2018年3月2日金曜日

安倍政権が狙うのは労働者の“総請負化

 労働者と使用者(経営者)の利害は真正面から対立するので、労働条件を定めるときには労使が対等の立場で話し合うのが当たり前です。ところが安倍政権は「働き方に関する政策決定プロセス有識者会議」働き方やそれに伴う課題については、 必ずしも公労使同数の三者構成にとらわれない体制で議論を行った方がよい」という結論を出させる(2016年12月)と、直ちに三者構成ではなく有識者委員を中心「労働政策基本部会」を立ち上げました。全てが既定の路線だったわけです。

 注目すべきは、厚労省がそこに提示した検討資料16月に公表した「働き方の未来2035で、その中身は〈働いた時間ではなく成果により評価する仕組みを整備〉〈  正社員、非正社員の区分は意味を持たない〉〈雇用によらない働き方に関する必要な環境整備〉―などで、今の雇用労働という形態を見直し、すべての労働者を請負の個人事業主にする環境を整備するというものです。

 既に厚労省は昨年10月に「雇用類似の働き方に関する検討会」を立ち上げ、個人請負の実態把握や課題整理の議論を始めているということです殆どは何の力も持たない(個人事業主による)個人請負方式が労働者にとってどんなに不利であるかは自明のことです。

 日刊ゲンダイが、「  安倍政権が狙う労働者“総請負化”」という記事で警告しています。
 そこには「労働者のため」という観点は一切ありません。これほど財界・経営側の要望のままにストレートに動く政権も珍しいと言えます。
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裁量労働制拡大は序の口 安倍政権が狙う労働者“総請負化”
 日刊ゲンダイ 2018年3月1日
 厚労省のデータ偽装が判明し、裁量労働制の適用拡大に世論批判が高まっているが、安倍政権はその裏で、もっと恐ろしい雇用破壊の検討を進めていた。労働者の総請負化である。

 厚労省の労働政策審議会(労政審)では現在、6月の報告書の取りまとめを目指してある部会が開かれている。「労働政策基本部会」――。AI(人工知能)などの技術革新が労働に与える影響や生産性向上に向けた取り組み、時間や空間、企業に縛られない生き方などをテーマに議論が続いているのだが、問題は、この部会が労働者外しで議論されていることだ。

 厚労省は2016年7月から「働き方に関する政策決定プロセス有識者会議」を開き、同年12月に〈働き方やそれに伴う課題が多様化する中、旧来の労使の枠組みに当てはまらないような課題や就業構造に関する課題などについては、必ずしも公労使同数の三者構成にとらわれない体制で議論を行った方がよい〉との報告書を公表。この提言を受けて設置されたのが「労働政策基本部会」なのだ。

 国際社会でも常識である労働政策の三者構成原則を無視し、有識者委員を中心に議論すべし――というトンデモ部会だからなのか、議事録を読むと、委員からは〈労働問題とか雇用問題は余りにも幅が広く、多くの困っている人や問題のある人の解決策ばかり力がいってしまう〉〈さまざまな規制や古い形の労働基準法をはじめとして、古いルールによって働きにくくなっていて〉などと、労働者の視点からすればクラクラする仰天発言が飛び出している。

■すべての労働者が請負の個人事業主に
 そして、検討資料として、厚労省が16年8月に公表した「働き方の未来2035」が示されているのだが、中身は〈働いた時間ではなく成果により評価する仕組みを整備〉〈企業に所属する期間の長短や雇用保障の有無による正社員、非正社員の区分は意味を持たない〉〈雇用によらない働き方に関する必要な環境整備〉――などで、ざっくり言うと、今の雇用労働という形態を見直し、すべての労働者を請負の個人事業主にしてしまえ、という仕組みを目指しているのである。

 報告書がまとまれば、過労死法案ゴリ押しの安倍政権のことだ、閣議決定してドンドン進めてしまうだろう。さすがに大袈裟な、と思うかもしれないが、すでに厚労省は昨年10月に「雇用類似の働き方に関する検討会」を立ち上げ、個人請負の実態把握や課題整理の議論を始めている。
すべてを労働者の自己責任でやってください、ということ。極論すると、労働者一人一人が独立した請負業のような形になる」
 裁量労働制の適用拡大をめぐる問題で、埼玉大名誉教授の鎌倉孝夫氏はズバリ指摘していたが、このまま安倍政権を好き勝手にさせていたら、日本の労働者は暗黒社会に叩き落とされてしまう。