2018年3月3日土曜日

03- 安倍首相が繰り返す「裁量労働に8割が満足」のウソ

 裁量労働制の方が労働時間が短いことを示すたったのデータ捏造であったことが発覚し、政府は「裁量労働制を拡大する法案」を撤回せざるを得なくなりました。
 しかしいずれ再提案しようとしているのは明らかで、安倍首相は「自由な働き方をしたい方がいるのは事実で、約8割(あるいは3分の2の方が満足している」という説明を繰り返し、「満足していることを認めないのであれば議論ができない」とまで述べています

 日刊ゲンダイがそれもまた「欺瞞」であることを明らかにしました。
 上西充子法政大教授は、
「満足度の調査結果はあくまで今、適用されている人だけの話でこれから新たに適用される人たちの満足度を保証するものではありません。また労働者の側から裁量労働制を導入してほしいとか、期待しているという声はまったく聞きません。根拠となっている2013年のアンケート調査回収率は185%に過ぎません」と述べ、結果的に「満足している部分」を抽出してアンケートを取ったことになっている、としています。
 また「アンケートの仕方も事業主に依頼するやり方なので、あまり問題のない事業所だけが返答してきているはずどの労働者に聞くか事業主任せなので、満足していそうな人を選ぶ余地が生じます」としています

 もともといま裁量労働制を採っているのはマスコミ関係や研究所関係が主体で、かなりの高給取りたちの間で実施されているわけです。従って、そういうレベルの人たちが満足しているからと言って、それを他の分野に広げる根拠にならないのは明らかなことです。
 そうした要素を知ってか知らずにか、ひたすら「満足している人が80%もいる」と吹聴するのは、如何にも安倍首相がやりそうなことです。
 政府は今後実態調査をし直して云々  と述べていますが、今の政権が行うことなので結果が出たとしても簡単に信用することは出来ません。
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安倍“錯乱”首相が繰り返す「裁量労働に8割が満足」のウソ
 日刊ゲンダイ 2018年3月2日
「自由な働き方をしたい方がいるのは事実で、約8割が満足している」 。裁量労働制の方が労働時間が短いことを示す唯一のデータの捏造が発覚し、「長時間労働の温床」との批判に反論できなくなった安倍首相。最近、バカの一つ覚えのように持ち出しているのが、今の裁量労働制適用者の満足度調査だ。満足しているからいいじゃないかという論法は悪質な議論のすり替え。対象拡大の根拠にはならない上、アンケート自体に満足度が高くなるカラクリが潜んでいた。

3分の2の方は満足をしておられるわけです
 22日の衆院予算委で、安倍首相はそう口にすると、26日の集中審議では3回、28日も「満足、やや満足も含めれば8割弱もいる」など、2回もこの調査結果を援用した
 壊れたテープレコーダーのように、このフレーズを連呼して、ピンチを切り抜けようという魂胆だろうが、ごまかされてはいけない。21日の衆院公聴会で立憲民主推薦の公述人として「拡大撤回」の意見を陳述した法政大キャリアデザイン学部の上西充子教授が言う。
「満足度の調査結果はあくまで今、適用されている人だけの話です。これから新たに適用される人たちの満足度を保証するものではありません。また、現在適用されていない労働者の側から裁量労働制を導入してほしいとか、期待しているという声はまったく聞きません。安倍首相は国会で、『満足していることを認めないのであれば議論ができない』と答弁していましたが、論点をずらして混乱させているのは安倍首相の方です

 しかも、安倍首相が根拠にしている調査結果は真に受けてはならない代物だ。出典は、2013年に独立行政法人「労働政策研究・研修機構」が、裁量労働制の適用者を対象にしたアンケート調査。専門業務型で31.6%が「満足」、36.6%が「やや満足」と回答し、企画業務型で、36.4%が「満足」、41.5%が「やや満足」と答えている。それぞれ7割弱と8割弱が満足しているように見えるが――。

「ただし、アンケートの回収率は18.5%に過ぎません。そもそも長時間労働がはびこっている企業は、ひどい実態を回答したがらない。あまり問題のない事業所だけが返答してきているはずです。また、どの労働者に聞くかは、事業主任せ。そうなると、裁量労働制下での働き方に満足していそうな人を選ぶ余地が生じます。そういう満足度が高めに出るアンケートでも、適用者が『労働時間が長くなる』『業務量が過大になる』と裁量労働制の問題点を指摘していることに注目すべきです」(上西充子氏)

 つまり、ごくわずかの「超優良会社の超優等生」を抜き出して「8割が満足」と言っている調査に過ぎないのだ。
 安倍首相は28日、「(裁量労働制を)きっちり実態把握しない限り前に進めない」「実態の把握には相応の時間がかかる」と意味深答弁で法案提出に遅れが出る可能性をにおわせたが、最後まで「再調査する」とは言わなかった。
 法案から裁量制拡大に関する部分を切り離しても、いずれ「相応の時間」をかけて、都合のいい“実態”を捏造するに決まっている。