共同通信の世論調査:「次の総裁は誰になるか」では、ついに安倍氏はこれまでのトップの座から滑り落ちて、石破茂氏、小泉進次郎氏に次ぐ3位に転落し、当人はまだやる気まんまんなのですが、その一方で、気の早い永田町事情通たちの話題は既に、安倍政権の壊れ方とその後の総裁選の構図に移っているということです。
事態がそういう風に推移すれば、憲法9条の改憲も沙汰やみになる可能性が強まるのでで喜ばしいことです。
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永田町の裏を読む
永田町の話題は“安倍政権の壊れ方”と総裁選の行方に集中
高野孟 日刊ゲンダイ 2018年3月29日
このところマスコミ各社の世論調査で、内閣支持率が一斉に9~13ポイントほども急落して30%台に突入、政権の行方に黄信号がともったので、気の早い永田町事情通たちの話題はもっぱら、安倍政権の壊れ方とその後の総裁選の構図である。その事情通のひとりがこう解説する。
「安倍夫妻の行状を隠すために公文書の改ざんが行われて、そのために末端官僚に自殺者まで出たとなると、もうこれは逃げ切れない。逃げようとすればするほど、支持率は泥沼に足をとられたように落ちていく。そこで、麻生太郎財務相に全部をかぶせて辞任させ、安倍だけ生き残るという虫のいいシナリオが側近の間で検討されているようだが、そんなことをしたら麻生はブチ切れて安倍を道連れにして内閣を引きずり倒すだろう。それよりも、安倍が進んで内閣総辞職をするほうが、まだ混乱が少なくて済む」
いずれにせよ、9月の総裁選は繰り上げ実施となる可能性が出てきたわけだが、それで顔ぶれはどうなるのか。前出の事情通によると、「安倍は出馬できないし、出ても負ける。昔の自民党だったら、黒幕が取り仕切って、右翼で非インテリでせわしない性格の総理の後には、リベラルでインテリで落ちついた雰囲気の総理に振り子を振った方がいいといった知恵を働かせるので、岸田文雄政調会長が有利ということになる。しかし力の勝負になった場合は、やはり石破茂元幹事長が出てくる」という。
共同通信の世論調査は「次の総裁は?」と尋ねていて、トップは石破で前回調査から4・1ポイント上がって25・4%。次が小泉進次郎筆頭副幹事長で、4・2ポイントアップの23・7%と、石破と拮抗するほどだ。半面、前回はまだトップを保っていた安倍は7・5ポイントダウンの21・7%にとどまった。これを見ても、もう安倍は終わったと分かる。
思い起こせば、2012年の総裁選では小泉が石破を支持して票集めに大いに貢献し、そのおかげで石破は地方票で圧勝していながら国会議員票のみの決選投票で安倍に敗れた。ところが、今年1月の本欄で書いたように、総裁選のルールが変わって、第1回投票で国会議員票と地方票が同数になり、決選投票になった場合も地方に一定の票が割り当てられることになった。そのため、もしまた石破と小泉が手を組んで戦えば、圧倒的な勢いになることは間違いない。岸田が、この期に及んでなお安倍による“禅譲”に期待して戦う姿勢を鮮明にしないようでは、石破・小泉連合に蹴散らされるだろう。
高野孟ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。
電撃的な金正恩訪中の全貌が教えてくれた安倍外交の孤立
天木直人のブログ 2018-03-29
一夜明けて金正恩電撃訪中の全貌が明らかになった。
今日の各紙が大きく報じるその実態は驚きの数々だ。
その中でも、一番驚かされたのは、安倍首相の日本だけが何も教えてもらっていなかったということだ。
これまでにも私はさんざん批判的に書いて来た。
安倍外交ははしごを外されたと。
それどころではない。完全に置き去りにされていたのだ。
そのことが今度の金正恩の訪中で証明されたのだ。
なにしろ習近平はまっさきにトランプに会談内容を教えている。
それをトランプがツイッターですかさず公表し、歓迎するとまでつぶやいている。
出し抜かれた形になっている韓国であるが、きょう29日、板門店で南北閣僚級会談を開く。
同じ民族が朝鮮戦争の終結に向かって今度こそ本気で南北首脳会談を成功させようと決意した以上、文在寅大統領の韓国が主役から外れることはない。
つねに情報は北朝鮮から同時並行的に伝わっているのだ。
蚊帳の外に置かれているのはプーチンのロシアと安倍首相の日本だけだ。
しかし、プーチンのロシアは、ついこの間まで、習近平の中国がトランプの米国に譲歩して金正恩の北朝鮮に対する経済制裁を強化した時、ただ一人それに反対し、北朝鮮を擁護した国だ。
おまけにプーチンはロシア疑惑でトランプの急所を握っている。
いざとなれば本当のことをばらすぞと凄めばいい。
どんなにプーチンのロシアと西側主要国の関係が悪化しても、トランプの米国はプーチンのロシアを敵に回す事は出来ない。
良くも悪くも、プーチンのロシアは国際政治の中心国なのだ。
こう考えて行くと、安倍首相の日本だけが、いかにその存在価値のない、どうでもいい国であることがわかる。
極めつけはきょう3月29日の朝日新聞が報じた次の記事だ。
すなわち、北朝鮮関係によると、金正恩政権が最近、朝鮮労働党幹部らに「6月初めにも日朝首脳会談がありうる」と語っているというのだ。
しかもそれを内部の資料として配布しているという。
日本と国交正常化すれば200億ドルとも500億ドルともされる支援を受け取れるとまで書いているという。
6月初めというタイミングは、すべての首脳会談が終わったタイミングだ。
すべてが平和裏に終わり、北朝鮮の支援が始まれば金を出すのは日本だと言っているのである。
これを安倍首相が言うのならわかる。
何しろ訪朝して拉致問題を解決し、日朝国交化正常化を成し遂げるのは安倍外交の最後のサプライズであるからだ。しかし、金正恩政権がそれを先にばらしたのである。
何も知らされていないのは安倍首相の日本だけだ。
無理もない。知らせてくれなかった、冷たいではないか、と文句を言ったら、トランプも習近平も文在寅もこう言い返してくるだろう。
今あなたは森友疑惑でそれどころではないだろう。それを忖度して、今あなたにその事に専念して危機を乗り切ってもらいたかったからだと。
もはや安倍首相では力強い日本外交は進められない。一刻も早く安倍政権を変えて仕切り直さなければ、日本外交は乗り切れないということである(了)