2018年3月2日金曜日

02- 働き方法案「高プロ(残業代ゼロ)制度」は維持

 安倍首相は、ようやく「働き方」関連法案から裁量労働制の対象を拡大する部分削除することに同意しましたが、野党6関連法案から切り離すべきだとの認識で一致している高度プロフェッショナル(残業代ゼロ)制度については、「予定通り今国会に提出する法案に盛り込む」と強調しました。
 残業規制と「同一労働同一賃金」、高プロ(残業代ゼロ制度創設一括して提出するということです。

 しかし「高プロ制度」は、専門的知識を必要とする年収1075万円以上の労働者については、「労働時間」「休日、深夜の割増し賃金」の規定から適用除外される制度で、「残業代ゼロ」制度です(裁量労働制は時間数の中に一定量の残業を含めることは可能)。
 今でこそ1075万円以上となっていますが、次々と引き下げられ、最終的にはワーキングプアにまで降りてくると言われています(田中龍作ジャーナル)。
 労政審(2017年9月)は『裁量労働制』とともに『高プロ制度「おおむね妥当」としましたが、今回問題となった捏造データがベースになっているのは言うまでもありません

 東京新聞と田中龍作ジャーナルの記事を紹介します。
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働き方法案「残業代ゼロ」は維持 首相表明 裁量制「全面削除」
東京新聞 2018年3月1日
 安倍晋三首相は一日の参院予算委員会で、今国会に提出予定の「働き方」関連法案から裁量労働制の対象を拡大する部分を削除すると正式表明した。高収入の専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル(残業代ゼロ)制度」創設については「予定通り今国会に提出する法案に盛り込む」と強調した。民進党の大塚耕平代表への答弁。

 首相は裁量労働制を巡る厚生労働省のデータに多数の不備があったことについて「精査せざるを得なくなったことを重く受け止めている」と表明。実態把握に努めるとともに、裁量労働制の対象拡大部分を法案から「全面削除する」と語った。
 大塚氏は、法案に含まれる残業時間の罰則付き上限規制や非正規労働者の待遇改善を図る「同一労働同一賃金」について「われわれも賛成だ」と指摘。長時間労働につながるとの批判がある残業代ゼロ制度も関連法案から削除すれば「前向きに審議に応じられる」と迫った。
 これに対し首相は「柔軟な働き方を可能にし、生産性の向上にもつながる」と拒否。残業規制と「同一労働同一賃金」、残業代ゼロ制度創設を一括して提出する考えを示した。

 残業代ゼロ制度を巡っては、立憲民主、希望、民進、共産、自由、社民の野党六党の国対委員長は国会内で会談し、関連法案から切り離すべきだとの認識で一致。立憲民主党の辻元清美国対委員長が一日、自民党の森山裕国対委員長と国会内で会談し、切り離しを求めた。

 公明党の山口那津男代表は一日の党中央幹事会で、関連法案から裁量労働制の対象拡大を削除するとした首相の判断について「大きな決断だ」と評価。関連法案について、残業代ゼロ制度も含めて「大改革を成し遂げていく政府、与党の意思は変わりはない」と成立に向けて努力する意向を強調した。
 菅義偉(すがよしひで)官房長官は一日午前の記者会見で、裁量労働制の対象拡大部分を削除した関連法案の国会提出時期について「速やかに(与党と)調整し次第、対応する」と話した。

◆年収1075万円以上の専門職対象
残業代ゼロ制度> 専門的な業務を行う事務職を対象に、労働時間の規制を外す制度。導入されれば、残業時間や休日・深夜の割増賃金が一切支払われなくなるため、長時間労働につながるとの懸念がある。現在検討中の法案では、対象者は年収1075万円以上で、金融ディーラーや研究開発職などの専門職に限られている。導入には本人の同意が必要。裁量労働制は労働時間の規制は残した上で、実際に働いた時間に関係なく、あらかじめ労使で決めた時間を働いたとみなす制度。

「働き方関連法案の主な要素」図 


定額働かせ放題は下げられたが「残業代ゼロ法案」は残った
田中龍作ジャーナル 2018年3月1日
 安倍政権は昨夜「働き方改革法案」の中から裁量労働制の拡大を削除した。だがスーパー裁量労働制といわれる「高度プロフェッショナル制度」は残った。
 通称「高プロ」は、専門的知識を必要とする年収1,075万円以上の労働者については、「労働時間」「休日、深夜の割増し賃金」の規定から適用除外される制度だ。ひとことで言うと「残業代ゼロ」制度である。

 裁量制の場合、割安であるにしろ残業代が賃金に含まれているが、「高プロ」はそもそも残業代がないのである。「スーパー裁量制」「裁量制の親玉」とも呼ばれる悪質極まりない制度だ。
 「高プロ」の適用要件は今でこそ1,075万円以上となっているが、次々と引き下げられ、最終的には、最低賃金労働者などのワーキングプアにまで降りてくるだろう
 子分格の裁量労働制について、安倍政権は「最低賃金労働者や契約社員にも適用可能」とする閣議決定をしているのだから。

 安倍首相は朝刊に間に合うように昨夜11時30分、ぶら下がり記者会見を開いて、こう言った。「裁量労働制のデータについては、国民が疑念を抱く結果になっております」と。
 首相は裁量労働制を取り下げたことで、データ捏造事件の幕引きを図ろうというのだろうか。
 労働法制の決定に重大な影響力を持つ労政審(2017年9月)は、今回問題となった捏造データをもとに審議し、『裁量労働制』と『高プロ』を「おおむね妥当」とした。
 データ捏造問題は片付いたわけではないのだ。むしろこれからだ。

 『東京・過労死を考える家族の会』の中原のり子代表は、19年前、医師だった夫を過労死で亡くした。夜勤明けでそのまま日勤をこなすという超長時間労働だった。高プロの先駆けである。
 中原さんは裁量制の取り下げを受けて「逆に危機感を持っています」と険しい表情で語った。
 毒を盛った皿が3皿も4皿も出て、うち1皿は下げられたが、最も強い毒を盛った皿は残った。いずれを食べても労働者は殺される
〜終わり~