2018年3月5日月曜日

05- オバマ政権時 米の核削減に日本が反対 核弾頭の最新鋭化を促す

 オバマ前米政権時代に、新たな「核態勢見直し」(NPR)策定に向け米議会委員会が2009年に在米日本大使館関係者から意見聴取を行った際の日本側の文書発言と、同委員会スタッフが作成した意見聴取の概要メモをしんぶん赤旗が入手しました。

 それによると、当時退役が検討されていた核巡航ミサイル・トマホーク代替兵器の配備を要望し老朽化した核弾頭の最新鋭化促し「低爆発力の地中貫通型核兵器」の有効性を主張するなど、日本側はひたすら米国に核兵器の拡大を促しており、オバマ政権の掲げていた「核兵器のない世界への最悪の妨害者」となっていることが分かります。
 大使館のメンバーは、日本本国との「事前協議」なしに発言しているということですが、逆に言うと日本政府の意向と一致しているという自信があったのだと思われます。

 一昨年、広島を訪れたオバマ氏は「核の先制不使用宣言」を予定していましたが、日本政府はそれに強硬に反対して中止させました。そのときは核抑止政策とは無縁の行為に大いなる違和感を持ったものですが、実は日本政府こそが、米国の「核の傘」に入っているといういい方をしながら、必死に米国に核兵器の拡充を促していたわけです。
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米の核削減 日本が反対 核弾頭の最新鋭化も促す
現外務次官ら大使館関係者 09年オバマ政権時
「文書発言」に明記 本紙入手
しんぶん赤旗 2018年3月4日
 オバマ前米政権が新たな「核態勢見直し」(NPR)策定に向けて米議会に設置した諮問機関「米国の戦略態勢に関する議会委員会」が2009年2月に在米日本大使館関係者から意見聴取を行った際、日本側が日本との「事前協議」なしに米国が核兵器を削減することに強い懸念を示し、質量ともに核戦力の維持・増強を求めていたことが明らかになりました。

 本紙が入手した日本側の文書発言(09年2月25日付)と、同委員会スタッフが作成した意見聴取の概要メモ(同27日付)に明記されていました。日本政府関係者が米国の核削減に反対していたとの報道や米議会での証言が相次いでいましたが、関連文書が明らかになったのは初めて。日本政府がオバマ政権の掲げていた「核兵器のない世界」への最悪の妨害者だったことを裏付けるもので、昨年、国連で圧倒的多数の賛成で採択された核兵器禁止条約を拒み、「核抑止」にしがみつく姿勢を如実に表しています。

 意見聴取は米戦略態勢委員会の定例会合(09年2月24~25日)に合わせて実施。メモには、米側からペリー議長やシュレジンジャー副議長(いずれも元国防長官)ら9人、日本側から秋葉剛男公使(現・外務事務次官)、金井正彰1等書記官の名前が記されています。

 日本側の文書発言によれば、日本側は、米国に求める核抑止能力として「柔軟性」「信頼性」「ステルス性」など6点を列挙。退役が検討されていた水上発射型核巡航ミサイル・トマホーク(TLAM/N)について「退役を決定した場合、能力の喪失の相殺について協議したい」として、代替兵器の配備を要望しました。老朽化が指摘されていた核弾頭の最新鋭化も促しています。

 米側のメモによれば、日本側は「低爆発力の地中貫通型核兵器」が「拡大抑止に特に有効」だと述べたと言及。委員の1人が「われわれが今、聞いたことはびっくりさせるものだ」と述べています。

 日本側はさらに、核兵器搭載可能な戦略ミサイル原子力潜水艦(SSBN)の運用や、B2・B52爆撃機のグアム配備に言及しています。その上で、「潜在的な敵が核能力の拡大・近代化を思いとどまるための十分な質量」の核戦力を要求戦略核弾頭の「大幅削減」については、「事前に日本との緊密な協議が不可欠」だと求めています。さらに「米単独での戦略核弾頭の削減は日本の安全保障を危うくする。ロシアとの核削減交渉を行う際、中国の核軍拡に留意すべきだ」と述べています。

 米戦略態勢委員会は09年5月に公表した最終報告書で、「アジアの若干の同盟諸国はTLAM/Nの退役を懸念するだろう」と明記。委員会が協議した「外国政府関係者」リスト26人のトップに秋葉氏ら日本人4人の氏名を記しています。
写真
(写真説明)米戦略態勢委員会の意見聴取に対する日本側の文書発言。3枚つづりのメモで、委員会出席者によれば、ほぼこの内容に沿って意見表明された