自民党の「憲法改正推進本部」は9条改憲の7つの条文案を示し、25日の党大会までに意見集約を図ろうとしています。
7つの案のうち、9条2項(戦力不保持)を削除する案が2つで、2項を残し、「自衛権」または「自衛隊」を明記する案が合わせて5つです。
2項を残し「自衛権」を明記する案は、「主権国家として当然に認められる『自衛権』を規定する」もので、集団的自衛権の行使を認めるものです。
また2項を残し「自衛隊」を明記する案は、「戦争法」により集団的自衛権の行使を可能となった自衛隊を憲法に明記することで、2項を事実上抹殺するものです。それは2項が残されても、「後法優先」の原則により「自衛隊」の現行の機能の方が優先されるからです。
結局7つの改憲案は全て「普通の軍隊=戦争する軍隊」を憲法上認めるものです。
こうして形式上は2項を残す場合でも、それを「実質的に抹消」することで戦後70年間守り続けてきた平和憲法を変え、「戦争のできる軍隊を持つ」というのが自民党の改憲案です。
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(主張)自民党9条改憲案 危険この上ない狙いは明らか
しんぶん赤旗 2018年3月17日
「森友」公文書改ざんをめぐり国民主権や議会制民主主義など憲法の基本原則の破壊が大問題になる中、自民党は9条改憲の条文案づくりを前のめりで進めています。同党の「憲法改正推進本部」は七つの条文案を示して議論を開始し、25日の党大会までに意見集約を図ろうとしています。七つの案はいずれも、自衛隊の海外での無制限の武力行使に道を開くのが狙いです。安倍晋三首相が異様な執念を燃やす、危険この上ない9条改憲の企てを許してはなりません。
無制限の武力行使に道
七つの案は、▽9条2項(戦力不保持)を削除する案が二つ▽2項を残し、「自衛権」を明記する案が二つ▽2項を残し、「自衛隊」を明記する案が三つ―です。
2項削除案は、「国防軍」または「陸海空自衛隊」の保持を規定します。その「趣旨」は「フルスペック(全面的)の集団的自衛権行使や交戦権を認める」(「憲法改正推進本部」資料)ことです。
2項を残し、「自衛権」を明記する案も「主権国家として当然に認められる『自衛権』を規定する」(同前)もので、個別的自衛権だけでなく集団的自衛権の行使を認めます。いずれも制約のない集団的自衛権の行使=海外での武力行使を認めるあけすけな表現です。
首相の提案に近く、「推進本部」執行部が推すのが、2項を残し「自衛隊」を明記する案です。有力とされるのは、9条をそのまま残し、「9条の2」という別の条文に「我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つための必要最小限度の実力組織として、法律の定めるところにより、…自衛隊を保持する」と規定する案です。
「『自衛隊』の合憲・違憲に関するそもそもの論争に決着をつける」のが「趣旨」(同前)としていますが、海外での無制限の武力行使に道を開く危険性は変わりません。自衛隊の権限や活動範囲には何の規定もなく、「海外での武力行使の禁止」など9条2項をめぐる従来の政府解釈の制約が取り払われる恐れがあります。
現憲法下で自衛隊を「合憲」とする政府解釈に基づき「必要最小限度の実力組織」という表現を使っているのもごまかしです。「必要最小限度」の範囲について政府は「国会が予算の審議等を通じて判断する」としており、事実上、限定はありません。時の政権が「我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つため」に必要だとして新たな法律を作れば、集団的自衛権行使の全面的容認など海外での無制限の武力行使が可能になります。
戦後日本の歩みを逆転させる道に他なりません。
重大な人権侵害の恐れ
改憲団体「日本会議」政策委員で安倍首相のブレーンである伊藤哲夫・日本政策研究センター代表は、9条2項を残す「自衛隊」明記案について「『国家の安全』が立法上、憲法に根拠をもつ正当な立法理由になる」「(憲法は)安全保障を強化していく際の『後押しの力』へとその役割を変える」と明言しています(同センター機関誌『明日への選択』昨年11月号)。
「国家の安全」が「他の憲法上の権利や主張にも互角に対抗できる理由になる」とも述べており、「安全保障」を口実にした重大な人権侵害の恐れもあります。
「国の形」を変える「安倍改憲」阻止のたたかいは急務です。