和外交を進めて行った。そして、そうなると、血は水よりも濃い民族の原理と法則が貫徹し、それに誰も干渉できず、わずか2か月で米朝対話の開始を決定的にしてしまった。この大きな国際政治の情勢変化は、安倍晋三の憲法改定の政治に影響を及ぼす。何となれば、安倍晋三の9条改憲の策謀は、北朝鮮との緊張と有事を前提にしたもので、すなわち米朝戦争の危機をマキシマムに高め、「北朝鮮制裁法」で日本国内を有事体制に固め、その土台の上で、国会発議と国民投票の成功を得ようとするものだったからだ。そのために着々と - 毎日新聞の裏切りを嚆矢として - マスコミを抱き込んで改憲政局のプログラムを準備していた。今、その計画の前提が崩れつつある。目標の計算が狂いつつある。だから安倍晋三は焦り、にわかに精神が混乱しているのだ。最早、米国盲従の高橋純子(朝日)がサンデーモーニングでコメントしたような、「日米韓の強固な連携」などあり得ない。そのような言説は前提が失われた。今は、南北融和が主軸になり、それに引っ張られて米朝対話が動き、日本は局外に追いやられて傍観者となっているのが現実だ。